狐花はご存じ、周りの事など躊躇しない戦闘方法が主体。基本的に超広範囲に及ぶ攻撃が大半を占めておりピンポイントな攻撃は不得手であった。蹂躙と殺戮しかしらなかったが故に周り全てが敵。自分以外葬り去り燼滅させる手段しかしてこなかった災厄の化身。故に『祟り神』と言う二つ名を頂戴するに至る。
現状のままでは敵味方区別なく葬り去ってしまいかねない程の諸刃の刃と化すのは焔を見るよりも明らか。
基本的配置も前衛がアイラと静香、高速機動が可能な遊撃がアーシア、そして広範囲高火力の後衛が狐花の配置が理想。
しかしながら狐花は敵味方の区別がついていない。狐花以外の者共全てが滅ぼされかねない。その為、味方を攻撃せず(と言うか当てず)に敵だけを屠る手段を獲得するのが彼女にとって急務であった。
「うわぁ……何アレ?」
アイラは思わず呻いた。狐花の稽古はもはや稽古と呼べない。一度本気で暴れれば惨禍を引き起こす為に稽古する場所も必然的に何も無い場所に限定される(影では『祟り神』の他に『破壊神』、『ミニ伊弉冉尊様』、『アレどうにかしろ』、『歩く核爆弾』、『ジェノサイド系幼女』と言いたい放題言われている)。大海原か砂漠と言った環境が理想……街中?体育館?例外なく滅びます。
皓咲城の庭園の先には地下水源が広がっている。その沖合の方で狐花の稽古が行われているのだが……側から見れば艦砲射撃の撃ち合いにしか見えなかった。
——艦載機が飛び交って爆炎やら水柱が彼方此方で噴き上がってるのだけど……?
『おや、アイラお嬢さん』
「えーと、アレは何やってるのかしら……?」
其処に恐介がアイラの前に現れる。遠目にも轟音が絶えず聞こえてくる。
『狐花お嬢様は知っての通り、無茶苦茶な方ですし全部滅ぼせば良いと言う思考回路です。コレからは皆様方が居られますので敵のみ穿つ訓練を行なっております。具体的な方法は『裏幕府』の瑞鶴様とアーク・ロイヤル様にご協力頂いて赤く塗った彩雲に当てずに青く塗ったソードフィッシュのみを撃墜すると言うモノです。無論、ソードフィッシュは彩雲のみならず狐花お嬢様も狙う為に棒立ちの固定砲台では何れはやられます』
高速で飛び交う艦載機を区別して狙うと言うやり方。当然、それだけで終わる訳も無く……。
『アクシデント仕様として、後5分後程にキング・ジョージ5世様が狐花お嬢様の妨害役として参戦します』
其処に戦艦が割り込んで来る仕様。稽古なのに普通に鬼である。やはり恐介もスパルタ教育らしい。
『更にキング・ジョージ5世様が参戦して2分後にシャルンホルスト様が妨害……と言うか強制終了させる為に殴り込んで来て狐花お嬢様を狙撃します。その射程は4km程……狐花様が対戦車ライフルで視認出来る最大射程は2km程度なので間違いなく直撃します。無論、コレはアクシデントですので狐花お嬢様は知りません』
トドメに狐花の倍の射程を誇る相手に狙うと言う鬼畜仕様。無論、狐花は日本神話陣営の面々の中でも下から数えた方が早いので直撃すれば一撃である。短期決戦になる事の方が少ない事が多いが決まる時は殆ど一瞬。理不尽なんて戦場には良くある事である。と言うか稽古と言うには苛烈な内容とも言える。
「何その極悪仕様」
『コレ位の内容でなければ無意味です。実戦ではこの程度、やり遂げれ無ければ死ぬのは当然でしょう』
「あはは、それは言えているね。恐介」
『……アイラのお嬢さんも始めますか? 申し訳ありませんね。人手が足りないモノで……』
「まぁ、仕方ないよ。で、どうするの?」
『……狐花お嬢様はあの調子ですとシャルンホルスト様に撃ち落とされるのが予想出来ますので、一旦放置しましょう』
遠方では未だに爆炎と轟音が絶えず聞こえてくる。その様子から狐花は苦戦していると判断した恐介はアイラに向き直る。恐らく6分後に狐花は撃沈している光景が予想出来る。
『僭越ながら、この私めがお相手になりましょう。小さき体躯が相手とは言え、体躯が強さに直結するとは限りません』
「そうね。強さと図体は比例するとは限らない。私は大柄な武装だもの、振るってちゃ当たる訳でも無い」
『……何処からでも掛かって来ても構いませんよ?』
仮にも狐花の御付きの八咫烏。並の者では狐花の暴走には付き合いきれない。
「それじゃあ、その胸。借りちゃおうかな?」
『アイラのお嬢さん。来なさい、八百万の神々が使いの八咫烏・恐介が相手になりましょう‼︎』
皓咲城の広場、地下水脈の沖合にて各々の稽古が繰り広げられる。初めから容赦の言葉すらも無い本気仕様の中身であった。因みに狐花はキッチリ6分後に遠方から飛来した即死級の破壊力を持った砲撃で見事に水面に沈んだ(その後、瑞鶴達に引き上げられた)。
「むー……( *`3´)」
『目標撃墜3、護衛撃墜数9……最初に比べりゃあ大分マシになったわな……』
その日の深夜の刻限。狐花の部屋。最初の頃は殺風景とも言える程に何も無かったが今では、それなりの調度品が置かれ見てくれだけは普通の内装(殆ど使われていないが)となっていた。強いて言えば山の様に積まれた書籍が存在感を放っている事くらいか。
して、今回の結果は敵機撃墜数はたったの3。対する味方を想定した機の撃墜数は3倍の9。トドメに時間切れによる強制終了を冠した砲撃に狐花は見事に沈んだ。
『こんなんでも、最初の方に比べりゃあマシやな。最初の時はヒデー有様っちゅうもんやって』
こんな形でも最初期に比べればかなーりマシになった部類である。最初はもはや当然と言わんばかりに敵味方の艦載機を纏めて葬り去ると言う解り切った暴挙に出ていた。然も6回目までそんな状態が続いたのだ。呆れる他無いだろう。
その後、稽古に協力して貰った『裏幕府』の付喪神達は早々に帰投して行った。一応、稽古終わりに夜の時刻であった為に晩飯はどうかと言う誘いをしたが(狐花が作る料理(⁉︎))彼女達は
『彩雲も甲板ももうボロボロ‼︎ 此処、工廠が無いから帰って直して貰うわ』
『可愛い幼……ごほん。そのお誘いは大変光栄が……今回の演習は本気だったのでな。少々、修理が必要だ。機会があれば相伴させて頂こう』
『え、えーと。お誘いは嬉しいのですが……少し疲れましたので、またの機会に』
『私は、
と言う事で早々に帰投して行ったのである。恐らく狐花の昆虫食料理を懸念して逃亡を図ったのだろう。
『ま、今回の稽古で改善点は多々見られたから突き詰めて行くに限らぁな』
「……うー、面倒」
『纏めて潰せば終いやったら、この世界に文明なんて代物は必要無いで。全てが砕かれ滅び劫末の世界が来るなんて最悪やっつーの』
「むー……(`・3・´)」
その気になれば狐花は滅ぼしかねない。そんな光景、五七からすればもう見たくない。あんな光景は2度と見たくないのである。
『ま、今日は遅いから寝るやさかい』
『お嬢さん』
その時、狐花の部屋に恐介が跳ねる形で入ってくる。
「んー……何ー? もう、眠いから寝るー、疲れたー寝るー、兎に角寝るー」
『せやから、布団敷けぇい‼︎』
狐花は何時もの如く、部屋に転がって寝ようとして五七が布団を敷けと喚く。何時も通りの光景だった。