「はぁ、全く……コレだから聖職者ってのは……」
——本当にシスターや巫女って……こんなゴリゴリの戦闘狂なのかしらね?
イーゼルを遮蔽物として利用している狐花とアーシア。遮蔽物を使用せずに到来者を待ち構える静香。その姿を見てアイラは半ば嘆息混じりの心の声を漏らす。
「轟け。独裁者の尖兵たる靁轟、破滅を願う劫火の光。重く願う塹壕の憎しみ……我が腕に砕けよ、冒涜の焔‼︎」
高速化された詠唱。アーシアの腕に顕現されたのはMG42の貌をモデルとした汎用マシンガン。金髪シスターが扱うにはかなり物騒過ぎるシロモノだ(狐花のボーイズも充分、物騒と言えるが)。
「神靁轟音は神々の神罰と知れ‼︎ 天神の咆哮全て、この腕に宿し、遍く悪鬼魍魎蔓延る穢界を打ち砕く神槌を振り降ろさん‼︎ 乾坤崩界‼︎」
そして、雷を纏う戦鎚を顕現して座る椅子の傍に突き刺す静香。
——……この3人、敵からしたら位置取りは厄介よね……。
静香は中央。出入り口である扉から入って正面から攻撃を受ける位置。出入り口の側面に積まれたイーゼルの裏にはアーシア、俯瞰位置に狐花。静香に迫るもアーシアの銃撃に煽られた敵を狙い打つ狐花と言う布陣。本人達は示し合わせた訳では無い。『悪魔は殺す』、その考えだけで自然とこうなった。現在のアイラの位置は最後方、丁度静香達の立ち位置の関係上、穴を塞ぐ位置にある。この場所から射撃をしても誤射する可能性は低くなる。仮にしたとしても、治癒系の神器を持つアーシアが健在である限りリカバリーは効きやすい。
「狐花さん、お姉さま‼︎ 何時でも行けます‼︎」
「前線は私が抑えます。その間に側面からアーシアちゃんが攻撃。怯んだ敵を狐花ちゃんが仕留めて下さい」
「はいっ‼︎」
「んに」
「アイラさんは取り零した敵をお願いしますわ‼︎」
「え、ええ。分かったわ……‼︎」
——静香も普段はぽわぽわのほほーんと生きているのに……戦闘(悪魔)となると、意識が切り替わるのよね……。こう言う所、狐花ちゃんとソックリだわ。
「3人とも、接敵まで10秒」
狐花がそう告げた後、キッカリ10秒後。アトリエの扉が開かれ。
「失礼しま」
「逃がしません」
黒髪眼鏡の貧乳の女子生徒が入って来た直後、鋸の音の様な怪音が響き渡り弾丸が大量にばら撒かれて貧乳に襲い掛かる。
「ちょ、いきなり⁉︎」
「Vanitas vanitatum et omnia vanitas.」
マシンガンの弾幕はブラフ。本命は狐花の凶弾。遮蔽物のイーゼルを反動共々吹き飛ばし1発の殲弾が貧乳こと、ソーナ・シトリーの頭部を吹き飛ばそうと迫り来る。
「会長ォォォォォォォォォォォォ‼︎⁉︎」
同伴していた匙 元士郎が異変に気付きソーナを突き飛ばして狐花の殲弾が元士郎の右腕を付け根から吹き飛ばした。コレが頭部ならば間違いなく即死……。
「匙ッ⁉︎」
「……捉えました」
弾幕、狙撃に気を取られ前方に迫る静香の接近を許す。大上段に構えられた戦鎚がソーナの頭部に振り下ろされる。
「ッ⁉︎」
「会長ッ‼︎」
「静香、後方に飛んで‼︎」
狐花の声とソーナの眼前に楕円状の鏡が現れるのは同時だった。静香はその声に反応して真下に戦鎚叩き付けつっかえ棒として後方に飛んで距離を取った。
「会長、匙君。ご無事ですか? 相手が相手なので不安でしたがその予測が当たるとは……」
「椿姫。助かりました……‼︎ よもや本当に臨戦体勢を敷いていたとは」
「お、俺は全然大丈夫じゃないです……‼︎」
ソーナと元士郎の前に副会長である椿姫が狐花達の前に現れる。ソーナ達の前に現れた鏡。盾のように展開されるソレを見て静香は迂闊に前へ出ようとしない。
「『追憶の鏡』……鏡が割れた反動で相手に反撃する神器。実弾や物理攻撃には無類の強さを発揮する」
イーゼルの遮蔽物の裏に隠れたままの狐花は椿姫の身体に宿る神器を知っていた。その言葉故にアーシアも無闇に射撃は出来ない。撃てば自分に返ってくる。
「私の神器を知っているのですか?」
「
夜摩天から受け取ったリストには年齢、性別、特記事項が掲載されている。それは神器等の情報も含めて存在している。
「だから、
その言葉の直後、ソーナ達の足元で雷光が爆ぜた。静香が先程、地面に戦鎚を突き付けた際にその場所に滞留した電撃が爆ぜたのだ。
「ッ……痺れが⁉︎」
爆ぜた電撃は鏡を破壊せず、待機中の細かい埃や塵を介して通電し広がる。つまり鏡の裏側に居るソーナ達にも電流が伝わり感電させる。
「……はァァァ‼︎」
『追憶の鏡』。この手の能力は意識の問題が必要とされる。姿勢を崩されれば発動出来ない。その隙を逃さず瞬時に間合いを詰めた静香が戦鎚を椿姫の横腹に抉り打つ形で捩じ込んだ。
「グッ⁉︎」
軋む音が響く。骨が折れたかのような感触と沸騰する熱が全身に襲い掛かる。その感触の直後、砲弾の様な勢いで廊下の先へと吹き飛ばされる。
「椿姫⁉︎」
「申し訳ありません、息の根を止めて来ますわ」
一瞬で懐に詰められ盾役が潰されれば攻撃役が窮地に立たされる。ソーナが動く前に頬を一筋の熱量の線が飛来する。動揺した隙に首を落とすつもりだった様だ。
「会長‼︎ やっぱ無謀、がッ⁉︎」
腕を吹き飛ばされた元士郎が叫んだ直後、今度は左腕が吹き飛ばされた。両腕を失った元士郎……。
「……私の事、忘れて居ないかしら?」
最後方。アイラは大鎌の刃を床に突き立て三脚代わりにしている。柄込み部位が銃の機構が組まれている。つまり、可変武器と言う事。狐花と静香に隠れてアイラが狙撃したのだ。
「…………っ‼︎」
「悪魔って言う割には人間の事、何にも分かって居ないのね」
椿姫も居ない。元士郎も両腕を喪った。残るはソーナのみ。完全なる臨戦体勢の3人を相手に何処まで善戦出来るか。そも、相手全員が銃火器を持っている。ファンタジー全開の悪魔社会とは180度反対の現実的な兵器だ。現代兵器舐めんなと言わんばかりの姿勢と言える。
「悪魔は文明は16世紀で止まっているから……ガワだけ21世紀になっているけど……。はぐれ悪魔が出て来る根本的な理由を全く理解出来ていない」
「くそォ……‼︎ ええい、会長を殺ると言うなら、俺を殺してからにしろ‼︎」
元士郎は両腕を喪って尚、戦意は失わなず王であるソーナの前に立ち塞がる。無論、銃火器の前に出て来るなど蜂の巣にしてくれと言わんばかりの態度。
「匙⁉︎」
「会長‼︎ 話し合いなんて初めから無、ご、……はッ⁉︎」
静止をしようとするソーナに対して元士郎の言葉を遮る様に狐花の凶弾が元士郎の胸部を撃ち貫き、側面からアーシアの銃弾弾幕が襲い掛かりその銃弾を一身に浴びて足元に血の池を作り其の儘、頽れる様に倒れ伏した。