一誠が地獄から帰還した。その日の内にグレイフィアからライザーとのレーティング・ゲームは婚約ごと破談になった事を伝えられた。その事に関してリアスは大いに喜んだが、同時に自身の評価も下落した事も通達された。その時、一誠はシャワーを浴びていて後から伝えられた。本人的にはライザーを直接、ぶっ飛ばしたかったが、リアスが嫌がった結婚は無かった事になった為に一先ず安堵もした。
そしてその翌日……。
「……ッ⁉︎」
「どうした?鳩が豆鉄砲を喰らったかの様なその惚けた面構えは?」
翌朝。リアスの眷属になってから『基礎鍛錬は重要よ』との事で毎朝、ランニング等の鍛錬を行う故に今や早起きが日課になっていた。上級悪魔になって自分のハーレムを作る為に日々努力は必要だ。翌朝になり家の玄関から外に出たその直後、見知ってはいるが会いたくは無い人物が眼前に立っていた。
——な、何でこの教師が俺の家の前に居座っているんだよ⁉︎
駒王学園の教師にして現在進行形で一誠達、変態3人組にとって天敵と化した紫 霧迦教師、その人が腕を組んで仁王立ちしていたのだ。
「早起きな点は殊勝な心掛けだと評しても良い。で、何故俺が此処に居るのか知りたいか?」
——指をポキポキ鳴らすんじゃねぇ⁉︎ つーか、俺は転生悪魔なのに何で腕力で俺を抑え込めるんだ⁉︎ 本当に人間なのか、この教師は⁉︎
「1週間前、言ったよな? お前らの煩悩を根本から粉砕すべく一週間程、寺で共同合宿を行う……と。で、その日にちなんだが……出発日は一昨日だ。なのにお前、何処に行っていた? まぁ、無事が確認出来たから不問にしてやろう」
そう、一誠達3人は覗き行為と言った変質者行動を根本から粉砕するべく寺へ合宿のカリキュラムを紫先生によって組まれていたのである。
「もう一度、言ってやるが公休扱いだからちゃんと出席数には加算されるし、交通費とか宿泊費諸々は俺の方から出してやるから其処の点は気にしなくて良いぞ」
「お、俺……や、やる事が⁉︎」
——い、行きたくない‼︎ 行きたくない‼︎ 地獄の様な環境から抜け出せたのに‼︎ また、地獄の様な環境に逆戻りだなんて嫌だ‼︎
「着替えとか用意して居るか?まぁ、無くとも向こうで貸してくれる用意はしてあるとよ。日にちズレてんだ。ほら、行くぞ兵藤」
頭を掴まれ其の儘、引き摺られる。本当に人間なのかと疑う位であり、転生悪魔で身体能力が人間よりも上な一誠は其の儘、家の前に一時停止して居るワンボックスカーの後部座席に放り込まれ扉を閉められた。
「お、おう。イッセー……‼︎」
「松田、元浜……‼︎」
「あ、朝起きたら目の前に鬼教師が……‼︎ 美少女ならパンチラ拝めたと言うのに……寝起きは最悪だぜ……‼︎」
後部座席には三馬鹿御一行である元浜と松田が乗せられていた、何故か鼻付近に絆創膏やガーゼが貼られている。逃げ出そうと何回も敢行したのだが……。
「紫先生。学園の方には連絡して置きましたのでご心配なく……」
助手席には明日風先生が座っていた。つい先程、学園の方に連絡を入れていた様だ。普段の変態3人組ならば『女性だ、いやっほぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎‼︎』と叫ぶ所ではあり、尚且つ小学生レベルの身長しか無い。逃亡した際、振り切るのは容易い……そう考えていたのだが……。
『痛み無き教育は無意味ですので』
武道の有段者と言う肩書き持ちであった。小柄な体躯でありながら身体能力が高く、あっさり捕まった挙句背中から押し倒され肩付近を蹴り抜かれた(その時、鼻を強打)。ぶっちゃけると紫先生より暴力的である。
「良し、出るぞ。兵藤、シートベルトは締めておけ。後部座席でも締めねえとポリ公五月蝿いからな」
——に、逃げるなら今だ……元浜、松田。悪いけど見捨てるぜ……俺は部長や朱乃さんとキャッキャウフフな展開やまだ見ぬハーレム要員を見つける為にも寺で共同合宿なんてやって居る暇なんて無いんだ‼︎
その時、車の後部窓ガラスの先にリアスの姿が見えた。途端に車が走り出した。
「って、松田。テメェェェェェェェ⁉︎」
「イッセーェェェ‼︎ テメェだけ助かろうだなんてそうは問屋は降ろして堪るかァァ‼︎ お前も道連れだぁ……‼︎ 一緒に地獄を楽しもうぜェェェェ……‼︎」
——ウゼェェェェェ‼︎ 俺は地獄を体験して来たばっかだ‼︎ そもそも俺は寺なんかに行ったら物理的に死ねる‼︎ 死んで堪るかってんだ‼︎ それに男ばっかりむさ苦しい環境に何かに行きたくない‼︎ 俺の青春は美少女おっぱいハーレムって決まっているんだよ‼︎
「紫先生。ぶつけて下さい」
「へいへい」
ドゴォン‼︎ その様な豪快な音が一誠の頭に響いた。車が急に蛇行運転し一誠の頭がドアに激突した音が車内に響いた。
「〜〜〜〜ッ‼︎」
頭の痛みに一誠は抱えて悶絶して居る。その様子を見て被害が出ていない元浜は含み笑いを隠そうともしなかった。
「……明日風先生。コレ、ポリ公見たら確実に切符切られちまいますよ……」
「貴方の免許に点数が付くだけですので問題ありません」
「……俺に取っては問題だらけなんスけど」
明日風先生の理不尽な指示に呆れながらも従った紫先生。バックミラーで騒ぐ変態3人組を見て先が思い遣られると言う心持ちであった。車は街中の車道を抜けて高速道路へと差し掛かり一気に駆け抜けて行く。
「あ、あの……先生?」
「ん?何だ?行き先か? お前らを連れて行く先は男獄寺って所だ。男獄高校附属の寺だ」
——な、名前からしてむさ苦しいまでの男臭い寺や高校だぜ。絶対に男子校だ……うわぁ、女子が居ない環境なんて考えたく無ぇよ。
「……仏教校で、仏門のカリキュラムを組み入れた数少ない高校ですね。外部体験を受け入れている所だと、聞いた覚えがあります」
「ミッション・スクールの敷地内に教会がある様に寺があるって考えれば良いな。まぁ、男獄高校も私立校だからな。まぁ、少なくとも仏教系では早々話に聞かねえだろうさ」
教師同士でその様な会話が交わされる。
「あ、あの〜じょ、女子は……?」
変態3人組にとっては女子から引き離される(覗きや女子達を見て品評、猥談)のは筆舌に尽くし難い程の苦痛であり、尚且つ野郎軍団の中で過ごすのは正に地獄と言って良い。こと、最近は紫先生により生活指導室で缶詰状態で補習の問題集をやらさられて居る。無論、女子達の胸や覗きも見る影も無い。
「最近、共学になったらしいが……一緒に勉強なんて出来ねぇと思うがな」
「……この3人、また覗き行為をするのでは無いでしょうか? 流石に他校の迷惑にかかる行為は」
共学と言う事でその先でまた変態行為を行うのではと明日風先生は危惧して居る。
「あぁ、そん時はそん時っスわ。まぁ、ウチの高校は理事長が本当に、本当に仕事しねーから、良い加減クビになりやがれと思うっスわ。まぁ、その点……バレたら即御用っスな。仕事しねー理事長と違って……彼処はそう言うの五月蝿いですからね」
と言うか一誠達の覗き行為は普通は警察沙汰である。寧ろ今迄、放置され続けて来た事の方が大問題と言える。
「今度の教員会議で満場一致で理事長をクビに追い込んでやりましょうか……絶対、要らんと言う教師居ますよ」
「そうですね……他にも役に立たない置物教師にも揃って退職して貰いましょうか。居るだけ邪魔ですから」
——きょ、教師ってこんなに殺伐して居るモノなのか……?
仕事しない理事長を思いながら紫先生の掴むハンドルは指を当てた部分がメリメリと凹んでいた……理事長の姿、一回も見た事が無い。幽霊理事長なぞ置物よりも役に立たない。一層の事、纏めて教師陣改造を施すのが1番と言えた。そんな教員2人の苛立った雰囲気の車内の中、一誠達を乗せた車は目的地である男獄寺がある山中へと入って行ったのであった……。