「部長。旧校舎から火の手が上がって居ますわ‼︎」
「何ですって⁉︎」
一方、その頃のリアス達、オカルト研究部はグラウンドの隅にて球技の練習に打ち込んでいた。近い内に駒王学園では部活対抗球技大会が行われる。リアス率いるオカルト研究部はその大会に向けて球技の練習に明け暮れている。種目に関しては当日、発表される為に一通り行なっている様だ。
幸いにも昨日、脚を切断されると言う大怪我を負った祐斗も復帰した。が、本人は物憂に更けている状態だった。あの時の少女剣士に負けた事が尾を引いているとリアスは考えていた。
そんな矢先、学園全体に轟く爆音が響いたのだ。方角はリアス達が根城とするオカルト研究部の部室がある旧校舎の方角。当然ながらグラウンドに居たリアス達にもその轟音は耳に届いたのだ。その後、校内全放送で火災発生による避難勧告の放送が繰り返し流され始めた。
「どう言う事⁉︎」
「分かりませんわ……もしかすると日本神話陣営の強襲……?」
強襲と言えば皓咲 狐花の姿が脳裏に過ぎる。確かに悪魔を心底嫌っていると言う事実はリアスも知っているし思い知っても居る。その片鱗は見かけたが、まだ本気にはなっては居ない様にも思える(リアスの私見)。しかし、リアスよりもソーナの方がその恐ろしさを知っている様であり本人の様子から只事では無い事も感じ取れている。
「……マズいわ。旧校舎にはギャスパーが居る……‼︎」
「部長、ギャスパーって?」
「部長にはもう1人、眷属が居るんだ。でも今の部長では扱えない能力の持ち主だから魔王様の指示で一室に封印されているんだ。封印と言っても一室で閉じ籠って引き篭もりライフ……だけど、この様子だとマズいかも知れない」
一誠の疑問に祐斗が説明する。その旧校舎で爆発及び火災……状況が悪いと言わざるを得ない。
リアス達は球技の練習を中止し至急、オカルト研究部がある旧校舎へと急行。その前に辿り着く頃には多数の消防官達が懸命な消火活動を行なっている。森林地帯も炎上しておりその前に多数の消防官やテープで区切られて教師達が遠巻きに見るだけで飛び込める様な状況では無い。
「……げ、先生。と言うか……その包帯塗れなのは?」
「兵藤か? まだ、帰って……いや、この際どうでも良いか。包帯に関しては……何も聞くな。と言うか放送を聞いていなかったのか?」
「貴方達は、確か旧校舎の一室を部活動と称して活動していた……」
遠巻きに眺めているのは紫先生(包帯塗れ)と明日風先生の二人組。何と言うかこの2人、結構な頻度で一緒に居る。
「ええ、オカルト研究部よ。今は球技大会に向けての練習をしていたわ」
「全員居るのか? 部活動に関しては俺はノータッチだからな。旧校舎を活動拠点にして居る部があるのは聞いていたが……」
「それが、旧校舎に1人……残っていて」
「何だと⁉︎」
リアスの言葉に紫先生は目を見開いた。そしてビジネススーツを脱ぎ捨てて明日風先生に投げ渡す。ついでに頭に巻いていた包帯も脱ぎ捨てた。視界の邪魔であるからだ。
「おい、取り残されている生徒は誰だ?容姿で構わん」
「えーと、私と同じくらいの身長で金髪です」
「成程、チミっ子か。分かった」
紫先生の問いに小猫が答えた。それだけの情報で充分であった。
「……紫先生。火災発生時刻から約15分が経過しています。猶予は多く見積もっても10分程です……一酸化中毒の可能性も考慮して……最悪の場合は既に死亡している可能性もあり得ます」
その様子を見て明日風先生は止めもせず逆に猶予は多くは無い事を伝えた。
「充分です。後はその生徒が耐え切れるかどうか、だ。明日以降暫くは臨時休校って事を伝えておいて下さい‼︎ 其処を退けぇい、邪魔だ、失せい消防官共‼︎」
立ち入り禁止のテープを潜り抜けて紫先生は一直線に爆走し消防官達を物理的に押し退け火災蔓延る旧校舎の窓硝子を蹴り破り突入して行った。
「自分から火災現場に突撃するなんて……‼︎」
「紫先生は馬鹿です。体力馬鹿と言えますが……他の教師も少しはこの程度の度胸くらいは見せて欲しいモノです」
紫先生のあり得ない行動を見て朱乃はやや呆れて明日風先生はこの程度は許容範囲と見做している。尚、以前に『使えない教師を処分する』と言う宣言通りに使えない教師5名は明日風先生の手腕の裏工作により解雇されていた……主に無能と言う理由で。
それから8分後、焼けた小柄な体躯の生徒を肩に担いだ紫先生が悠々と火災現場から出て来た。
「ぎ、ギャスパー‼︎」
「おい、救急車ァァ‼︎ 怪我人居るから担架を寄越してくれェ‼︎」
リアスがその生徒がギャスパーである事を認識。火災により火傷を負っている様にも見える。紫先生の怒号により救急隊員が担架を持って現れてその生徒が担架に乗せられ救急車で運ばれて行く光景が見えた。
「紫先生。生徒の容体は?」
「俺は医者じゃねぇから分かる訳ねぇスよ。ただ、発見時には呼吸が浅かった……搬送先で死亡って可能性も覚悟した方が良いかも知れません」
流石の紫先生も冷や汗を流してそう報告する。救助したは良いが……搬送先で死亡と言うオチは気分的にも目覚めは最悪と言える。
「……しかし、出火原因は何だろうな?旧校舎には当直室があった筈だ。爆発からして老朽化からのガス漏れ引火って言う線もあり得るが……」
「其処は調査次第と言えますね。はぁ、教育委員会の介入……先が思いやられますね。どいつもコイツも事勿れ主義の教員ばかりで嫌になります」
学園内での火災。自然発火の場合ならば兎も角、放火の場合は警察の介入となる。そうなると殊更、ややこしい事になる。
「……あー、お前らはもう今日は帰れ。今の状況で球技大会とかやってられんだろう……練習していた事は悪いが……後ろ倒しか中止もあり得るからな。特に兵藤、臨時休校だからと言って銭湯とかで覗きなんて真似すんじゃねぇぞ」
「いやいやいや、そんな真似はしませんって」
「目が泳いで居るぞ……」
紫先生はリアス達に『面倒な事になる前に帰れ』と伝えて速やかに帰宅させた。
「はぁ、臨時残業か……」
「残業終わりに飲みに行きましょうか?」
「……俺に社会的に死ねと仰るつもりで? 明日風先生は何処から見ても小学」
「……奥歯の親知らずの次は脛骨を折られたい様ですね」
直後、鈍い音が響いた。朝に横から顎を蹴り飛ばされて親知らずを物理的に抜歯させられて夕方には左脚の骨に罅を入れられた。
「明日風先生。痛いっス……。親知らずを抜き飛ばされて火災に突入した後にこの仕打ちは酷い……」
「……ウィスキー2本。奢ってくれたら許してあげます。紫先生」
「……シバいた後に許すってのは実質的に意味が」
更に追加で鈍い怪音が響き、1人の教師の悶絶した悲鳴が夕暮れの空に轟いたと言う。
こんなオチ、他にも居た様な。