「弩の越えた……自己犠牲の精神の塊の……それこそ、自分自身の全てを捧げれる様な奴じゃないと無理だな」
紫先生は簡潔にそう告げた。そのタイミングで予鈴のチャイムが鳴り響く。
「さて、講義はコレまでだ。では教室に行くと良い。それとも此処で楽しい楽しい補習をどうしても受けたいと言うのならば、俺も色々と忙しいが特別に」
「「「誠にありがとう御座いました‼︎ 失礼します‼︎」」」
紫先生が言い終わる前に一誠達は一斉に立ち上がり回れ右をしてそそくさと進路指導室から退室して行った。余程、問題集の山が堪えたらしい。
「……何だ、つまらん」
「ええ、実につまらない戯言の講義でしたね」
「……明日風先生、何時から其処に……?」
「先程です。聞けば私が貴方よりも暴力的で骨折させる、だとお聞きしましたが……申し開きが有れば聞きましょう」
背後から聞こえる淡々とした明日風先生の声。ダメだ、コレは嫌な予感しかしない。身長差はあるとは言え……紫先生は冷や汗を流していた。
「あの、その……言葉のアヤと言いますか……」
駒王学園の一部区間にて鈍い怪音が響いた。聞いた者が言うには『骨が折れる様な音でした』『恐ろしい殺意を感じた』『怖い』『んにー(」・w・)」』と言う意見を述べたと言う。
その日は特にコレと言った出来事は起きずに放課後の時間帯となり狐花達は何時もの様に美術部のアトリエに集まっていた。アイラ1人でも物は多く乱雑して居たが狐花達が増えた事で更に物は増えて遮蔽物が多くなった。
また、出来事に関して強いて言えば朝方、ホームルームに現れた紫先生の頭がミイラ男の様に包帯でグルグル巻きになって居た事位であった。その事を指摘した生徒に対して紫先生は
『人の噂は本人が見ている所でするな』
と告げた後に授業を始めたと言う事だ。何があったのかは敢えて聞かない方が良さそうであった。
「……んにんに」
美術部故に狐花達は絵を書いていた。屯しているとは言え部活動としての活動はしておかなくてならない。最もアイラは兎も角、狐花達もそれなりに楽しんでやっている様だ。静香は油絵に挑戦し、アーシアはシンプルな鉛筆画、狐花はあろう事か水墨画と言う渋いモノを選んで描いていた。
「んにーっ、出来たー(/・w・)/」
「お、大分上手くなって来たわね〜」
狐花の周りの足元には失敗したと思わしき半紙が大量に散らばっている。余程、練習したのだろうか。
「個人的にはまっだまだ粗削りで目が肥えた芸術家から見たら下手とも言えるけど、徐々に悪くは無いセンスになって来たわ。所で、何を描いたの?」
狐花が描いた水墨画、アイラ的にはまだまだ進歩の余地がある状態(要するにまだ下手な部類)。最も美術や芸術と言うのは本人のセンスに大きく左右されるし受取手の感覚にも振れ幅が出て来るモノ。単純に上手いか下手かは判断は難しい。
して、狐花が描いた絵は簡単に言うと何かの艦の様に見える。砲塔や艦橋らしき部位がある事が分かる。
「
「えーと……? 私が知る限りだと……日本の古い地名だった筈よね? 山水画のつもりかしら?」
「ん、違う。産まれず終いとなり幻となった戦艦。裏幕府で想いが希薄で付喪神にもなれず誰からも忘れ去られて消えちゃった……。だから、弔い……」
彷徨う魂魄を送るのは狐花の仕事。そしてそれは人魂、以外にも適応される。
「……つまり、想像上?」
「ん。もし、実在したら……こんな感じになるのかなって……構想されたけど形にはならなかったから……」
狐花はそう言い描き上げた水墨画『題名:大和型戦艦四番艦紀伊』と言う題名を添えてイーゼルに留める。
「……狐花ちゃん。ちゃんとあるじゃない?」
「んに?」
「五七や恐介は狐花ちゃんは『蹂躙する術しか分からない』と良く言うけど……ちゃんと、想う心があるわ。ただ、その表現が下手なだけだわ」
「……」
鏖殺、蹂躙が常套手段の狐花。その光景から『祟り神』だと良く言われる。でも、アイラはちゃんと狐花にも心と言うモノはあると確信している。自分が言うのも何ではあると言う思いはあるが……。
「アイラさん‼︎ 出来ました‼︎」
「アーシアちゃんも出来た? お、聖堂の風景画かな?」
「はいっ‼︎ 昔、私が住んでいた場所を書いてみました‼︎」
「そう……良く書けているわ。色を着ければもっと良くなるわね」
「……っ‼︎」
その時、狐花が不穏な空気を纏う。その様子にいち早く静香が気付いた。狐花は速やかにその場から跳躍して移動し、H状のイーゼルの裏に隠れFNの弾倉を確認した後、伏せた状態でボーイズ対戦車ライフルを構える。
「狐花ちゃん、どうかしましたか?」
「悪魔が接近して居る。しかも複数人……性懲りも無い。此処で仕留める」
既に狐花は臨戦体勢を整えた。と言うか本人的には『猶予は与えた、問答は不要』と言う認識だろう。幸い、美術部のアトリエがある部活棟は人気が少なく美術部以外で活動する部は現在存在して居ない。多少派手に暴れても認識阻害結界で誤魔化しは効く。
「……成程。狐花ちゃんのレーダーは頼りになりますわ。ならば、浄化しないと行けません。私の絵もまだ完成していませので邪魔される訳には行きませんわ」
「……お姉様、狐花さん。私も隠れました。何時でも不意打ち出来ます‼︎」
アーシアもその頃には既に畳まれ積まれたイーゼルの後ろに隠れて隙を窺う体勢に入っていた。アーシアの霊術は広域殲滅が主流だが他のやり方も覚えている。具体的に言えば大凡は狐花と同じタイプと言える。
「はぁ、全く……コレだから聖職者ってのは……」
アイラは3人の好戦的っぷりを目の当たりにして呆れつつも意見には同意した。悪魔の存在は邪魔であると分かっている。敵は敵……確かに仕留めれる機会があるなら仕留めるべきだ。昼間の街中や人の目が多い場所とかならば兎も角、この場所なら認識阻害し速やかに仕留めれば誤魔化せる。そもそも狐花1人ならばまだ止めようはあるが3人同時だと止め切れない。なので、やるしか無い。
アイラも携帯している変形する大鎌の持ち手を確認して不自然にならない体勢で到来するのを待ち構える事にした……。
ある意味アンケート中。