雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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無謀の極み

 

 各地で各々の一日が過ぎているその頃、冥界では——。

 

 

 

『……そう言う訳だ。頼めるかい?ライザー君』

 

 フェニックス領の一角、ライザーが自治する土地の居城の一室にて、ライザーは緊張した面持ちで相対していた。相手はホログラム体の魔王、サーゼクス。ライザーにとっては今は余り顔を見せたく無い相手である。それもその筈、先のグレモリー家との婚約騒動。そのリアスの実兄であり、正論で尚且つ他貴族からも同意が得られたとは言え此方側から一方的に婚約破棄した。思う所が無い訳では無いのが実情。

 そんな時に魔王本人から直接のホログラム通信越しでの面会。ライザーは内心、戦々恐々しながら面会に応じた。その時、サーゼクスはある頼みをして来た。その内容は——。

 

『日本神話陣営とのパイプ作りを頼みたい。セラフォルーから君は現悪魔陣営で唯一、ビザの取得に成功している。それに冥界から離反した悪魔達の子供達とも接触し、出来れば引き入れて欲しい』

 

 と言うぶっちゃけ無理難題に等しい内容であった。

 

 婚約絡みで、日本に行く際に『ビザ』の用意を離反した分家の娘に頼み用意して貰った事(つまり連絡を取れる)。

 ビザを取得出来た事から日本神話との繋がりが出来る可能性が高い事(日本神話は悪魔陣営を敵視して居るにも関わらず)。

 この2点がライザーの評価点に奇しくも繋がってしまっている事が裏目に出てしまい、日本神話との会談の果てに和平も結びたい魔王達の思惑の白羽の矢が立ってしまったのだ。

 

 つまる所、サーゼクスはライザーに『日本神話との会談交渉』と『離反した貴族悪魔のその子孫の悪魔社会への復縁交渉』を依頼したのである。セラフォルーが外交で倦ねている矢先にライザーの行動は光明とだと考えた様である。魔王からの依頼と言う事は『大公からの依頼』と言う意味……。

 

——……正直に言って、断りたい‼︎ しかし、婚約破棄した上に魔王様からの……。

 

 ライザーの本音は断りたい一色。何方の依頼も期待は薄いと言って良い。日本神話は眷属の美南風から聞いている上に、分家の方かも聞いている為に相手を変えても効果は余り変わらないだろう。そして、冥界とは離反した分家の方も『悪魔社会で生きる事は無理、皆もやってられない』とスッパリ言われてしまっている。

 

 既に手詰まり状態ではあるのだが、相手は魔王である上に元婚約者の家系から出たとは言え実兄であり此方の都合で少なからず迷惑を掛けた……。

 

「お言葉ですがサーゼクス様……。私如きでは力不足が否めません。事、魔王セラフォルー様のお仕事も未知の世界、満足の行く結果を出せるとは限りません」

 

 ハッキリ断ると言う手段は避けるべきである。しかし、出来ない事を受けて失敗するのもまた悪手……なら、やんわりと取り下げて貰うしか無い。こんな無理難題、間接的に評価を貶める為にやってんじゃ無かろうかと勘繰りたくもなる。

 グレモリー家は情愛が強い家系だと有名であり、その家出身のサーゼクスもその例に該当し自身の妹を溺愛している。その妹の評価を貶めたライザーを恨んでいても不思議では無い。

 

——……流石に公私混同をするとは思えないが、状況的にそう考えちまうんだよなぁ……。

 

『……そうかな? セラフォルーでさえ、『ビザ』を取得する事が出来なかったのに君は出来た。単純に優劣を決める事は出来ないが、少なくとも君のやり方が通じたのは疑いようの無い事実だ』

 

——いや、無理ですって。分家も『これっきりにしろ』と釘刺されたんだって‼︎ 次はこの手は使えないって‼︎ 他を当た……いや、普通に戦争になりそう。と言うか分家の方から血祭りに上げそうだ。

 

 ライザーは、墓穴掘ってね?と思い始めた。

 

『何も君自身が交渉しろとは言わない。そのキッカケを作って欲しいんだよ。会談自体はセラフォルーや私がやらなければならない。組織のトップがしなければ務まらないからね』

 

 それ以前にサーゼクスは日本神話がこの程度の事で主神格が出て来ない事を知らない。

 

「……」

 

『君も知っての通り、転生悪魔は増えている。しかし、純血悪魔の家系の御家断絶の問題も無視は出来ない。確かに離反した純血悪魔は冥界から見て裏切者だろう。しかし、その子孫が裏切者だと断ずるのは私は違うと考えている。離反した当人と、その子供の視点はまた違うと思っている』

 

——だから無理だって‼︎ 本人達、冥界に帰る……違うな、悪魔社会に馴染む気ゼロだって‼︎ 感覚、貴族じゃなくて平民レベルだ、絶対‼︎

 

 転生悪魔は増えつつあるが、純血悪魔の家系の減少は止められない故に無視出来ない。離反した家系は何れも有力悪魔の分家や兄弟姉妹の家系。大戦の結果、戦力低下が著しい悪魔陣営にとっては放置したくないのが本音。分家とは言え離反者は何れも有力候補、中には次期魔王候補にも数えられた者も居た。その子孫ともなれば戦力としては充分、見込めるのだ。

 

『最悪、片方だけでも構わない。頼めないか?ライザー君』

 

「……とは言いますが、分家の方は断られています。ビザの件も一度切りだと言われています」

 

 恐らくビザの件も含まれて居るだろう。其処も踏まえると無理難題通り越して不可能レベルだ。

 

『其処を何とか出来ないかな? 話し合えばきっと分かり合える筈だ』

 

——……俺とて礼はしたい。世話になった以上、形ある内容で礼はしたいが……。

 

『……済まない。如何やら客人が来た様だ。ライザー君、何方かでも構わないが頼んだよ』

 

「え? ちょ、サーゼクス様ッ⁉︎」

 

 サーゼクスはそんな言葉を言い残してホログラム体を消滅させた。まだ、承諾すらしていないのに依頼を押し付ける形に持ち込まれてしまった。

 

「……参ったな……仕方ない、眷属達を集めて会議しよう」

 

 こうなってしまった以上、やるしか無い。既にサーゼクスは『頼んだ』形になっている。それ以前に大公からの依頼……元より断れないのが通例。ライザー自身としては断りたいが断れない……故に善処するしか無いのである。

 

 

 

 






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