雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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殺戮の音色

 

 

「遊びは終わり……。ジェノサイドの下で滅べ、悪魔共」

 

 狐花はイーゼルの遮蔽物の後方で無慈悲な死刑宣告をしたのであった。もはや、これ以上の会話では何も進展しないと言う事の証明でもあった。

 

「くっ、何も得られずに終わるなんて……‼︎」

 

 ソーナは此処で死ぬ訳には行かない。これ以上、眷属達も死なせる訳には行かない。『女王』を喪った今……ソーナの戦力はガタ落ちと言って良い。相手は『祟り神』、しかも元士郎が煽った事により対話は不可能レベルにまで陥っている。

 

「……仕方ありません」

 

 ソーナは転移魔法陣を自身の足元に展開し元士郎を連れて速やかに跳躍し、狐花達の前から離脱し難を逃れた。

 

「あ、逃げられてしまいました……‼︎」

 

「チッ……逃げ足が早い。苛々する……」

 

 敵対象が消滅した事により狐花達は構えて居た武装を解除する。その場に残されたのは銃痕や穴だらけになった壁や扉。血飛沫が飛び散った床や廊下。そして、ソーナ眷属の椿姫の首級。

 

「……何れにせよ、あの転移手段をどうにかしないと逃げられちゃうわ。ピンチになったら何時でも逃げられるってのは、ちょっと面倒ね」

 

「悪魔は皆、転移魔法を使う事が出来ます。故に何処でも赴く事が出来ると言う意味ですわ……」

 

 最も日本国内の場合は『ビザ』が無ければ問答無用で抹殺ではある。狐花の場合は有ろうが無かろうが関係なく殲滅しに来る為に無意味と化すが。

 

「……むー( ̄W ̄)」

 

 殲滅し切れずにご機嫌斜めな狐花。アイラが制御して辛うじて『殲滅は悪魔だけにする事』や『自分や味方諸共犠牲にする作戦は認めない』と言う事を教えている。その為、今の所は民間人に被害を出さない状態に持ち込んでいる(大淀の介入も含めて)。

 が、それも何処まで堪え切れるかは不安ではある。そもそも狐花は何故、過剰とも言える殲滅しなければ気が済まない程に悪魔を憎んでいるのか、そも無関係な人間共々滅ぼす勢いの憎悪を抱いている。その理由をアイラ達は知らない。狐花本人も自身の過去を話そうとしない。付き合いの長い恐介と五七は知っているだろうが、その真実は決して明るいモノでは無い。寧ろドス黒いモノだと思えた。

 

「……ムカつく。こうなりゃ、腹癒せに吹っ飛ばす(・・・・・)

 

「「「え?」」」

 

 狐花は制服のスカートの裏から取り出した遠隔操作のボタンの押した。その直後、激しい振動と共に爆轟が響き渡る。

 

「え?え?き、狐花ちゃん⁉︎」

 

「爆発⁉︎ 爆発が起きましたよ⁉︎ 一体、何処で……⁉︎」

 

 アイラは窓から身体を乗り出して周囲を見渡す。旧校舎がある方角で大規模な火災が発生しているのが見て取れた。旧校舎がある立地の周囲には多数の木々があり本校舎からではその全貌は見渡す事は出来ない。

 

「狐花さん。一体、何を……?」

 

「旧校舎は悪魔『グレモリー』の根城。故にその周辺には一般生徒は立ち入る事は無い。今の時間帯ならば悪魔『グレモリー』及びその奴隷共が集まっている筈」

 

 狐花は例の商人からC4爆弾を仕入れており、五七に頼んで旧校舎の至る所に仕掛けていた。元々は跳弾狙撃が失敗した時用の二段作戦であったがゴタゴタで流れていた(忘れていたとも言う)。その爆弾を今、起爆したのだ。旧校舎諸共、悪魔共を爆殺する為にである。如何に悪魔が頑丈と雖も大量のC4爆弾の破壊力に巻き込まれれば無事では済まない。

 

「……いや、普通に火災が起きているけど?」

 

「そんな事まで知った事じゃない。規模や延焼具合から民家には届かない程度に抑えている。そろそろ通報を受けた消防車が到着するだろうから燃え移る前に消し止められる」

 

 酷い。普通に酷い……悪魔よりも外道な気がするが本人は悪魔を燼滅させる事が出来ればそれで良いのだ。幸い? 普通の民間人には巻き込まない程度に計算して爆破させた様である。それでもやり過ぎである。

 本人も悪魔が人間の構造とは違うと考えているので一酸化炭素中毒で滅ぶとは思っていない。直接的な爆殺でなければ効果は無いだろう。

 

「悪魔があの地獄の業火で焼き尽くされれば良いのですが……」

 

「……あの淫魔共々、消えて無くなってしまいます様に」

 

「貴方達はもう黙っててくれないかしら? あ、サイレンが聞こえて来た」

 

 遠くから複数の消防車が鳴らすサイレンが聞こえて来る。恐らく学校側か見かけた人間が通報をしたので有ろう。

 

「んに。良く燃えてる……あのまま、死体諸共、黒焦げになってくれれば万々歳」

 

 狐花自身も窓際に移動して黄昏時の空の下、紅く燃え上がる旧校舎や周辺の木々を見てそう告げる。自身が直接火災を起こせばそれは火災では無く融解と言える為、燃え上がる火災を見る事は少ない。

 

「……狐花ちゃん。まさか此処まで大掛かりな仕掛けを用意していたとはね」

 

「コレは遊びじゃない。殺すならば殺す努力をしなきゃ行けない。殺す為にどうするか? 何が必要?どうすれば良い? 考えた末に失敗するならそれでも良い。また別のやり方を考えるだけ……手段は1つだけじゃないから」

 

 面白半分にやっている訳では無い。狐花は明確な理由があって悪魔を燼滅しようとしている。其処に手段の問いはしない。使えるモノは使うだけ……銃火器でボーイズを選んだのも悪魔の耐久性を考慮して一撃で葬れる可能性が高いと言う理由。C4爆弾を選んだのも汎用性や利便性を考慮した結果。まさか学生がC4爆弾を用意して爆破しようとは誰も考えやしないだろう(最も高校生程度の知識ならば自作で爆弾を作ろうと思えば作れるが)。

 

「……ねぇ、狐花ちゃん」

 

「何?」

 

「常々、思っていた事があるわ。悪魔はその行動から反感を買いやすい。転生悪魔の問題も聞いた事あるし、確かに納得出来ない事も多いわ。でも、その事を考慮しても狐花ちゃんの悪魔に対する反応は余りにも過剰な気がするわ。何故?」

 

 アイラは自分から話すとは思えないが狐花にその理由を尋ねた。確かに悪魔の話は信用出来ない。それは自分も同じ。でも、民間人を巻き込んで滅ぼす程の思想はとても賛同出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……彼女(・・)が、あの人がそう願ったから。だから私はその願いを叶える。八百万から見捨てられたあの人(・・・)の願い……それを叶える為だけ。それ以外、希求するモノは無いよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黄昏の逆光を浴びて狐花はそう答えた。『あの人が願った』……つまり、狐花はその人物の願いを叶える為に動いていると言う事。

 

「……願いを叶える?」

 

「そ。願い。あの人の願いは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪魔と人間に対する惜しみない憎悪だよ。全員(・・)死んでしまえって言う呪いの憎しみだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 さて、此処までの断片を繋ぎ合わせれば……狐花の正体に辿り着けるのでは……? え?まだ、足りない?
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