『あの姉ちゃん……俺様が見えていたな……見えていて、敢えて無視してたんやなぁ』
「もきゅもきゅ……」ガリィ
アイラの部室を後にした狐花。その時、お礼と言わんばかり飴玉を貰いソレを舐め……ると言うより齧って噛み砕いた。
『あんな、狐花。飴玉ってのほ噛むんじゃなくて舐め転がすモンやで……』
「……砕けた」
『取り敢えず、あのアイラって姉ちゃんは悪魔でも堕天使でも天使の類じゃあねぇわな』
「ん……寧ろ人間に近い」
『いや、其処は人間って言ったれや……あー、アレかねぇ。霊感強いんかも知れんわな。霊感強い人間とか、時たま居るし……その類なんやろうなぁ……一瞬、ビビったがな』
「…………」
その後、何とか教室に戻るも『探検は程々にしろよ。チミっこ』と紫先生の小言を貰い初登校の日は終了するのであった。
『多少、心配したんだが驚く程に音沙汰が無かったな』
「気配はあったよ。しかも10人位は……」
その日の放課後。元々、狐花は人混みは好きでは無い。部活動の類は未知である為に早々に校門を出て帰路に着いていた。昨日、はぐれを仕留めた件は少なくとも悪魔『グレモリー』には露見している筈である。
その為、今日のこの頃には何らかの形で接触が起こるか?とも考えていたが、そんな素振りは見られなかった。強いて言うのならばアイラと名乗った2年生(此方が偶々、入り込んだだけ)が話かけて来た位である。
『迷子を気取って色々、探れたんちゃう?しかも、例の変態3人組っての……1人、アレ、悪魔やろ?』
「ん……多分、ううん。確実」
朝の覗き事件。その実行犯の内、1人は粛清したが、残り2人は取り逃した。その片割れは他の2人と違い常人以上の身体能力でいの一番に逃げ果たせた。
『悪魔は悪魔って訳やな……ほんま、呆れたモンやで……性犯罪者とは世も末やなぁ。それは兎も角、悪魔が最低でも10人も居るとあっちゃあ……ちったぁ、面倒やな』
数の暴力の悍ましさは狐花自身、良く理解している。戦いは頭数をどれだけ揃えられるかに掛かっていると見て良い。
「…………」
悪魔『グレモリー』の戦闘能力は現時点では情報不足故に未知数。また、悪魔社会では『眷属』と言う名の配下を従えている。それらは『王』を主軸とし、『女王』『戦車』『僧侶』『騎士』『兵士』……チェスの駒に例えられている。俗称として『悪魔の駒』と呼ばれる少数精鋭のグループと言って良い。
そして問題はその『悪魔の駒』は他種族の存在を悪魔に転生させる(その者を『転生悪魔』)効果を有している事。駒さえ取り込ませれば悪魔を増やす事が出来る。半ば強制的に、である。それが、人間であろうと……神話の世界の存在であろうと変わらず、である。そして、悍ましいのは『王』に対して依存心を抱くと言う効果も付随していると言う事である。
「……各個撃破の後、両腕両脚を捥ぎ取ってから心臓と首筋を抉り取る。コレに尽きる」
『相変わらず、エグい思考してんなぁ……巫の思想ちゃうで』
「……なら生きている状態で背骨を引き摺りだしてそれ以外を切り身にして御頭付きでお皿に盛り合わせる。味付けは……醤油」
狐花の頭の中では背骨を引き摺り出して頭だけが残った状態で大皿に乗せて胴体の肉を切り身にして乗せると言う猟奇的過ぎる光景が浮かんでいた。
『いや⁉︎ 殺し方に関しての文句ちゃうで⁉︎ つーか、調理方法⁉︎ もう殺し方ちゃうやん‼︎』
普段は昆虫類しか食べないし聖職者故に肉食もしない……なのに、調理方法は良く知っている(使う機会が限られている)。狐花は何かと知識と行動が釣り合っていない事が多過ぎるのである。野菜は知らないのに銃火器種の弾薬の区別は付く……。知識の範囲が斑かつ滅茶苦茶であった。
「…………」
『ん?あぁ、こりゃあ……アレやな。どうするけ?』
唐突に狐花は歩く脚を止める。ある流れが見えたのである。それは五七も感じ取れていた。
「聖書関連は惹かれ合う、そう言う事なのかも知れないね」
『……悪魔の次は堕天使かいな。話題に事欠かんなぁ……放置するのもアリやけど……どうすんや?』
「邪魔だから、消しておく」