闇を駆けるヒーローアカデミア   作:シロロ少尉

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今回は緑谷vs轟だけです。スンマセン………


第十五話:一つの分岐点

「2回戦第1試合、始め!」

 

 

ミッドナイトの掛け声と共に轟が早期決着で緑谷に氷結を放った。

 

 

「フルカウル12%、スマッシュ!」

 

 

緑谷は轟の放った氷結をフルカウルを発動させ、思い切り腕を振るい相殺した。けたたましい轟音が会場全体を包んでいく。

 

 

「チッ…」

 

 

以前までの緑谷なら指を負傷しながら戦っていただろうが、今はそのリスクを無くすことができる。轟はもう一度氷結を放つが、これもまた相殺される。

 

 

『またまた轟の攻撃を打ち消した、緑谷ァ!!』

 

 

(轟は右半身ばかりを使ってくる…なら轟君から見て、左側にいけば一瞬轟君の攻撃を遅らせることができる!)

 

 

轟は父親の因縁の為、右半身の氷結しか使わず戦っている。ならばその反対側から攻撃すれば炎を使ってさえ来なければほぼ安全、これが現時点の最善策だろう。そしてそのまま緑谷は轟の左半身に回り込みながら少しずつ近づいていく。

 

 

「クソッ…!」

 

 

記憶の中の母はいつも泣いている。お前の左側が憎い。轟は戦う最中、そんな事が脳裏に浮かび上がっていた。

 

 

「俺は…絶対に左は使わねぇッ!」

 

 

轟は何度も何度も氷結を放つ。緑谷はそれを寸前で回避。それを繰り返し、お互いに体力が消耗していく。

 

 

『轟が氷をブッパァ!もうそこら中に氷の柱みてぇなもんがそびえ立ってるぜぇ!

対して緑谷は轟の氷結を躱しながらぶん殴っていく!』

 

 

「ハァ…ハァ…くっ!スマッシュ!」

 

 

轟の氷結をまた相殺する。

 

 

「俺ももうそこまで体力は無いが…まだ俺の方が有利らしいな。ありがとう、緑谷。お陰で…奴の表情が曇りかけてる。」

 

 

轟は自分の父親であるエンデヴァーを見ていた。緑谷は最初の頃の様に負傷こそはしていなかったが、それでも体力に限界がくるのは時間の問題だった。

 

 

「終わらせる…」

 

 

轟が再度氷結を放った。

 

 

「まだ…勝負は終わってないぞ…どこを見てるんだ」

 

 

「ッ!?」

 

 

さっきよりも更に強烈な突風が吹く。氷結は勿論、轟自身も場外ギリギリまで吹っ飛んでいた。

 

 

(ワン・フォー・オール)「フルカウル…20%!」

 

 

『緑谷!限界ギリギリだっつぅのにも関わらず、更にギアを上げたっぽいぞ!こっから逆襲の始まりかぁ!?』

 

 

「フルカウルは立体的な所で絶大な力を発揮できる…そして、今この場は、轟君…君の作った氷柱で囲まれている!誰が…有利だって!?」

 

 

刹那、緑谷は姿を消した。よく見ると影のような物が高速で轟の作り出した氷結の柱を飛び回っている。そして

次の瞬間、轟の左脇腹に緑谷の渾身の蹴りが炸裂する。

 

 

「ぐ…がぁ!?」

 

 

緑谷は轟に蹴りを放った後、少し距離を置いて話しかけた。

 

 

「震えてるよ…轟君」

 

 

「ッ!」

 

 

「ハァ…ハァ、個性だって…身体機能の一つ、君自身冷気に耐えられる限度があるんだろう!

それは君の左側の熱を使えば解決出来るけど…」

 

 

どんな個性にもデメリットは少なからずある。麗日なら使いすぎると酔いが起こり、上鳴なら使いすぎるとアホになる。耳郎は音質が悪くなり、芦戸は酸で手が焼ける。このように誰にでもデメリットはある。

 

 

そして轟は氷結を使うことによって、真冬の中放置されたかのように体が震えだし、寒くなる。

だが轟の個性は氷結では無い。半冷半熱…つまり熱を使えば自身の体温を調節する事ができ、デメリットはほぼ無いようなものなのだ。それでも轟は父親の炎を使いたがらない、それは意地である。全力を出していないのである。

 

 

「みんな…本気でやってるんだ」

 

 

「勝って……目標に近づく為に…一番になる為に!」

 

 

緑谷は肩で息をしながら轟に大声で叫ぶ。

 

 

「半分の力で勝つ!?僕はまだ…君に傷一つつけられちゃいないぞ!」

 

 

「全力でかかってこいッッ!!!!」

 

 

「なんの…つもりだ!」

 

 

緑谷は再び飛び上がる。氷柱を利用しながら轟に攻撃を仕掛けていく。轟はデメリットの効果で動きが通常よりも大きく遅くなり、攻撃の威力もかなり下がってきている。

 

 

「デトロイト…スマッシュ!」

 

 

「またかッ!」

 

 

緑谷の攻撃をギリギリで躱す。だがお互いにもう本当に限界が来ている。もうあと一分も戦っていられないだろう。

 

 

「なんで…そこまで!」

 

 

「期待に、答えたいんだ…!」

 

 

「笑って応えられるような……カッコいいヒーローに…なりたいんだ!!」

 

 

緑谷は再度轟に殴りかかる。鈍い音と共に轟が吹っ飛ぶ。数秒間空中を漂い、地面に落下する。

その時、轟はほんの1秒か2秒、夢を見た。泣いている母親、兄弟の顔…そして父親の暴力を。

幼少期に父親に殴られ、蹴られ…悲鳴を上げている自分の姿がそこにはあった。

 

 

(母…さん………俺は………)

 

 

母親が優しく自分を包み込んでくれた時…轟は目を覚ました。そしてゆっくりと立ち上がる。

 

 

「俺は…………親父を……親父の力をッ!」

 

 

「君のッ…力じゃないかッ!!!」

 

 

「ッ……!」

 

 

轟はずっと囚われていた。父親と言う牢獄に。それでもずっと…"オールマイト"に、ヒーローに憧れてきた。

そんな自分に母親はなりたい自分になっていいと言っていくれた。笑顔で多くの人を助ける、強いヒーローになりたかった。夢の中で母親が最後に言ってくれた言葉を覚えている。

 

 

『なりたい自分に…なっていいんだよ……』

 

 

その時、轟の左が熱く燃えたぎっていく。それは個性の力だけでは無く、自分が抱くヒーローへの想い。

轟は父親と言う牢獄から十数年掛けてようやく解放された。猛々しい炎が轟を包み込んでいく。

 

 

『これは!?』

 

 

プレゼントマイク以外にも会場全体に居る者たち全員が驚愕する。

 

 

「勝ちてぇクセに……畜生……敵に塩送るなんて……どっちがふざけてるって話だ…!」

 

 

「……凄」

 

 

「俺だって…………ヒーローにッ!!!」

 

 

お互い、最後の一撃に全てを賭ける。轟の炎は更に燃え盛り、緑谷は足は20%のまま、左腕の出力を100%にまで無理矢理あげる。そして次の瞬間緑谷が駆け出していく。轟は左手をゆっくりと前に出し、小さく囁く。

 

 

「緑谷………ありがとな」

 

 

「ミッドナイト!これ以上は!!」

 

 

「くッ!!」

 

 

セメントスとミッドナイトが二人を止めようと個性を発動させるが最早この二人の前でそれは無意味に近かった。

刹那、けたたましい轟音が響いた。ステージは弾け飛び、水蒸気が立ち込む。両者がどのようになっているかも確認出来ない。そして少しずつ水蒸気が晴れていく。そこにはボロボロになってステージ中央に倒れている緑谷と微かに意識はあるが虫の息の轟がステージ外に出ていた。

 

 

爆風で吹き飛ばされたミッドナイトはそれを確認すると、ステージ中央にいる緑谷の方に旗を上げ、高らかに声を上げた。

 

 

「轟君、場外!緑谷君、準決勝進出!!」

 

 

スタジアムから歓声が上がる。気絶している緑谷に、それは届かなかった。轟は少しだけ微笑み、そのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 




本当だったら轟君が勝つけど敢えてデク君の勝利にしてみました。フルカウルを完璧とは言えないけど使いこなしてるからこれもありかな〜とね………ね?
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