「おいおい……正気の沙汰じゃって、良い加減に攻撃すんの止めろ⁉︎」
「シツコイ汚れですね。良い加減に駆除されて下さい。まだ掃除箇所が残っているので」
「そろそろ幕引きだ」
プリン頭は攻撃を避けつつ敵対の意志は無いと告げるもシェフィールドとアドミラル・ヒッパーは攻撃を止める気は無い。完全に敵と見做している。2人揃って話を聞く気は無い様だ……。
「ちったぁ、人の話を聞きやがれよ……‼︎」
2人の付喪神を見てアザゼルは苦虫を噛み潰したような顔でそう苦言する。正直な話、その事の何処に正当性があるのか?
「蜚蠊みたいな堕天使が人を自称するとは、思い上がりも甚だしい……‼︎」
「シェフィールドやら、そろそろ騒ぎを聞き付けて荒武者共が湧いて来るぞ?」
やはり話を聞く気が無い。だが、時間が経てば増援が湧いて来る事は確かである。此処は彼女達にとっての本拠地。懇切丁寧な相手をしてくれる面子の集団では無いのだ。何故ならば軍人であって戦士では無い。相手は軍人の想いの付喪神だからだ。
「ッ⁉︎ なん、んなぁ⁉︎」
轟音が轟き渡る。見やれば頭上には無数の艦載機が飛び交っているのが見えた。最早、群勢と言っても良い程の量であった。
「ちょ、1人相手にやり過ぎだろ、オイ⁉︎」
その直後に多数の爆撃機がアザゼルに対して爆撃を敢行。港は完全に使用不可能なレベルにまで破壊せんとする程の爆轟に包まれる。
「……ち、翔鶴と飛鷹か……‼︎ 他にも瑞鶴やアーク・ロイヤル……赤城や加賀も混ざって居ような」
「……ユニコーン様やハーミーズ様も参加なされて居そうですね」
艦爆の攻撃に巻き込まれては堪らないので、シェフィールドとアドミラル・ヒッパーは狐花とベンニーアを掴んで後方へと退避する。この程度でくたばるのならばそれに越した事は無いのだが、爆撃と言うのは狙いは大雑把。的が小さいと仕留め切れない事がある。粉塵に紛れて正面から奇襲を仕掛けて来る可能性もある。
「……なんと言いますか、凄まじいっスね。容赦ないとも言うっスけど」
「ん、まだマシな部類……」ムキュー
狐花は先程の砲撃を敢行した反動で伸びていた。膨大な量の霊力を凝縮し放つ為、反動も大きくグロッキー状態に陥るリスクも存在していた(本人も今更、知った)。故においそれとは使えない殲滅兵装とも言える(後、周囲の環境の被害関連も考慮すれば尚更で迂闊に使えない)。
「……駆逐艦の子達がラムアタックを仕掛けそうですね」
「む、余り褒められた行動では無いのだが……」
この状況の中、駆逐艦の付喪神が奇襲を仕掛けようと画策しているとシェフィールドは気配で察知する。駆逐艦の付喪神は小柄である事が多いが元が元、衝突事故の衝撃は凄まじく人間がぶつかれば文字通り『轢殺事故』となって肉体は四散する。
「いや、違う……‼︎ 何か居る……‼︎」
「侮蔑。こんな所で油を売るな。閃光と暗黒の龍絶剣総督」
黒煙が晴れた時、其処に居たのはプリン頭のアザゼルだけでは無かった。黒い和風の衣を纏いその周囲に翡翠色に煌めく羽衣の形を成す膜を靡かせた少女が共に立っていた。身体的な身長は狐花と大差ない。根本が黒髪、毛先が白髪のグラデーションがかった髪。頭頂部には同じ様な配色の猫を思わせる耳髪、額には一対の翡翠色に煌めく角が生えている。そして、その双眸は病的なまで赫く狐花と顔立ちが良く似ている。髪型の構造や纏う雰囲気から他人の空似程度ではあるが……。
「う、ウィキッド……‼︎ 悪ぃ助か」
「要求。其の儘此処で朽ちると良い。閃光と暗黒の龍絶剣総督」
「ぐほぉ⁉︎ ナチュラルにトラウマを抉るんじゃねぇ……‼︎」
その言葉はアザゼルに取ってはトラウマになる内容らしいが、ウィキッドと呼ばれた黒衣の少女は容赦なく抉る。
「また愛らしい天使が私の目の前に現れたが……ヤバそうだな。まぁ、可愛いが」
「当たり前の様にロリコン発動させないで下さいませんか?変態。あの少女、爆撃機の攻撃……全部去なしましたね。想像以上の反応速度です」
「Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督?」
『何故、ローマ字表記……?』
「理由。仕事を放り出した閃光と暗黒の龍絶剣総督を抉り捕まえに来た」
「ぐぉ⁉︎ マジで脇腹を刺すんじゃねぇ⁉︎」
ウィキッドは手に持つ日本刀でアザゼルの脇腹を容赦なく突き刺した。本当に容赦が無い。
「不可解。お前の部下になった覚えは無い。お前の所が都合が良いから居るだけ、利害の一致でしか無い」
「だ、だったら……少しはお前さんの『神煉具』を調べさせてくれよ……たったの3種しか存在しないレア中のレアな神器なんだからよ……‼︎」
「閃光と暗黒の龍絶剣総督。死にたくなくば早く戻って仕事しろ……第一、今の汝らが日本神話と和平を結べる筈が無かろう。我が身を顧みれば分かる筈だろう?」
「まぁ、あの様子じゃ無理だな。話にまで行ける気がしねぇよ……後々の事を考えたら無視したくねぇんだけどよ……」
そう愚痴つつアザゼルは転移魔法陣で帰還する。その様子を見たウィキッドは日本刀を足下に突き刺し魔法陣を展開し、後に続く様に消え去った。
「「「…………」」」
「消えました、か。騒がしい事です。二度と来ないで欲しいモノです」
「ふむ。私としてはあの黒い和風の衣を着た天使とお近づきになりたいね。あの憂いを帯びた表情も何とも愛おしい……是非とも近くで見たいモノだ」
次は一誠達の様子から……。