特に話すことがないのでどうぞ
前回の話から3日が過ぎ、帝国の使者が訪れた
「国王殿下、この度は我が帝国の訪問を受けてくれたことを、ガハルド王に代わり礼を改めてさせてもらいます」
「使者殿よくぞ参られた、勇者方の武勲を確認してくだされ」
「紹介をお願いしても構いませんか?」
「うむ、光輝殿、前へ出てくれるか?」
「はい」
「ほぅ、貴方様が勇者様ですか。随分と若いことで、失礼を承知で書かせていただきますが、本当にベヒモス討伐されたのでしょうか、我々の知る限りの最強が挑んでも勝てなかったと、帝国の耳に届いていたものですから、、、」
使者は勇者(笑)を観察するように見て、疑わしく思ったのから値踏みのように見ている。特に、興味を持っているのが護衛の騎士だ
「えっと、ではお話ししましょうか?どのように倒したかとか、あっ、六十六層のマップを見せるとかどうでしょう?」
困惑しているため繋ぎの言葉を話す勇者(笑)
「いえ、お話は結構。それよりも手っ取り早い方法があります。私の護衛一人と模擬戦でもしてもらえませんか?それで、勇者殿の実力も一目瞭然でしょう」
「えっと、俺は構いませんが・・・」
「構わんよ。光輝殿、その実力、存分に示されよ」
「決まりですな、では場所の用意をお願いします」
勇者(笑)と帝国の使者の護衛の戦いが決定した
相手の護衛は、見た目は平凡で、特に目立った特徴の無い人物で強そうには見えない。だが、刃引きした大型の剣をだらんと無造作に持っているのだ。これといって意識をしていない勇者(笑)は、使者は強くないと判断した。この場に居る全ての人に、驚かせてやろうと割かし本気の一撃を放つ事にした
「いきます!」
縮地で一気に距離を詰めて唐竹に振り抜いたが、天之河の反応よりも早く護衛の攻撃が直撃して吹き飛ばされた
「ガフッ!?」
地を滑りながら体勢を整える勇者(笑)は驚愕の面持ちで相手を見る。護衛は、掲げた剣をまた力を抜いた自然な体勢で構えている
「はぁ~、おいおい、勇者ってのはこんなもんか?まるでなっちゃいねぇ。やる気あんのか?」
その表情は失望。勇者(笑)は、意気揚々と仕掛けた自分が吹き飛ばされた事実を受け入れ、相手を舐めていたと自分に怒りを抱く
「すみませんでした。もう一度、お願いします」
勇者(笑)は再び気合いを入れ直して攻撃を開始する。超高速の剣撃は体をブレさせて残像を生み出す程――――――だが、紙一重で躱されて隙あらば反撃されて勇者(笑)は、自分の戦闘を見失っていた。それでもステータスに物を言わせて直撃を避けているという点は流石勇者(笑)だろう
「ふん、確かに並の人間じゃ相手にならん程の身体能力だ。しかし、少々素直すぎる。元々、戦いとは無縁か?」
「えっ? えっと、はい、そうです。俺は元々ただの学生ですから」
「・・・それが今や"神の使徒"か」
チラッと教会関係者の方を見て不機嫌そうに鼻を鳴らす
「おい、勇者。構えろ。今度はこちらから行くぞ。気を抜くなよ?うっかり殺してしまうかもしれんからな」
「ッ!?」
気付かぬ内に懐に潜り込まれ、不規則な攻撃が勇者(笑)を容赦なく襲う。先読や縮地で体勢を整え様とするが、まるで磁石の様に一定の距離を保ったまま離れない。徐々に焦りが顔に出始め、多少のダメージ覚悟で剣を振ろうとした瞬間に護衛が魔法のトリガーを引いた
「穿て――"風撃"」
「うわっ!?」
片足に撃ち込まれた魔法の威力は高くは無い。だが、姿勢を崩す程度の威力が有り、バランスを崩した。それと同時に、壮絶な殺気が勇者(笑)を射貫いた。ようやく天之河は理解した。相手は自分を殺すと―――――しかし、そうはならなかった
『ズドンッ!』
「ガァ!?」
今度は護衛が吹き飛んだ。勇者(笑)は全身から純白のオーラを吹き出しながら、護衛に向かって剣を振り抜いた姿で立っていた。生存本能に突き動かされるまま、限界突破を使用したのだ。殺されていたかもしれない・・・勇者(笑)の表情は恐怖を必死で押し殺した険しい顔をしていた
「ハッ、少しはマシな顔するようになったじゃねぇか。さっきまでのビビリ顔より、よほどいいぞ!」
「ビビリ顔? 今の方が恐怖を感じてます。・・・さっき俺を殺す気ではありませんでしたか?これは模擬戦ですよ?」
「だからなんだ?まさか適当に戦って、はい終わりっとでもなると思ったか?この程度で死ぬならそれまでだったってことだろ。お前は、俺達人間の上に立って率いるんだぞ?その自覚があんのかよ?」
「自覚って・・・俺はもちろん人々を救って・・・」
「傷つけることも、傷つくことも恐れているガキに何ができる?剣に殺気一つ込められない奴がご大層なこと言ってんじゃねぇよ。おら、しっかり構えな?最初に言ったろ?気抜いてっと・・・死ぬってな!」
だが、護衛はそれ以上踏み込んでは来なかった。何故なら、二人の間に光の障壁がそそり立っていたから
「それくらいにしましょうか。これ以上は、模擬戦ではなく殺し合いになってしまいますのでな。・・・ガハルド殿もお戯れが過ぎますぞ?」
「・・・チッ、バレていたか。相変わらず食えない爺さんだ」
護衛は、耳に付けていたイヤリングを外す。すると、霧がかった様に姿がボヤけ始め晴れる頃には別人が立っていた
「ガ、ガハルド殿!?」
「皇帝陛下!?」
「どういうおつもりですかな、ガハルド殿」
「これは、これはエリヒド殿。ろくな挨拶もせず済まなかった。ただな、どうせなら自分で確認した方が早いだろうと一芝居打たせてもらったのよ。今後の戦争に関わる重要なことだ。無礼は許して頂きたい」
それからは無し崩しで試合は有耶無耶となって終わり、その後に予定されていた晩餐で帝国からも勇者を認めるとの言質が取れ、訪問の目的も達成された
晩餐も終わり、部屋で部下と共に勇者(笑)について本音で話し合うガハルド
「ありゃ、ダメだな。ただの子供だ。理想とか正義とかそういう類のものを何の疑いもなく信じている口だ。なまじ実力とカリスマがあるからタチが悪い。自分の理想で周りを殺すタイプだな。"神の使徒"である以上蔑ろにはできねぇ。取り敢えず合わせて上手くやるしかねぇだろう」
「それで、あわよくば試合で殺すつもりだったのですか?」
「あぁ?違ぇよ。少しは腑抜けた精神を叩き治せるかと思っただけだ。あのままやっても教皇が邪魔して絶対殺れなかっただろうよ」
「まぁ、魔人共との戦争が本格化したら変わるかもな。見るとしてもそれからだろうよ。今は、小僧どもに巻き込まれないよう上手く立ち回ることが重要だ。教皇には気をつけろ」
「御意」
「それよりもだ、奇妙な鎧を着る者はどこにいるのだ?」
「奈落に、、、落ちたと報告されています」
「ご苦労、ゆっくりと休むがよい」
「御意」
パイロットは知らぬ知らぬの間に強者に目をつけられたようだ
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