雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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紛糾する魂の裁定者達

 

 

 

 軽い現実逃避をしながらも狐花とベンニーアの2人は地獄の上空を翔け抜けて目的地へと飛んで行く。

 

『おう、見えて来たな。彼処やで』

 

「あの辺りは地面が黒いっスね〜」

 

 周辺は真っ赤な大地が広がっている中、その地域一帯は黒い地面が広がって居る。その地域には巨大な御殿が建って居るのが見える。アレが地獄の庁と呼ばれる建物であり、地獄の最重要たる施設であった。その御殿の玄関口前に降り立つ。近くで見ればその大きさが際立って見える。

 

「何と言うか、魂が溢れ返っている気がするっスよ?」

 

 閻魔殿の廊下を見やれば長蛇と言う長蛇の列が出来ていた。それら全て、死亡した亡者達の群である。

 

『……何かと最近、死者が多いみたいやな。理由は諸々あるけどな。ウチらが持ってんのは転生悪魔関連のリストやから、その他の死亡者の細かい所までの詳細は知らんねんな。知らん所で事故かテロがあったんかも知れんなぁ……』

 

 昨今、厄ネタは何かと多い。こと、悪魔やら堕天使やら天使やら面倒極まりない連中が干渉している為、殊更増えて行く事だろう。

 

「其方は管轄外。と言うか興味が無いから放置で」

 

『やな』

 

 再び大鎌に跨り、長蛇の列の上を通り過ぎて御殿の中を突き進む。中には逃げ出そうとする亡者も居たが、大柄な体格の獄卒に取り押されられ首を折られ何処かへと持って行かれる光景も見えた。

 

「あの大部屋に入って行くっスね。列の動きは思いの外、早いっスね」

 

 列の流れは前方で右折している。ベンニーアは恐らくその部屋が閻魔大王の裁判の法廷の場であると認識。どんな裁判が行われるか気になったので、ちょっと見学してみる事にした。

 

 

 

「人違い?面倒だから地獄行き。テキトーな所に放り込んで」

「煎餅を捨てた?地獄に堕ちろ」

「転生悪魔?興味無いから地獄行き」

「地獄行き、はい次ー」

「あー、もう面倒くさいから以後全員、地獄行き。閉廷。もう、ゴロゴロしまーす」

 

 

 

 

 

「」

 

 今度はベンニーアが現実逃避して思わずそそくさと通り過ぎた。アレが地獄の主である閻魔大王だとは思いたく無かった。酷いにも程がある判決光景だった。適当とか面倒くさいとか、終いには全員纏めて地獄行きを叩き付けると言う横暴極まりないやり方であった。

 

『相変わらずやなぁ……閻魔様は』

 

「ん」

 

「アレ?アレが閻魔大王?日本の冥府の長なんスか?酷すぎやしません?面倒だから纏めて有罪判決していなかったスか?」

 

『超が着く程に面倒臭がりなんよ。せやから、纏めて地獄行きが当たり前でな……』

 

「あのー、公平とか……そう言うの無いんスか?ほら、何とかの鏡があるってハデス様から聞いた事が」

 

『多分、埃被っとるで……』

 

「……適当過ぎるっス。天国に行った人は……?」

 

『あの閻魔様が担当した場合、1人も居らんって話や。完全なる通過儀礼った奴やな……逆に夜摩天様やと公正なる判断が下されるわ』

 

「ま、正に天国と地獄っス……」

 

『まぁ、夜摩天様は忙殺され気味やから、此処最近は閻魔様が担当なされてるんやけど……』

 

「…………」

 

 再び現実逃避しながらベンニーアは其の儘、奥へと進む。そして御殿の隣に建っている別の御殿へと繋がる渡り廊下を通る。その道中で狐花が途中で飛び降りて見えた部屋へと入って行く。

 

「夜摩天様〜」

 

「あら、狐花ちゃん。わざわざ、地獄まで……どうかしたのですが?」

 

 ベンニーアも降りて後に続く様に部屋の中へと入る。其処では夜摩天様が何かしらの整理を行なっていた。地獄は日々増える亡者や転生悪魔の一件で常に人手不足の状態が続いている。その為、獄卒だけでは手が足りずに上役の者もこうして手伝わなければならない程に忙殺されている様だ。

 

「転生悪魔の最新のリストを貰いに来ました。最近、知らない転生悪魔が増えて来たので」

 

「成程、分かりました。後、その件でのお話が有りますのでついでに話して置きましょう。持って来ますので其処にお掛けになって待ってて下さい」

 

 夜摩天様は狐花(とベンニーア)にそう告げると奥へと引っ込んで所用の物を用意しに引っ込んで行った。その為、暫し待つ事、数分。例の物を持って来た夜摩天様は狐花達の前に椅子を持って来て座る。どうやら、少々込み入った話もある様である。

 

 

「……まず、第一に『転生悪魔』の件です。狐花ちゃんを筆頭としていますが片っ端から仕留めているのが現状。嘆かわしい事に十王で今でも大いに揉めており、『転生悪魔は残らず抹殺』派と『已むを得ない者は救済』派で対立中なのです。閻魔は棄権したので、奇数となり決まると思ったのですが……残りの三王が参加した為に偶数となりコレまた同数で対立してしまい……如何に誰かを寝返らせるかで熾烈な争いと化しています」

 

 転生悪魔の処遇を巡り今でも啀み合いが続いているらしい。何方も強硬姿勢で中々、考えを曲げずに時間だけが浪費されているのが現状との事。転生悪魔の中には自ら進んで転生した者は問答無用で地獄行きは決定している、コレは良い。問題は予期せぬ、不本意な事情で転生させられた者達や、死亡した直後に蘇生し転生させられた者達である。

 転生悪魔は軒並み抹殺は常套な事。しかしながら不本意な者達に対してのその姿勢は如何なモノか?と言う事で荒れに荒れたのだ。蘇生し転生された者達を再殺する事も『運命を歪めてしまう』と言う理由で容認されるもその当人の以前の罪か転生後の罪かでも荒れており、中々纏まらない様だ。閻魔様みたいにテキトーな判断では下せない。その為、彼方が立てば此方は立たず……そして、振り返してまた揉める。と言う事を繰り返している。

 

『……裁く側としては譲れん戦いって訳やな。論争なだけマシか』

 

 十王と雖も明王も含まれている為に壮絶過ぎる物理的な戦になりかねない。論争で留めているだけ、まだ良心はある様だ。何方の主張も正しいが故にお互い譲れなくなってしまっている。

 

「はい……その為、この庁に来た転生悪魔は判決待ちの状態で足止めを食っているのです」

 

「えーと……つい先程、閻魔様が転生悪魔諸共、地獄行きの判決を叩き付けていましたっスよ?」

 

「…………」

 

 ベンニーアのその言葉に夜摩天様は半目で遠い目をした。現実逃避をしているのだろう。

 

「そうですか……其方は仕方ありません。私と閻魔の下した判決は取り消せません。故に難儀するのですよ……あの馬鹿は何時も何時も面倒くさがって誰でも彼でも地獄行きにするのですから」

 

『あ、ぐ、愚痴はまたの機会に‼︎』

 

 夜摩天様の愚痴が始まってしまいそうだったので五七が静止の言葉を投げる。恐らく半日は掛かって来るだろうからだ。狐花ならば間違いなく寝るのは目に見えて分かる。その為、無理にでも話を戻した。

 

「おっと行けませんいけません。そんな訳で現在、私が把握して判決待ちの転生悪魔は約362名。内、狐花ちゃんの居る駒王町で死亡したのは約半数ですね」

 

『どんだけ駒王町に来るねん。ゴキブリホイホイからの蚊取り線香か』

 

「……恐らく他の地域で『悪魔狩り』の行動が活発だからなのでしょう。誘い込まれる様に駒王町に迷い込んで来て……」

 

「神気に当てられて昇天ってオチっスね。偶発的とは言え……中々、散々な目に遭っているっスねぇ……」

 

「その内、全体の8割が不本意な形での悪魔に転生させられた者、全体の6割が死亡直後に転生させられた者、その両方に該当するのが5割となります」

 

『うわぁ……どんだけおんねんて話やな』

 

「敢えて殺して蘇生させて退路を塞ぐやり方。確実っスけど、中々セコい真似っスねぇ。流石に不憫過ぎやしないっスか?」

 

 蘇生させたから、言う事を聞け。そう言う行為が横行している様だ。

 

「死した者を蘇生させる行為は断じて許しては行けません。そして、厄介な事に『悪魔の駒』には暗示か洗脳の類も含まれている様ですね」

 

「具体的には?」

 

「早い話が『王』たる主人に従うような洗脳が含まれています。効き目は個人差がある様ですが嫌疑の念があると急速に効果は弱くなる様です」

 

『嫌いな奴は嫌いって奴やな。要は刷り込みって訳やな』

 

 転生悪魔には従順か反抗かの2択であろう。となればはぐれ悪魔は大半が不本意な形での転生悪魔と化した者達が殆どと判断出来る。最も断言は出来ないのが現実と言えるのだが。

 

「……やはり随分と多い。男女比が顕著になってる」

 

 狐花は新たに貰ったリストを捲って確認する。急増している事が分かる為に由々しき事態であると認識を改める。

 

『……大半が10代から20代……悪魔ってホンマ、変態ばっかりなんかな……』

 

「判決待ちの転生悪魔、数名からの話によると従僕させた転生悪魔を囲う……言わばハーレムを形成する目的が多分に含まれていると思われます。特に見目麗しい若い少女を集めて乱交騒ぎ……。正直な話……一夫多妻に関しては過去の時代にも幾らでもありましたし動物の世界にも生存の為に必要不可欠な行為である事も分かっては居ますが……個人的には衆合確定ですね」

 

「『うわぁ……』」

 

「……性奴隷。肉奴隷。奴隷ハーレム」

 

『狐花ァ⁉︎ 何処で知ったねん、その単語ォ⁉︎』

 

「要約するとそうなります。しかしながら、人間の歴史は奴隷の歴史とも言っても過言ではありません。殆どの国家でも奴隷の概念は確固たる事実として存在していました。日本でも奴隷の概念は実在していました」

 

「ん、あった。戦乱の時代なら、普通に存在していた。内容が余りにも酷過ぎるから学校ではまず教えられる事は無いけど」

 

「……何というか、見て来たみたいな言い方っスね」

 

 それでも正義感のある者は『巫山戯るな』と言うであろうが、『お前ら人間が言うな』と言えば不毛の争いだろう。故に結局は暴力で解決する事になる。そして、正義も悪もクソも無い、勝者が正義となるのである。

 

 

 

 

 

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