雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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呪われた七五三鈴・皓咲 *花

 

 

『あんま長くは無ぇし気分悪い話になんやけど、ちとした昔話。付き合って貰おか。それはとある田舎の小さい農村での話や』

 

「くたばれェェェェェェェ‼︎‼︎」

 

「……あの……。狐花さんはあのままで宜しいのでしょうか……?」

 

 昔語りを始める前に狐花の激昂具合はどうするのか?とアーシアは尋ねる。

 

『放っとけい。どの道、荒神化(・・・)……荒魂が発現しとるから、刺激すると返って悪化させっで』

 

『荒魂とは和魂と番を成す日本神話、神道の概念です。和魂は平和で優しい側面に対して荒魂は荒々しく厄災を齎す側面と言う二面性が神道の信仰の根幹。して、同一の神でありながら和魂と荒魂では大きく性格が異なる程の強い個性です。全く異なる名前でも同一の神である事が多いのです』

 

「……えーと、狐花ちゃんにも荒魂と和魂があるって事?」

 

『簡単にその様に捉えて下さって結構。実際、お嬢は状況によって大きく言動が違うで御座いましょう?』

 

「「「あー……」」」

 

 そう言われて狐花の言動の極端さが腑に落ちた。悪魔が見えない所では見た目相応の幼女らしい行動が多く、大人しい。しかし悪魔が見える場所では同じ容姿なのに纏う雰囲気が大きく変貌を遂げ破壊、鏖殺、虐殺を是とする殺戮者と化す。

 

『神サンでも其処まで切り替えは速ない。狐花は群を抜いて和魂と荒魂の入れ替わりが激しい。酷ぇ時は和魂の状態で荒魂が表面化しよる。今日のは正にソレや……。穢れも溜まっとやから……遂に爆発したんやろな。荒魂が発現してホンマに荒神化しよると言動がメチャクチャになるしな』

 

 本校舎の3階部分が遂に全壊する光景が見えた。破壊、炎上、粉砕、融解。凡ゆる文明は滅びの前には無力であると告げている。

 

「……つまり本意では無い、と言うのかしら?」

 

『場合によっちゃな。せやけど、荒魂の厄災は洒落にならんのは事実やし、実際に疫病が流行らして死傷者を大量に出したっつー伝承もあるしな。せやけど、狐花は人間憎んどるのは少なからずあんねん。脱線しとったな、ほんじゃ……面白くもオチも無い昔語りしようか。相打ちは要らんで、一気に語ったる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……とある田舎の農村があったんや。その時代に於いては作物の出来によって生活が成り立つ……自給自足の時代やった』

 

 農村に於いて作物が出来るかどうかで冬を凌げるかが決まる生活。そんな時代があった。その時代に於いて怖いのが飢饉。

 

『そんなある日、その農村は日照り……即ち旱魃に陥り掛けた。此の儘では作物が育たず枯れてしまう。その時、農村にある神社の巫女が神々へ雨を降らす願いを届けて貰う為に舞、神楽舞を始めた』

 

 雨が降れば旱魃は解消され村は救われる。その願いを聞き届けて貰う為に舞を奉納する。

 

『……せやけど、雨は一向に降る気配は無かった。巫女は朝、起きて舞を続けて夜になっても舞を続けた。一日中、舞い続けた。深夜に疲れ眠り朝起きてまた舞を始めた。それでも雨は降らず……日照りは強くなる一方やった』

 

『雨が降らず日々が続く中で村人は思った。何故、雨が降らない? はやく降らせろ。皆飢えてしまう。あの巫女は役立たずだ。早く降らせろ、降らせろ、降らせろ……そう言う恨み辛みの呪いを抱いた』

 

『一方の巫女も思うた。どうしてこんなにも舞っているのに降らない? 何故、聞き届けてくれない? 苦しい、辛い、そう言う感情を沸々と浮かんでいた』

 

 現状が全く好転しない。それでも舞わねばならない。疲れる身体であっても止められない。それでも雨は降らず日照りが続いた。

 

『舞い続ける巫女は疲れて、倒れても休む暇も無くなり一日中、舞を続けざるを得なかった。村人達の圧力に晒されながらも必死に舞った。それでも、雨は降らなかった』

 

『文字通り血反吐を吐きながら舞を続ける中……悪魔が現れた。その悪魔はこう言った『お前が苦しむ姿がもっと見たい。雨が降らないのは苦しいだろう?』ってな』

 

「「「⁉︎」」」

 

『……その直後、その悪魔は巫女を犯した。巫女は処女でなければならない。その悪魔は姿を消した。日照りはその悪魔が起こしたと言う真実を知ったが、真相を知らぬ村人達の圧力で舞続けなければならなかった。血を吐き、腕が痺れ、足が弱り頭が重くなっても舞い続けた。全て無駄である事を思い知らされながら』

 

「……ひ、酷い」

 

 真相を知った。知らぬ真実。その溝がある故に無意味な光景。

 

『朝起きて昼過ぎて夕暮れ迎えて舞続け、深夜になって疲れ切った時に悪魔が現れて巫女を犯した。其の儘、死んだ様に寝て朝起きて舞う事を繰り返した』

 

「あぅあぅ……‼︎」

 

 想像しただけでも悪夢と言う他に無い光景にアーシアは顔を青褪める。想像だにしたくない光景。

 

『そして、巫女は死んだ。腹上死やった。そして、呪った……凡ゆるモノを呪った。自分を苦しめ続けた悪魔に、村人である人間達に、神に……。許さない、許さない、死ね、滅べ……その願いを抱いて……亡くなった』

 

 絶望して死んだ。その怨念は巫女1人でありながら筆舌に尽くし難い。

 

『朝、巫女が死んだ事実を知った村人は巫女の亡骸を枯れた池に捨てて其の儘、土砂を被せて埋めた。供養も何もしなかった』

 

 まだ、続きがあった。五七は語りを止めない。

 

『巫女が死んだその日の夜。雨が降った、神々の怒りの如き大雨だった。山肌を削り崩す荒狂う土石纏う濁流は家屋、畑、人間問わずに全てを攫い流し潰した。何もかも失われた。運良く難を逃れた村人も全てが喪われた為に何も得られず悉く死んだ。こうして、小さな農村は滅んだ』

 

 救いが無いとある田舎の農村の終焉。悪夢と絶望と苦痛の物語。

 

『……狐花は、その巫女が舞を舞う時に持っていた『七五三鈴*1)』が元となった付喪神や。せやけど、狐花は巫女や村人達の惜しみない憎悪、怒り、悲しみ、呪い、恨み、苦しみと言った負の感情を一心に受けて誕生した付喪神……。そう言う付喪神を呪われた付喪神と呼ぶんや』

 

 狐花の正体は『七五三鈴』の付喪神。然も、『祟り神』とも呼ばれる程に強い負の感情を宿した呪われた付喪神。初めから荒魂寄りの側面を持つ災厄。

 

『村が滅びた後、その『七五三鈴』は紆余曲折を経て彼方此方に渡って行きました。その七五三鈴を手に取った者は狂死したとか……』

 

『鬱陶いぞヤキトリ、邪魔や。そんな訳で狐花はその巫女の願いを聞き届ける為に動いとる』

 

「……な、何と言うか……酷く悲しいお話でしたね」

 

「その悪魔は何者か分からない。だから皆殺しにしようとしている訳?」

 

『そやろな。悪魔の正体が分からん以上、虱潰しに潰そうとするやろな。せやけど……悪魔は冥界と言う所を本拠にしとるんやけど、狐花は愚か日本神話陣営は冥界に行く手段が無い。

 狐花も馬鹿やない、一先ず扶桑におる悪魔を全部抹殺して完全に通行を遮断すれば溜飲は下がるやろうとしている。それに恐らくやけど悪魔に関わった人間も皆、消し去って……扶桑から悪魔の存在を完全に抹消すれば願いは叶うと判断したんやろ』

 

 目の前に現れる悪魔を鏖殺。次いで悪魔に関係を持つ人間を虱潰しに鏖殺。そうすれば『巫女』の願いは消える。

 

『……せやけど、途中で願いが歪む可能性もある。自己暗示で言い聞かせても途中で脱線して行って当初とは全く違う方向に突っ走ってしまう事がな。例えば『全人類、死んでしまえ』とかな』

 

「……いや、それ……既にその境地に行きかけているわよ。狐花ちゃんは『皆、死んでしまえ』って願いを叶えようとしているわ」

 

『……そうか。荒神化して、そんな『願い』に変貌しちまったか。そうなると『劫魃』を起こしかねんな……ヤキトリ、保険持って来て良かったな』

 

『はい。備えあれば憂いなしとはこの事ですね。少彦名命様から穢れを浄化する丸薬を処方して頂きました。本来ならば、禊いで浄化するのが筋なのですが……今のお嬢では行き過ぎて効果はありませんので、荒治療です』

 

 困った時の少彦名命様。また、変な副作用が起こりそうな気がするが……。狐花の言動が劫末レベルで危険領域に達している中、無理矢理元に戻すには荒っぽいやり方が必要の様である。

 

「……あのー、それは宜しいのですが……」

 

「激しく動き回っている狐花さんにどうやって飲ませるのでしょうか?」

 

「灼け尽きろ‼︎ 現実の仇ィィィィィィィィィィィィィィィィ‼︎‼︎」

 

「「ヤダァァァァァァァァァァァァァァァァ‼︎⁉︎」」

 

 遂には本校舎の2階も壊滅した。体育館は既に滅ぼされている。そして悪魔2匹は未だに健在の様で元気に逃げ回っている。

 

『……そうですね。あの状態のお嬢は近付く事すらままなりません』

 

『せやな。触れた途端、一瞬で骨まで融かされるのがオチやろうな……』

 

『其処で、アイラお嬢さん。策があります』

 

「え?私?」

 

 あの状態の狐花を物理的に取り押さえるのはほぼ不可能に近い。近付いただけで肉体が融解させられる程の高温を維持していると言う中、恐介は狐花を元に戻す為の策を提示するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
神楽鈴の異名

薬の副作用は?

  • 駒王町の悪魔、全員貧乳化
  • (・w・)がチビ狐花状態
  • アザゼル総督の頭が禿げる
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