とあるオタク女の受難(ゴブリンスレイヤー編)。 作:SUN'S
その只人は変人で狂人だ。
いつもオルクボルクの後ろを着いて歩く神官の女の子に戦う術を教えたりする優しい反面、たった一つの技法を教える修行の内容はドラゴンも逃げ出すかもしれない容赦の無さだ。
最初は遅くて軽い樹脂の塊を投げていたけれど、次の日には変則的な動きを起こす弾性の付いただん樹脂の塊を投げ付けていた。そう簡単に身に付けることが出来ないから武術は奥深いというのに、まさか二日と掛からず完璧な防御技術を教えるなんて想像もしなかった。
私は変人に向かって「只人って瞬きする間に歳を取るのは聞いていたけれど、次の日には武術の技法を会得できるのね」と思った事を素直に言ったら「まあ、人間は頑張れば何でも出来る種族なのは確かだよ。私も地元で頭の可笑しい魔術師に襲われたし、本当に見てて飽きないよ」なんて言っている。
まあ、その意見には賛同する。私達より永く生きる事は出来ないけれど、人生という道を少しずつ確かに生きようとしている。それは素晴らしくて、あまりにも無謀な事だ。只人は一歩を進む毎に年老いて、やがて次の蕾を咲かす礎となる。
彼女もオルクボルクも鉱人も蜥蜴人も気付いたら居なくなってるかも知れない。それでも次に向かって進めるのは素敵だ。私達は何処へ行こうと彼らの行く末を見る事も寄り添って歩くことも出来る。
「そうなったら貴女はどうするの?」
「さあね、私は邪神の娘だから誰かと寄り添ったとして一緒に死ぬことは出来ない。それでも沢山の家族を作って、いつかは愛した人のところへ行きたいとしか思い付かないね」
「それじゃあ、もしも死ぬ時が来たら森人総出で祝ってあげる。貴女が死ぬまで愛した大好きな人と会えます様にってね!」
「まあ、その時まで気長に待ってるよ」
そう言えば変人の着けていた認識標が黒曜等級に変わっている。もう昇格したのかと驚いたけれど、よく考えればオーガと気色悪い化け物を倒したのは彼女だ。そういうことなら昇格したのも納得できる。
ただ、同じく寿命を持たない種族なのに胸部の厚みに違和感を覚える。こいつ、いったい何千歳までなん生きてるんだ。
一度、頭の中に浮かんだ疑問を消しきれず、それとなく聞けば「おおよそ一億年ぐらいかな?恐ろしき竜とかも見たことあるよ」と言われた。
私の居た故郷の誰よりも年長者だ。えぇ、嘘でしょ?と言えば人間と違って年齢を隠す必要はないじゃないと正論を言われた。
まあ、確かにそうだけれど。
私の想像を遥かに上回ったう年寄りじゃない。えっ、こいつが死ぬときに祝うとか言っちゃったけど、あと何歳まで生きるつもりだったの?
「「バビロンの裁きっ!」」
シュバッとポーズを決める神官ちゃん、その隣を陣取るピンク色の……あれがいた。いや、流石にギルドの作った訓練所にいるはずがない。
「我が名はソフトン、ソフトクリーム屋だ」
とりあえず、アレとは関わりたくない。