とあるオタク女の受難(ゴブリンスレイヤー編)。 作:SUN'S
≪月⊥日
欠伸をして無意識に開く口を手で隠しながらギルドへ入ると彼を中心とした、騒動らしきものが起こっているように見えたが、ゴブリン退治の大仕事するための協力願いらしい。
そういう紛らわしいのは止してくれ、危うく槍使いさんを襲うところだったじゃないか。そう言ったら森人弓手さんに羽交い締めにされ、鉱人導士さんと蜥蜴僧侶さんに「こんな街中で変わろうとするな」と強めに怒られてしまった。
私は普通の事を言ったつもりなのだが、どこか変な事を喋ったのだろうかと一人で考えていると虚ろな目をした神官ちゃんに「あまり深く考えるのは止めた方が良いですよ」と言われた。
私は何もしていないぞ?
ただ、自然に思ったことを喋ろうとしたら森人弓手さんに「貴女の危険さは、この前の冒険で分かってるのよ。だから、今は静かに座ってなさい」と押さえつけられ、彼らの話し合いが終わるまでお酒を飲まされた。
いったい、何がしたいのだろうか。
≪月∪日
私は訳も聞かされぬまま彼の下宿している牧場まで連れていかれ、不可視の外壁や隠蔽の魔術など使えるものは触媒すら使わされ、それが終わったら魔法を付与して回れと命令された。
彼らは何を相手取ろうとしているの?
そう刺叉擬きを作ってるを鉱人導士さんに聞けばゴブリンの変異種、つまりは王様を名乗り出したゴブリンスの討伐するということらしい。
そういう手合いは相手より自分は上手だと思い込ませたところをバクってやれば一発で終わるのでは?と考えたけど、なんだか殺る気満々の冒険者を止めるのは無理そうなので黙っておくことにした。
私は面白そうな事は大好きだけれど、今回の賽の目は絶対に変えたりすることは出来ない。むしろ四方の神々は漸く彼の異常性を目の当たりにするって訳だ。いやはや、なんとも感慨深いものだ。
私と出会ったばかりの頃は、世界その物を憎んだ瞳を兜の奥に隠していたが、今や大切なものを守るためだけに怒りや憎悪を、たった一匹のゴブリンに向けている。
どれほど惨たらしく殺すんだろうか。王様を名乗るくらい強さを手に入れたゴブリンだ、さぞや生命力も知力も高くなっていることだろう。そのゴブリンを、どのような道具と仕掛けで殺すんだ。
ああ、本当に彼を見ていると飽きない。
≪月〓日
なんとも呆気ない幕引きだ。
彼の作戦によってゴブリンは神官ちゃんの聖壁に挟まれ、彼に切っ先の折れた魔法の剣で刺され、わざと傷口を焼かれる苦痛と恐怖に耐えきれず、そのまま白目を向きながらショック死した。
もっと哀れな最後を期待していたのに、あんなゴブリンの魂なんかじゃ邪神は喜ばないし、ただの触媒の無駄遣いと骨折り損じゃないか。
そう愚痴るように呟いた瞬間、なにかに思いっきり擬態の頭を咬み千切られた。まったく、躾のなっていないくそ犬だ。不意打ちや奇襲で噛み付いて良いのはアホ面の人間だけだって言ってるでしょうが…。
しかし、この見てはいけないものを見てしまった雰囲気を切り抜ける方法は無いだろうかと考えながら次元の中へと消えた頭との思い出を思い返す。
それにしても酔っ払った森人弓手さんは他人の秘密を喋りすぎだ。そういう個人情報を喋っていいのは本人の私だけだ。