闇を駆けるヒーローアカデミア   作:シロロ少尉

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最近忙しくてたまらない……申し訳ないですが本来2〜3話かけて書こうと思ったのをギュッと凝縮させてもらいました。読みづらかったら申し訳ねぇ……戦闘中心会です。どぞ


第三十三話:暗闇の中で輝く灯火

ーーーー 緑谷side ーーーー

 

 

死柄木達を見事に捕らえ、脳無の生産場も完全に制圧したヒーロー達だったが、土壇場に来て謎の黒い液体に牙剥を除く敵連合全員と爆豪がどこかへ連れ去られてしまった。

オールマイトは何かを察し、すぐにどこかへ向かっていく。

 

 

持ち場はエンデヴァーに託されたが、捕獲されていた牙剥がいきなり動き出しものの数秒でシンリンカムイやエッジショットを戦闘不能に、その他にも数百にも及ぶ警察官を鏖殺する。エンデヴァーも他のヒーローと同じく戦闘不能にさせられていた。グラントリノはオールマイトとともに行動しており、現状は理解しきれていない。

 

 

これが現在までの流れ、だが驚異となるのは牙剥だけでは無い。彼はあくまでもナンバー2、そう、ナンバー2なのだ。今その"恐怖の象徴"が動き出す。

 

 

「なるほど、相当の練習量と実務経験故の強さだ。君のはいらないなぁ、弔とは性の合わない個性だ。」

 

 

制圧が完了していたこの場に、一人の男性が現れた。それは異様な存在感を放っており、ベストジーニストがすぐに捕獲するも、一瞬にして消し飛ばされる。見ていた者は何が起きたのかすら理解出来ていなかった。

 

 

(何だあいつ…何が起きたッ!?)

 

 

(一瞬で全部……かき消されたッ…)

 

 

(逃げなくては………分かっているのにッ…!)

 

 

恐怖というのは残酷なものである、人は真に怯えたとき、何をするだろうか。必死で逃げる?助けを求めて叫ぶ?命乞いをする?どれも違う。何もできないのだ。

動くことも、叫ぶ事も、あまつさえ目を閉じる事も…彼らの脳裏にはあまりの恐怖に、自分の無残に殺される姿が明確に映っていた。まさに圧倒的な存在感だった。

 

 

「プヘァ!!くっせぇ…!?んじゃこりゃ…!?」

 

 

(あれは…爆豪!?一体どこから…)

 

 

狩迅の赫眼には一切反応しなかった爆豪が、いきなり現れた。それに続き敵連合の連中も続々とその謎の黒い液体から姿を現していた。恐らくワープの類か何かだろう。

 

 

「悪いね爆豪君」

 

 

「あぁ!?」

 

 

「ぐへぁ…」

 

 

「これ嫌な匂いです…」

 

 

「なんかくっせぇ!いい匂いだな〜」

 

 

(あれが敵連合の連中か、だがおかしい。牙剥はどうした、捕まったのか?だが並のヒーローじゃ手も足も出ないはず…状況が掴めん。迂闊に手を出したらこっちが殺られる。どうする…)

 

 

狩迅がこの状況の打開策を考えている最中の出来事だった。緑谷が振り返り、進もうとする所を必死な表情な飯田に止められる。ストッパーの役割を持つ飯田と八百万も必死で頭を動かす。その瞬間…

 

 

「全てを返してもらうぞ…オールフォーワンッ!!」

 

 

「また僕を殺すかぁ?オールマイト!!」

 

 

空からいきなり現れたオールマイトがオールフォーワンに向かって殴りかかる。対するオールフォーワンはその拳を軽々と受け止め、跳ね返した。

 

 

「随分遅かったじゃないか、バーからここまで5キロ余り、衰えたねオールマイト」

 

 

「貴様こそなんだ、その工業地帯のようなマスクは!だいぶ無理してるんじゃあないか?6年前とは同じ過ちはしない。オールフォーワン!!爆豪少年を助ける、そして今度こそ貴様を刑務所にぶち込む!貴様の操る敵連合諸共ォォォ!!!」

 

 

「それはやる事が多くて大変だな、お互いに!」

 

 

オールマイトが左腕で攻撃しようとするが、オールフォーワンから衝撃波が流れオールマイトを遠くまで吹き飛ばす。ビルを薙ぎ倒しながらドンドンとその場が崩れ去っていく…

 

 

「空気を押し出す+筋骨バネ化、瞬発力×4 膂力増強×3……この組み合わせは楽しいなぁ、増強系はもう少し足すか」

 

 

「オールマイト!!」

 

 

「心配しなくてもこの程度では死なないよ。だからこの場は逃げろ弔、その子を連れて…

黒霧、皆を逃がすんだ。」

 

 

オールフォーワンの指から何か黒い物が飛び出し、黒霧の胸を貫く。マグネが心配するが、問題なしに個性を発動する。

 

 

「個性強制発動、さぁ行け!常に考えろ弔、君はまだまだ成長できるんだ!」

 

 

オールフォーワンは空中へ浮かびあがると、再びオールマイトと真正面からの戦闘を行い出した。

 

 

(オ…オールマイト!オールフォーワンが邪魔して、かっちゃんを助けられないんだ!その隙に敵連合はかっちゃん諸共逃走しようとしてる!かっちゃんは囲まれてて、逃げられる状況じゃない!!?)

 

 

(僕らは…戦うことが許されないッ)

 

 

(俺が全てを投げ売って、一か八かの突進をすれば一瞬だけでも時間が作れるか?だが…)

 

 

狩迅は自分の右腕を抑え、苦悩した表情を浮かべる。

 

 

(俺の体は本調子とは程遠い、しかも全員の個性を把握しきれていない。仮に俺が行ったとしても、爆豪の二の舞いになるかもしれん。戦わずして、この場を退けるには…)

 

 

「みんなっ!」

 

 

突然、緑谷が5人に声をかける。飯田は突撃するかと焦り、すぐに止めるがそうじゃないらしい。この場を戦わずに爆豪を救出できて、尚且誰もオールマイトの邪魔をせずにできる方法が緑谷の頭の中に浮かび上がる。

 

 

その作戦を完結にまとめ、全員に話し始める。緑谷のフルカウルと飯田のレシプロで加速し、切島が壁を破壊する。その瞬間に轟が最大量の氷結を発生させ、ヴィラン達の注意を引く。その時はまだ恐らく気づかれていない。

 

 

『!?』

 

 

「あれは…」

 

 

そして空中に飛んだところを切島が爆豪を呼び求める。簡単に話すとこうだ。八百万と狩迅はそのまま待機して、あとは爆豪の意思で全てが決まる。

 

 

オールフォーワンが手をかざし、緑谷達に攻撃しようとするが、邪魔するのはオールマイトも同様、誰にも邪魔はできない。そして今まで爆豪と対等な関係をしてきた切島だからこそできること…

 

 

「来いッ!!!」

 

 

(ッ!?逃がすか!!)

 

 

「エェアアアアアア!!」

 

 

死柄木が爆豪を再び捕まえようとした瞬間、爆豪の手から爆発が起きる。その高い推進力で瞬く間に飛んでいき、見事切島の手を掴んだ。

 

 

「へ…馬鹿かよ…」

 

 

「なにィィィ!?」

 

 

「爆豪君!俺の合図に合わせて爆風で!」

 

 

「テメェが俺に合わせろや!!」

 

 

「張り合うなこんな時にィ!?」

 

 

ーーーー 待機組 ーーーー

 

 

「思った通り、あっちに釘付けか、逃げるぞ!」

 

 

「はい!」

 

 

待機していた轟と八百万が持ち場を離れようとするが、狩迅が動く気配が無かった。どこかを見つめている。

 

 

「おい狩迅、どうした?逃げるぞ!」

 

 

「お前ら、先逃げといてくれ。俺の出番が来るかもしれない。」

 

 

『え?』

 

 

「八百万、悪いがこれを持っていってくれ。」

 

 

狩迅は着ていたロングスカート、ハイヒール、長髪のカツラを脱ぎ八百万に手渡しした。

 

 

「何かが…起こる気がする。」

 

 

ーーーー

 

 

「どこにでも、現れやがる!!」

 

 

「まじかよ、全く!」

 

 

「逃がすな!遠距離あるやつは!!」

 

 

「荼毘に黒霧、両方ダウン!」

 

 

「あんたらくっついて!」

 

 

マグネ:個性、磁力。自身から半径4〜5mの人物に磁力を付加、全身、一部、力の調整可能。男がS極、女がN極となる!自身には付加出来ないぞ!

 

 

「いくわよ!」

 

 

スピナーをバネにして、コンプレスが空中へ一気に飛ぶ、その速度は凄まじくドンドンと爆豪達へと近づくが、瀕死のMT.レディの巨大化によって顔面でコンプレスを受け止める。

 

 

「救出…優先…………行って、バカガキ!」

 

 

「まだ間に合う、もう一発行くわ!」

 

 

マグネが再び個性を発動しようとしたその時、ようやく到着したグラントリノの高速蹴りによってトゥワイス、マグネ、スピナーが気絶させられる。

 

 

「遅いですよ!」

 

 

「お前が速すぎるんだよ!なぁあいつ緑谷、本当ますますお前に似てきとる!悪い方向に!!」

 

 

「えぇ、本当に………ッ!」

 

 

爆豪の救出に成功し、これでオールマイトも何も気にせず存分に戦うことができる。連合の殆ども気絶させ、うまくこの場を有利にさせることができた。しかし、ホッとしたのも束の間、突然地面が揺れ始めた。

 

 

「何だ!?」

 

 

「あれは…緑谷少年!避けろォォォォォ!!」

 

 

ーーーー

 

 

「オールマイト?」

 

 

「何だいきなr……ってなんだありゃ!?」

 

 

前を見るとそこには途轍もないスピードで自分らに向かってオレンジ色の閃光のようなものがやって来ていた。その正体は…

 

 

「よく生きていたものだ、あの地獄から。雄英生!!」

 

 

その何かは切島に向かって、殴りかかろうとしていた。そして拳と切島の顔の距離が30cmもなくなった瞬間、後ろからも白い光のようなものが現れ、その拳を受け止めていた。

 

 

「あの光は、月迅竜!狩迅君か!!」

 

 

「さっさと行け!!こいつは、俺がここで仕留める!」

 

 

「また死合うとしようか、狩迅龍騎…大轟竜!!」

 

 

大轟竜、とその名を呼ぶと、牙剥の髪と目の色が赤黒く染まっていき、威圧感が更に高くなっていく。

 

 

「ンッ!?」

 

 

牙剥は掴まれていた腕を解き、狩迅の腹部目掛けて轟竜化させて足でオールマイトの元へ吹き飛ばす。

 

 

「遅くなりました、オールフォーワン。少しエンデヴァーとやらに手こずりましてね。」

 

 

「な…待て!おい牙剥!」

 

 

牙剥がマグネに腕を差し込むと、死柄木達の体から妙なオーラが出始めた。トガ以外は全員青、トガだけピンク色に光り、その次の瞬間死柄木達は一気にトガの方へ向かっていきワープホールへ入っていった。そして最後にマグネを投げ飛ばし、そのワープホールは閉じた。

 

 

(いいかい弔、君はまだ戦い続けなければならない。君はまだまだ成長できるんだ)

 

 

「待っていたよ、牙剥。弔に似合った個性はあったかい?」

 

 

「有益な情報は伝えられないかと」

 

 

「そうか、それは残念だ。」

 

 

「待て貴様!エンデヴァー達はどうした!貴様はシンリンカムイによって捕らえられていたはずだ!!」

 

 

「あまりデカい声を出さないで貰いたいね、オールマイト。心配しなくてもちゃんと生かしているよ。ナンバー2の肩書を持っているにしては呆気なかったがね。」

 

 

「………警察の方々はどうした」

 

 

「弱者の事はあまり興味がない、それに私は過去には囚われない性格でね。もしかしたら、殺したかも知れないな…」

 

 

それを察したオールマイトは歯を食いしばり、血が出るほど拳を固く握りしめた。

 

 

「貴様ァァァァァ!!」

 

 

「荒鉤爪、竜の轟拳!!」

 

 

オールマイトが牙剥へ殴りかかろうとする。しかしその腕は簡単に受け止められ、跳ね返された。その反動か、血反吐を吐き、フラフラな状態になっている。

 

 

「流石に効いたな、腕が痺れたよ。」

 

 

「だがしかしだオールマイト。君、少しずつだが………パワーが落ちていっているだろう?」

 

 

(そうか!俊典…活動限界がもうッ!)

 

 

「今から6年前の戦いで負った腹部の傷、相当引きずっているらしいねぇ?体が悲鳴を上げているのが目に見えて分かるよ。君も無様に死ぬのかい?あの志村奈々のように…」

 

 

「お師匠の名を、軽々しく呼ぶなァァァ!!」

 

 

「牙剥」

 

 

「了解」

 

 

再びオールマイトが仕掛けるも、衝撃波によって逆に吹き飛ばされてしまう。今のオールマイトに態勢を立て直すような力は残っておらず、後ろにあるヘリに激突しようとしていた。もう駄目かと思った時…倒れていた狩迅が立ち上がり、オールマイトを連れ戻す。

 

 

「狩迅少年!!」

 

 

「今この場で感情的になったら、それは即ち死を意味する。冷静になってくれ…戦えるのは、俺たちしかいないんです。」

 

 

「あぁ、すまない、助かったよ。」

 

 

「バカ野郎、下手に動くんじゃない!ここからが正念場だぞ!!」

 

 

「オールフォーワン、彼は私が、オールマイトは貴方に任せましょう。」

 

 

「いいよ、そうするとしよう。」

 

 

横に並び立つ悪魔、対するは満身創痍の深手二人と少しダメージを受けているグラントリノ、どう考えても不利だった。それでも狩迅は体中に力を込め、再び月迅竜へと変身する。

 

 

「あんたが元凶を倒すまでは、絶対に手出しはさせない…平和の象徴としての役目を、ここで終えてくれ。」

 

 

「おい待て!!」

 

 

「それじゃあ、よろしく頼むよ。牙剥」

 

 

狩迅が牙剥へと突撃していき、牙剥もそれに対応する。高速の連打を超至近距離で互いに浴びせ合い、拳の衝撃が爆発のような音を起こす。

 

 

「ゼァアァァァァ!!!」

 

 

「どうした?以前戦ったときはもっと手応えを感じたが!?」

 

 

狩迅が蹴りを入れた瞬間、牙剥のカウンターの右裏拳が見事に決まる。狩迅は吹き飛ばされながらも態勢を立て直し、今度は腕を迅竜化させ殴り合う。

 

 

「遅い!やはりまだ完全には体力が戻っていないようだな。君のその攻撃、まるで痛くない。そんな状態で私と張り合う気かい?」

 

 

(チィ!)

 

 

「クソッタレめ!」

 

 

血反吐を吐きながら、牙剥へ向かってゆく狩迅。オールマイトはその姿を見て途方も無い焦りを感じていた。そのままでは、狩迅が殺される…と

 

 

『敵連合の一人と雄英生徒と思わしき人物が激しい攻防戦を繰り広げています!辺りには爆発のような音が響き渡り、こっちまで攻撃の衝撃波が流れてきます!もはや人間の目で追えるスピードではありません!!』

 

 

『現在、オールマイト氏も元凶と思われるヴィランと交戦中、辺り一帯が完全に崩壊しており、一瞬にして地獄のような光景が広がっております……信じられません!街を破壊し、平和の象徴と互角以上に渡り合っています!!』

 

 

「ガァァァァァァァ!!」

 

 

「筋力増強×3 膂力増強×4 瞬発力、反射神経×8!!どうしたぁ?顔色が悪いぞ?

随分と無理をしているようだね…!」

 

 

先程よりも強烈な殴り、蹴りが狩迅を襲う。体力的にも限界が近い体は既に悲鳴を上げ、視界も少しぼやけてきた。対する牙剥は無限の体力と精神力を併せ持つ個性によって全く怯んでいなかった。このままではジリ貧になってしまう、狩迅は保ってあと3分ほどだろう。

 

 

「どうだい?自分の大切な生徒が成す術もなく惨めに叩き潰されていく光景は…」

 

 

「君が僕を恨むように、僕も君を恨んでるんだぜ?僕は君の師匠を殺したが、君も僕の築き上げてきたものを壊しただろう?だから君には可能な限り醜く惨たらしい死を迎えてほしいんだ!!」

 

 

「避けろ!あのガキンチョが作ってくれている時間を無駄にするな!!」

 

 

オールフォーワンの腕が肥大化し、オールマイトへ照準を合わせる。避けようとするが、後ろには瓦礫に挟まって動けない一般の女性が倒れていた。

 

 

「君が守ってきたものを奪う!!」

 

 

(ッ!オールマイトが!!?)

 

 

「余所見してていいのか?」

 

 

助けに入ろうとするも、牙剥は逃がす訳もなく狩迅を顔面から地面に叩きつける。オールフォーワンの攻撃は直撃し、途轍もない風圧が飛び交った。

 

 

「最強というのは、弱い者と同じく早くに死ぬ。あれがこの言葉のいい例だな…」

 

 

「オールマイトォ!」

 

 

瓦礫のホコリが晴れると、そこには骸骨のような姿になったオールマイトがいた。先程までとは信じられないような代わり具合、平和の象徴がただの非力な人間になっていた。

 

 

(やはり…そうか。最初の戦闘訓練の時から匂いで察してはいたが、あの姿が本当の……)

 

 

「頬は痩け、目は窪み……貧相なトップヒーローだ!恥じるなよ?それがトゥルーフォーム、本当の君なんだろぉ!?」

 

 

己の本当の姿が世に晒され、力も失いかけている。絶望的な状況下、だがそれでも尚オールマイトの瞳に一切の曇りはかかっていなかった。拳を握り、前を向く。それは例えどのような姿になっても、平和の象徴としての誇りと信念を落としてはいなかった。

 

 

「体が朽ち、衰えようとも……その姿をさらされようとも、私の心は依然平和の象徴!

一欠片とて奪えるものじゃあないッ!!」

 

 

「素晴らしい、参った。強情で聞かなきゃならないことを忘れてた。」

 

 

「じゃあこれも君の心には支障ないかな?あのね、死柄木弔は、志村菜奈の孫だよ!!」

 

 

一泊を起き、放たれたその言葉はオールマイトに深い衝動を走らせた。死柄木弔が自身の師匠である志村菜奈の孫、オールマイトは強く握りしめていたはずの拳を、降ろしていた。

 

 

「君が嫌がることをずぅっと考えてた、君と弔が会う機会を作った。君は弔を下したね、なぁんにも知らない勝ち誇った笑顔でぇ?」

 

 

その後も淡々と、その非情なまでの攻撃は続いた。落ちぶれていくオールマイトを横目に、オールフォーワンは嘲笑う。オールマイトは以前、師匠である志村菜奈からこんなことを聞いた。

 

 

笑っている者が一番強いと…確かにその通りである。今、この場で、もっとも強い者は、大笑いしているオールフォーワンなのだから…悲痛な叫びを上げるオールマイト、そんな彼に後ろから声がかけられる。"助けて"と…

 

 

「お願い…負け…ないでッ………助けて…オールマイト…………」

 

 

「勿論さ、お嬢さん。あぁ、そうだよ守るものが多いんだよ、ヒーローは。だから、負けないんだよッ!」

 

 

残された最後の灯火を燃やし尽くす。右腕だけをマッスルフォームにし、全てをこの最後の一撃にかける。オールフォーワンも同様、空中に浮かび上がり、止めを刺そうとする。が…そこへいきなり高威力の衝撃波が飛んでくる。

 

 

「ッ!」

 

 

「はぁ…はぁ…たまには横ォ、見た方がいいぜ?」

 

 

「そうか…白疾風、か」

 

 

オールフォーワンが周りを見ると、建物に打ち付けられたような後がある牙剥が倒れていた。狩迅は一瞬だけ白疾風、に変身し、牙剥を吹き飛ばしていたのだ。

 

 

「取り逃がしたか、ハエのようにしぶといな。狩迅龍騎…」

 

 

「言っただろ、あんたがそいつを倒すまで…絶対に手出しはさせねぇってよ。だから、勝ってくれ。生きてくれ!例えズタボロになっても、あんたは依然として、平和の象徴だ!!」

 

 

「……………」

 

 

「邪魔だ、君は大人しく彼に殺されていろ!!」

 

 

「クソッタレめぇ!白疾風!!」

 

 

「まさか、時間稼ぎだとしても、君一人で僕らとやりあおうなんて言わないだろうねぇ!?」

 

 

「やれるだけやって、そして死んでやるさ」

 

 

「一人だけじゃねぇよ、小僧。」

 

 

瓦礫から、なんとか力を振り絞って出てきたグラントリノ、もうすでに体はボロボロだが、狩迅と同じく戦おうとしていた。

 

 

「動けるんでしょうね…」

 

 

「テメェみてぇな小僧に労られるほど、俺ァ衰えちゃいねぇよ!!」

 

 

(聞こえるか、俊典。弱りきった姿を晒されようとも、お前を応援し続ける皆の声が…お前の勝利を願う皆の声が…お前に憧れ、お前のようなヒーローになりたいと願う生徒達の声が………)

 

 

『勝ってッ!!』

 

 

『勝てやッ!!!』

 

 

『オールマイトォォォォォォォ!!!!』

 

 

「煩わしい。」

 

 

「茶番だな。」

 

 

『筋骨バネ化、筋力増強+衝撃波!!』

 

 

二人の腕から、強い衝撃波が流れてくる。その勢いに押され二人は吹き飛ばされてしまう。だが不幸中の幸いだろうか、グラントリノの吹き飛ばされた位置は倒れていた女性の近くだった為、グラントリノはオールマイトの足を引っ張らないようにすぐに退散させた。

 

 

「精神の話はよして、現実の話をしよう。牙剥、ここは僕一人で十分だ。君はあの少年の始末を、決着は、僕と彼だけで決めたい。」

 

 

「了解した、くれぐれも油断なさらず…」

 

 

「あぁ、ありがとう。さて、筋骨バネ化、瞬発力×4、膂力増強×3、増殖、肥大化、鋲、エアウォーク、造骨、今の僕が掛け合わせられる最高・最適の個性達で、君を殴る!」

 

 

様々な個性を一点に集中させる事により、その腕は巨大に肥大化していた。それは見るも恐ろしい姿になっており、中継を通して見ていた者は全員それから目を離せなかった。

 

 

「緑谷出久、ワンフォーオールの譲渡先は彼だろう?資格も無しにここまで来て、まるで制御できていないじゃないか。先生としても、君の負けだ!!」

 

 

「エェアアアアアア!!」

 

 

最初は互角のように見えたが、オールフォーワンが衝撃反転の個性を発動させ、オールマイトの攻撃そのものを跳ね返す。オールマイトは一気に押され始めるが、緑谷の事を思い浮かべ、無理矢理力を込める。

 

 

「象徴としてだけではない。お師匠が私にしてくれたように、私も彼を育てるまでは、まだ!死ねんのだァァァァァァァ!!」

 

 

右腕を犠牲にし、オールフォーワンに左のストレートを打ち付ける。だが…

 

 

「らしくない小細工だ。誰かの影響かな!?浅い!」

 

 

瞬間、オールマイトの左腕が萎み始める。

 

 

「ッ!?」

 

 

「そりゃぁ、腰が入ってなかったからなァァァァァ!!」

 

 

『何人もの人が、その力を次へと託してきたんだよ。みんなの為になりますようにと、一つの希望となりますようにと、次はお前の番だ。頑張ろうな、俊典…』

 

 

右腕に力を込め、再びマッスルフォームへと戻らせる。オールフォーワンの左腕の一振りを回避し、そして……

 

 

(さらばだ、オールフォーワン!)

 

 

「UNITED STATES OF………!」

 

 

「ッ!……オールフォーワンッ!」

 

 

「通すかよ、俺が…!あの人が、奴を倒すまではッ!」

 

 

牙剥が助けに入ろうとするが、狩迅の必死の抵抗により押さえつけられる。オールフォーワンはオールマイトに打ち付けられる寸前、とある事を思い浮かべていた。

 

 

(負けたよオールマイト、実に醜い足掻きだった。しかし君は間違えたよ。戦いの果て、君は弟子に寄り添う道を選んだ。君は離れどきを失った、死に時を失った。先生というのは、弟子を一人立ちさせる為にいる。)

 

 

(頼りにしていた師が手の届かぬ場所へ去り、彼は憎悪を募らせる。彼は真に先頭を歩んでいく…仲間もいる、仲間を増やす術も学んでいる。大丈夫だ死柄木弔。

経験も、憎悪も、悔恨も、全てを糧としろ。次は、君だ。)

 

 

「SMAAAAAAAAAAAAASH!!!!!」

 

 

不敵に笑うオールフォーワンを最後に、オールマイトは最後の一撃を放った。嵐が舞い、大地は崩れ、近くにいた味方も巻き込んでしまうほどだった。そして最後の力を使い切ったオールマイトは、小さく、呟くように囁いた。

 

 

「さらばだ、ワンフォーオール……」

 

 

オールフォーワンを倒したその左腕を高々と天に掲げ、平和の象徴として役目を遂に終えた。

 

 

ーーーー 市街地 ーーーー

 

 

「や…やった…やったぞぉぉぉぉ!!」

 

 

「やっぱり、最後の最後でオールマイトは決めてくれんだよ!!」

 

 

「流石だぜ!いつまで経ってもアンタは俺達のナンバー1ヒーローだ!!」

 

 

テレビ中継を通して見ていた者たちは全員すべからくオールマイトに称賛の声を上げていた。オールマイトの活躍に感動し涙を流す者もいれば、これが最後の戦いで悲しみの声を上げる者も…だが喜ぶのはまだ早い、あと一人、あと一人だけ悪魔残っている。

 

 

「まだだ、まだあの野郎がまだ残ってやがる………一番厄介なあいつがッ!」

 

 

そう声を上げたのは、先程切島達に助けられた爆豪だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 神野区 ーーーー

 

 

「さぁ、最後の踏ん張りどころか…」

 

 

嵐の中から雷が飛び交う、天に円型の空洞が空き、牙剥はそこからエアウォークでゆっくりと下降してきた。

 

 

「まさか、ここまで醜く抗ってくるとは………正直誤算だったよ。」

 

 

牙剥は額や首に血管を浮かび上がらせ、ドスの効いた声で狩迅達を睨みつける。その後、轟竜化させた腕を見ながら、苦悩したような表情を浮かべる牙剥。

 

 

「こんな感情は久しぶりだ。あぁ、なんて言うんだ?そう、怒りか……こんな風に追い詰められたのは君の父親振りか?血は争えないな…そう思わないか?雪凪…雄大ッ!………」

 

 

「やはりお前は、あの時、確実に殺しておくべきだったッ!俺もまだまだ詰めが甘い…だからこそだ。」

 

 

「ッ!」

 

 

牙剥の体が大きく肥大化していく。金属がぶつかる様な音や炎が燃え盛る音、聞いた事のないような奇妙な音があたりを包んだ。

 

 

「筋力増強×10、膂力増強×7、瞬発力+反射神経×5、エアウォーク、肥大化、重力低下、オートカウンター、衝撃吸収、衝撃反転、毒針、怪力無双、加速×8、怪焔王、剛拳、筋骨バネ化、雷帝、鋲、鉄骨化、造骨………」

 

 

「圧縮…収縮…」

 

 

牙剥の膨れ上がった体はみるみると小さくなっていき、元のサイズに戻った。着ていた服を破り捨て、異様な姿となった体を現す。所々に金属のような物がつけられており、周りには炎と雷が飛び回っている。

 

 

「そして、荒鉤爪……」

 

 

「…………」

 

 

「必ず始末する為、今の俺が掛け合わさせられる最強・最善の個性達で、お前を穿つ。こうなったからには、前のように手加減はできんぞ!!」

 

 

牙剥がいる方向をゆっくりと見上げる狩迅、拳を再び握りしめる。

 

 

「たった今、オールマイトと言う物語が終わった。平和の象徴が築き上げた平和を、必ず取り戻す…ここからは、俺達の物語だ。白疾風ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー 市街地 ーーーー

 

 

「嘘だろ…まだ終わってないのかよ……」

 

 

「あの子学生だろ!?体育祭で見たぞ!」

 

 

「他のヒーローは何やってんのよ!!?」

 

 

「流石にいくら彼でも…」

 

 

周りからも恐怖と絶望の声が上がる。それはもちろん緑谷達も例外ではなかった。今あの場で戦えるのは満身創痍の狩迅龍騎ただ一人だけ、どちらが勝つかなんてものは、簡単に予測できた。

 

 

「駄目だ…殺されるぞ、狩迅の野郎!!?」

 

 

「助けに行かなければ…!」

 

 

「行ったところでどうする…」

 

 

「ですが!!」

 

 

飯田は拳を握りしめ、下唇から血が流れるほど噛み締めた。

 

 

「先程の戦いを見て分かっただろう!俺達が行ったところで足手まといになるだけ…

オールマイトの時でさえ、運が良かったから成功したんだ。だが……」

 

 

分かっているからこそ、その事実を受け入れたくなかった。

 

 

(僕達には……ただ見てるだけしかできないのかッ!)

 

 

緑谷は映像を見ながら、その悔しさを噛み締めた。何もできない、その言葉が永遠に頭の中を駆け巡った。

 

 

 

 

 

 

ーーーー 神野区 ーーーー

 

 

「狩迅少年……ここは危険だッ!早く逃げなさい!!」

 

 

体力の限界を迎え、トゥルーフォームとなったオールマイトが狩迅に叫ぶ。

 

 

「アンタはもう、恐らく力を使い果たしたんだろ…それに周りには援護してくれるようなヤツもいねぇ。そんな状況下で唯一戦える俺が、逃げてどうすんだッ!!」

 

 

「だが、君のその傷……」

 

 

狩迅の体には無数の切り傷や強く衝撃を受けたような箇所が幾つもあった。尚且林間合宿で受けた傷と毒もまだ完治した訳ではない。

 

 

「アンタが言ったんだろ、ヒーローは常に逆境を乗り越えていく者ってよ、その言葉を……俺は信じる。」

 

 

「ッ!狩迅少年ッ!!」

 

 

その瞬間、狩迅は白疾風に変身し、足を迅竜化させ、牙剥へ飛びかかった。牙剥もそれと同時に狩迅に突進していく、互いの距離が0になり、拳をぶつけ合う。

 

 

「終わらせるッ!」

 

 

「終わりはせんよ、ここからが始まりだッ!!」

 

 

辺りには雷が降り注ぎ、巨大な爆発と衝撃波がその場を包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




牙剥カッコつけ過ぎたかな……まぁいいか。初めて一万文字書いたので指がバッキバキやでぇ。間違いがあったら教えて下さいな、それでは……
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