デジモンと命を共有する転生者   作:銀の弓/星の弓

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…人は孤独の時、人が恋しくなる。


第18話 恋愛だけが男女の関係じゃない。

清水視点

 

 

『お前は敵か?』

『俺…どうかしてたんだ…助けてくれるなら何でもする』

『…』

 

胡散臭いものを見るような目でこちらを見る厨二野郎。

 

『アンタに忠誠を誓う…女も洗脳してやるよ…だから…助けてくれ…』

 

息も絶え絶えな俺が厨二野郎に命乞いをする。

 

 

『…』

 

奴は俺に銃口を向けた。

 

『ダメェッ!!!!』

 

畑山先生が止めようとしてたみたいだが、…ここから先の記憶はない。

 

 

 

 

 

俺達は【愛ちゃん護衛隊】と名付けられたメンバーと共にウルの街に来ていた。

 

畑作業をして生活夜は割と早めに寝て次の日の朝。

 

「…はあ、あ…」

 

ぐっしょり汗をかいて目が覚める。

 

…今俺は自分が殺される夢を見ていたようだ。

 

「…なんで…俺、【覚えていない】?」

 

…後から振り返ってみるとこれを【知らない】じゃなくて【覚えていない】というあたり俺は薄々自分がそうじゃないかって思うようになった。

 

何がって?それは…

 

 

「…!?」

 

そこには俺の専属のメイドであり、王宮にいるはずのメイド…アパルだった。

 

魔人族がアパルを人質に取る形で俺の部屋に侵入したのだ。

 

「…清水幸利、この女を殺されたくなければ、言う事を聞いてもらおう」

 

 

なんとなくデジャヴを感じて、致命的に違うこの展開。

 

アパルはこの世界に召喚されて自分に親身に接してくれたメイドだ。

 

何でこのメイドが陰険な俺に親しくしてくれるのか。専属とは言え、疑問には思ってた。

 

しかし、今はこのメイドといる時間を悪くないと思えるようになってたところだった。

 

ウルの街に行く際に離れることになったが、また戻ってくるし会えないわけじゃない。

 

「…アパル…!」

「選択の余地はないはずだぞ?」

 

確かに、選択の余地はない。アパルを無視するなら他の考えもあるが…。

 

『…』

 

何故かいまだに携帯の電池が生きてる状態で形態の中にいるハックモンも迂闊に声を出すことはできないようだ。

 

「…」

 

今は従うしかないようだ。

 

 

 

 

 

メルド視点。

 

65階層の復活したベヒモスを倒し、迷宮の転移陣を利用してホルアドと迷宮を往復しながら、光輝たちと一緒に現在はホルアドの宿で休息を取っている。

 

「メルド団長」

「雫か」

 

現在のメンバーで一番冷静かつ実力もある雫が俺に話しかけてきた。

…少々無理をしている感じもあるが、指摘してもいいかは悩んでいる。

 

「…復活したベヒモスからは妙な触手はありませんでしたね」

「ああ。あんな触手を持つ魔物何て聞いたこともない」

「榊原君は何か知ってそうな感じがしましたけど」

 

その可能性が高かっただけに彼らが奈落に落ちてしまったのが悔やまれる。

そんな事情など無しに、一人の人間として彼らを助けたやりたかった。

 

「ああ、『説明の時間はないが【捕食】されたらアウトだ!!』何て言ってたな。それに、杏子のあの姿、アレは進示達にとっても隠しておきたかったに違いない」

「…分かるんですか?」

「これでも騎士団長だぞ?人を見る目は自身がある。…でもみんなを守るためにあんな切り札を躊躇なく切った。それに、杏子が変身した時、雫や他何人かは動揺してなかった。…彼らから事情を聴いてたんじゃないか?」

「う…鋭いですね」

 

意外と顔に出やすいな。

 

「それに、ベヒモスを一撃で倒した進示のあの魔法。アレは多分魔力操作じゃないか?」

「…その事なんですけど、メルド団長。彼らが異端認定されることは」

「可能性は高いな。…最も、教会は死亡判定を出したから、これ以上の議論はされないはずだ」

「…そうですか」

 

魔力操作は本来魔物が持つ技能で人間がこの技能を得れば異端認定は避けられない。

 

…杏子のあの姿を見られれば間違いなく魔人族だと思われてしまう。

 

「メルド団長」

 

と、そこに長身の長く蒼い髪に赤い瞳の女性騎士が話しかけてきた。

 

「今回増援で派遣された騎士、アルフォースです」

「ああ、お前さんが」

 

あの4人が奈落に落ちる前は生徒たちの訓練と、心が折れて城に籠った生徒たちの護衛をしていた騎士だ。

 

愛子たちがウルの街で活動を始めてからこっちに来るようになった。

 

ここからいよいよ迷宮の探索にも加わる。

 

「しかし、お前さん、魔物に襲われて倒れたと聞いていたが、大丈夫なのか?」

「団長、もう2年も前の話ですよ。それに、魔法は使えなくなりましたが、剣の腕は上がってますよ」

「頼もしいな」

 

アルフォースが苦笑いしながら俺の言葉に応える。

それに、剣の腕は間違いなく上がっている。

 

「そうだったな。お前さんは浩介たちのパーティーに良くついているな?」

「…そう言えばそうですね」

 

雫も疑問に感じてはいたのだろう。

 

「…彼らから懐かしい気配があるので親近感が湧いたんですよ」

「「?」」

 

アルフォースが何か含みを持った表情でそう答える。

 

アルフォースは一礼してこの場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…やはり…間違いないか…今の私は表向きは宿で勇者たちの世話役のメイド。迷宮にはついていけない…」

「どうするんだい?」

「お前は迷宮に行かなければならないが、万が一の場合は直ぐに呼び出せ」

「…わかったよ。生存優先だね」

 

 

 

そんな会話があったようだが、聞こえなかったのだ。

 

 

 

 

進示視点

 

宿屋の若い娘に俺達の関係を勘繰られたり、ブルックのギルドのおばちゃん(キャサリンと言ったか?)からギルドで揉め事にあったら、渡せと言って手紙を預かったり、フューレンへ行く道中のついでとばかりに商人の護衛依頼を受けてそこで襲い掛かってきた魔物の群れをユエが一掃したりと、したが特別語ることはないだろう。

 

因みに、ミレディにもデジヴァイスを渡し、エテモンを含む、杏子以外のデジモンは全員格納している。

ミレディは魂がボロボロで、慎重な処置が必要だ。

 

日常生活であれば支障はないが、戦闘はしばらく無理だ。

 

ミレディの魂を回復させる方法…他にないこともないが、俺の口からミレディに語る気はない。

 

ミレディの貞操観念がどうなってるかは知らないが、セクハラなどと言われたくはない。

 

ミリアが生きていれば性行為などという安易な方法を選ぶ必要もないのだが、性行為以外の方法で処置をするとなれば、針の穴に糸を通すような慎重な処置がいる。

 

それを杏子と優花に話したら、優花からは微妙な顔をされたが、杏子は何かを考えこむようなしぐさになった。

 

優花は女としては、他の女(杏子とトータス召喚前から既に関係を持ってて、生涯を共にすると宣言している樹は既に納得済み)を抱くのは気分が良くない。当然か。

 

『でも…最近のミレディを見てると、随分進示にお熱よ?迷宮でアンタに助けられた私とベクトルは違うけど似ている。昔の仲間もみんな死んじゃって、独り孤独になって…エテモンがいるとは言え、やっぱり人恋しいのよ』

『そういう…もんか。もんだよな』

『そう、そういうもん。それに、南雲と違って、進示はウザい自覚があるミレディにも最初からウザい女じゃなくて、独りの人間として対等に見ていた。ミレディが苦しんだ時も、真っ先に医療車両だして、処置をした。で、今もなおミレディを診ている。

…日本の価値観じゃ、困っている人を助けましょうって風潮があるけど、実際にそれをできるヒトって、やっぱり限られてる』

 

…優花の言う通り、何を置いて助けるか、どこまで助けるかで基準が変わるが、生活の面倒まで見るとなると、やっぱりそれをできる人間はなかなかいないのだ。

 

その場その場の困りごとを助けることは程度にもよるが出来るだろうが。

 

生活の面倒までとなると、金も労力もかかる。

 

『一応ミレディは戦力として引き込んだつもりだったが、彼女の背景を甘く見てたか』

『私も甘く見てたわ。今の自分を』

『ん?どういうことだ?』

『杏子と進示の話を聞いてたんだけど、今の私…南雲もだけど魔物の肉を食べちゃって、体の構造がまともな人間じゃないでしょ?私の体を医者に見せるわけにはいかないし、』

 

そこまで聞いて優花の言いたいことを理解した。

 

『ああ、確かに。魔物の肉を食べただけで強くなるなんて情報が洩れたら、リスクを無視して群がってくるし、体が人間じゃないなんて知られたら迫害や…その他諸々ロクな目に合わない』

『うん。私も出来るだけ自立した人間になろうとしてたけど、やっぱり進示や樹さんに杏子に頼るしかなくなっちゃったのよ…当時の自分を殴りたいくらいには』

『…止めなかった俺も俺だが、あの場を生き延びるにはアレがベターだったと思うぞ』

『魔物肉を食べなかったらそれはそれで進示達の負担が大きくなるでしょ?…ままならないわね』

『…』

 

優花が溜息を吐いて…何かを決めたように俺を見る。

 

『…何故地球でも一夫多妻の歴史が永く続いたのか、身を以って理解したわ。

根本は生きるためなのよね。勿論進示の事は女として好きになった。…でも、あの時進示は言ったわよね?《…そうだよ!!ホントは愛されたい!!!受け入れてほしい!!戦いたくなんてない!!でも戦うしかない!!生きることを放棄できない!!転生した時も不安で不安で仕方なかった!!!だから樹を俺に縛り付けた!!何があってもすがれる相手が欲しかった!!!でも周りは情けない戦士を許さない!!冤罪押し付けられて!ジールの民たちから剣で刺された時も!!【助けて】なんて言えなかった!!》って』

 

『一字一句違いなく覚えてるのかよ…!』

 

優花の復唱に俺は顔を真っ赤にして俯いた。

…くそう、自分のメンタルの弱さが憎い。

 

『自己嫌悪しないで。むしろ貴方にもそういう弱さがあるってわかったからこそ…』

 

優花は俺の手を取り、

 

『好きになった…好きって【女、子】って書くけど、まさにその通りね。子どものような我儘な感情でそれでいて無限の可能性を持つ感情』

『…俺は愛されたいって言ったけど、愛は【受、心】って書くぞ』

『完璧超人な人間なら【子ども】じゃないんだから受け入れる必要ないでしょ?でも、子供のような弱い感情があるからこそ【受け入れよう】って思えるの。…だから』

 

優花は後ろを見る。

 

医療ベッドで寝ているはずのミレディだった。

 

『…!!?』

『あ…あはは…』

 

き、聞かれてた…!?う、迂闊…!!

 

『どこから聞いてた!?』

『魔物の肉を食べたって件のあたりかな?』

『…!!』

 

く、という事は優花の復唱も聞かれてた!

 

『…ホラ、ミレディが聞き耳立てている事にも気づかないほど疲れてる。めんどくさいといいながらも世間との軋轢を気にして働いてしまう。この場合は生きて地球に帰るための協力者を逃せば余計苦労するからでしょうけど』

『…』

 

優花の正論に俺はぐうの音も出ない。

 

『まあ、何が言いたいのかというと、進示が決めたことなら受け入れるわ』

『…!!』

『勿論、私達や進示をないがしろにするような女はお断りよ。…でもミレディなら心配ないかな?』

『おやや~ユッカちゃんは随分ミレディちゃんを高く買ってるんだね?』

『だって、他の仲間も全滅して死にたくなるような境遇にも拘らず、1000年も歴史を変える人間を待ち続けたんでしょ?以前杏子が『進示は責任感のある女を引き付けてしまうのか?』って言ってたけど、…あながち間違いじゃないのかもね』

 

優花が自信をもって言う。

 

『…昔のミレディちゃんなら、そんなチョロインじゃないって言ってたかもだけど…』

『何故チョロイン何て単語しってる』

『…やっぱり経った時間が永過ぎたね。もう強烈に人恋しいよ』

 

俺の突っ込みは無視されたが、人恋しいのは分かった。

 

 

『予期せず肉体も得ちゃったからなおさらだね。ゴーレムのままだったらこんな感情持たなかったかもしれない』

『…そうか…。でもそれを踏まえて言うが、魂の回復に性行為は絶対有効とは限らないし、あくまでちまちました作業よりは楽だって話だ。…それにこれは俺だからできる話であって、トータスにはない技術だ。ミリアが生きてれば安直なエロゲみたいな方法…待て、杏子がさっきから喋らないな?』

 

そう言えばここまで会話に参加してない杏子を見る。

 

杏子は割と話し好きだから、不自然に思った。

 

すると、杏子は気まずそうに目を逸らす。

 

『…おい、何故目を逸らす。魂も明らかに動揺してるぞ』

『……彼女の死からそれなりの年月が経ってるから、進示も私の動揺に気付く余裕が出来たのだな』

『…』

『が、これについては黙っていてくれと言われている。…済まないが私の口からは言えない』

『…まさか、生きているのか?』

『…少なくとも私にもなかった発想で、しかも天使である樹の眼すら欺いていたからな』

 

 

 

そう、ミリアが生きてるとの情報を得たのだが、その方法も間もなく明らかになる。

 

…大天使の眼すら欺いていたあたりやっぱアイツ天才だわ。

 

…まあ、俺が不甲斐ないせいで彼女に命を捨てさせたようなものだから、それも考慮して杏子は話さなかったのかもしれない。

 

 

 

今回はうやむやになったが、俺もミレディも心の整理がつくまでは少し時間が必要とのことで、今回はお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

商人のモットー・ユンケル(某アスリートが愛飲してるアレか?)が兎人族のシアを売る気はないか?と言われた時にハジメが

『どこぞの神が欲しがっても渡す気はない』

 

と言ってたっけ。

ちなみにソレ、スゴイ殺し文句って気づいてるか?ハジメ。

 

ちなみに杏子がこのフレーズを気に入ったのか、

 

『どこぞの神が欲しがっても渡す気はない、どこぞの神が欲しがっても渡す気はない』

 

と復唱してたので、ハジメから銃口を向けられてしまったが、杏子は涼しい顔で受け流してる。

アレはハジメをいじるネタにする気か?

 

因みに車や宝物庫も要求されたが、拒否した。

 

色々な問題を無視しても、車だって整備は必要だし、この世界に車両をメンテできる人間はいない。

 

宝物庫は確かに欲しくなる理由は分かるが、ユンケルが宝物庫を手に入れても、それを狙って襲ってくる輩に対応できないだろう。

 

 

 

そうして大陸一の商業都市、フューレンにたどり着いた俺達は、さっそくトラブルに巻き込まれる。

 

名前を覚える気はないが、俺達が連れている女性メンバーを自分の妾にするとか言ってた腹の出た貴族。初対面で女を差し出せとか言う輩の名前は覚える気はないが、その貴族の護衛として雇われていたレガニドとか言うそこそこ腕の立つ奴がいた。

 

金で雇われてるだけなので、貴族ほど口汚くは罵れない。

 

 

シアがレガニドをあしらっていると、ギルドの関係者から待ったが入り、ギルドで双方の言い分を聞くとか言われて連行された。

 

その時にキャサリンの手紙を出したら、突然VIP待遇になった。

 

…あのおばちゃん何者だ?

 

そのままギルドに連れて来られて支部長室に通されると、向かい合ったソファーで支部長と対面する。

 

 

 

「冒険者ギルドフューレン支部へようこそ。支部長のイルワ・チャングだ」

 

 

イルワと名乗った男性がそう挨拶をする。

 

 

「手紙は読ませてもらったよ。有望だけどトラブル体質………出来れば目をかけて欲しいとあった…………あの人らしいな」

 

ギルド支部長の知り合いか。

 

イルワがキャサリン先生と呼ぶ女性の若いころの写真(写真技術があるようだが、全国にはまだ流通しきってない、庶民には手が出ないようだ)を見せてもらったが、詐欺にしか見えないほどに若くきれいな女性だった。

 

その時ハジメが「時間の流れは残酷だな」と言ってたが、何があったのだろうか。

 

イルワから今回の騒ぎを不問にする代わりに、一つの依頼を俺達に寄こしてきた。

 

ハジメはめんどくさそうにしていたが、後々の面倒ごとを考えるとここで恩を売った方がいいとハジメにアドバイス。

 

探偵業をやってた頃の記憶も思い出した杏子も、ハジメに依頼を受けた方がいいとアドバイス。その際に「この感覚も久しぶりだな」

と、懐かしい気持ちに浸っているようだった。

 

 

それに、教会から指名手配されることがほぼ確定している以上、恩を売って後ろ盾になってもらった方がいいと、俺が言うまでもなく悟ったハジメによって契約周りは案外スムーズに話が進んだ。

 

 

グリューエン大火山に向かう前の捜索依頼。

 

本来の目的から遠ざかってしまうようにも見えるが、後ろ盾を得ておけば万が一の保険になる。

 

それに、信頼できる部類にいるメルド団長やリリアーナ王女も一応教会の信者なので、表立って反抗するわけにもいかないだろうしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の車両で移動しているが、運転は杏子に任せ、ウルの街に向かっている。

車の中なので、デジモン達もデジヴァイスから出している。

 

シアは寝ているが好きにさせる。

 

ハジメは造るものがあるようで、別室に籠っている。

 

医務室にいるのは俺とミレディ、優花とユエ。

 

ユエは意外だったが、地球にもトータスにもない魔法に興味があるらしく、見物に来たのだとか。

 

俺は医務室でミレディに上半身を脱いでもらい、背中に手を当てて、ミレディのボロボロの魂を慎重に補強している。

 

ちなみに、本来は明るいムードメーカーのミレディがブルックやフューレンでおとなしかったのは、神の使途とやらにも既に顔が割れているので、下手に動いて騒がれたらアウトだからだろう。

まあ、まだ魔法行使も禁じてるし、デジモンテイマーとしても戦うことは禁じている。

 

表では俺が造った目深のハットを被っている(気に入ったようだ)。極力声も出さないようにしていた。

 

「はぁ~何か永年の肩の凝りが取れるようだね~」

「マッサージ屋か俺は」

 

俺はおっさんくさい発言をするミレディにツッコミを入れつつ、治療行為をする。

 

これをネタに「ミレディたんの体ペタペタ触ったよね~?」何ていじられる未来が見える気がするが、医療行為とは言え、やってること自体否定できない。

 

いつの世も女性に触れた男はこき下ろされるが、平成~令和は特に著者だ。

 

「…ふう、今回はこれでいいだろう」

「すごい発汗」

 

俺は大量に汗をかいているが、これもピンセットで小さいサイコロを積み上げるような作業だ。

 

少し魂が壊れればミレディの命そのものが危うい。

 

ミレディもそれを理解しているので、処置中はおとなしくしている。

 

優花も汗を拭いてくれたり、飲み物を飲ませてくれるが、手術する人レベルで大変だ。

 

「そう言えばウルの街って稲作が盛んだって情報があったよな?」

「稲作…まさか!!」

 

優花が俺の言葉に反応する。

 

「米だな!俺達の世界、俺達の国日本の主食!!」

「うお!?いついたハジメ!」

 

ハジメがかなりのハイテンションで医務室に入ってきた。

 

「もうすぐウルにつくから呼びに来いと言われてな」

「ハジメの国の主食。ハジメの好きなものなら食べたい」

「暮海も『白峰ノキアが連呼してたTKGも食べてみた』とか言ってたけど、TKG…?」

「多分タマゴかけご飯かと」

「おおそうか!!ともかく、この世界に来てからまだ一度も食ってないしな!!」

「俺の非常食も米料理はなかったしな。米をスグに炊ける炊飯器も作ってみるかなぁ。米って結構時間と手間がかかるし、そう言えばもち米もあるのかなぁ?」

 

炊飯器云々については地球の技術では普通のコメを3分で炊くなんて無理な話だが、あいにくこっちは異世界の技術がある。

 

手が空いたら作ってみるか。

 

「もち米ってなんだい?」

 

いつの間にか衣服を整えたミレディ。

 

…こっちも手が空いたらミレディの服を仕立ててみるか。

 

今ミレディの着ている服は防御力に乏しい。

 

 

「もち米ってのは糯性をもつコメの品種群」

「餅は白くて弾力があって、めちゃくちゃ伸びるめでたい食べ物だ!!」

「南雲…間違ってないけどざっくりし過ぎ」

 

優花がハジメの説明に苦笑いしながらツッコミを入れる。

 

「よし!こうなったら杵と臼も作るか!!何!錬成に3分もいらないさ!!」

 

ミレディや運転中の杏子まで若干引くほどのテンションで錬成していた部屋まで戻るハジメ。

 

「ハーくんって、あんな一面あったんだ」

 

ミレディさんが意外そうにつぶやくが、引っ込んだ部屋から「醤油?きな粉?いや、七味とか、いや、意外にはちみつもいけるか!?」なんて呟きが聞こえてくる。

 

「ははは、まあ、俺達の国の主食が長い間食べられないことにも結構ストレスを感じていたみたいだなぁ」

「私も洋食店の娘だけど、米が食べられないとやっぱり寂しいわね」

 

寝ているシアをハジメが起こし…おい、一瞬バズーカを取り出しかけただろ!?

 

杏子が「面白そうだがやめたまえ」って言わないと早〇バズ〇カぶっぱなす気だったな!?

後何故杏子も若干ノリかけた!?

 

 

 

…やっかいなのはミレディよりもテンションが上がったハジメかもしれない。

 

 

そうこうしているうちにウルの街についたので、少し離れた場所で車を引っ込めて依頼に備えることにする。

今から捜索しても恐らく夜中になるので、明日朝一で捜索対象を探すことにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




人物紹介

アルフォース

ハイリヒ王国の騎士団に所属。性別は女性。
ケガによる離脱から復帰し、勇者たちのパーティーの補佐に加わる。
クゼリーの同期。
負傷ブランクがあるためか、クゼリーに先に出世された。

この世界では永山君たちとよく交流を持っているが果たして…




餅ネタ。

アンソロジーネタです。
せっかくなので餅つき大会もやりたいですが、書こうかな…。
シーズン的にもタイムリーだし…。
書くにしても独特のネタを入れたい。…モチモン…いや、何でもありません。

愛ちゃん護衛隊含む他にも何人か原作で心が折れてドロップアウトしたクラスメイトをデジモンテイマーに特化した戦士にする?

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