『……済まない。如何やら客人が来た様だ。ライザー君、何方かでも構わないが頼んだよ』
「え? ちょ、サーゼクス様ッ⁉︎」
サーゼクスはそんな言葉を言い残してホログラム体を消滅させた。まだ、承諾すらしていないのに依頼を押し付ける形に持ち込まれてしまった。
「……参ったな……仕方ない、眷属達を集めて会議しよう」
こうなってしまった以上、やるしか無い。既にサーゼクスは『頼んだ』形になっている。それ以前に大公からの依頼……元より断れないのが通例。ライザー自身としては断りたいが断れない……故に善処するしか無いのである。
ライザーは一先ず、如何するべきか眷属達を集めて会議する事から始めた。
「……皆、集まってくれたな。集めた理由を話そう」
眷属の皆が集まった事を見計らいライザーは口を開き皆を集めた理由を説明した。魔王サーゼクスからの依頼……と言うには実現がほぼ不可能に近い内容である。
「何方か片方でも構わないとの仰せだが……正直、何方も難しい問題だ。まず、後者の分家を始めとした離反した家系の子孫の件だが……既に釘を刺されている」
「……冥界に来る気は無い、との仰っていたそうですね」
「ああ……その通りだ」
その時、部屋の床に魔法陣が展開される。その紋様はライザーでさえ、早々見れる紋様では無い。いや、とっくの昔に
「皆、構えろ‼︎」
——俺の記憶が確かならば……この魔法陣の紋様は、断絶した大王家であるパイモンである筈……‼︎ 旧魔王派の連中にはパイモン家は関わって居ない。となると……‼︎
魔法陣から浮かび上がったのはホログラム体。本人が直接来たのでは無くホログラムを介しての魔法陣であった。その事に安堵するライザー。こんな所で戦争だなんて勘弁被るからだ。
『貴方の考察は正解よ。フェニックス』
其処に佇むホログラム体の姿、それは少女であった。銀色の長髪に眼鏡を掛けていた。黒い服装の上に裏側にゴテゴテと試験管の瓶らしき物を複数、下げた白衣を羽織って居る。年齢的に言えばリアスよりも年下と思われる。だが無表情なのに薄ら笑みを浮かべている様にも見えるその顔は見る者に寒気を覚えさせる。
——……こんな奴、見た事が無い。ホログラム体故にお互い物理的な干渉は行えない。幸か不幸かは分からないが……。
「君は、何者なんだ? 少なくとも俺は君に対して接点は無い筈だ」
ライザーは警戒心を弛ませずにホログラムを介して現れた少女に尋ねる。目的があって接触して来たのは分かる。だが、迂闊なボロを見せる訳には行かない。
『あら、私達の事を嗅ぎ回って居る癖に随分な言種ね? 理解しているのに無駄な行為……それでもやる姿勢……フフ、誰かを思い出すわね』
その少女は口を三日月に歪め薄い笑みを浮かべて見透かしたかの様な物言いでそう告げる。その言葉にライザーは理解する。
「まさか……冥界から離反した家系の1人か⁉︎ だが、パイモン家はその家系には無かった筈だぞ……‼︎」
『クスクス、理解が早いわね』
——だが、離反した連中の内……パイモン家は大戦時に戦没して御家断絶した筈だ‼︎ アンドラス家を始めとした離反組は、大戦の後に冥界から姿を消した……。
『その情報はね、嘘なのよ。冥界を欺く為に嘘の情報を流したのよ。ルキフグス家とマモン家の離反者は前の代には居ない。当時、混乱の最中故に最も簡単に騙されてくれたと言う訳』
「……そんな偽情報を撒いた。と言う事は、他にも離反した家系があるのか……⁉︎」
——悪魔陣営の存続問題は深刻だからな……。
『さぁ? どうかしらね?』
ライザーの質問に少女ははぐらかすかの様な物言いで躱した。答える気は無いのか、単純に興味が無く知らないだけか。
「で、君は何者なんだ? 何故、この場所を知っている?」
——少なくとも『嗅ぎ回る』と言った。つまり分家の奴と同じ場所……詰まる所、アンドラス家を主軸とした所に居る奴である事が分かる。
『クスクス。私?私はソフィア。ソフィア・パイモン。と言えば良いかしらね? 貴方の予測その通りよ……全く、『ビザ』の件で面倒な事をしてくれたわね』
「……『ビザ』、か。その節は世話になったよ」
——……恐らく向こう全員、巻き込んだか……。
ビザの件を引き合いに出されてライザーは少し、バツの悪い顔をした。分家の方からも『これっきりにしろ』と言う事から相当、面倒な事になったと再認識する。一体、どんな事になったのか気になるが聞くのは止めて置いた方が良いかも知れない。
「……聞いた手前、俺も名乗った方が良いな。俺はライザー・フェニックスだ」
『ええ、知っているわ』
「……この場所と言い俺の思考を見透かしたと言い、やり難い相手だよ、君は」
『クスクス、褒め言葉と受け取って置くわ。情報と言うのは強い武器になるモノ。貴方達、悪魔社会の行動は派手だから、情報を集め易くて楽で助かるわ』
ソフィアの陣営は情報収集能力に秀でている様だ。悪魔と言えば使い魔を使い情報を探る。かく言う向こうはより優秀なのかも知れない。
「……此方の、と言うか俺の事情を知ってそうだよなぁ」
『ええ、知っているわ。そしてその節はお断りよ』
「……せめて言わせてくれよ」
——分かっちゃ居たけどさぁ。せめて一言位、言わせてくれ……。
『嫌よ。そのやり取りだけで1000文字位冗長するわ。時間の無駄よ』
「理由が酷い……」
やはり『離反した家系の復縁』と言う目的は果たせそうに無い。理由を説明する暇すら与えてくれない。
『私達は貴族主義じゃないの。領土とか貴族の面子も興味は無いわ。結婚絡みも面倒ね』
——後者に関しては否定出来ない。純血悪魔の貴族ともなれば結婚の自由なんて無いに等しい。婚約破棄しても何れは別の所に充てがわれる可能性もある。
「……純血悪魔ともなればその子供は希少。貴族同士の結婚は当然だろうな」
離反しているとは言え、その子孫は純血悪魔と来た。純血主義からしても、悪魔社会からしても貴重である事に変わりは無い。
『……そう。其方の社会事情に関して興味は無いわ』
「……態々、そんな事を言う為に通信を寄越したのか?」
——俺の分家の代わりに? この様子だとその理由は答えては来れなさそうだな……手の内が読めん。
『そうね。敢えて言うのならば貴方達が嗅ぎ回って下手に余計な刺激を引き起こして私達が被害を被るのは避けたいのよ。唯でさえ、リアス・グレモリーが起こした騒動が尾を引いている……此方も迂闊に動けないのよ』
どうやらまた何かやらかした様である。思えばリアスはレーティング・ゲームをすっぽかした。本人は『ゲームに勝って破棄させてやる‼︎』と乗り気でありゲーム当日に棄権な真似するとは思えない。と、なると……前日以前に何か引き起こしたと考えるのは考えすぎだろうか?
「……つまり今、日本神話の管轄での行動は危険、と?」
『ええ。何でも『悪魔は全裸で出歩いて徘徊する露出狂揃いの変態集団』と言う噂が日本神話全体で広まっているのよ……』
理由、リアス一行が日本の地獄で服を脱ぎ捨て全裸で行動して居たのが要因。
「「「「」」」」
その言葉にライザーは愚か、眷属達も言葉を喪った。何だ、その正気の沙汰では無い噂は。
「ちょっと、タンマさせてくれ。何それ、そんな噂が流れているのか?」
『それから純血の悪魔は愚か下僕の転生悪魔も全裸で徘徊する露出狂への変態に変貌するって言う噂も流れている。私達にとっては迷惑極まりないわ……一体、何処の誰がそんな巫山戯た噂が流れる原因を作ったのかしらね?』
——おい……100%、無理だろうがそんなモン‼︎ え?変態露出狂って思われている状態で交渉なんて無理に決まっているだろ⁉︎ 日本神話側からしたら『全裸の露出狂と話し合い?無理無理』って、考えるのが容易に予想出来るわッ‼︎
無理難題から無理ゲーに昇格。その上『露出狂の変態』と言う前情報まで追加された状態での交渉、会談。最悪にも程がある。どんな勢力でもその様な変態と仲良くなりたいとは思わない。間違いなく同類に思われる。
『……そう言う性的なモノは子供の教育に良く無いと思うわよ? 特殊な思考に関しては文句は言わないけれど……公の場でするのは控えるべきよ』
「ご尤も、ご尤もだよ‼︎」
——誰だ、そんな悪魔陣営を陥れた戦犯は⁉︎ 自分の部屋でやれ、そう言う事は‼︎ 完全に悪魔陣営に対して致命傷の被害を齎しているぞ……‼︎