雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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対話不要

 

 

 ソーナ・シトリーの状況は極めて悪い状態であった。火急の要件があり、尚且つ皓咲 狐花が居なければ話が出来ない事態に至って居た。しかしながら相手は『祟り神』と揶揄される存在。会話など通じない事も百も承知……。かと言って彼女抜きで話を進めれば後で悲惨な事になる事は分かりきっていた。

 その為、戦々恐々しつつも会話を以て纏めたかった。しかし結果はご覧の有り様。

 

——椿姫……匙……‼︎

 

 戦闘意欲全開の聖職者達により、椿姫は場外へ吹き飛ばされ元士郎に至っては両腕欠損の上に多数の弾丸により床に臥した。この面々の中で唯一話が通じそうなアイラも銃機構搭載大鎌を構えて臨戦体勢。

 

——銃……と言うモノは知っては居ます。ですがどの神話勢力も使用しない人間の武器。神器でも銃の形をしたモノは未だに存在していない……転生悪魔でもその銃を使う者は居ません。

 

 日本に進出したソーナは銃の存在は知っているが触れた事も見た事も無い。聞いた事がある事くらいである。

 個人携帯出来る遠距離武装、その脅威は恐るべき威力を発揮する事をまだソーナは知らない。

 

「邪魔は消えた」

 

 狐花の声。短くも現実を理解させるには充分な言葉。言葉で対話を試みようにも相手は会話を覆う形で攻撃を仕掛ける。『会話中は会話で相対する』と言う暗黙の了解を理解しない。仮に対話を試みた所でその途中で銃弾と言う返答が返されるだろう。

 

——どうする? まだ学園内には普通の人間の生徒達が多数、部活動により残っています。此処で応戦すれば必ずや見聞きされてしまう。その戦闘に巻き込まれる事は絶対に有っては行けません。

 アイラさん達は分かりませんが狐花さんは間違いなく学園全体を巻き込む戦禍を引き起こす可能性が高い。

 

 悪魔陣営の上層部は公言的には人間達との繋がりを重視している(転生悪魔の大半が元人間である事が多く、また神器持ちの下僕を求めるのが流行している為)。悪魔が一般人に悪魔的暴力を振るう行為は看過はされない。

 ただでさえ何処ぞの上級悪魔が日本神話陣営に喧嘩を売って険悪な状況になっているのに此処で火種を炎上させる訳には行かない。それこそ口実を与えてしまいかねない。巻き込まれたと言う事実だけでも批難の的(故に洗脳や催眠で隠蔽したがる傾向がある)。

 

『悪魔が日本神話に属する者に襲撃を掛けた』

 

 その事実が無くとも『戦闘』と言う事実が有れば開戦を起こす理由になり得る。今でもゴタゴタが続いている悪魔陣営は戦争をする姿勢では無いが日本神話は既に戦争しても構わない、寧ろ潰してやると言う姿勢だ。殊更、構える訳には行かない。

 ましてやその引き金をソーナが引けば、その責任は重大な物となる。そんな重い責を担い切れる程、ソーナには経験が圧倒的に足りない。

 

「……ぐ、ぐぅう……‼︎ ま、マジで殺す気かよ……‼︎」

 

「さ、匙……⁉︎」

 

 ソーナは打つ手を模索している時、血の海に沈んでいた元士郎が蠢き出した。直ぐにソーナは倒れて居た元士郎の身体を支える。その時、あるモノが滑り落ちて血の海に落下した。

 

「……さ、流石は日本が誇る漫画……命を救われたぜ……‼︎」

 

 落ちたのは分厚い冊子。銃弾によって孔だらけとなっているが辛うじて読める大文字は『週◯少◯ジャ◯◯』と書かれていた。複数枚の頁が辛うじて急所を外していた様だ。

 

「……装甲板、か」

 

 元士郎は辛うじて生きているが戦える状態では無い。精々、肉盾と言いたいが狐花達の銃火器の貫通力の前では2人纏めて打ち砕かれるのは容易に想像出来る。

 

「五月蝿ぇ‼︎ 日本の誇り舐めんじゃねぇ‼︎ ジャ◯◯の主人公を見習え‼︎ 少しは人の話を聞けや‼︎」

 

「……悪魔が人間を騙るな」

 

「悪魔に人の話の事を言われても、無意味です。悪魔の言葉は聞いては行けませんから」

 

 しかし、狐花とアーシアに全く効果は無い。寧ろダメ出しされた。第一、人間ですら無い悪魔が『()の話を聞け』と言っても説得力が無い。

 

「皆さん、お待たせしました。不浄な悪魔は無事に浄化致しましたわ」

 

 其処でソーナ達を更に窮地に陥れる要素が再び現れた。戦鎚で吹き飛ばされた椿姫を追って離脱した静香が戻って来てしまった。そして、ある物体が皆の前に放り込まれた。

 

「ッ……⁉︎」

 

 ゴロリと転がるのは生首。斬り落とされた椿姫の首であった。この時点で彼女は死亡したと嫌でもソーナは自覚させられる。

 

「……嘘だろ、副会長が……⁉︎」

 

「フフ、世界を汚す悪魔に慈悲は不要です。この傷もまた試練。試練に打ち勝ち救済への一歩をまた踏み出すのです」

 

 前門の狐花達、後門の静香。ソーナの状況は重傷の元士郎。重傷を負った元士郎を抱えて切り抜けられる余裕があるのか。

 

——……また、私を置いて行くのですか……‼︎ 皆、死んで行く……‼︎

 

 今年に入り立て続けに眷属を失って行くソーナ。此の儘では夢へと辿り着く前に野垂れ死ぬ未来も見え隠れして行く。今度は初めて自分が眷属にした『女王』を喪った。残る眷属も僅か……不意に死の輪舞曲が頭に過ぎる。

 

「生徒会長。貴方には壊れる美しさがお似合いね……」

 

「……貴方とは話が出来ると思っていたのですが」

 

——貴方は私の眷属としてスカウトしたかった。ですが今や貴方は既に日本神話に所属する人間。手を出せば日本神話も黙りはしないでしょうね。

 

「……悪いけど初歩的な芸術の何たるかさえも理解出来ない悪魔の連中とじゃ、分かり合えそうに無い。そして、初めから『敵』同士。例外中の例外が現れない限りこの事実は変わらないわ」

 

「……」

 

 唯一、対話が成立しそうなアイラでさえ拒絶の意志を見せられた。アーティストである彼女の『分かり合えない』と言う言葉に最後の希望が潰えた。全員が話し合う気は無い、もう抗戦しか手は残されて居ない事を意味している。

 

「どうしてお前らはそんなに頑ななんだよ⁉︎ 悪魔ってだけで悪いって言うのか⁉︎ そりゃ、はぐれ悪魔とか悪い事をする悪魔が居るのは馬鹿な俺だって知ってる‼︎ でもさ、全員が全員、そうだと限らねぇだろ⁉︎ 気に入らないから皆殺しって……お前はアドルフ・ヒトラーか⁉︎」

 

 悪魔であれば容赦無く根絶やしにする姿勢の狐花。その事で元士郎はお前はかの有名な独裁者の名前を引用して批難する。

 

悪魔は根絶やしにする必要がある。さすれば人類は豊かになる

 

「……ッ‼︎」

 

 その事に対して狐花はこれまたその独裁者の残した言葉を用いて返答した。

 

「私は、他人の権利を妨害したり、他人の生活を制限したり、他人を抑圧したり服従させたりすることを望まない

 

 更なる追い討ち。狐花は皓咲屋敷にアイラ達を定住させているが、別に強制したり制限したりしていない(アイラは兎も角、静香とアーシアは他に行く所が無い)寧ろ『好きにして良い』とまで言っている。

 対するソーナやリアスは自分達は他の貴族悪魔とは違うと宣って居ても、その実は催眠や記憶改竄を用いている。生活を制限(自分の都合を優先させようとしている)したり、眷属化(服従や抑圧)しようとしたり、リアスに至っては兵藤家の家庭生活を妨害(家族を洗脳して自然に振る舞う)している。

 

「独裁者? 私は政治にも支配にも興味は無い……この世界は人類のモノ……ただ、お前達が欲界から(ほろ)べば良いだけの事……‼︎」

 

「匙……‼︎ 怒らせてどうするんですか⁉︎」

 

「え、え⁉︎ 俺、やっちゃいました⁉︎」

 

 元士郎の批判は返って狐花を怒らせる要因になった。文句を言いたかったのは事実。しかし結果は対話不可能と言う最悪な状況に陥った。

 

「遊びは終わり……。ジェノサイドの下で滅べ、悪魔共」

 

 狐花はイーゼルの遮蔽物の後方で無慈悲な死刑宣告をしたのであった。

 

 

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