「猫魈の子は会話になりそうだけど〜、後が難しいでしょうし〜……今、此処には居ない子にシノアを見せたく無いのよね〜。騎士の子は真面に会話が出来そうだけど、居ない。消去法よ」
「……目的は何ですか?」
「言われずとも分かって居るんじゃない? 分からないなら単刀直入に。早い所、冥界に帰ってくれない? 君達、全員」
リィティアは前置き無しで簡単にそう纏めて告げた。『冥界に帰れ』、と。
「何を……⁉︎」
「悪いのだけど、貴方達の行動は……ハッキリ言って迷惑なの。お陰様で間接的に被害が及ぶのよ」
「……此の儘だとうちの子達が元凶である貴方達を殺しに来ちゃうわよ〜? 遅かれ早かれ……『魔王』達が黙っては居ないから、戦争になっちゃう。そうなれば……どうなるか分かるでしょう?」
離反組であるリィティア達は日本神話と悪魔社会との戦争に巻き込まれるのは堪ったモノじゃない。何かと脳筋気味な連中が多い為に、後々に大問題を引き起こしかねない。
——日本神話勢や地獄からの襲撃は懸念していましたが、まさか同族からも言われるとは……。
「……だからと言って『はい、そうですか』と首を縦に振れませんわね」
『女王』と雖もそう簡単に物事を決めて良い立場では無い。そもリアスが頑なな為、納得しないだろう。故に返答は『NO』であった。確かに自分達の状況は決して楽観視出来る状態では無い。
「断られた、か。まぁ、ダメ元ではあったけど……予想通り、かな」
リィティアは朱乃の返答に『予想通り』だと言葉を溢す。ダメ元である事も併せて理解していた様だ。
「まぁ、釘を刺しに来ただけだし……真面目に殺し合う気も無い。『祟り神』居なぬ間に挨拶しに来ただけでもあるし。あわよくばと言う思いもあっただけだ」
そう告げると椅子から立ち上がる。
「それに日本の魔王殿も現状を見ている様だし……もう少し静観するよ。君達はどの様に駒を動かすかな? シノア、シャルロットさん。行こう」
リィティアは2人に声を掛けるとその足元に魔法陣が広がり光に包まれて消滅して転移して行った。
「……」
——アンドラス、アスモデウス……いえ、あの様子ですと他にも居るでしょうね。冥界に帰れ……ですか。
朱乃は直ぐにオカルト研究部に戻り一連の出来事を王であるリアスに報告した。
「巫山戯ないで‼︎」
リアスの第一声はやはりと言うかその言葉であった。日本神話のみならず、よもや他の悪魔からも言われるとは思っていなかった。
「……部長、アンドラス家とは?」
朱乃には話したが小猫には話してはいなかった。この際だから良いかとリアスは口を開く。
「……過去の大戦後、戦争の継続を訴えた『旧魔王派』とは別の理由で離反した貴族悪魔の家系の一つよ。その武勲は凄まじく……離反せずに居たら四大魔王の座に輩出するかも知れないと言われた。恐らくその家系の子供ね……実力は未知数。過去の大戦直後に離反したから『悪魔の駒』の眷属は持っていない筈……でも、筆頭格のアンドラス家が離反した家系の纏め役を担っていると聞いている」
「見る限り旧魔王派とは別に離反したアスモデウスの者達が臣従している様にも見えましたわ」
その言葉にリアスは激昂した感情を冷やして椅子に腰を沈める。現状を分析する相手が悪いと思える。何故なら、今の状況に当て嵌めるとかなり分が悪く見えて来るからだ。
「……私達、現行の悪魔から見た場合。相手、リィティアだったかしら? リィティアが王とすれば、眷属達は皆……純血かまでは定かでは無いけれど離反した貴族悪魔の子供達で占められる。と考えるのが自然ね」
「……つ、つまり?」
「……全員、『王』としての集団と言う事よ。当時離反した家系には旧魔王の血筋の家系も含まれている。流石に無策で正面からぶつかるのは得策では無いわね……。つまり『コレからは自分達も黙っては居ない』と言う意思表示のつもりなのかしら?」
「……その可能性が高いと思われますわ。此方の状況を把握した上で行動しています。もしかしたら、この会話も既に聞かれているのかも知れません」
「…………悔しいけれど、余程優秀な使い魔を使役しているのね。流石に全て筒抜け、とは思いたくは無いけれど……。用心に越した事は無いわ。何せ……狐花が居ないタイミングでこの私の領地に現れた……。タイミングが良過ぎるわ」
「……そんなに凄いのですか?」
「ライザーの様に相手の実力が調べられるのならば策の練りようはあるけれど、リィティア達は全くの無名。現政府とは隔絶されているから、その実力は未知数……。少なくとも日本神話勢が蔓延る日本に移住した悪魔……並の悪魔じゃ捻り潰されて終わりな所を生き延びている……その時点で相応の実力があって然るべきと考えるのが自然よ」
「な、成程……」
リアスの考察に小猫は納得する。確かに修行へ赴いた時に現れた剣士の少女、獄卒の少女、そして鏖殺しに掛かる少女……何れも日本神話との関連を仄めかす者達が跋扈する中で行動している。
「……少なくとも私達と敵対する意志は無い訳ね?」
「分かりませんわ。不透明な部分が多く、尚且つ彼の眷属悪魔はそうは考えては居ない様ですわ……」
「出来るならこれ以上、敵を増やしたくは無いわね。周囲が敵で一杯になってしまうと、流石のお兄様も不安になるわ……。何とか味方に引き込めないかしら? でも、現悪魔政府から離反しているし……最悪でも相互不干渉に持ち込みたいわね」
一面、敵ばかりの状況は最悪の状況と言う他に無い。そんな環境で生き延びられる程、リアスは死線を潜り抜けた経験は無い。
「暫くは静観するとも言っていましたので、直ぐには行動は移さないと思われますわ」
「……私達の行動を見て決める。そう言う事ね……コレは益々、下手な行動は取れないわ」
自分達に着く方が良いと判断してくれれば、味方になってくれるかも知らない。しかしサーゼクスの政府体制に納得出来るかまでは分からない。分からない事だらけだ。
「……取り敢えずイッセーと祐斗が戻って来るまでは動かない事にしましょう。眷属になりそうな子も探さないと行けないわ、今の私達には余りにも戦力が足りなさ過ぎる……各自の自主トレも怠らない様にね」
「「はい」」
——今に見ていなさい……今は雌伏の時。苦難を乗り越えれば私達は強くなれる……‼︎ 今を耐えればお兄様達がきっと事態を好転させる機会を作る筈……それまでは我慢よ……‼︎
露出狂問題に言及されていない理由……舞台裏を知っている方は大凡、察しは付くかと……。