狐花が居なくなった後、ベンニーアは鎌に跨り地獄の上空を飛行している。『劫末』が現れた以上、地獄の何処に居ても危険だと言われたのだ。亡者は地獄で幾ら死んでも大した問題にはならないが、生者や部外者が地獄で死ねば本当に死ぬ事となる。ギリシャ神話、オリュンポスの死神も例外では無い。
『全く……狐花の奴、こないな時に何処に行ったねん‼︎ 何時から居らんくなった⁉︎』
「分かんないっス‼︎ 気配を全く感じさせずに消えるなんて、狐花様って何モンなんスか⁉︎」
『……
「え?今、何と?」
『何でも無いわい。が、『神煉具』か……まさか、地獄にその一片があるとは思うておらなんだわ』
夜摩天が言うには神器も神滅具も『聖書の神』が遺した遺物(と言う名の呪いの類)と見ている。そして『神煉具』と呼んで居る。神器と神滅具は基本的には先天性(何らかの形で覚醒)である事が多いのだが、『神煉具』は後天性である。いや寧ろ、後天性でしか有り得ないと言う。理由は1つ。
神器や神滅具は所有者を選ばない。血筋や出自なぞは関係ない。しかし『神煉具』は違う。
『神煉具』自体に明確な意志があり、『神煉具』自ら担い手を選ぶと言う事である。己の魂に相応しき存在を探し求める流浪の存在。
神滅具や神器の中にも何らかの強大な存在が封印されたモノも存在し所有者の成長によりその意識が表面化するのだが神煉具はその特徴上、初めからその意識を覚醒させ担い手を探し求めている。
そして、『誓い』を立てるのだ。誓いは最も大切なモノとなり、その誓いは決して破るる事無く続く。部外者が如何なる手段でその誓いを阻む事は能わず。例えその力に焼き尽くされ死した後でも、輪廻転生しようとも次代のその者に宿り続け誓約は続いて行くのである。両者が誓約を破棄しない限り、永劫に……。
「と、言う事は五七さんは知っているんスか?」
『ほんの少しな……。全部で3つあるって事やな。そのドレもエグいのばかりでな……』
「えーと、具体的には?」
『
その直後、空間其の物が激しい縦揺れに襲われる。上空にも関わらず空間自体が激しい地震の襲われる。
「こ、コレ……本当にヤバいんじゃないっスか……?」
『かもなぁ……って、何やアレぇ⁉︎』
地獄の一角にて激しい業火と火柱が舞起こっている。周辺に聳える山とか構造物は赤熱化して融解して行く光景が見える。もはや、火事とか火災とかそんなレベルでは無く、融解に等しい。原初の地獄とも呼べる光景がこの地獄で起きている。
その惨禍のど真ん中、赤熱化した存在と白衣が半分焼け落ちた狐花が相対して壮絶な劫焰と劫火のぶつけ合いを起こしている。
「き、狐花様と見知らぬ存在が戦闘してるっス⁉︎」
『あかん……近付こうにも熱過ぎて接近出来へんわ……‼︎』
焔と焰が混り合う地獄。地獄の火災でさえ無理矢理、融解させると言う常軌を逸する状況。対策なぞ知った事では無いと言う惨劇を引き起こす環境の中、狐花は『劫末』を相手にあろう事から炎の霊術で対抗している。何を如何すればその様な状況になるのか理解出来ない。
「こ、此処も充分危険っスよ……‼︎ 此の儘やと、ウチも塵屑1つ残らず融かされるっス‼︎ 良く分からない状況っスけど、逃げた方が良いっス‼︎」
『狐花のアホー‼︎ 何考えてんや……しゃあない、一足先に逃げるっきゃ無いわ……‼︎』
これ以上はこの場には留まれない。故にベンニーアと五七は退散する事を選ぶのであった……。