「イッセー‼︎ 何処に居るの⁉︎」
狐花達に盛大なる誤解をされたままのリアス達。地獄のど真ん中で服を脱ぐと言う露出狂と言う他に無い状況の最中。目的である一誠を捜索していた。
「心無しか、ただでさえ熱いのに更に熱くなっていませんか……?」
地獄の業火の勢いは苛烈の一言。気付けば大半の大地が赤熱して融解。流動化しつつあり、斜面に従い流れている。如何に悪魔と雖も大地が融解する程の状況に素足で飛び込めば火傷では済まない。
「……くっ。異常な環境な上にこれは異常よ……‼︎ それに、何か様子が変だわ……。地獄とはオリュンポスの冥府の様に死後の世界。だから死者が多数、居ると思っているのだけど……殆ど見受けられないわ。少ない所を選んで居ると言っても人気が無さ過ぎるわ……‼︎」
亡者の類も見受けられない地獄。沸々と煮え滾る大地の最中、突如として爆轟と共に大地が爆ぜた。鮮血と赤熱化した砂塵が宙を舞い、上空の暴風と合わさり竜巻となって地獄を席巻して行く。
「部長、あの竜巻……巻き込まれたら、ひとたまりも有りませんわ……‼︎」
巻き上げられた大地の他にも地獄の拷問具や鍋、剣山の残片が巻き込まれている。引き寄せられたらそれらにより八つ裂きにされかねない。
「……もう、どうして何時もこうなるのよ⁉︎ 誰が何をしているって言うのよ、もう‼︎ こうなれば仕方ないわ、上空からイッセーを探すわ‼︎」
地獄の上空で裸の悪魔が空を飛んでいる光景……見るに堪えない状況だが、リアスは切羽詰まりこの様な行動を引き起こすに至った。
「……流石にこの状況で飛び回るのは関心しませんわよ、リアス……」
「歩く場所がもう無いからよ‼︎」
見やれば周辺の大地は溶岩と大差ない程に流動化し煙を上げている。この大地に踏み込めば火傷を通り越して融解する事だろう。朱乃も諦めて翼を広げる。子猫はまだ飛べない為に朱乃が抱えて飛び上がり上空から探す事に。
「……まさかと思うけど、あのドロドロになった地面に融かされて居ないわよね……?」
「地獄では亡者は幾ら死のうともすぐさま甦ります。そして再び責め苦を味わうのですわ。故に地獄に堕とされたイッセー君は死んでも直ぐに甦ります。その点は心配は無いと思いたいですわね……」
熱風の荒狂う上空を飛ぶ。恐らく誰かに見られる光景だが、背に腹は代えられぬ。荒れる空の最中、一角にて一際強い業火が荒狂う地域が見えた。業火と劫焰が混ざり合い凡ゆるモノを融解させ竜巻や火災、火柱が濫立して破壊して行く光景が……‼︎
「な、何ですか、アレは……⁉︎」
「地獄の異常気温はアレが原因なのでしょうか……? 大気が異常な熱さになって居るのが目で見て分かりますわ……近付くのは危険ですわね」
「異常な地獄の中でも一際、異常よ……‼︎ 全く日本ってのは、神々とかも異常なのに、こんな所まで異常なの⁉︎」
狐花の問答無用っぷりの鏖殺思考。八咫烏の理不尽な言動。獄卒の少女の無慈悲な宣告、黒龍を従えた少女の首への執着心……。この短期間で見せ付けられた日本神話に関係する面々の常識を疑う光景にリアスは辟易した。日本と言う国は悪魔にとって環境柄、居心地が良い国だと思われていた。天使達の影響が少なく日本神話は弱小なので幅を効かせ易い。
そう思われていたが、蓋を開ければリアスが見て来た日本神話は非常に好戦的な思想の連中ばかり……敵味方も関係ないと言わんばかり……。話も殆ど通じないと言う有様であった(と言うか殆ど自業自得である事に気付いて居ないのだが……)。
「……部長、彼処に亡者の集団が見えます」
「何処⁉︎ イッセーは居る⁉︎」
小猫が指示す方向には融解する大地から逃れようとして人が数十人しか乗れなさそうな岩に群がる亡者の集団を見つけた。その周囲は煙を出しながら融解し流動化しつつある大地、宛ら押し寄せる溶岩から逃れようとその小島に逃げ込もうとしている。周りの亡者を押し退け、自分は助かろうとしている光景は文学史に残る『蜘蛛の糸』を彷彿させる。
「ぶ、部長ぉぉぉ……‼︎」
「あ、居ました。先輩です」
その亡者の集団を押し退けて居る亡者の中に地獄に堕とされた一誠が紛れて居た。リアス達の姿を見て希望が見えたのか精一杯の声で叫んでいる。リアスも一誠の姿が見えた事に安堵してすぐ様飛んでいく。だが、周りには一誠と同じく地獄に堕ちて尚も助かろうとする亡者が群れている。
「退きなさい‼︎ 私のイッセーに近寄るんじゃないわよ‼︎」
リアスは『滅びの魔力』を数回放ち、周辺に群がる亡者を消し飛ばした。風圧に煽られた他の亡者は吹き飛ばされて流動化した大地に落ちて身体が焼け爛れ融け行く熱さに悶え苦しんでいく。
「イッセー‼︎ 無事、じゃないわよね」
「部長ォォォ‼︎ 助かりましたァァァァ‼︎ 俺、部長にもう会えないのかと‼︎」
一誠は褌一丁の姿となっていた。地獄に堕とされた彼は獄卒から手荒い歓迎と言う拷問に晒されていた。その折にリアスと再会して一誠は歓喜(ついでに裸のリアスなので顔がニヤけている)したのだ。
「その話は後。今は直ぐにこの地獄から脱出するわよ‼︎ 後で慰めてあげるから我慢しなさい」
「はいっ‼︎」
一誠はリアスの手を取り飛び上がる。大地は何処を見ても溶岩と大差ない程に流動化しており、踏み入る場は無い。
「朱乃先輩に小猫ちゃん‼︎ もう会えないかと思ったぜ、地獄はもう懲り懲りだ‼︎」
「……もうコレは確実に日本神話から今以上に目を付けられますわね。リアス……コレまで以上の危険に晒される事になりますわよ?」
地獄に堕ちた死者を現世に連れ戻す。地獄に突入前に朱乃が言おうとした事を今更ながら言葉にする。あの時はソーナの闖入により流されて言う暇が無かったが、今更ながらであっても伝えねばなるまい。甦りの代償と言うのは相応なる対価となってのしかかる。
「……でも、ビザが」
「ビザは免罪符になり得ませんわ。一応、言っておきますわ、イッセー君を助けたい想いは理解しますし私も、助けたいと思いますわ。でも、その対価にリアス、貴方の危険を天秤に掛ける事になりますわ。地獄の諦めの悪さは筋金入り……恐らく今後は日本神話だけでなく地獄からも追手が来ますわ」
暗に『一誠は諦めろ』と言っている様にも聞こえた。その言葉にリアスは不服と見做す。
「来るなら撃退すれば良いわ。その為にも私達は今よりももっと強くなれば良い、それに眷属も増やさないと行けないわ。余りにも人数が足りない。私の夢の為にも強くならなきゃ行けないわ」
朱乃はその言葉に不安が生まれる。仮にあの時の獄卒の少女が現れたどうする? 一瞬で一誠は地獄へ逆戻りだ。それ以前に、地獄に堕ちた死者を現世に連れ戻す行為は本当に可能と言えるのか?その辺りの不安も生まれる。
そう考える最中、自分達が地獄へと突入した地点へと戻って来た、此処を潜れば地獄の外に——。
「ご都合主義だと、思ってた〜? 簡単に〜、物事が進むなんて〜……漫画の話だけだよ〜?」
その場所を封鎖する様にチセが鬼火を従えて待っていた。