「……祐斗は入院中。イッセーは今、シャワーを浴びせて居るわ」
「成程。まぁ、良いでしょう……お伝えせねばならない事がありますので、手短に致します」
グレイフィアは咳払いしてリアスに告げる事を告げる。
「リアスお嬢様とライザー・フェニックス様のレーティング・ゲームの件ですがフェニックス家から婚約破棄の通達がありました。即ち両者の婚約は破談となりました」
ライザーはソーナの報告と資料を照らし合わせ結婚し両者の繋がりが強くなった時の利害を考慮した上で自身の両親とリアスの成果を交えて話し合った結果。此の儘、結婚した場合、『自身の領地にみすみすはぐれ悪魔や堕天使を跋扈させる。然も後始末を他者に丸投げ状態』、『然るべき行動を起こさずに厄災を誘致する』、『外交問題を引き起こしかねない』、『約束を守れない(良くも悪くも『約束事』の不実行は悪魔としては致命的過ぎる)』とその他の諸々の理由が積み重なり、フェニックス家としては汚点となると判断が下された。
貴族として無能と言うのは大変な恥でしか無く、同類に見られれば実家にも恥をかかせる事となる。故に大きな恥を受けるならば最小限に抑えるとの理由で婚約破棄に踏み切ったのであった。無論、傷は被るであろうがグレモリー家よりは比較的マシである。
「それじゃあ、結婚しなくて良いのね⁉︎」
ライザー自身からの婚約破棄。その事にリアスは喜びの声が上がる。しかしグレイフィアの表情は硬いままである。
「御言葉ですがリアスお嬢様。本日は何日かご存じでしょうか?」
「え?」
「……レーティング・ゲームの
「ッ‼︎」
リアスは最悪はレーティング・ゲームの前日だと考えて居たが実際は過ぎた後であった。今回の一件はお家同士の揉め合いの末のゲームでありその他の第三者には伝わっていないのが幸いであったが……。
「……少なくともリアスお嬢様の評価に直結する事を覚悟なさって下さい。奥方にもこの件は報告してあります。最悪の場合は……本家にお戻りになられて一から鍛え直すとの仰せです」
その言葉にリアスは冷や汗を流した。レーティング・ゲームは今や、悪魔にとっては貴族の格柄に直結している。レーティング・ゲームの活躍により昇格があるか無いかに響いて来る。
「サーゼクス様は……何も言っていませんが、あの人は貴方に甘いですが……貴方の行動がサーゼクス様にも泥を塗りかねない事も自覚なさる様に努めなさい」
更には自身の兄であり魔王であるサーゼクスにも影響が出る事を通告される。実兄でありサーゼクスの評判にも繋がるのである。
「……では、通達事項は以上となりますのでコレにて失礼致します」
グレイフィアは通達するだけ通達し魔法陣を介して冥界へと帰って行った。こうして、リアス・グレモリーとライザー・フェニックスの結婚騒動は双方の家に少なくない傷跡を残す結果として幕を降ろす事となった。確かに両家共に恥を塗る行為となった。
ライザーは婚約破棄を通告したが、その理由は納得出来る内容が多数占めており損得勘定を考慮しても当然の感情を多く占めていた。故にライザー本人の評価は然程、変動はしなかった。寧ろ外交担当の魔王からは
『変則的ではあったが外交担当として、有意義な情報を齎してくれた』
直々の謝礼が送られていた。図らずもライザーの行動は魔王レヴィアタンからお褒めの言葉を賜っていたのだ。
対するリアスは前述の婚約破棄の内容により評価を下げる事となった。この為、次期当主として問題があるのでは無いかと言う噂が発生する様になったと言う……。
「いまー……」
同時刻。皓咲屋敷では、五七とベンニーアの数時間後に狐花が帰宅した。『神煉具』相手に交戦は出来ないとして、逃亡を図った。幸いにも五体満足で帰って来る事が出来た。普通ならば四肢の何処かを喪っても可笑しくない相手と言えるが、退き際を弁えていたのが幸を成した。
『全く、狐花。何処行っとったねん。つーか、風呂行って来い‼︎ 風呂ッ‼︎』
取り敢えず五七は狐花の襟首を掴んで持ち上げ、大浴場に放り込んだ。本当に洗濯機に放り込む感覚で湯船に沈めた。が、体重が軽、過ぎる所為か直ぐに浮かんだ。
『……フツーに浮かんどるな』
「むにー……沈まないの」
『風呂は死海や無いぞ……で、何しとったんや?』
「……神煉具に喧嘩を売りに行った。で、歯が立たなかったから逃げた」
『説明、雑ッ⁉︎ また、何でそんな真似したんや……』
「……修行。教えてと言っても、教えてくれないだろうから……目で見て盗む事にした」
『また何ちゅー無茶を……然も神煉具相手にそんは真似、やろうと思うな。トンデモなバケモンやって話やろ?』
「天魔様よりマシだと思うけど……?」
『アレは公式バグキャラやから、比べるの事自体可笑しいと思うのは俺様だけやと思うんやけど……』
「公式バグキャラ?」
『何でも無いわい』
意味が伝わらなかったので五七は普通に流した。その時、恐介が大浴場に飛び込んで来る。
『お嬢、お戻りになられましたか』
「んー、何ー?何かあったのー?」
『ええ、件の悪魔共ですが……どうやら何らかの形で『ビザ』を取得した様です』
「ふーん……どうでも良い」
『でしょうね』
『やろな』
狐花の反応に五七と恐介は分かりきった反応だと納得する。ビザが有ろうが無かろうが狐花は関係なく襲い抹殺しに掛かる事だろう。『ビザ』の存在は狐花相手には全く効果が無いのだ。
「ビザ諸共、灼き尽くしてしまえば問題ない。いや、ビザを先に焚けば……下らぬ無窮の戯言に成り下がる」
『理由』を滅ぼせば守るモノは消え失せる。無くなれば、弁護も擁護も無くなるのだ。最もそんな真似をするくらいならばさっさと焼いてしまえば良いのは言うまでも無い。
『……して、お嬢。お嬢が留守の間に『裏幕府』から使者が来ておりまして……何でも宴会のお誘いがある様です』
「んー、えんかい〜?」
『ほー、何やエラい気前ええやん。何かあったんかね? つーか、裏幕府の連中って、ほら……飲兵衛とかアル中とか多いやろ。大丈夫なんか?とても子供には見せられへん光景が出てきそうなんやけど……』
裏幕府のお酒事情は色々な意味でエラい事になっているのは日本神話陣営では非常に有名。酒絡みで問題を起こす事も茶飯事で酷い時には乱闘に発展する。軍艦の付喪神の乱闘はもはや戦争レベルであり、元々は戦闘民族の軍艦……やっぱり戦闘民族と言っても過言では無いし頭が可笑しい連中製の軍艦が元の付喪神も居るので、やっぱりカオスも良い所である。
「んー、行くー……」
『では、その様に伝えて置きますね』
『なーんか、嫌な予感しかせぇへんのやけど……彼処、イカれトンチキの巣窟やろ。日本神話も人の事言えんやろうけどよ……』