真剣で姫に恋しなさい!   作:常磐

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第六幕 姫学園巡<ひめの がくえんめぐり>

 

 

―――川神学園 2-F教室―――

 

 

「おはよう」

 

「おはよー薫」

 

「おはようございます薫ちゃん」

 

 

2-Fに到着した薫は既に教室にいた千花と真与に挨拶し、自分の席にカバンを置いた。

一緒に登校して来た風間ファミリーの面々も各自の席に座っていく。

朝のSHRが始まるまでの間、薫たちが雑談していると翔一が言った。

 

 

「にしても姫さん、よくモモ先輩の挑戦断ったなぁ」

 

「え!?薫、モモ先輩から勝負申し込まれたの?」

 

 

翔一の発言に驚く千花。

ちなみに翔一の中では薫の呼び名は『姫さん』で固定されているようだ。

 

 

「ああ。翔一の言う通り、断ったがな」

 

「ふーん。クリスを一発で倒した薫でも、やっぱりモモ先輩とは戦いたくないんだ」

 

「うぐっ!つ、次こそは自分が勝つぞ薫殿!」

 

 

千花に痛いところを突かれたクリスはリベンジに燃える。

対して、薫は表情が硬かった。

 

 

「戦いたくないというわけではないが…彼女は、危うい」

 

「姉さんが…危うい?」

 

「どういうこと?」

 

 

薫の言ったことが、大和と一子には理解できなかった。

 

多馬川で大和たちと合流した百代は、早速薫に勝負を挑んでいた。

しかし心の中に懸念を抱く薫は、その申し出を断った。

由紀江にから聞いていた通り、百代は一度断られると戦いを無理強いさせることはなかったが、その代わり少々不満そうになり登校中ベッタリと薫にくっつきながら歩いていた。

薫にとっては人生初の大胆なスキンシップだったため落ち着かなかったが、百代が手を引いてくれてひと安心していた。

やはり戦闘欲求よりも理性の方が勝っているようだが、もしも薫との戦いをきっかけにして戦闘欲求に火がついてしまったら…薫はそれを危惧していたのだ。

 

その後、梅子が教室に来てSHRが始まり、結局この話は有耶無耶なまま終わった。

 

 

 

―――昼休み―――

 

 

「学園巡り?」

 

「そ。昨日編入して来たばかりだし、早い方がいいだろ?」

 

 

午前中の授業が終わったところで、大和が薫に提案した。

編入して来たばかりでまだ学園内を把握していない薫を案内するということらしい。

大和は丹波の他にも、クラス担任である梅子からも薫の世話を頼まれていた。

クリスという前例もあり、コミュ力の高い大和が適任と判断したのだろう。

 

 

「そうだな。頼む」

 

「じゃあ、まずは昼飯がてら学食の紹介だな」

 

 

大和は薫を連れて学園の食堂へ向かった。

大和が行けば、当然のように風間ファミリーもついてくる。

 

 

「おい京。睨んでやるなって」

 

「大和に近づく女は、警戒せざるを得ないんだッ!」

 

「お前なぁ。珍しくファミリー以外の人間にも普通に接してたと思えば…」

 

 

京が薫に対して警戒の眼差しを向けていたので大和が注意していた。

その会話を聞いて疑問に思ったことを、薫が一子に問う。

 

 

「どういうことだ?普通に、とは…」

 

「京は、風間ファミリーの仲間以外の人とはあんまり話そうとしないの」

 

「そう考えれば、薫殿には寮の説明などもしていて、他と比べると普通に接していたな」

 

 

薫は風間ファミリーというグループについては昨日のうちに聞いていたが、京の事情までは知らなかった。

一子が言うには、京が他人を避けるのは昔のトラウマが関わっているらしく、薫もその場で深く聞きはしなかった。

 

 

「寮の案内は麗子さんから言われてやっただけ。それとこれとは話が別!」

 

 

京曰く、そういうことらしい。

 

 

「それで、なぜ私は睨まれているのだ?」

 

「京は昔から大和のことが好きなのよ」

 

「昨日の帰り道でも、京が求婚して大和が断ってただろ?あのやり取りを何年も続けてんだよ」

 

 

一子の説明を翔一が補足する。

ようやく京の意図することが読めた薫は、京に言った。

 

 

「京。心配せずとも、私はお前の想い人を奪うつもりはない。お前と大和なら似合いの夫婦になろう」

 

「アリガトお姫様。学食行こ」

 

「もう京の扱い方を心得ただと!?薫さん…おそろしい子!」

 

 

似合いの夫婦と言われて上機嫌となった京は薫の隣に並んで学食へ向かう。

会って二日目で他人嫌いな京を手懐けた薫に、大和が戦慄した。

 

閑話休題。

 

一同は学食に到着した。

昼休みとあって大勢の生徒たちで賑わっており、大和たちは先に人数分の席を確保して各々の料理を取って来た。日替わりランチは当たり外れの振れ幅が大きいと聞いていた薫は、無難に焼き魚定食を選んだ。

一同が席につき、雑談しながら食べ始めたところで、声をかけてくる者がいた。

 

 

「やぁ、直江君たちじゃないか」

 

「おーっす大和。そこにいるの、昨日来たっていう編入生?」

 

「…ふんっ」

 

「おお、源さん家の皆さんか」

 

 

声をかけてきたのは、2-Sに所属するクローン三人組。

刀を腰に提げた少女、源義経。

昼食の乗ったお盆の他、ヒョウタンを持つ武蔵坊弁慶。

無愛想な表情で二人について歩く那須与一である。

普段は九鬼家従者の作る弁当を持ってくる三人だが、今日は学食で食べるらしい。

三人は大和たちグループの隣に座り、薫に挨拶してきた。

 

 

「初めまして、志葉さん。源義経です」

 

「一応、武蔵坊弁慶です。で、こっちの態度悪いのが…ほら、ちゃんと挨拶」

 

「分かったから頭掴むな姉御!…那須与一だ」

 

「志葉薫だ。あなたたちが、噂に聞く偉人のクローンか」

 

 

学園に来る前、薫も九鬼財閥の生み出したクローンによる武士道プランについて知っていた。

過去から様々なモノを受け継ぐ薫も、先人たちから学ぼうとするこのプランの主旨には賛同できたが、偉人のクローンだからと言って基となった偉人と同じようになるとは思えなかった。実際に薫の前にいる義経たちは、気配から手練ということは分かるが、一見するとただの高校生にしか見えない。

 

 

「クリスさんに勝ったと聞いた。今度、義経とも戦ってくれ」

 

「ああ。構わない」

 

「大和。お酌して~」

 

「だらけ部で飲めよ…」

 

「やぁやぁ皆さんお揃いで!」

 

「うわっ!燕さん!?」

 

 

義経たちも加わって雑談が盛り上がっていると、また新たな人物が現れた。

松永燕。

西からの転校生であり、転入初日に百代と手合わせして全校生徒の注目を集め、自家製納豆のPRに利用した納豆小町。

 

 

「君が噂の薫ちゃんだね!焼き魚定食のお供には我が松永納豆が一番!ということでお試しカップをどうぞ!」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「うんうん素直でよろしい。これからも松永納豆をよろしく!ではサラバー!」

 

 

燕が唐突に現れたことに驚く薫に納豆を一カップ渡し、燕は風のように去って行った。

 

 

「相変わらず賑やかなだなぁ燕先輩」

 

「おい義経。お前の焼きうどんに納豆かかってんぞ」

 

「うわぁ!いつの間に!」

 

「大和~お酌~」

 

「既に結構飲んでるじゃねぇか!」

 

「…ふむ。確かに美味い納豆だ。丹波にも勧めてみるか」

 

 

昼食をとる学生たちで賑わう食堂の中、薫たちのテーブルは一際カオスであった。

 

 

 

 

―――放課後―――

 

 

午後の授業も帰りのSHRも終わり、薫は大和たちに学園内を案内してもらっていた。

最初に一階から回っていると―――

 

 

「おお、大和たちか!」

 

 

声をかけて来たのは、明らかに高校生には見えない背の小さな少女。

白い袴姿に銀髪、額に十字傷と特徴的な出で立ちで、後ろには屈強な老執事を従えている。

 

クローンたちと共に編入して来た九鬼家の次女、九鬼紋白。

そして九鬼従者部隊序列0位にして最強戦力であるヒューム・ヘルシングである。

 

 

「どうも紋様。今編入生を案内してるんです」

 

「ほう。ではお前が志葉薫だな。我は九鬼紋白だ」

 

「ああ、よろしく頼む。紋白」

 

「紋様と呼べ。赤子」

 

 

紋白を呼び捨てした薫に対して、ヒュームが彼女を赤子呼ばわりした。

 

 

「…赤子?」

 

「お前は中々の手練らしいな。見れば分かる。だが、俺からすればまだ大した赤子と言ったところだな」

 

「すまぬな薫。ヒュームは自分より若い人間は大抵赤子と呼ぶのだ」

 

 

ヒュームはかつての鉄心のライバルである。

年老いてもその実力に衰えはなく、その心は絶対的な自信で満ち溢れている。

薫が壁を越えた者であることは見抜いているが、それでも自分より勝るとは思っていないらしい。

 

 

「しかし、ヒュームが『大した』とつけるとは相当に強いのだな。気に入ったぞ!その力、九鬼で活かさないか?」

 

 

『大した赤子』というのは、ヒュームにしては高評価ということらしい。

優秀な人材をスカウトするのが趣味である紋白は、早速薫を勧誘する。

 

 

「すまないが、断らせてもらう。まだこの先の道を決めるつもりはないからな」

 

「そうか。無理強いはしないが、もしその気になったら連絡をくれ。いつでも歓迎するぞ!」

 

 

薫の返答はNOだった。

世界最大規模の財閥である九鬼の従者になれば将来は安泰だろうが、薫はまだ自分の今後の人生まで決めてはいない。

薫の意志を汲み取った紋白は彼女に名刺を渡し、潔く退いた。

 

 

「ありがとう紋白。いや、『紋様』と呼ぶべきか?」

 

「フハハ!好きに呼んでくれ。ではまたな!」

 

 

紋白は笑いながら去って行った。

彼女の後ろについて行くヒュームの姿を見た薫は、ふと丹波のことを思い出す。

もしもこの場に丹波がいれば―――

 

 

『姫を赤子呼ばわりとは何事かぁ!!』

 

『姫!このような子供に様付けなど必要ありませんぞ!』

 

「…ふっ」

 

 

などと騒ぐに決まっている。

その姿が容易に想像できて、薫は思わず笑ってしまった。

 

 

「ん?どした姫さん?」

 

「ふふっ…いや、大したことではない。…ぷっ」

 

 

 

 

薫の笑いも治まり、一階の案内が終わったところで一行は二階に上がった。

薫は廊下に設置されている掲示板などの説明を受けながら移動していく。

 

 

「…で、ここがS組。学年上位の生徒が集まってる進学クラスだ」

 

「成績良くても性格悪い奴ばっかでな。いつも俺様たちを馬鹿にしてくるんだ」

 

 

現在薫たちがいるのは、F組の隣にあるS組の教室の前だった。

S組の生徒たちは学年成績上位の者ばかりで良くも悪くも実力主義であり、学年最下位であるF組の生徒を見下す傾向がある。

無論、全員がそうではなく義経たちのようにクラスに関係なく接してくる者もいる。

とは言え、両クラスは何かと衝突することが多いようだ。

大和が次の場所に移ろうとしたが、そのタイミングでS組の扉が開いた。

 

 

「おや、大和君。わざわざ私に会いに来てくれたんですか?」

 

「違いますがな」

 

 

教室から出て来たのは学年成績トップの秀才、葵冬馬だった。

褐色の肌を持つ美青年で学園中の女子たちから人気だが本人自らバイを自称しており、大和もターゲットにされている。

 

 

「どうした若…って大和たちじゃねぇか」

 

「ウェーイ(0w0)。なになに~?」

 

 

冬馬の後ろからさらに二人の人物が顔を出してきた。

常識人の皮をかぶったロリコンハゲ、井上準(F組には割と友好的)。

白い長髪が特徴的な少女、榊原小雪。

冬馬と三人でよく一緒に行動している幼馴染組である。

 

 

「なんか俺スッゲーひどいキャラ紹介されたような気がするんだけど。最後に取ってつけたように括弧つきでフォロー入った気がすんだけど!?」

 

「準、かわいそーに。とうとうハゲが脳にまで達したんだね」

 

「脳がハゲってどゆこと!?」

 

 

パロディネタ満載な原作ゲームでも扱わないようなメタ展開はさておき話を進めよう。

大和が編入生である薫を案内していることを告げると、冬馬は早速薫に接近する。

 

 

「初めまして薫さん。葵冬馬です。以後お見知りおきを」

 

「俺は井上準だ。ロリコニアは女子の参加も大歓迎だぜ?」

 

「榊原小雪だよ。マシュマロ食べる~?」

 

「はいはい本人戸惑ってるから畳み掛けないよーに。特にハゲ」

 

 

薫の手をとって顔を近づけるわ、怪しげな勧誘をするわ、どこからともなくマシュマロを取り出すわで好き勝手に振舞う三人を大和が止める。

 

 

「…この学園は、変わった人物が多いようだな」

 

「ははは。否定はしないけど、もっとすごい人もたくさんいるよここは」

 

 

卓也の言う通り、薫がまだ出会っていない変人…もとい変わった人物は多い。

この後、二階の残りや三階も案内され、終わった頃にはやや疲れた表情の薫がいた。

 

 

果たして彼女は、平凡な女子高生生活を送ることが出来るのだろうか?

 

 




百代との勝負はお預け。

薫と今回絡めなかったキャラに関してはまた別の機会ということで。


最近シンケンジャーのブルーレイを買ったのですが、やはり面白いですね。
薫の登場する3巻が待ち遠しいです。
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