冥界。其処は確かに悪魔達が蔓延る世界ではあるが、その一角には堕ちた天使こと、堕天使の巣窟たる領域が存在する。悪魔達が支配する(大半は放置気味で持て余しているが)大地よりも支配地域は狭いがそれでも相応の広さを誇る。その堕天使達の組織の本部、またの名を『グレゴリ』。その本部にある総督の執務室。
「全く……シェムハザめ……‼︎」
プリン頭、別名Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督はプリン頭を掻きながら机の上に積み上げられた無数の書類の束を見ながら嘆息する。言うまでも無く溜めに溜めた仕事であった。裏幕府の一件の後、今日に至る迄缶詰状態でこの様な有様と化していたのだ。
「必然。然るべき事をせぬば、こうなる事は理解出来る筈だ。Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督」
「……何時入ってきた?」
執務室の壁には先程まで居なかった筈のウィキッドが壁に凭れながらそう告げる。厳かな口調とその頭部に生える黒い猫耳髪がピクピクと動いている様子はミスマッチにも思える。
「回答。普通に扉を開けて入って来た」
「少しは足音を立てやがれ。何も知らない奴が見たら驚くじゃねぇか。それもお前さんの持つ『神煉具』の能力か?」
「黙秘。下らない事を言う暇が有れば仕事しろ」
「おいおい、つれねぇな……。確かに俺は神器や神滅具の研究する事が今の生き甲斐っちゃあ生き甲斐だが……。この世界全てを探しても3種としか存在しないと言う全く以って希少価値のある『神煉具』の存在は最優先事項だぜ? 寧ろ他の事なぞ全部後回しにして良い位だ……‼︎」
Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督は積まれた書類の山に対して光の槍を突き刺し持ち上げて振り払う。その勢いで書類の束は執務室中に散乱していく。
「神滅具は上位クラスともなればドラゴンや聖遺物が宿るんだが。対する神煉具は神や天使、悪魔が宿ると言う。即ち『カグツチ』、『メタトロン』、そして『ベレト』……俺が知る限りお前は『ベレト』の神煉」
書類が舞う中、一振りの黒刀が複数の書類を突き刺しながらBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督の右耳の耳朶の下を掠めて後方の壁に深々と突き刺さる。
「おい、今……割とマジで殺ろうとしたよな?」
「黙秘。下らぬ御高説を垂れる暇があるのならば仕事しろ。Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督」
書類の舞い散った後の執務室。その後ろに見えたウィキッド。額から翡翠に光るの角、そして揺らめく羽衣を纏う姿。そしてその双眸を桜色に染めていた。
「おいおい其処まで怒る事ぁ、無ぇだろ? 別に取って食おうって訳じゃねぇよ?未知の神煉具を知りたいってのは誰にでも持つ『欲』だろう? それに当事者も知らない事実を知る良い機会だと思わねぇのか?」
神煉具は神滅具よりも希少故に現時点では名前以外の能力は判明していない。有数の神器マニアのBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督でさえ、直ぐ近くに存在するのにその本人は非協力的であるが故に調べられず終いであった。こと、『ベレト』とは悪魔の王と呼ばれた者だと言われている。
「反芻。ならば、己で試すが良い」
「は?」
纏っていた翡翠の羽衣が無数の繊維の糸と解けて逝く、それは『絲』となって執務室へと侵食して行く。
「お、おいおい……‼︎」
「黒き命と白き意思を願いて、かの天使に罪の光が差し込まん。目覚めぬ事哭き眼窩と災禍の雨と共に戦に戻りて勝利を求め還り叫け。聞け、鼓動の呪言を……心の臓が揺らぐ律動を‼︎」
ウィキッドは腰に佩刀した黒い刀身を持つ太刀を抜きながら言霊を紡ぐ。
「汝の願いは聞いた。神の如き強者よ……存分に刮目するが良い」
「いや、出来れば穏便な調べかたァァァァァァァァァァァァ‼︎⁉︎」
その日、グレゴリ本部が無事、全壊。Bureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督は副総督からこっ酷く絞られた。本部自体は1時間後に無事修復出来たのだがBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督はウィキッドの破壊行為による粉塵の多さにより『神煉具』の能力を見る事は出来なかった。
「……ふ、巫山戯んな……調べる以前に仕事を増やしやがって……‼︎」
「下らぬ事をする暇が有れば仕事して下さい。そんなんだからBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督だと言われるんですよ」
「五月蝿ぇい‼︎ 誰だってあんなレアな神器、調べたいと思うだろう⁉︎ シェムハザ、お前も分かるだろう⁉︎」
「古今東西、何処を探してもBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督以外、存在しないですよ。建物は無事に直っても各部署の予算面は白紙なので一からやり直しです。それから、研究施設の備品の調整及び調達も初めからやり直し、それから溜め込んだ分もこの際、全て片付けて貰いますよ? 言っておきますが、全て終わるまで逃がしませんから。それまで研究は全て禁止です」
「鬼か⁉︎ テメェは⁉︎ 俺の生き甲斐を奪って楽しいか⁉︎」
「我々は堕天使です」
シェムハザは真顔でBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督の反論を封殺。
「分かってら、馬鹿野郎‼︎ クソォォォォ、ウィキッドの奴めェェェ……‼︎ 調べさせてくれると思ったら仕事を倍増させやがった‼︎」
「寧ろBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督の仕事を倍増させる……と言う能力では?」
「そんな神器、神滅具、神煉具はこの世から全て消してやらァァァァァァァァ‼︎‼︎」
グレゴリ本部にてBureizā Shainingu Oa Dākunesu Burēdo総督の号哭が響き渡った。
「叫んでも仕事は減りませんよ。私は私の仕事がありますので失礼します。尚、私が見ていないからってサボっていると……貴方研究資料を全て処分しますので、呉々もサボらずに仕事して下さい」
エンタープライズ、アマゾン、響が密航して来てくれたから、気分が良い。
遠慮なく『副作用』を発動出来ると言うモノです(愉悦)。