——あ、天照大御神……‼︎
よもや天照大御神(狐花に憑依)が目の前に現れるとは想定だにしていなかった。
「……貴方が何を言いたいのか、何をしたいのか、その全てを知っています」
狐花の口からはソーナが言わんとして居る事を全て把握して居ると言う旨が伝えられる。この日本国にいる以上、隠し事は不可能。何故ならば八百万の神々が住まう地、凡ゆる場所から監視されているに等しいからである。
狐花が一歩前に出る。ソーナは一歩後ろに下がる。これ以上、近付くとソーナは彼女の纏う神気により消し潰される。上級悪魔でさえ耐え切れない神気を今の彼女は纏って居る。接近する事すら出来ない相手。
「……貴方は他の穢れとは違う、そう言いたいのですが洞穴狢である事を……理解していないと?」
「……」
ソーナは自分自身が他の悪魔と同類では無いと断言したい。しかし相手は狐花(天照大御神憑依)。嘘や戯言は無意味である。
「おや、やはりこの子は……」
その時、狐花(天照大御神憑依)は自身の身体を見てそう呟く。
「……少々、騒ぎ過ぎましたね。この子が目覚めそうですね。寝起きも悪い上に、眠りも浅い。目覚めたら私の意識は憑依元であるこの体から追い出されます。言いたい事、分かりますね?」
——たったこれだけで眠りが覚めてしまうのですか⁉︎
どうやら憑依元である狐花本人が起きそうであった。今でこそ見た目は狐花ではあるが天照大御神様が憑依している状態(その代わり迂闊に近付けない)故に会話は通じるが、狐花が目覚めれば恐らく神口も途切れる。そして、目の前に悪魔であるソーナが居る。
寝起き不機嫌全開でブチ切れ不可避の狐花が眼前に居ると言う最悪と言う他に無い状況に放り込まれる事となる。今度こそ本当に駒王町を枕に野垂れ死する羽目になろう。
「さて……猶予は無いですね。疾く、駒王学園の旧校舎に行きなさい。早く行かないと……『祟り神』が目覚めてしまいますよ?」
「……何故、それを……?」
その言葉の真意を問い掛ける。何故、此処でその単語が出て来るのか?
「何処の世界にもお人好しと言うモノは居るものです。最も私本人としましては貴方達は、即刻に除去してしまえば丸く収まると思うのですけど……或いは此処で死にますか?」
「…………」
やはり日本神話は悪魔陣営の存在を良しとしていない。天照大御神様がそう告げて居るのだから事実だろう。そもそもそうだ、自国の人間を平然と誘拐したり殺したり、領土を名乗ったり……好き放題していて我慢出来ようか。
「いえ……行かせて頂きます」
「最後に、魔王に感謝する事です」
「…………」
魔王。その言葉はソーナを含めた悪魔達にとっては特別な意味を持つ単語。しかし、疑問符は浮かぶ。外交担当である自身の姉は『真面に取り合ってくれない』と嘆いて居るのに、何故……そんな言葉が出て来たのか分からなかったが、狐花が目覚めれば『死ね』と言わんばかりに襲われるのは明白。怒れる祟り神を鎮める術はない。ソーナは早々に皓咲屋敷から飛び出す様に立ち去りその足で駒王学園の旧校舎へと向かった。
「……コレは……?……⁉︎」
旧校舎。リアス達、オカルト研究部の部室であり部屋の奥にあるリアスが座る椅子の前にある机。その上に複数枚の査証と在留カードが綺麗に並べて置かれていた。
ソーナはそれを見て思わず目を見開いた。それは自分達が求めていた『ビザ』、そして『在留カード』と呼ばれる中期以降、在留資格を持って滞在する者に発行されるカード。確かにカードやビザには日本神話の文字が書かれており悪魔や他神話が発行され所持しなければならないモノ。
——オカルト研究部と生徒会の人数分、いえ、生存者分……揃って置かれています。一体、誰が……?
ビザと在留カードにはリアス・グレモリーを始めとしたオカルト研究部の面々、ソーナ・シトリーを始めとした生徒会の面々の生存して居る人数分が用意されていた。
ビザの種別は勿論、『留学ビザ』。学業を目的としたビザである。それ以外の行動はビザ取り消しの対象となる旨の説明の用紙も置かれていた。つまり、悪魔稼業や領土経営は『就労』に当たる為、原則禁止事項となる事も書かれていた。
「……期限は1年。つまり、私達3年生が卒業する日、まで」
下僕悪魔の期日も同じく1年。つまり『王』である自分と同じ時期に期限が切れると言う事。1年の猶予が与えられた。ある意味、天照大御神様が言う抹殺の執行猶予と言うモノなのだろう。
「……でも、本当に一体誰が……いえ、有り難く受け取るとしましょうか……リアスにとっては領主では無くなったのですから、苦しいかも知れませんが命あっての事。我慢して貰いましょう」
リアスは駒王町を領土と見做す領主を名乗っていたが、この時を以って領主解雇である。もう、駒王町はリアスの悪魔の領土では無い。名乗れば今度こそ、消される事になるだろう。
「……取り敢えず、匙達やリアス達にも伝えませんと行けませんね」
——しかし、あの皓咲さんに通用するかどうか、不安でしかありませんね。
「……全く……あんな事する必要あったの〜?」
その頃、ソーナを見送った狐花(天照大御神憑依)は皓咲屋敷の屋根の上に登り満月の浮かぶ空の下、反対側の屋根に居るであろう存在に声を掛ける。
「お前ら……冗長が過ぎんだよ。尺を使い過ぎだ、ど阿呆」
「むー……」
向こう側から聞こえて来るのは男の声。男性の様である。
「……まぁ、強いて言うなら此方の方がモノガタリとしちゃあ、面白くなるだろうとな」
「相変わらずだね〜。良いの〜?多分、助長するよ〜?」
「引き篭もりゲーマーに言われたか無ぇよ、後、仕事しろ仕事‼︎」
「ヤダー‼︎ 仕事したくない‼︎ 此間、この屋敷に来た骸骨、凄く怖かったもん‼︎」
「ガキかテメェは⁉︎ 引き篭もり過ぎて二次元だけが友達のオタクか⁉︎」
「うわーん‼︎ お姉ちゃんを苛めるー‼︎ つーちゃん、スーくん、三っちゃん助けてー‼︎」
「何でこうなる……つーか、素戔嗚とか呼ぶの止めろ‼︎ つーか、お前ら仲悪くなかったか?」
「ん? そうでも無いよ。スーくんは何故か逃げるけど……照れてるだけだから」
「……そうか(絶対、このノリが嫌で素戔嗚は高天ヶ原から逃げたな……)」
「それでぇ、どうなるの?」
「お前、本当に何にも聞こうとしてねぇのかよ」
「うん♪ だって、面倒くさいもん‼︎」
「デカいのはその胸だけにしとけ。主宰神が言う言葉じゃねぇだろ、馬鹿野郎。転生悪魔とかの問題はどーすんだよ?」
「んゆ? 三っちゃんが、どうにかするから私、やる事無いもん」
「100パー、屍山血河になるな……。それから、死んだ後の魂を戻すの大変な上に夜摩天が過労で倒れるぞ……」
「んー……んー?……うー?」
「聞いた俺が馬鹿だったよ……。ダメだ、この神様。とっととシメねぇと……‼︎」