「それは……私があの人の……ッ、居る‼︎ まだ、悪魔が居るッ⁉︎」
狐花は気配を察しボーイズを構えた直後に発砲。放たれた轟音と共にアトリエの壁を粉砕。
「わわっ、バレた⁉︎」
「に、逃げよう⁉︎」
木片の残骸が舞う中、幼女に等しい声が2つ聞こえた。どうやら聞き耳を立てていた様である。
「逃すかッ‼︎」
「ちょ、狐花ちゃん⁉︎」
ボーイズを持った狐花は穴が開いた壁をボーイズで叩き壊して破壊し追撃する。本来、彼女が発するとは思えない声音で追いかけ始める。その後に聞こえてくるのは破壊の連鎖の音。
「様子が変ですわ……‼︎」
「ええ、確かに……。悪魔が憎いってのは分かるけど……言動が可笑しく見える」
狐花の行動が明らかに可笑しくなっている。かなり前傾的で発狂している様にも思える。
『おおきに、おおきに。悪いな〜。狐花のお守り任してもうて』
『いやはや、此処まで時間が掛かるとは思いもしませんでしたよ』
その時、五七と恐介の2匹がアトリエに入ってくる。今朝、『ちょいと要件があるから狐花のお守り任せるわ』との事で外出していた。
『って、何やコレ。狐花のアホが癇癪起こして暴れたんか?』
『コレはコレは……随分派手に暴れましたね』
アトリエの惨状を見て五七と恐介は呆れ気味な様子で見渡す。銃痕塗れの扉、血塗れの床、そして粉砕された壁。
「えーと、それが……」
アイラは狐花の異常な迄の悪魔や人間への殲滅の執着に関して尋ねた事、そしてつい先程聞き耳を立てていた悪魔2匹を見るや否や猛然と襲い掛かり追撃してしまった事を話した。
そして遠くの校舎からは爆音と窓硝子が破壊される様な音が聞こえて来る。先程の避難勧告の放送により一般生徒は避難したと思うが……。
『あー……遂に聞いたんやな。そりゃ気になってしゃーないやろなぁ。悪魔死ねェェェェェェ‼︎ とか言いまくっとったら、その理由は知りたぁなるよな』
「……抽象的な説明で全く分かりませんでしたわ。五七さんはご存知でしょうか?」
狐花の説明では全く分からない。故に静香は狐花と一緒に居る事が多い五七に尋ねる事にした。
『ああ、知っとるで。せやけど……俺様も知っている事は一方的なモンや。狐花がそんな説明するのは分ーとった。つーか、自分の事を話そうとせぇへんしな』
「そんなに、後ろめたい過去なのでしょうか?」
『……貴方方は人間ですからね。お嬢の数少ない良心が阻んだのでしょう』
校舎の壁の一部が融解する光景が視界の隅に映った。今まで阻止されて来た鬱憤が爆ぜたのだろう。
「あ、あの。アレは……放って置いて良いのでしょうか?」
『つい先程、認識阻害と耐衝撃の結界を張りました。外部からは認識されませんのでお気になさらず。流石に彼処まで荒れている状態で押し留めるのは此方にとっても危険でしょう。爆発した時、怒れるお嬢の癇癪に付き合わされるのは生命に関わります』
『イヤーな予感も一応、してたからな。つーか今朝の大淀はんの没収案件で既にピリピリしとったからな……。久方振りに思いっきり暴れさせといた方がええやろ。人様に迷惑にならん程度にはな』
「いや、既に校舎とかぶっ壊されてるけど?」
また1つ、窓ガラスがぶっ壊される音が聞こえた。先程の悪魔2匹の悲鳴も聞こえて来る。
『『劫魃』をブッ放されるよりかはマシやろ。アレ、やったらこんな校舎は愚か、駒王町自体、数秒も保たんで』
『……ぶっちゃけ『劫末』、『劫火』でも良い気がしますね。まぁ、敢えて文字にして名付けるならばその名称が妥当でしょうなぁ』
「そ、そんなに……?」
『ぶっちゃけ、普通の戦闘行為がアホらしく見える。齎される被害は甚大……文字通り、滅ぶ。かもやない……確実に滅ぶ。何も残らん』
五七が言うには狐花が駒王町に来た初日、廃教会に向けて放ったアレの大規模版。と言うか本気でヤバい霊術らしい。
『せやけど、狐花はそないな霊術は使いたく無いんや……理性が吹っ飛んで精神が暴走しとったら話は別になるやろけど』
そんな隠し球があるのならば、狐花の性格上、初手でいきなりブッ放す事は容易に想像出来る(小技でやるより初手必殺技で消し飛ばす方が早い)。寧ろ回り諄いやり方よりは確実に滅ぼせる。
「……何故?」
『……狐花がああ言う性格や行動目的を持って産まれた
『死ぃぃぃねェェェェェェ‼︎‼︎ 悪魔ァァァァァァァァァァァ‼︎‼︎』
今度は校舎の最上階の屋根が吹っ飛び壁が炎上し始めた。どうやらまだ鬼ごっこが続いている様だ。その数秒後、理科室の準備室から複数の爆発音が聞こえて来る。
『……イヌッコロ。もう隠すのは止さぬか?』
『せやな。狐花に教育云々頼んだ手前……知っている範囲で話した方がええやろ。少なくとも狐花がそないな説明しかせぇへんしな。分からんまま、やっても後で拗れて来るわな』
「えっと、良いのですか? 後で狐花さんが怒ったりとか……?」
『そん時は菓子で釣って機嫌取ったらええ。菓子でも与えときゃ大人しくなんのは変わっとらん』
『お嬢は確かに沸点は低いですが、鎮火するのも早いのです。関わらせたく無い事から逸らすのにも有効ですよ?』
変な事に気が向く前にお菓子で釣ってしまえ、と言う事なのだろう。幼女故に効果はあると言う事らしい。
「分かった、聞かせて頂戴」
『あんま長くは無ぇし気分悪い話になんやけど、ちとした昔話。付き合って貰おか。それはとある田舎の小さい農村での話や』
『死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねェェェェェェェェェェェェェェェ‼︎‼︎ 』
本校舎で暴れ捲る激昂した狐花の怒声を背後に五七は短い童話。それは狐花の過去、即ち『産まれた理由』をアイラ達に語り始めた。