闇を駆けるヒーローアカデミア   作:シロロ少尉

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年越しになんで私マツケンサンバ見てんだろ…
新年明けまして おめでとうございます。



第三十五話、始まります。


第三十五話:原点回帰

互いに向き合う緑谷達と牙剥、辺りには風が吹いている音だけが響き渡り、睨み合う様子は恐ろしく静かだった。そして数十秒が経過した後、牙剥が動き出した。荒鉤爪を発動し、両足を轟竜化させる。まずは厄介そうな轟の顔面を蹴りで粉砕しようと接近する。

 

 

約10メートルもあった距離がコンマ一秒にも満たない時間で0距離になる。その速度に追いつけたは飯田だけだった。体育祭以降、自身の個性を改良に改良を重ね、新たに生み出したレシプロバーストよりも更に速く、そして持久力も高めた必殺技、レシプロターボで蹴り返す。

 

 

「私の速度についてくるか。丁度いい、加速系統の個性は欲しいと思っていたところだ。」

 

 

牙剥と飯田の蹴りがぶつかり合い、雷が落ちたかのような轟音が辺りを包む。

 

 

「ぐっ…ウォオオオオオオオ!!」

 

 

「飯田君そのまま!行くよかっちゃん!!」

 

 

「俺に指図すんなァ!!」

 

 

飯田が牙剥を抑えている間に、緑谷と爆豪が攻める。勿論その接近に気づかないわけもなく回避しようとするが、切島のタックルと八百万の顔面にガトリング砲の嵐、そして轟の氷結で行動に制限をかける。そして緑谷はパンチを、爆豪はその加速した勢いで横腹に蹴りを入れることに成功する。一瞬だけの表情を変えた牙剥だったが…

 

 

「やってくれるじゃないか、少しばかり痛かったよ」

 

 

「やべぇ……爆豪、避けろ!!」

 

 

攻撃の後には必ず隙ができる。牙剥はそれを分かっていたからこそ、本来抜け出せたはずの束縛に敢えて囚われていたのだ。そして爆豪の眼前にまでその拳は届いていた。

 

 

(やべぇ……死ぬ……!)

 

 

死を覚悟し、目を閉じた爆豪だったが、その攻撃が当たることは無かった。寸前のところで狩迅が牙剥に飛び蹴りを放ち吹き飛ばす、間一髪のところで爆豪は助かっていた。

 

 

「チッ、んな事できんなら、最初っからやりやがれ」

 

 

「感謝として受け取っとくぞ」

 

 

「してねぇわクソが!あんなん俺一人だけでどうとでも出来たんだよ!」

 

 

「こんな時にやめろって喧嘩!?」

 

 

「みなさん!また来ますわよ!!油断なさらず…」

 

 

視線を動かすと、そこには鬼の形相をした見るからにも苛ついてる牙剥が頭を抱えながら立ち上がっていた。目は血走り、獣の様に涎を垂らしている。その姿はまさに轟竜らしかろう。

 

 

「そろそろ…か、まずいな、非常にまずい……笑えない、途轍もなく不快…」

 

 

(やっぱりだ、オールマイトが言っていた通り牙剥の体力は限界に近い!!このまま休みを与えず攻め続ければ……)

 

 

「八百万さんは後方支援!轟君は氷結で奴の足元を、それ以外のみんなは兎に角攻め続けて!!奴の体力は、もうほんの僅かしか残されていない。休みを与えちゃ駄目だ!!」

 

 

緑谷の声と共にそれぞれが自分の取るべき行動を頭ではなく、体で理解する。気がついたらいつの間にか全員牙剥に向かって一斉攻撃を仕掛けていた。八百万の追尾式ロケットランチャーと轟の炎と氷結を援護に、切島と緑谷、飯田に、そして狩迅が一気に距離を縮める。

 

 

「オラオラオラオラオラァァァァ!!!」

 

「フルカウル、35%!!」

 

「ツェアアアアアアアア!!」

 

「レシプロ、エクステンドォォォ!!」

 

 

4人の躊躇の無いラッシュによる猛攻撃が牙剥を襲う。どうにか力を振り絞り、躱すか弾くかでダメージを軽減しているが全てを捌ききれているわけではない。確実にダメージが蓄積されていっていた。

 

 

「調子に乗るなよ………小僧共がァァァァァァ!!」

 

 

「そりゃあ、お互い様になぁ!?」

 

 

「やれ爆豪!」

 

 

「テメェら目ぇ閉じやがれ!!」

 

 

緑谷の肩を足場にして高く飛び上がる爆豪、咄嗟の事に反応できなかった牙剥は気づいたら爆豪に間合いの侵入を許してしまい、目の前で特大の閃光を浴びせられる。

牙剥は個性自体を無効化する事は可能だが、それによって派生する技は無効化できない。

 

 

間近でその光を見てしまった牙剥は無意識のうちに、頭を下げ丸く蹲まりかけていた。

その隙を逃さずに、すかさず轟が氷結で足を凍らせ、八百万の音爆弾で鼓膜にダメージを与える。

 

 

「これで少なくとも、約30秒は暗闇の中!このまま一斉に叩く!!」

 

 

「八百万、ありったけのリモート爆弾を作ってくれ!とびっきり強力なやつ!!ちっとばかし怖ぇが、こいつでトドメを刺す!」

 

 

「分かりましたわ!」

 

 

「デトロイト……スマッシュ!」

 

「竜の鉤爪ッ!!」

 

「レシプロターボ!」

 

「榴弾砲着弾ォォォォォ!!」

 

「赫灼熱拳……!」

 

 

「ッ…!」

 

 

「まだ終わんねぇぜ?即興必殺、打威那真威留(ダイナマイト)ォォォォォ!!」

 

 

5人の必殺技にプラスαで爆弾を体中に巻き付けた切島が牙剥に抱きつく。そして八百万がすかさずスイッチを押すとそこから核爆発が起きたかのような大爆発が辺りを吹き飛ばす。

煙の中からでてきた切島は決して無事とは言えないような怪我をしていたが、なんとか生きて戻ってきていた。

 

 

「がァァァ!くっそ痛ぇ!!」

 

 

「直撃したな、流石にこれで終わってほしいが…」

 

 

「ハッ、ブチ殺したったわァ!」

 

 

爆発によって起きた煙幕が少しずつ晴れていく。そこにいたのは地面に仰向けで倒れていた牙剥だった。体中から血が吹き出しており、目も虚ろになっていた。掛け合わせた個性も解除され、勝ったのかと安心した切島と八百万は地面に座り込んだ。

 

 

「よ…よっしゃあー……勝っtんが!?体が……動かねぇ…!?」

 

 

「いや、まぁあんな命知らずな事するんだから、いくら切島君でも負担は大きいよ。」

 

 

(随分と呆気ねぇな、これじゃあまるで……)

 

 

勝利に喜ぶみんなを尻目に、爆豪はふと、とある出来事を思い出していた。それは雄英高校体育祭での自身と狩迅との一騎打ちの記憶、牙剥は妙にどこか狩迅と似ていた。個性も似ている、威圧感やプレッシャー、戦いの動き方など、色々な所が非常に似ていた。

 

 

(嫌な予感がしやがんな、チッ……まぁいいか。さっさとオールm……ッ!)

 

 

爆豪はいきなりの事に脳がうまく機能していなかった。気がついたら誰かに背中を押されていた、一瞬だけ見えたが、なにやら青色の光が飛び散っている。周りからは爆豪を心配するような声も多数聞こえる。何故自分は背中を押されたのか、この短い時間で考えた結果、何も分からなかった。爆豪はその正体を知る為振り返ろうとする。

 

 

背中には何か液体がつけられたかのようにひんやりとした感覚があり、余計に不気味さを加速させた。いたずらか、もしくはどこからか水が流れてきたのか、そんな訳がない。

少し苛立ちのある顔で振り返った。背中を押した人物に怒鳴ろうとした爆豪だったが、怒りよりも、先に驚愕が襲い掛かってきた。

 

 

「…………………」

 

 

「は?……え…?」

 

 

爆豪が振り向いたその先には、身体のありとあらゆる箇所に風穴が空いた狩迅だった。

狩迅は爆豪が振り向き、一定の時間が経った後に力を使い果たしたかのように膝を地面につけた。

 

 

晴れかけている煙幕の中から、様子が激変した牙剥が歩いて出てきた。髪が蒼く輝き、周りにはフルカウルを発動させた緑谷の様に蒼色のスパークが飛び交っている。先程までの牙剥とは明らかに違う。

 

 

「ふ…はは……ははは…………ハハハハハハハ…こんな気分はいつぶりだ?ようやくだ、待ち焦がれていた。これが烈種か、雷轟竜!ディオレックス……!!」

 

 

周囲に電撃を放出し、あらゆるものを破壊しながらその中心で牙剥は新しい遊具を貰った少年のように大笑いしていた。その表情は純粋な物で悪意などは全く感じられなかった。

本当に心の底から喜んでいた、だからこそ凶暴、それでこそ獰猛、その笑顔はどこか、牙剥の心の奥底を映しているかのようだった。

 

 

「こっちまで電撃が!?」

 

 

「八百万!早く防電のシーツかなんか作ってくれ!!」

 

 

「そんな無茶な!?」

 

 

その電撃は留まることを知らず、更に威力を上げていく。放出する速度も、質量も毎秒毎に比べ物にならないほどに進化し続けていく。緑谷達は回避する事に手一杯で反撃しようにも、電撃がそれを妨害してくる。ただただ避け続ける、そしてふと、とある事に緑谷は気づく。

 

 

(放出している雷が、何故か倒れている狩迅君にだけ当たっていない……)

 

 

一番近くに、そして尚且倒れているはずの狩迅には何故か電撃が一切当たっていなかったのだ。当たったとしても服を掠る程度で身体にはなんの害も与えていなかった。

 

 

「爆豪!!なんとか狩迅の奴を回収してくれ!!!」

 

 

「んなもん分かってんだよ!!だが今近づいたらこっちがお陀仏だ!」

 

 

「いや、待って二人共!なんかあの雷、狩迅だけを不自然なくらい避け続けてる!わざとやっているのかも知れない、迂闊に近づいたら駄目だ!!」

 

 

「多分牙剥は、狩迅君の何かに固執しているはず。その隙を狙うんだ!!」

 

 

他の緑谷、爆豪、切島以外の三人も後ろへ下がり行動を一度観察する。確かに不自然な程その雷は狩迅の事を避けて攻撃していた。6人がそれを利用し、何か作戦か何かを考えている最中、突然その砲撃は止んだ。そして不気味な笑みを浮かべながら、牙剥がゆっくりとこっちに歩み寄ってくる。

 

 

「ヒーローだけじゃない、ヴィランだって進化はする。あの男ですら到達出来なかった頂へ、たった今俺が到達した。ハ…ハハハ…ク…ハハハハハハ!愉快だ、軽快だぁ、爽快だなぁ!!」

 

 

牙剥は狂ったように頭をがむしゃらに掻き乱した。血が流れ出ては再生し、血が流れ出ては再生するを繰り返し、いつしか顔は血で真っ赤に染まっていた。抜けた髪も何度も生えてくるが、くたびれて下がってしまう。

 

 

「えぇ…!?痛くねぇのかよあれ…」

 

 

「んな馬鹿みてぇな事ほざいてんじゃねぇ!!さっさと構えろ!」

 

 

「さっきとは随分と雰囲気が違うぞ。パワーアップしただけじゃ無さそうだ、先程の雷の放電もそう、以前とは、決定的に何かが違う!!」

 

 

「はぁ、もういいかぁ?話はそれだけでいいのかぁ?」

 

 

牙剥は両腕を真っ直ぐ横に伸ばし、バチバチとスパークを飛ばす。

 

 

「ならもう、終わりでいいな…」

 

 

『ッ!?』

 

 

それは速度という概念を完全に逸脱した速さへと到達していた。牙剥の周りにはそのあまりの速度にソニックブームが発生し、6人の間を通り過ぎただけで下手な必殺技よりも強力な真空波を起こし、かなりの深手を負わせていた。対する緑谷達は何が起きたのか、それを理解する事は疎か、考える事もできない。

 

 

緑谷達からすれば、牙剥がいきなり音も無く消え、その直後に途轍もない真空波と電撃が自分らを襲ったということだけ。息ができない、目の前が真っ暗、何もできない。

 

 

「いい気分だ。他の個性と掛け合わせずにこれか、まだまだ十分成長を残している。いいな、実にいいなぁ!!」

 

 

(僕は……かろうじてまだ動けるッ、咄嗟にワンフォーオールを40%まで引き上げておいて正解だった!!僕以外に動ける人はッ!?)

 

 

「ッ……クソ…が………」

 

 

「ング………」

 

 

(良かった、まだかっちゃんと狩迅君は気を失ってない。オールマイトに任されたんだ、ここは意地でも倒れるわけには行かない!)

 

 

今にも倒れそうな体を奮い立たせ、立ち上がる。ワンフォーオールの許容範囲をとっくに超え、そして牙剥からの猛反撃によってボロボロのになりながらも耐えるのは、ただ一つの理由だけ、ヒーローとしての意地だけである。

 

 

「まだ、僕は生きているぞ………牙剥ッ!!」

 

 

「そう来なくては面白くない、折角の機会だ。存分に、震わせてもらおう。」

 

 

「雷轟」

 

 

右腕から高圧の電流が弾け飛ぶ。それをゆっくりと前にさしだし、牙剥が"雷轟"と唱えるとその瞬間、先程のような電撃が緑谷に襲い掛かる。

 

 

「耐えてくれよ?ヒーロー…」

 

 

緑谷の後ろには倒れている切島達がいる。避けられない、そう悟った緑谷は覚悟を決め、その電撃を素手で受け止める。

 

 

「グァがァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

(耐えろ……耐えてくれよ、畜生ッ!!)

 

 

「負けて……たまるかぁァァァァァ!!」

 

 

手に触れた瞬間、感じたことのないような痛みが全身に駆け巡った。手が焼け、ただれる。皮膚が焦げ、燃え始める。火傷とはまるで比べ物にならない程の痛みと恐怖が緑谷の精神を蝕む。

 

 

(風、緑谷の声………眠い、体…動かない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー ??? ーーーー

 

 

(どこだ?ここ……)

 

 

再び気を失ってしまった狩迅は、崩壊した町中に一人ポツンと立っていた。見たことのない場所、夢に出てくるとは思えない。一人残されていた狩迅はあてもなく歩いていく。

そして一つのことに気がついた、どこからか大勢の声が聞こえてきた。とりあえずそこに進んでみると、みんな老若男女問わず必死で何かに呼びかけていた。

 

 

『すみません、この人集りはいったい…』

 

 

近くにいた中年の男性にこの状況を聞いてみた。すると男性は驚いたような顔をしながらだったが色々と教えてくれた。どうやら今、凶悪なヴィランとトップヒーローが争っているらしい。先程までのオールマイトとオールフォーワンのようなものだろう。そこまでは理解できたが、次にその男性が放った一言に狩迅は度肝を抜かれた。

 

 

『今雪凪さんが必死に戦ってくれてんだよ!!』

 

 

雪凪、聞いたことのない名前だが、妙に既視感があった。その事が気になり、進んでみようとすると、一気に視界が暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー ??? ーーーー

 

 

次に目覚めたのは、さっきの空間とあまり変わっていない崩壊した町中だった。だが一つだけ決定的に違うことがある。目の前にいる二人の男が、血を流しながら戦っているということ。そして片方の男が、轟竜の個性を使っているということ。

 

 

『ガァァァァァァァァァッ!!』

 

 

『ツェアアアアアアアアッ!!』

 

 

二人が衝突することによって、凄まじい程の嵐と爆風が巻き起こる。天は割れ大地は崩れ、まるで天変地異でも起きているかのような情景だった。そしてその様子を、狩迅は黙ってみていた。両者ほぼ互角のように見えた戦いだったが、轟竜を使っている男が若干押していた。そしてその勢いに任せ、決着をつけようとするが…

 

 

『ッ!』

 

 

所々にあった青色の模様が蒸発したように煙を出しながら消えかかっていた。狩迅の個性である迅竜にも同じようなことがあるので、狩迅はその重要性が嫌になるほど理解している。

今この状況で形態が解除されるということは、それは即ち敗北を意味する。

 

 

優勢だった轟竜の男が、今度は一気に押され始める。残り僅かの体力では手も足も出なく、

完全に状況が一変していた。そしてその男はそのまま…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー ??? ーーーー

 

 

目の前には、女性が立っていた。

 

 

『母さん…?』

 

 

『……………』

 

 

黙ってこっちを見ている。

 

 

『なぁ、母さん。なんで俺…』

 

 

『龍騎』

 

 

『…!』

 

 

『ずっと、嘘を言い続けて、ごめんね』

 

 

狩迅はその言葉を聞くと同時に、色んな感情が溢れ出てきそうになった。

 

 

『薄々気づいてたよ、それでも、俺にとっての母さんは母さんだ。』

 

 

『…………ありがとう』

 

 

涙を浮かべながら微笑んでいた母を最後に、狩迅の意識はなくなった。

 

 

色々な事が頭の中でフラッシュバックした。父親のこと、母親のこと、そして父親と戦っていたあの男のこと、今ならあの見知らぬ二人が言っていた言葉が分かる。

 

 

(ごめん)

 

 

狩迅は、偽りの母に謝った。あの時そばにいてあげられなかったことではない。あの時はまだ幼く、個性を使い切れずにいた。母を殺したのは

 

 

『友達を、助けてあげて…竜爪………………』

 

 

最後に聞こえたのは、母でもなく、あの男の声でもない。本当の母の声だった。

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウォアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

近くで緑谷が決死の覚悟で戦っている。手を燃やしながら、必死に抑えている。だがそれも時間の問題、緑谷の体力が尽きるか、手が燃え尽きるか、どちらにせよ敗北しか残されていない。そう、思っていた。

 

 

(ごめん…みんなっ!ごめん、お母さんッ!ごめん…ごめんっ……!ごめん…狩迅君!結局君を、助けられなかったッ……ごめんッ…ごめん!!)

 

 

以前戦ったマスキュラーの時のように涙を流しながら、懸命に戦っていた。だがそれも虚しく、体力が限界を迎えた。蒼い雷が目の前まで迫ってきている。緑谷は最後の力を振り絞りなんとか押し返そうとするが、虚しくも無駄に終わる。もう駄目だと悟ってしまった緑谷は、心の中で数え切れない程の後悔と、大切な人達への謝罪を何回も繰り返し、そして意識を手放した。

 

 

無慈悲にもその電撃は意識を失った緑谷を吹き飛ばし、そして息の根を止めようと向かってくる。周りには助けてくれるような人もいない、その状況をテレビを通して見ていたクラスメイトや先生達、そして一般の人々も血の気が引いていく感覚を覚えた。そして眼前まで迫ってきたときの事だった…

 

 

「ッ!」

 

 

突如として現れた白く輝く光が緑谷を包み、そしてその迫ってきた雷轟を掻き消した。

 

 

「…………」

 

 

「狩迅……龍騎…!」

 

 

白く輝くその姿で、狩迅は緑谷を抱きかかえていた。

 

 

「今の俺は、狩迅龍騎でも、ナルガクルガでもない。」

 

 

牙剥の言葉を否定する。今の自分は、狩迅龍騎ではない。勿論それも大切な名ではあるが、今の牙剥を倒すための名前はこれではない。

 

 

「ヒーローティガレックス、雪凪雄大、そして雪凪遥の子、雪凪竜爪だ。」

 

 

緑谷をそっと地面に降ろし、怒りに溢れ、それでいて恐ろしく静かな眼差しを送った。

 

 

「極み駆ける……か、赤子だったお前がよもやここまで……誰かの入れ知恵か?」

 

 

「……………」

 

 

これは誰の入れ知恵でもない。

 

 

「母さんが言っていた、母さんだけは俺の味方だと」

 

 

恩を仇で返してしまった悔いが、今も自分を苦しめる。

 

 

「俺を拾ってくれた人が言っていた、君は独りじゃないと」

 

 

自分は化物、そう思い生きてきた。

 

 

「オールマイトが言っていた、ヒーローは常に逆境を乗り越えて行く者と」

 

 

それでも周りは、こんな自分を親切にしてくれた。

 

 

「緑谷が言ってくれた、俺を友達と」

 

 

優しさを知った、暖かさを知った、温もりを知った。

 

 

「とある少女が言ってくれた、こんな俺をかっこいい、と」

 

 

この場所で、生きていきたいと思ってしまった。

 

 

「とある先輩が言ってくれた、俺の姉になると」

 

 

友達が欲しいと思ってしまった。

 

 

「本当の母さんが言ってくれていた、俺を愛していると」

 

 

神からは許されないかもしれない。

 

 

「そして父さんが言っていた、俺の意志を継げ、そしてお前を倒せと」

 

 

それでも

 

 

「そう、言っていたんだ…!」

 

 

帰りたいと思ってしまうのは、愚かなことだろうか。

 

 

「だから俺は、俺に帰れる場所をくれたみんなを守る為に、俺が俺でいる為に……」

 

 

「ここでお前を、倒さなければならないんだッ!!」

 

 

「ならやってみろ、足掻いてみろ!知っているぞ、極み駆けるその姿、お前の突然変異としての本当の力が、それなんだろう?だがお前は半端だ、短時間でしかその効力を発揮出来ない。そしてその負傷した肉体というのも換算して、およそ30秒というところか?」

 

 

「それだけあれば十分だ。十分お前を再起不能にできる。」

 

 

「先程までの私と同じにするなよ?今の私は、一国の軍事力にも引けを取らない程の戦闘力を手に入れた。たかが一匹の鼠が、百獣の王に勝てる訳がないだろう。人はこれを総じて、無謀と呼んでいる。」

 

 

「過程をすっ飛ばして結果の話をするとは、随分と大きく出たな。」

 

 

ゆっくりと前に歩きだす。それにつられて、牙剥も目の前にいる敵に向かって歩き出した。

歩いているだけ、ただそれだけのはずなのにも関わらず、二人の間には例えようもない重い圧が流れていた。

 

 

「過程なんて物は必要無い。我々が欲するのは前にも後ろにも結果のみ、それだけあれば、それだけさえあれば良い。まぁ、この感覚は貴様には到底理解できんだろうがね。」

 

 

「あぁ、理解できないし、する気もない。今の俺には、お前という巨悪を断ち切る事のみしか頭にないからな」

 

 

その光景を見ていた者は、神に祈るようにして手を合わせ膝をつく者や、瞬きを忘れて見届ける者、必死に声を上げる者もいた。気づけば街中から彼の勝利を願う声で溢れており、今の彼はこの一瞬だけだが、誰にも超えられないナンバー1ヒーローへと成り上がっていた。

 

 

「……………」

 

 

「……………」

 

 

優しく吹く風に、髪がゆらりと靡いていた。いつものように真顔の彼だが、それはどこか決意に漲っており、覚悟を決めたような表情をしていた。

 

 

 
















ん〜、イマイチピンと来ない……ちょっと中途半端な出来だけど、これ大丈夫かぁ?
兎に角ストーリーを進ませなければ…あぁ頭が痛い、すっごく頭が痛いぞ!?


あと因みになんですが、竜爪は(りゅうそう)と呼びます。雪凪は(せつな)。




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