雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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鋼鉄のしろ

 

 

 ケーニヒスベルクと明石に愛銃の改修を頼んだその後、結果が出るまで船渠を見て回る事にした。軍艦の根城の船渠と言うだけあって、いや管理者が杜撰なのかかなり色々なモノがゴッタ返して居るのが良く分かる。

 

『……色々なモノが散乱しているのが分かりますね〜……』

 

「……んに?」

 

 その奥に大型の扉が存在していた。それこそ船渠から進水させる為の様な大型の扉。金庫室の様な重厚なものであった。

 

『……凄い大きな扉ですね。耐熱性も耐久性も抜群でしょうね』

 

「………」

 

「ん? こんな辺鄙な所に来るとは妙な客だニャ〜」

 

 その大扉の前で猫じみた喋り方の声が聞こえて来る。大扉の上の突起物の上から白い影が飛び降りて来る。白褪せた跳ねた毛の銀髪は猫耳の様な形を成し赫い眸をした青いセーラー服を身に纏った付喪神であった。そして肘から先の右腕は青黒く罅割れている。

 

「……んに? 知らない」

 

「ニャ?私もお前の事、知らないニャ」

 

 どうやらお互い初対面の様である。んにやニャと言い合っている。狐花が知らないと言う事は最近、生まれた付喪神なのだろう。

 

「お前、悪魔じゃないニャ。当然かニャ」

 

「悪魔を見たら、燼滅してる」

 

『……あの〜、何方様なのでしょうか?』

 

「私?私は川内ニャ。夜戦なら私の舞台だニャ。悪魔じゃないならお前は何なのニャ? 見た所、付喪神だニャ?でも、私達とは違うニャ」

 

「……狐花」

 

「あー、長門がそんな名前を出していたのを思い出したニャ。お前がそうなのかニャ‼︎ 駆逐艦の付喪神みたいにちっこいニャ」

 

「んにー‼︎ うっさい‼︎」

 

 川内と名乗った付喪神に小さいと言われて五月蝿いと怒る狐花。恒例の反応と化しつつあった。

 

「あれ、狐花さん。こんな所に来ていたのですか? それから川内さんも……」

 

「ニャ?明石かニャ?」

 

 と、其処で明石が現れる。どうやら大元はケーニヒスベルクが行い仕上げを明石が行う体制になった様である。

 

「珍しいですね。こんな所に来るなんて……何時もならまだ寝ている時間帯では?」

 

 川内は二水戦であり主に活躍したのは夜戦。故にその付喪神である川内もまた、夜型であった。

 

「そうだニャ。でも、江風がちょっと心配だったから様子を見に来たんだニャ。あの子は中々、頑なで休もうとしないからニャ……差し入れのつもりで会って来た帰りニャ」

 

「……成程。そう言う事ですか」

 

 寝るニャ〜と川内はそそくさとこの場から立ち去って行った。どうやら夜戦好きらしく早寝するつもりなのだろう。

 

「して、狐花さんは探検のつもりですか?船渠と言っても乱雑ですので……迷子になりますよ?」

 

「んにー、その時は壁壊すから」

 

「止めて下さい。何もかも滅ぼす姿勢は看過出来ません」

 

 迷ったら迷う原因の構造物を抹消すれば良い。実に分かり易いやり方であった。流石に明石と雖もそれは認可は出来なかった。

 

『で、あの金庫扉は何でしょうか?』

 

「あれですか? 随分と大仰なモノですが……大したモノは無いのですが……見ますか?」

 

「見たーい‼︎」

 

 狐花が彼方此方、フラフラして居ると言う事は明石も知っていた。適当にブラブラするのは勝手とは言えるが、流石に入られたくない場所もある(本人は無自覚で突入して居そうではある)。それなら、誰かと一緒に居させた方が良いだろう。

 明石は金庫扉の様な大扉を開ける。そもそも金庫ですらないので鍵が無くとも普通に開ける事が出来た。その大扉に対してその部屋は大きいと言えば大きいが其処まで広大とは言えない。

 

「……んに? 何、あれ?」

 

 部屋にあったのは残骸。部品のパーツからして軍艦の残骸の様にも思える。壊れたと言うよりも未完成のまま、放置されたと言うべきか。

 

「……私達が軍艦の姿であった時代。世に出る事が無かった軍艦達が居ます。つまり艦として……計画はされたのですが紆余曲折あり進水する事が叶わず建造される事が無かった。つまり構想の中だけの幻の存在です。狐花さんも付喪神の概念はご存知でしょう?」

 

「んに。思いを宿して誕生する……」

 

「はい。理由は様々……アーク・ロイヤルやアドミラル・ヒッパーが何故、彼処までロリコンと化した理由は些か解せませんけどね。あの残骸は……ある軍艦の残留思念が宿って居ます。しかし、その力は余りにも弱々しく……魂を宿すには至りません」

 

 狐花は徐にその残骸に近付いて手を触れて見る。普通の存在が触れても何も起こらないのは当然。

 

「……んに。確かに……脆弱な思念を感じる。でも、今にも消えそうな程に弱々しい」

 

『計画されて居た軍艦、その実態を知る者は今となっては久しく、その記憶は朧げなモノなのでしょう』

 

 有名な軍艦の名前ならばいざ知らず無名のまま消えた者には名は残らない。

 

「111」

 

「はい?」

 

 狐花は徐にその言葉を呟いた。その言葉に対して明石は首を傾げる。

 

「力尽きた。もう、この残骸には何も宿って居ないよ……モノ言えぬ骸となっちゃった」

 

 狐花の無慈悲な言葉に明石はそうと告げた。つまり、その思いは消えて無くなってしまったと言う事。

 

「……骸は言えぬ、斯くして名は届かれず。致し方ない部分もある」

 

「そうかも知れません、ね」

 

 その大部屋を後にした狐花。その帰りにケーニヒスベルクの元へ行くとあろう事かもう完成に漕ぎ着けて居た。

 

「さぁ、出来ましたよ‼︎ フフフ、このケーニヒスベルクの科学力は世界一ィィィィ‼︎‼︎ と言う訳でグスタフを参考にしました」

 

 参考にするモノが盛大に間違えて居る。明らかにヤバいモノを参考にしていた。

 

「あ、因みにダムダム弾もオマケして置きますね。どうせ、狐花さんは悪魔以外に撃たないので無問題です。無問題」

 

『……うわぁ、何て代物を……‼︎』

 

「んにー‼︎」

 

 

 

 

 

 

 狐花は改修されたボーイズ対戦車ライフルを受け取った後、暫くの間裏幕府に滞在。当初の目的であった宴会を楽しみ、駒王町にある皓咲城へと帰るのであった。

 帰る頃には1週間が経過しており別件で高天ヶ原に居たと言うアイラ達も帰って来ていたと言う。何でも狐花が駒王町に居ない間、修行と言う形で高天ヶ原で稽古をして居たと言う。

 

『経津主神様とかから、色々と稽古を付けて貰ったやさかい。まぁ、コレで何とか狐花の巻き添えも喰らわん様になるやろ』

 

 皓咲屋敷の居間。狐花が帰ってきたタイミングでは既にアイラ達が帰って来ており寛いでいた。

 

「あ、狐花ちゃん。お帰りなさい、ふふ。また一歩、救済へと進みましたわ」

 

「……宴会とか良いわよね。その間、私達は訓練漬けよ……はぁ、昔を思い出すわ…………あの頃は本当に、地獄だった」

 

 アイラは何故か暗黒面を醸し出している。過去に一体、何があったのだろうか?

 

「……え、えっと狐花さんの方は何かありました?」

 

「んに? 霊術の応用を思い付いた」

 

『何や、狐花。まぁた、陸でも無い霊術を思いついたんや無いでな?』

 

「大艦巨砲主義、弾雨硝煙、雷撃空爆」

 

『もっとアカンわァァァァ‼︎⁉︎ 裏幕府で何覚えて来たねん、おまはんはァァァァァァァ‼︎⁉︎』

 

「霧島とかー、江風とかー、綾波とかー、夕立とかー」

 

『何そのヤバそうなラインナップ⁉︎ おい、焼き鳥ィィィィ‼︎⁉︎ テメェは何しとった⁉︎ ホンマに焦土と化すぞ、この町ィィィィ‼︎』︎

 

『いや、良いじゃないですか。悪魔が巣食っているのならばコラテラルダメージと言うモノ……』

 

『テメェはテメェで達観すんじゃねぇよ⁉︎ このクソ焼き鳥ィィィィ‼︎』

 

 悪魔を葬る為に町に住む民間人諸共、屠る。過去にも狐花はやり掛けてギリギリで踏み留まっている。此処に来て裏幕府の連中が要らぬ事を吹き込んでしまって居る。

 

『お嬢はどの選択を取ろうとも必ずやそうなる(・・・・)。イヌッコロ、貴方ならばその理由(・・)を誰よりもご存知でしょう?

 

『せやけど、せやけど諦めたく無いんやて‼︎ 燼滅とか鏖殺とか、破壊しか理解出来へんって言うのは虚し過ぎやとテメェも分かっとるやろ、焼き鳥ィ‼︎』

 

『分かって居ます。その上でお嬢の大火力を前に一切の被害が無く事を収める事が出来ましょうか? いえ、何事にも被害は出てしまいます。無論、出ない事に越した事はありません……それを今のお嬢さんに出来ますかね?』

 

 恐介ももはや、諦めの域に達しつつあった。短絡的な所はあるのは事実……その癖、殲滅思想。狐花の性格上、矯正は難しいと言う結論に至っていた。ならば被害は最小限に抑える方針にシフトした方が現実的と言える。

 

「もう、狐花ちゃんの頭の上で揉めるんじゃないっての‼︎ 短絡的なのは貴方達の方でしょ?」

 

『いや、せやけど……』

 

「ははーん。高天ヶ原でも思って居たけど、やっぱり貴方達とか神様って子育てとか凄く苦手でしょ? 伊奘冉様もお母さんっぽいけど、教育ド下手って印象だったし……」

 

 五七と恐介の方針はどうにも空回り気味であった。狐花の暴走具合を阻止する事が精一杯と言えばその通りか。

 

『『ぐ……』』

 

 具体的に言うと伊弉冉尊様は幼い頃の狐花に『嫌な奴、嫌いな奴はみんーな纏めて、大地諸共、こう『ドーンッ‼︎‼︎』って感じで壊しちゃえば良いのよ。後で伊弉諾が直してくれるから』と言う教育をして来た。所謂、三つ子の魂百まで、である。

 

「それに、教育云々は私に頼んでたでしょ? と言っても私も余りそう言うのには自信は無いけどね」

 

 ゴタゴタ続きで別行動が多かったと言うのもある。本来、こう言う情緒関連はそう即時的に結果が出るモノでは無い。

 

「……さてと、取り敢えず晩御飯にしましょうか。無論、虫料理なんて認めないから」

 

「むー……」

 

「あ、あはは……」

 

 

 

 

 

 

 

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