雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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四章
裏幕府へ


 

 

 『裏幕府』からの宴会の招待状が届いた。五七は裏幕府の酒事情が爛れている事を理由に訝しむが狐花は普通に受けた。嫌な予感しかしない。が、今回は恐介が随伴する事になった。そして同伴者はもう1人……。

 

「まさか、ビザの更新日と重なるとは思っても居なかったっスよ」

 

『まあ、そう言う時もありましょう』

 

 ベンニーアであった。と言うのもビザの更新日と丁度、重なって居たのである。道案内も兼ねて恐らく途中までにはなりそうではあるのだが、同行する事となった。

 して、皓咲城の前方に広がるは日本国土の地下に存在する地下水源。この皓咲城前の地下水源の其処を通れば東には裏幕府、西に行けば裏京都に辿り着く。

 

「ん、舟で行く」

 

「あのー、まさかと思うっすけど……アレで行くんスか?」

 

 岸辺には桟橋が設けられており、其処には複数艘の小船が接岸している。どう考えても手漕ぎのボートである。

 

「んにー、その名もエリちゃん級6番艦『エリちゃん6号』‼︎」

 

「いやいやいや、そのネーミングセンスは幾ら何でもどうかと思わないっスか⁉︎ と言うか此処から裏幕府までの距離とかは⁉︎」

 

『問題ありません。狐花様が居られればモノの数分で到着しますよ』

 

「……何と言うか凄く嫌な予感がするっスよ」

 

 見る限り何の変哲も無い至って普通の手漕ぎボート。死神が乗れば三途の川の渡し船、或いはカロンにも見えなくも無い。

 

「んにー、行かないの?更新しないと、抹殺だよ」

 

「いや、行くっス行くっス‼︎ と言うか狐花様が言うとシャレになんないっスよ⁉︎」

 

 更新しなければ狐花に惨殺死体で帰る羽目になる(寧ろ骨すら残っているか怪しく思える)。狐花は見た目は幼女だが悪魔よりも恐ろしい人格なので、ベンニーアは末恐ろしいと思えた。狐花(恐介は相変わらず頭の上に乗っかっている)が先に乗っているので、ベンニーアが最後である。そして、船尾から岸辺に手を付けて押し出す。

 

「所で櫂は何方に?」

 

『あ、ベンニーアのお嬢さん。舟にしっかり掴まってて下さい。掴まって居ないと、振り落とされますよ?』

 

「え、それはどう言う……⁉︎」

 

 恐介の言葉にベンニーアは理由を尋ねようとしたが、狐花は船尾の後方に視線を向けて居る。だけなら良かった……その傍らには紅炎の炎の塊が2つ形成されている。嫌な予感がする……。

 

「えーと、凄く嫌な予感がするんスけど……?」

 

 その予感は当たってしまう事になる。風船の様に膨らんだ炎の塊が突如として爆ぜその爆轟の勢いで狐花達を乗せた小舟は前方へぶっ飛んだ。

 

「うぎゃぁぁぁぁぁ‼︎⁉︎」

 

 小舟自体、軽い部類に入るので爆発の衝撃で軽く吹き飛ぶ。一瞬で最高速に急加速する爆発加速。その後は水切りの要領で跳ねる事、数回。そして失速すればもう一度、後方で爆ぜさせて吹き飛ぶ事を繰り返して前へ前へと跳んで行く。

 

「ちょちょちょ⁉︎ 舟の動かし方、思いっきり間違えて居るっスよ⁉︎ こんなの舟の動かし方じゃないっス‼︎ と言うかこんな暗い地下水源の洞窟でこんな無茶苦茶な航海方法はどう考えてもいつの日かは衝突事故を起こすっスよ⁉︎」

 

『お嬢には常識はありませんからね。後、6号なので5号以前は轟沈しています』

 

「いつの話っスか、ソレ⁉︎」

 

『えーと、お嬢が裏幕府預かりだった頃の話ですね。大破が多かったそうですね……何せ英国面の塊ですので』

 

「英国面って何スか⁉︎ 響き的に嫌な予感しか無いんスけど⁉︎」

 

 ベンニーアのツッコミは爆轟と消えて狐花には届かない。そのツッコミに対して恐介は今更感たっぷりな返答を返す他無かった。

 

「兎も角、狐花様は取り敢えず常識的な意味の教育を受けた方が良いっスよォォォォォォォ‼︎‼︎」

 

 そんな悲痛な叫び声と共に絶叫コースターに匹敵する乗り物に乗せられたベンニーアは繰り返す爆轟の急加速に悲鳴を上げる事しか出来ずに居た。因みに狐花は普通に楽しそうである。

 

 そして失速と急加速を繰り返して爆走するエリちゃん6号……そして、前方に灯りが見えて来る。

 

「あ、な、何か見えて来たっスよ⁉︎」

 

 皓咲屋敷の地下に皓咲城がある様な光景が広がっていた。その広大に広がる地下空間に見えるのは地下空間を明るく照らす橙色の提灯の数々に照らされた皓咲城に勝るとも劣らない和風の城塞が鎮座している。が、その城塞の敷地内その四方にはピサの斜塔、エッフェル塔、ケルン大聖堂、エカテリーナ宮殿(90度傾け)に似た建築物が豪快にブッ刺さっており、それら城塞の天守閣を含めて支点にしてその上にルネッサンス式の建物が乗っかっていると言う、何か色々とカオスさを通り越して狂気の産物にしか見えない建物が堂々と聳え立っていた。

 言葉にするなら『ピサエッフェケルンテリーナバッキンガ江戸城』……もう、城と呼んで良いのか……或いは文化遺産に堂々と喧嘩を売りまくってて申し訳ない気持ちで一杯になる建築物であった。

 

「…………アレ、色々と色んな所から文句のオンパレードになりかねないと思うんスけど」

 

『当人達に言ってください……』

 

 ベンニーアは最早、申し訳なささが押し出ており恐介も、遠い目をしている。少なくとも以前見た時は日本建築の和式城塞(一言で言えば江戸城)同然の城塞であったのに一体、何が有ればこうなるのだろうか?

 

「あれ? コレ……どうやって停泊するスか?おーい、狐花様ー?」

 

 狐花、爆轟のやり過ぎによりベンニーアの静止の声は届かない‼︎

 

「って、此の儘だと乗り上げた挙句、ぶつかって大破するっスよォォォォ⁉︎」

 

 ベンニーアの悲鳴は虚しく狐花はやたらめったらと爆走体制で加速。そして、海面を飛び越えて(以下略)城前の港の停泊地点を飛び越える。

 

「え? ちょ、待てェェェ‼︎ ごほォォォ⁉︎‼︎」

 

 見事に飛び越えて岸辺に乗り上げ(ついでに何か轢いた)跳ねながら滑走して搬入倉庫の壁面に側面から激突して漸く止まった。

 

「着いたんにー‼︎」

 

「……な、何と言うかつい先程、誰か轢いた気がするんスけど」

 

『地下水源に捨てて置きましょう。何、どうせ鮫に喰われて隠滅出来ますので』

 

「…………」

 

 あんまりな対応にベンニーアはツッコむ気力は失せてしまったのであった。

 

 

 




 トンチキ建築物降臨(どうしてこうなった)。
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