雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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蘇生の対価

 

 

 その頃、狐花はと言うと……。

 

 

 

 

「……むぅ」

 

 融解した地獄の大地。赫と言う名の大地、触れるモノ全てを赤熱化させ形を崩して融かして変質させる不毛の大地。その元凶と対峙する狐花。

 

——勝てる気がしないのは分かっては居たけど、此処まで圧倒的とは……むぅ。

 

 喧嘩を売ったのは良いが、明らかに力負けしていた。正直な所、冷やそうが焼石に水もよい所。此方の攻撃は全く効いていない。そもそも劫末を齎す劫焰に対して炎で挑むのは土台無理な話。炎が焰に焼かれると言う意味が分からない光景が幾度にも無く発生していた。

 

「どうした?終いか?」

 

 相対する存在、和奏は表情が読めぬ顔、赫い双眸で攻め手が欠ける狐花を見やる。

 

「……万策尽きたから逃げる。一応、収穫はあったし」

 

 狐花はそう告げるや否や、炎の爆ぜる勢いを利用して(体重が軽いと言う欠点も利用し)後方に自身を吹き飛ばせると言う鮮やかな転進を図り速やかに和奏の眼前から敗走した。その様子を見て和奏は特に追撃を仕掛ける事はしなかった。

 

「……あの神楽鈴め。様子を窺う真似しかして来なかったな。ふむ、或いは動きを見やるのが目的であったか。何、久方振りに面白い奴であったであろう? 越えんとする者を見るのは良い事だ。ただの時間の無駄だ、軻遇突智。そうは言うな、和奏。何故?一芸は多芸に勝る……誇れ」

 

 一つの肉体の中にある二つの精神と人格が交互に喋っている。和奏と呼ばれる人間の口が全く異なる口調で言葉にしている。独り言であっても独り言にはならない。

 

「転生悪魔も悪魔も何方でも構わん。構え、元は人の子ぞ。知るかそんな事、同じ事だ。己から変ずるならば是非も無い。愚かな奴には理解は出来ん。狙うならば純血にしておけ。純血も混血も何方も同じ事だ。元より純血なぞ有っても無い様なモノだ。時が経てば然るであろうが、悪魔の種族は早々ならん。汝なら見分けるも容易かろう。莫迦を申せ、誰だと思っている?クソガキだ。言ってくれるじゃないか、ならガキの一つ覚えでも行こうか?ほう?例の搾り粕を求めて駱駝が逃げようとしている。ほう、この辺鄙で退屈な所に参ずるとは殊勝な事……地獄も飽いた。良いだろう、久方振りに姫舞やウィキッドの面を拝んでやるとするか。何処に居るかは知らぬがな。ふん、悪魔共が騒げば自ずと現れよう……」

 

 仲良しである。そして和奏は周囲を燼滅させながら移動を開始した。世界を滅ぼしかねない劫焰を纏うその姿、正しく劫末を招きかねない。

 

「寝ている間に随分と騒がしくなった様だな。良い、退屈よりはマシであろう? ふん、連中に終焉をくれてやる。その牛の耳を砕いてくれる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご都合主義だと、思ってた〜? 簡単に〜、物事が進むなんて〜……漫画の話だけだよ〜?」

 

 リアス達の退き口を封鎖するが如くチセが多数の鬼火を従えて立ち塞がる。退路は塞がれたリアス達、かく言う地獄の環境故に精神的、肉体的にも疲弊している。

 

「くっ、こんな時に……‼︎」

 

「勝つ事よりも負け戦の退き方が1番、難しいの〜。さて、どうする?」

 

 リアス達は一誠を救う為に来たが、帰還出来ず全員が死ねば全く以って意味が無い。そもそも相手は本人かどうかさえ疑わしい(冥界で現れたのは鬼火で模られた虚像)。

 

「一応、言うけど〜。兵藤一誠を置いてけば〜、一応……異邦の貴方達は見逃すけど〜? 生者を縫い止める律は地獄には無いし〜?」

 

 要は『一誠を捨てれば通って構わない』と言っているのである。あくまで一誠のみ優先。悪魔と雖も、死者では無いリアス達を引き止める理由は無い。所業は看過出来ぬがそれを裁くのは日本の地獄の閻魔大王では無い。リアス達の所業に関して最終的な決を下すのはハデスである。故に日本の地獄側からその事に関して指摘する理由は無い。

 

「イッセーを見捨てるなんて、そんな真似は出来ないわ‼︎ 其処を退きなさい、日本の妖怪‼︎」

 

 リアスは疲弊する身体を鞭打ち滅びの魔力を瞬時に形成して放つ。対するチセは袖から護符を緩慢な口調から予測出来ぬ手早さで取り出し放つ。その護符は五芒星の印を結び結界の障壁と成して易々と遮断した。

 

「な、は、弾かれた⁉︎」

 

 滅びの魔力を容易く防がれた事にリアスは驚愕する。滅びの魔力は文字通り滅ぼす魔力……それは障壁や結界も例外では無い。

 

「う〜ん。威力不足かな〜?」

 

「クソ‼︎ こんな所で足止め喰らってる余裕は無ぇんだよ⁉︎ 可愛いし胸も慎ましいけど‼︎ ブーステッド・ギアァァァァァァァァ‼︎」

 

 褌一丁の一誠が自身に宿る神器を顕現させ、突撃を試みる。自身の力を高める神器。物理的な力で結界の耐久性を上回れば打ち破る事も不可能では無い。

 

「朱乃‼︎ イッセーに合わせて雷撃を‼︎ 小猫はイッセーと一緒に殴り付けて‼︎」

 

「……分かりましたわ」

 

「はい‼︎」

 

 朱乃も説得は諦めた。恐らく此処まで来れば遅かれ早かれとなる。この先、日本神話の苛烈な妨害が予見出来るであろう。覚悟を決める時、と言える。

 

「うぉらぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」

 

 一誠と朱乃、そして小猫の共同攻撃。その一撃でチセが貼った結果が打ち砕かれ、チセ本人にも攻撃が直撃。しかしながら、鬼火の群となって又しても本人では無かった事が判明する。

 

「また、偽物……‼︎」

 

『あの程度の結界なら大丈夫と思っていたけど〜……油断したかな〜?』

 

 現れたチセは偽物。偽物程度の力で事足りると思われていた様だ。舐められていると言う事実にリアスは眉を顰める。

 

『……死した者を蘇生する行い。必ず貴方は後悔する事になるよ〜』

 

 鬼火を通じて告げるチセの言葉。口調は何時も通り間延びしては居るが、何処か達観した様な声音であった。

 

「どう言う意味……?死んだ人を蘇らせて何が悪いと言うのよ⁉︎」

 

『似た様な話に直江山城守は閻魔大王に手紙を書いた事があったっけ〜? 死せる運命、覆す事は大きな歪みを招く……君だけの問題じゃなくなるよ〜?』

 

「う、五月蝿ぇ‼︎ 俺は美少女美女、おっぱい盛り沢山ハーレムをする為に地獄に滞在する気は無いし死ぬ気も無ぇぇ‼︎‼︎」

 

 一誠の夢はハーレムを築く事。然も脂肪の塊に対する欲望は人並み以上に外れている。正に情欲の悪魔と言えるだろう。

 

『素直に地獄で悔いればまだ来世に希望が出来たと言うのに……愚かだね。恐らく君は地獄から追放されるね……もう、赦される事は無い。この意味が分かるなら、地獄に帰った方が良いよ』

 

「地獄から追放?じゃあ、もう地獄に来なくて良いって意味だろ⁉︎ こんな所、寧ろ2度と来たく無ぇよ‼︎」

 

 『地獄から追放』。その意味を一誠は履き違える。いや、大半の亡者はそう受け取る事だろう……その意味を正しく理解出来たのは現状に於いて狐花だけである。彼女だけその意味を理解した。

 

『……さようなら。後は魔王様にお願いするよ〜』

 

「魔王様?どう言う事? まさか、日本神話と」

 

『君達の魔王じゃないよ〜? 日本にも『魔王』と呼ばれるお方が居るから〜……手加減はしてくれないよ〜? だって……現実を破壊しちゃうから』

 

 鬼火はそう言い残すと消え去った。コレでリアス達を阻む者は消えた。

 

「……意味深な言葉を残して言ったわね。まぁ、良いわ……皆、早く地獄から逃げるわよ‼︎ 私の可愛いイッセー……良く耐えたわね……」

 

「は、はい‼︎ 部長‼︎ 助けてくれて有り難う御座います‼︎」

 

 リアスは一誠を救出出来てご満悦。妨害者の存在は肩透かしではあったが気にする事を忘れた。地獄を抜けた先には現実がある。リアスにはまだまだやらなければならない事が山積みだ。

 

「……大きな寄り道をしてしまったわ。ライザーとのレーティング・ゲームが控えているのに、この時間の浪費は痛いわね」

 

 そう、その前にはリアスとライザーの結婚を懸けた、レーティング・ゲームが控えているのだ。戦力差は歴然であり、修行に掛けねばならない日数は今回の地獄の一件でその大半が失われてしまった。残された時間は把握し切れて居ないが少ない。その僅かな時間で対応しなければならない……ただでさえ、祐斗が欠けている今……より厳しい状況の戦いとなる。

 

「すみません……」

 

「イッセーが謝る事じゃないわ。コレも何もかも全て、日本神話の横槍が原因よ。その横槍が無ければもっと上手く行けた筈なのよ……‼︎」

 

 黒龍の少女、獄卒の少女。リアスを妨害する者達の殆どが日本神話に関連性を匂わせる者達ばかり……此処まで行けば結託して居るんじゃないかと思わせてくる。

 

「兎に角、今は部室に戻って改めて作戦会議よ……残り日数で対抗出来るだけの力を付けないと」

 

 リアス達は地獄から脱出し、無事に駒王学園の旧校舎にある部室に帰還した。が、地獄の最中で素っ裸になってしまったので先ずはシャワーからの着替えから始まったのであった。

 

「ふぅ……熱過ぎるのも考えモノね……」

 

 シャワーを浴びて予備の制服に着替えたリアス。朱乃も小猫もシャワーを浴びて来て予備の制服に着替えて部室に戻って来て居る。一誠に至っては最後に回されて今、シャワーを浴びてある状態だ。

 

「汗だくになりましたから……まだ身体が熱いです……」

 

「…………日付はどうなって居るのでしょうか? 時間の流れが違うと思いますので数日は経過していると」

 

 その時、部室の床に魔法陣が展開される。其処に広がるのはグレモリー家の紋章、赤い光と共にグレモリー家に仕え、魔王『ルシファー』の女王であるグレイフィアが現れた。だが、その表情はやや硬い。

 

「グレイフィア……‼︎」

 

「リアスお嬢様。眷属の方々はお揃いですか?」

 

「……祐斗は入院中。イッセーは今、シャワーを浴びせて居るわ」

 

「成程。まぁ、良いでしょう……お伝えせねばならない事がありますので、手短に致します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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