「着いたんにー」
「……な、何と言うかつい先程、誰か轢いた気がするんスけど」
『地下水源に捨てて置きましょう。何、どうせ鮫に喰われて隠滅出来ますので』
「…………」
あんまりな対応にベンニーアはツッコむ気力は失せてしまった。人をボートで轢いた上に海没させて証拠隠滅と言う余りにもあんまりな対応の仕方。死神が言うのもアレではあるが、中々酷いやり方であった。
「も、もし此処の方だったらどうするんスか⁉︎」
「んー、無い無い。だって、エリちゃん6号の方が砕け散るもん。相手は軍艦だし。エリちゃん2号と4号はラムって轟沈しちゃったし……」
ラムとは衝角の事。海戦での最大の決め手はこのラムを直接、ブッ刺す行為だったと言われる。早い話が頭突きである。無論、敢行した方も無事では済まないのだが……。
「そ、そうなんスか……?」
『付喪神は元になる存在の特性を当然ながら受け継ぎます。見た目こそは人間と大差無いですが中身は正しくその通りなのです。故に付喪神は見た目で判断すると痛い目を見る事になるのです』
「な、成程……」
「取り敢えず、其処の愚物を捨てないと……後でシェフィールドに怒られるぅ……‼︎」
狐花は先程、轢いた物体を見てそう言葉を溢す。シェフィールドと言う付喪神を恐れている様にも見える。
『と言うよりもコレは何でしょうか?成人男性だと思われますが』
その物体は頭部から血を流している様だ。黒い髪に金色の髪のプリン頭。黒いジャケットを羽織っているのが分かる。
「ていっ」
身元確認せずに狐花はその転がっている物体を蹴り飛ばして地下水源の海面に突き落とした。怪我人相手に容赦が無い……。
「うぉぉぉぉ‼︎⁉︎ 何だ何だ⁉︎ って、鮫が居るんだァァァァ‼︎⁉︎ つか、ヤベェぇぇ⁉︎」
その直後、水飛沫の音が響き、鮫相手に格闘するプリン頭。殴り蹴りで応戦し更には光る槍が見えて海中で炸裂し大量の水飛沫が雨となって周囲に降り注いだ。
「ハァハァ……一体、何があったって言うんだよ……⁉︎」
その後、港の岸に縁に手を掛けて海中から這い上がるプリン頭。顔付きは20代前後、顎鬚を蓄えたワルメン見たいな男性であった。
「ったく、いきなりにも程があるってモンだぜ。水も滴る良い男とは言うがな……ん? お宅ら、此処の裏幕府の連中かい?
眼前に見える狐花達を見てプリン頭の男性は頭を掻きながらそう尋ねる。どうやら、此処が裏幕府だと知っている様だ。
「うわぁ、こんな所で堕天使の総督と遭遇とかツイて無いっスねぇ」
「誰?」
「……お? 其方の嬢ちゃんは……オリュンポスの死神か?」
如何やらベンニーアは目の前のプリン頭を知っている様である。そしてプリン頭もベンニーアの出身に気付いたらしい。
「……どーも、こんな辺鄙な所で堕天使の総督であるアザゼルと遭遇とか、最悪な気分っス。ハデス様ならそう言いそうっスね」
「ケッ。あの爺さんの悪魔嫌いと同列か……部下にまで信用されて無いのかよ、俺は。そーだよ、俺はアザゼルだ」
「良し、死ね」
プリン頭がそう名乗った直後、狐花は予想通りの台詞と共にプリン頭の居た場所が凄まじい爆炎と爆轟に包まれた。狐花が右手に業火で形成されたボーイズ対戦車ライフルを構えた直後、即ちまだ何もしていない。即ち第三者による攻撃である。
「お下がり下さい、お嬢様。速やかに賞味期限切れの害虫を駆除致しますので、後……アドミラル・ヒッパー様は即座に消えてください。素直に邪魔な上に視界の邪魔ですし、陛下の視界が穢れますのでとっとと自沈して下さい」
「フフ、何を言うか。我らが可愛い天使の危機だ。天使に這い寄る愚物を誅する為に馳せ参じるのは私にとっては当然の事だ」
その時、狐花達の視界の上から2人の付喪神が降り立った。片方はメイド服、もう片方は軍服ワンピースを身に纏った高校生くらいの少女であった。2人とも軍艦の艤装を展開しており、否応なく2人とも軍艦の付喪神である事を証明している。
「あ、シェフィールドにヒッパー」
「……基地外部で爆轟が聞こえたと思えば、害虫が騒いでいた様ですね。速やかに処理しますので暫しお待ちを」
メイド服を着たシェフィールドと言う付喪神は瀟洒な態度で狐花達に下がる様に進言する。
「久しいな、可愛い天使よ。安心しろ、私が目の前の愚物を片付けてやろう。何、変態犯罪者のアーク・ロイヤルが来る前に終わらせてやる」
「……貴方も充分、ロリコンの変態です。今後ともに陛下の視界に入らないで下さい」
軍服ワンピースのアドミラル・ヒッパーは威風堂々とした佇まいでそう宣言するがシェフィールドからそう突っ込まれる。
「おいおい……マジかよ。いきなり攻撃仕掛けて来るとか、気は確かか……。いや、噂通りの手荒い歓迎だぜ……って、のぉ⁉︎」
爆撃された箇所は黒煙を上げており、その場所から咄嗟に回避し黒い翼を広げたプリン頭は呆れながらも近くに降り立つ、がその直後にも再び砲撃が叩き込まれる。
「お、おい。待て⁉︎ 俺はお前らと敵対する気は」
「禿げろ。プリン頭」
回避したアザゼルは敵対の意志は無いと伝えようとするも今度は狐花の持つ炎上ホーンズ代物ライフルの銃口に赫黒い量子が集まった直後、艦砲射撃以上の轟音と共に業焔の奔流が放たれた。それは限界まで沈静化していた火山が突如として爆発的な噴火を圧縮した暴力的な熱量の奔流がアザゼルの真横を通り過ぎ、遥か遠くの海面付近で大爆発し赫い残光と共に明るくなり原子爆弾が爆発したかの様な巨大なキノコ雲(天井に直ぐに達して眼前に雲の柱にしか見えない)が形成された。
『「「「………………」」」』
その光景を見たアザゼルやベンニーアは口をあんぐりと開けて茫然としていた。あの光景は主神クラスが扱う技の破壊力に匹敵する。
『お、お嬢……?それは……?』
「軻遇突智のやり方を真似た。事前に作ってた奴だから使い切り……」
そう告げるとその炎上ホーンズ代物ライフルは燃え尽きた様に消え去った。1発限りの銃弾……直ぐに撃てるが用意するに手間が掛かるコスト面は最悪と言う思い付きたての霊術であった。事前に用意する為にその場での詠唱は要らないメリットもある(やはり詠唱の隙は看過は出来ない為)。
「おいおい……正気の沙汰じゃって、良い加減に攻撃すんの止めろ⁉︎」
「シツコイ汚れですね。良い加減に駆除されて下さい。まだ掃除箇所が残っているので」
「そろそろ幕引きだ」
プリン頭は攻撃を避けつつ敵対の意志は無いと告げるもシェフィールドとアドミラル・ヒッパーは攻撃を止める気は無い。完全に敵と見做している。2人揃って話を聞く気は無い様だ……。
シェフィールド アズールレーン
アドミラル・ヒッパー ブルーオース