闇を駆けるヒーローアカデミア   作:シロロ少尉

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職場体験編って脳無が出てくるんですけど、今回の話で出てくる脳無は原作よりちょっと、強い設定です。




第二十二話:打倒ヒーロー殺し

現在朝6時…各自はヒーロー殺し確保に向け、準備を行っている。早朝からバタバタと慌ただしい。

 

 

「おはよう〜…狩迅君速いんだねぇ……それより喋るネズミさんはどこに行ったの?」

 

 

眠そうなホヤホヤとした顔で波動が話しかけてきた。

 

 

「寝ぼけてないで、速く準備してください。喋るネズミはあの人しかいませんよ。」

 

 

「それより歯磨きしました?顔はちゃんと洗ってくださいよ。」

 

 

「は〜い」

 

 

そう言うとそそくさと洗面所に向かっていく波動。

 

 

「狩迅君、おはよう。ねじれったら、これじゃあどっちが年上か分からないわね。」

 

 

その光景を見て少し微笑みながら、リューキュウがこっちに歩いてくる。一番最初に起きて作業に取り掛かっていたらしく、身なりがきちんとしている。狩迅は波動のとこを思い、少し複雑な顔をしていた。

 

 

「リューキュウ、今回の作戦は?」

 

 

「その事は後で会議室で話すわ。みんなを呼んでちょうだい。」

 

 

全員の支度が終わり、サイドキックの人達が集まってくる。会議室へ移動すると、即座に話が始まる。今回の作戦はリューキュウ側とサイドキック側で二手に分かれ、詮索するらしい。狩迅と波動はリューキュウ側につくことになった。

基本的には保須の中央部を主に活動区域とし、ヒーロー殺しがいたら増援を呼び、即座に撃退する。説明が終わり、すぐにヒーローコスチュームに着替え持ち場につく。

 

 

 

ーーー 活動開始してから数時間後 ーーー

 

 

「かなり数のヒーローがいる…ここまで警戒度を高くするのか。」

 

 

「でもぜんぜん異変起きないね!どうしてだろう?」

 

 

「警戒しているのか、はたまた選んでいるのか……」

 

 

辺りは不自然なほど静かで平和だった。熱心に仕事に集中する社会人、カフェでコーヒーを飲む老人、風邪の子供を連れる母親、何もかもが平和だった。

嵐の前の静けさとはこの事だろう。だが確実にヒーロー殺しは活動するはず…

 

 

「ナルガクルガ、どう?」

 

 

狩迅は常に赫眼を発動させ、空間の把握を行っていた。本人によれば、頑張れば1km先の音も聞こえるらしい。索敵にもってこいの能力である。

 

 

「いえ、まったく……」

 

 

「ヒーロー殺しは夜に動くことが多いらしいわ。もう少し待ってみましょう。必ず尻尾を出すはず…」

 

 

「リューキュウ、やる気いっぱいだねぇ!」

 

 

「勿論よ。必ず捕らえるわ、私だってトップヒーローの肩書背負っているんだから。恥じない戦いをしないといけないの。」

 

 

リューキュウの目はいつもの優しい目では無く、決意と覚悟を決めた顔をしていた。

 

 

「これが俗に言う百人力って言うんでしょうね?」

 

 

「そうだね!リューキュウ何かいつもよりかっこいいね!なんでだろ?不思議〜!」

 

 

二人がリューキュウを相手にほんの少しばかり茶化す。リューキュウは少し恥ずかしながら、優しく怒った。そんな時だった。時刻にして大体4〜5時程だろうか、狩迅は違和感を覚えていた。

 

 

「……………二人共、待ってください。」

 

 

『?』

 

 

「血の匂いがする………」

 

 

狩迅は不自然な事を口にしたあと、そこにあった壁に耳を当て、研ぎ澄ませる。

悲鳴が聞こえる。炎の音やヒーローが奮闘する声も聞こえてきた。

 

 

「来ました。ここから3時の方向…距離800、恐らくヴィランです!」

 

 

リューキュウ「ッ!良くやったわ!ねじれ、急ぐわよ!」

 

 

「うん!」

 

 

リューキュウはドラゴンの姿になり飛行、波動は個性の応用で足からエネルギーを出し飛ぶ。狩迅は飛ぶ事は出来ない為、足を迅竜化させ立体物を利用しながら同行する。

 

 

「先に様子を見てきます!」

 

 

「ええ、お願い!後で追いつくわ!」

 

 

「よろしくねーーー!」

 

 

狩迅はギアを外し更に速度を上げる。たどり着いた先のビルの上で見たのは一面炎の海となっていた戦場だった。

 

 

「あれは…脳無!?」

 

 

ヒーロー達が苦戦していたのは、かつて自分達がA組やオールマイトをギリギリまで追い詰めた脳無だった。

 

 

「だがあの時程戦闘力は無さそうに見える。量産型みたいなものなのか?一先ず、さっさとプロを助けるか…」

 

 

狩迅は亜種羅と赫眼を同時発動させ、街を襲っている脳無目掛けて渾身の蹴りを放つ。

 

 

「あれはたしか……」

 

「リューキュウの所の!!」

 

「俺達が苦戦していたあのヴィランをたった一発で……」

 

 

「怪我人はいますか!現在の被害状況は!」

 

 

脳無を再起不能にさせ、プロヒーロー達に現在の状況を聞き出す。この脳無は他にも数体ほどいるらしく、各所で戦闘が行われている。怪我人は何人かいるが死亡者はいない。

不幸中の幸いだろう。

 

 

「リューキュウ!」

 

 

「これは……」

 

 

狩迅は聞いたことを完結に話し、リューキュウの指示を待っていた。

 

 

「正体不明の脳無、突然の襲撃……考えるだけで頭が痛くなるわね。兎に角私達は他の所の増援、及びに民間人の救出を最優先するわ!ねじれはナルガクルガと一緒に行って、私は他のヒーローの応援に行くわ!」

 

 

それだけを言ってリューキュウは迅速に行動に移し飛び立っていった。

 

 

「頼みます。ねじれちゃん、急ぎますよ。」

 

 

「任せて!どこから行くの?一番近い所からの方が良いと思うよ!」

 

 

「勿論そのつもりです。向かいましょう。」

 

 

狩迅と波動は他の苦戦していたヒーローの手助けを行いながら、この事件の発端を探っていた。更に数十分後………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「超再生………厄介な」

 

 

倒していたはずの脳無が復活を繰り返していた。USJの時の脳無といくつか同じとこ特徴を持っているらしい。その中の一つが超再生。文字道理再生速度が異常な程速くなるというもの、単純で強力……そのタフさに二人も少し苦戦してしまっていた。

 

 

「あんまり強くないけど、復活されちゃったら困っちゃうな……」

 

 

「…………ねじれちゃん、民間人を誘導してきてください。この2体は俺がやります。」

 

 

「なんでなんで?二人で戦った方が良いはずだよ?リューキュウに言われたの!君を守ってって!」

 

 

「その頼みは断っておいてください。このままじゃ俺がジリ貧で、体力切れを起こしてどっちにしろいずれ負けてしまいます。」

 

 

狩迅達は戦闘を開始しておよそ数十分間脳無を抑えていたが、狩迅は短期決戦が専門の為、体力がもう僅かしかない。

 

 

「リューキュウと戦った時の姿………覚えていますか?あれは消耗が激しいので早めに決着をつけたいんです。ここじゃ被害が出る可能性がある、あなたに任せたいんです。周囲の状況をいち早く理解できるあなたなら適任かと」

 

 

波動は少し悩んでから結論を言った。答えは"はい"、確かにリューキュウを一瞬だが圧倒したあの姿なら倒せるはず。ここは狩迅に任せ、波動は周囲の民間人の誘導を開始した。

 

 

「かっこ悪くてごめんねー!」

 

 

波動は全速力で被害があった場所に駆け付けた。

 

 

「高い状況判断能力があるヒーローはより多くの人を助けられる、その行動は最善と言えます…………さぁ、脳無共……早いとこ決着を………つけてぇなぁ……」

 

 

狩迅はもう既に息切れが起こり、余裕が無かった。

 

 

「ガァァァァァァァアアアアア!!!!!」

 

 

体力の無い体に鞭を打つ。ヒーローは例え凶悪犯罪者が相手だったとしても殺害してはいけないが、今対峙している敵は超再生付き……手加減は必要無いと判断した狩迅は月迅竜を

発動させ、目が4つある脳無に飛びかかり顔面を掴みながら地面に叩き落とす。

 

 

「前の時のような失態は晒さない!」

 

 

もう一体の脳無が掴みかかってくるが、両手を広げた瞬間、懐に入り右腕で顎をアッパーカットしそのまま左足の回し蹴りをくらわせる。その脳無は真横に吹っ飛んでいき、ビルの壁にめり込む。

 

 

「ちったぁ…効いたかよ。ッ!」

 

 

手を離した四つ目の脳無が個性で全身を肥大化させ筋力を底上げして、近くにあった大型トラックを投げ飛ばしてくるが狩迅は斬撃を放ち真っ二つにし、四つ目脳無に急接近し、みぞおちに拳を深く入れた。

 

 

「ハァ…ハァ……これでしばらくは動かんだろ……数十秒はな。」

 

 

そんな事を言っている狩迅の後ろにビルに激突していた顔の無い脳無が襲いかかっていた。

バレバレに音を出していた為簡単に気配を探れた。すぐに後ろを向き、首元に手刀をくりだす。超再生でも回復するのは遅れる程のダメージを与えた。

 

 

「俺の役目はここまでだな、後はエンデヴァー、頼みます。」

 

 

偶然近くにいたプロヒーローのエンデヴァーと選手を交代した。

 

 

「チッ…」

 

 

他のヒーローが応援要請を出していたのかは分からないが、エンデヴァーがここに来ていた。狩迅はここをプロヒーローであるエンデヴァーに託し、リューキュウ達の元へ向かおうとする。

 

 

「本当に展開が早い。いきなりの脳無襲撃……まさか敵連合が…………」

 

 

ピロン

 

 

「通信機?……………ッ!」

 

 

通信機から出された信号は自分の居場所を教えるものだった。一見すると不可解な行動に見えるが、これを一括で送信してきたのは………

 

 

(緑谷………あいつが無意味な事をするとは思えないな。)

 

 

どうしょうもない不安感が、身を包んでいっている。仮に誤送信だったら今頃連絡が来ているはず。それに慎重派の緑谷がこんな事をしでかすとは誰も思えない。

 

 

(念の為………見に行っておくか。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 路地裏 ーーーー

 

 

人気の無いこの場所でヒーロー殺しであるステインと戦っている者がいた。

緑谷、飯田、そして轟である。飯田が倒れているヒーローとステインを見つけたことにより、復讐心が大きく揺さぶられ立ち向かうが、返り討ちにあう。ギリギリの所で緑谷に助けられるがそれでも状況は不利…ステインの個性は凝血、相手の血を舐めることにより一定時間行動不能にするという物、緑谷もそれに掛かってしまい絶体絶命に陥ったところを運良く轟が間に合った。

 

 

「こいつらは、殺させねぇぞ。ヒーロー殺し!」

 

 

「轟君!そいつに血ィみせちゃあ駄目だ!」

 

 

「俺なら距離を保って戦えrッ!」

 

 

ステインの投げナイフが轟の頬に掠ってしまった。間髪入れずステインが飛びかかる。

 

 

「良い友人を持ったじゃないか、インゲニウム!」

 

 

ステインが持っていた刀を振り下げる。轟の氷による防御で防ぐことができるが、ステインに服の袖を握られ血を舐められそうになる。炎を出すことによって間一髪回避できた。

轟は氷結でステインを捕らえようとするが、身のこなしが速く狭い空間をうまく利用している。

 

 

「お前も………良い!」

 

 

「しまっ…」

 

 

轟の腕にはステインの鎖のようなものが突き刺さっており、身動きが取れない。

倒れているヒーロー目掛けて刀を一直線にし、トドメを刺そうとする。

 

 

「ッ!!」

 

 

「トドメッ!」

 

 

「させん。」

 

 

緑谷の送信を見て駆け付けた狩迅が上から落ちてきてその場に到着する。ヒーロー殺しと思われるその人物に一発蹴りを入れ、距離を置いた。

 

 

「狩迅君!」 

 

 

「悪い、遅くなった。あいつがヒーロー殺しで間違いないな?」

 

 

「邪魔だ……どけ、俺はそこにいる贋作を殺す義務がある!」

 

 

「贋作…か。お前の言う贋作ってのは、何なんだ?」

 

 

ヒーロー殺しが怒りの表情を見せ、荒々しい声で狩迅の問に答える。

 

 

「ヒーローは、見返りを求めてはならない。自己犠牲を持って得られる称号でなくてはならない!全ては、正しき社会の為に……」

 

 

狩迅はヒーロー殺しの思想に少し疑問を抱いていた。見返りを求めてはならない…それは本当にそうなのだろうか…

 

 

「そうか…一つ質問したい。ヒーローは金を貰える職業だ。だがその金を自分の家族や愛する者の為に必要とする者もいる。人を助けながら、親に楽をさせてやりたいって愛情を抱える者がいる。お前から見て、そいつも贋作か?」

 

 

ヒーロー殺しは少しの間を開ける。

 

 

「……………さぁな………」

 

 

「少なくとも、俺は本物だと思う。だが、お前が仕留めてきた者の中にもこういった奴が少なからず居たはずだ。人は人の自由を奪える程自由じゃねぇ。」

 

 

「貴様は……分からない。贋作か、それとも本物か?」

 

 

「どうだろうな…」

 

 

再び戦闘が始まる。

 

 

「下がれ!お前ら!」

 

 

轟が氷結で再度ステインを捕らえようとするが、これも牽制になっただけであった。

 

 

「何か動けるようになってた!」

 

 

「緑谷!奴の個性は!」

 

 

「多分、血を舐めた相手の身動きをさせなくする……だと思う。」

 

 

「緑谷が動けるならなんで飯田は動けてねぇんだ?」

 

 

「血に関係あるなら、血液型がトリガーか?」

 

 

現に一番最初に血を舐められた飯田は未だに動けそうにない。

 

 

「飯田はAだったな。緑谷はOか…」

 

 

「…………」

 

 

「狩迅君の血液型なんだっけ!」

 

 

「AB、多分飯田より長い。一度捕まったら終いだな……それに俺はさっきの脳無との長期戦で体力があまり残っていない。この場での最大戦力は緑谷…お前だ。」

 

 

「クッ……轟君、僕と狩迅君が奴の気を引き付けるから、君は後方支援を!」

 

 

「あぁ、3人で守るぞ!」

 

 

「3対1か…甘くは無いな。」

 

 

緑谷はフルカウルを15%に、狩迅はなけなしの体力で赫眼を発動させ周りの建物を利用しながら攻撃を仕掛ける。だがステインは速い身のこなしで二人の攻撃を避け、反撃をしようとするが轟の氷結と炎がそれを邪魔する。

 

 

戦いの最中緑谷はステインに足を切られ、血を流してしまう。ギリギリの所で轟の支援が間に合うが、連携があまり上手く行かない。そんな時、轟の後ろから飯田のか細い声が聞こえてくる。

 

 

「やめてくれ………」

 

 

「ッ!」

 

 

「もう……やめてくれ………!」

 

 

飯田は涙を浮かべながら悲痛に語りかける。

 

 

「やめてほしけりゃ立て!!」

 

 

ステインに切られたことにより、刀に血がついていた。緑谷は体の自由が再度効かなくなり、動けなくなってしまう。

 

 

「なりてぇもんちゃんと見ろ!!」

 

 

轟が炎を噴出し、ステインを後退させる。飯田はその言葉に自分が情けなく感じ、奮い立とうとする。

 

 

(何がヒーロー…ともに守られ、血を流させて……ヒーロー殺しステイン奴に罪を思い知らせんが為に僕は兄の名を使った。目の前のことだけ、自分のことだけしか見れちゃいない。……お前の言うとおりだ。ヒーロー殺し、僕は彼らとは違う!未熟者だ…足元にも及ばない!それでも……!)

 

 

「チッ…速い、轟!」

 

 

「氷と炎、言われたことはないか?個性に感け、動きが大雑把だと!」

 

 

轟は懐に入られてしまい、ステインによって胴体を切られそうになってしまう。

 

 

「轟君ッ!!!」

 

 

「ハァ…ハァ…体が……言う事を聞かねぇ…」

 

 

狩迅も体力に限界が来ていた。このままでは轟が殺される……そう思ったときだった。

 

 

(今ここで立たなきゃ……二度と…もう二度と彼らに!兄さんに追いつけなくなってしまう!)

 

 

「レシプロ、バーストォォォ!!」

 

 

飯田が遂に復活した。レシプロバーストによる高速の蹴りでステインを吹き飛ばす。

 

 

「速い!」

 

 

「余所見してんじゃねぇよ…」

 

 

「なにっ!?」

 

 

「お前寸勁って知ってるか?体当たりの力を拳に集中させるイメージなんだがよ…」

 

 

吹き飛ばされたステインの真後ろに狩迅は即座に移動し、背中に軽い手刀を当てていた。

 

 

「個性無しでも人の骨をバキバキ折れるんだってよ?俺は初心者だから下手だけど、大目に見てくれよ?」

 

 

「させるかッ!」

 

 

「遅ぇ…」

 

 

次の瞬間、ステインは背中から猛烈な痛みがほとばしる。体の骨の何本かがいってしまっただろう。口から血反吐を吐いた。

 

 

「やるぞ…これで最後だ!」

 

 

「俺が折れれば……インゲニウムは死んでしまう!」

 

 

「論………外ィ!」

 

 

ステインに向かって轟が炎を放出する。倒れていたヒーローから逃げろと言われるが、

恐らくそんな時間は与えてくれないだろう。だがステインも狩迅による背中へのダメージとヒーローの増援がもうすぐ来ることには焦りを感じていた。

 

 

「飯田、お前のレシプロの発動時間は短いだろ。早めに蹴りをつけねぇとまずいぞ。」

 

 

「確かにそうだ…轟君!俺の足を凍らせてくれ!排気口は凍らせずにな!」

 

 

「邪魔だ!」

 

 

ステインの投げナイフが轟に向かって飛んでくる。

 

 

間一髪で飯田が腕を犠牲にすることで轟を助ける。その頃緑谷は少しずつではあるが、

段々と動けるようになっていた。フルカウルを発動させ、3人の元へ駆けつけようとする。

 

 

轟は狩迅が時間を稼いでる間に、飯田の足を凍らせる。

 

 

(戦うんだ……腕がどうなろうといい!)

 

 

「レシプロ……エクステンド!!」

 

 

「ワンフォーオール、フルカウル25%!」

 

 

「限界を超える。双眸赫然……亜種羅ァァ!」

 

 

ビルから落下するステインに飯田と緑谷と狩迅が迎え撃つ。

 

 

『今は………』

 

 

「行け!」

 

 

(足が……)

 

 

(拳が……)

 

 

(腕が……)

 

 

『あれば……いい!!』

 

 

「ッ!!?」

 

 

飯田の蹴りは横腹に、緑谷の拳は顔面に、狩迅の刃は胴体にそれぞれ深々と刺さった。

 

 

「出力を上げるには、無茶があった……腕が、痛い……!」

 

 

(駄目だ……腕の感覚が……)

 

 

(奴の動きを止められた!チャンスだ!)

 

 

「ッ!シャァ!」

 

 

一瞬意識が飛んだが、すぐに持ち直し、刀を振るう。

 

 

「お前を倒そう、今度は犯罪者として!」

 

 

「畳み掛けろォ!!」

 

 

「ヒーローとして!!!」

 

 

飯田が蹴りでステインを上へふっ飛ばし、轟の炎で追い打ちをかける。流石のステインもこのダメージは大きく、意識を手放した。

落下する三人を轟の氷でうまく救出し、ステインの状態を確認する。

 

 

「流石に気絶してる……っぽい」

 

 

「じゃあ拘束して通りに出よう。」

 

 

「何か縛れるものは……ゴミ箱にねぇか?」

 

 

「探してみるか。」

 

 

「念の為、武器は全部外しておこう。」

 

 

「………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

「ネイティブさん、動けますか?」

 

 

「あぁ、大丈夫になった!」

 

 

倒れていたヒーローはしばらくしたら動けるようになって、負傷した緑谷をおぶって連れて行っていた。

 

 

「轟、それじゃあすぐに解けねぇか?」

 

 

「もう一つぐらい巻いとくか………」

 

 

「轟君!やはり僕が引く!」

 

 

「お前腕グチャグチャだろ…」

 

 

「悪かった…プロの俺が完全に足手まといだった。」

 

 

「いえ、一対一でヒーロー殺しの個性だと…仕方ないです。」

 

 

「狩迅と飯田が疲弊してたとはいえ、4対1の上にこいつ自身のミスがあってギリギリ勝てた。」

 

 

「確かに最終局面ではヒーロー殺しの動きに焦りが生じていた。緑谷の時間に気を取られていたんだろう。」

 

 

移動している最中、今回の事の話をしていたが、飯田はあまり喋らなかった。そしてしばらく歩いていると前から小さい黄色の格好をしたお爺さんが緑谷の事を呼んでいた。

 

 

「な…何故お前がここに!?」

 

 

「グラントリノ!」

 

 

「新幹線で待っていろっていったろ!」

 

 

道路の向こう側にいたのが、瞬時にこっちに移動して緑谷に顔面キックをお見舞いする。

緑谷はグラントリノに謝罪し、3人に紹介した。

その後はプロヒーロー達が集合、応援に来てくれたらしい。

 

 

「子供?」

 

「酷い怪我じゃないか!」

 

「君は、確か脳無と戦っていた……」

 

 

「どうも、ヒーロー殺しは捕まえましたよ。」

 

 

周囲のヒーロー達が驚く。すぐに警察を呼び出し、事の片付けを行おうとしていた。

そんな中、飯田がいきなり謝罪をしてきた。

 

 

「みんな、僕のせいで傷を負わせた、本当にすまなかった……怒りで何も……見えなくなってしまっていた………」

 

 

涙を浮かべながら、深々と頭を下げる飯田。三人は彼に慰めの言葉をかける。

飯田は少し、立ち直れたようだった。

 

 

「ッ!伏せろ!」

 

 

グラントリノが突然声を上げる。上空を見ると、翼の生えた脳無の姿がある。

その脳無は緑谷を掴むと、そのまま飛び去ろうとする。

 

 

『緑谷!』

 

 

脳無の片目はヒーローとの戦いで負傷したのか、抉れており血を流して近くにいたヒーローの顔にかかる。

 

 

(まずい…あまり上空に行かれると!俺の個性じゃ届かなくなる!)

 

 

いきなりの絶体絶命、その時だった……

 

 

「……………」

 

 

隠し持っていた小さいナイフで縄を切り、ヒーローの顔にかかった脳無の血をなめ取る。

 

 

「偽物が蔓延るこの社会も………いたずらに力を振りまく犯罪者も……」

 

 

ステインが脳無の頭にナイフを突き刺す。脳無はそのまま地面に落下し、ステインに殺された。結果的に緑谷は助かったが、ヒーロー殺しの腕に掴まれている。

 

 

「ハァ…ハァ……粛清対象だ…!」

 

 

「ッ!?」

 

 

「全ては……正しき社会の為にッ!!」

 

 

(あれ程のダメージを受けて、まだ立つのか!?)

 

 

飯田を始めとする現地の者全員がステインの復活を驚いていた。

 

ーーーー ??? ーーーー

 

 

「おいおいおいおい……何殺されてんだあの脳無!なんであのガキ共がいる!」

 

 

悪意が近くに潜んでいた。

 

 

「言いたい事が追いつかないぜ……めちゃくちゃだッ!!なんで…思い道理にならない…」

 

 

その少年は、既に傷がある首をがむしゃらに掻いていた。

 

 

ーーーー

 

 

ヒーロー全員が戦闘態勢に入る。ステインへの警戒心を最大にし、緊迫感が芽生える。

そこへ、現ナンバー2であり、轟の父でもあるエンデヴァーが到着した。

あの脳無を取り逃がしたのはエンデヴァーのようだ。

 

 

「何故一塊になっている。こっちにヴィランが逃げて来たはずだが……」

 

 

「あちらは……もう!?」

 

 

「多少手荒になってしまったがな。して、あの男はまさか……」

 

 

「ハァ…ハァ……エンデヴァーッ!!」

 

 

ステインの顔についていた布が落ち、素顔が露わになる。

 

 

「ヒーロー殺し!!」

 

 

「まて!轟!」

 

 

ステインがゆっくりとこっちを見てくる。その表情はとても人間とは思えない、化け物のような顔だった。

 

 

「偽物ォ!!」

 

 

体はもう動かないはず、それでも立ち上がりヒーロー達を睨みつける。全員がその姿に戦慄し、恐怖を覚えていた。

 

 

「正さねば、誰かが血に染まらねば、ヒーローを取り戻さねば!!」

 

 

「来い、偽物共ォ!俺を殺して良いのは、本物のヒーロー…オールマイトだけだァァァ!!!」

 

 

その異様な姿には、狩迅やエンデヴァーすらも恐れ慄いていた。それ程の気迫と威圧感があったのだ。その時の感覚は正に、蛇に睨まれた蛙だった。

だが力尽きたのだろうか、手に持っていたナイフを手放し立ったまま気絶した。

 

 

あとから聞いた話だが、この時、ヒーロー殺しは折れた肋骨が肺に刺さっていたらしい。

誰も血を舐め取られてなんかいなかった。なのに、あの場であの一瞬…ヒーロー殺しだけが

確かに相手に立ち向かっていた。

 

 

 

その意志はまた、他の意志へ受け継がれる事になる事を、まだ誰も知る由もなかった。




もうすぐ林間合宿編………今のうちに決めておこう。

狩迅の相手は……

  • オールマイトを3対1で……
  • オールマイトとタイマン勝負
  • 轟と八百万と一緒に相澤先生〜
  • それ以外の先生方〜

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