そして、サイバースルゥースの裏側の物語、ハッカーズメモリーのネタバレも含みます。
ミレディが少しチョロいかもしれませんが、1000年も孤独に耐えて人恋しさを突然知ったらと思うと考えました。
ゴーレムの体なら感覚がないので堕ちなかったかもしれませんが、この世界のミレディは生身の体を取り戻してしまいましたから。
杏子視点
ウルの街についた私たちはレストランに向かう。
私以外のデジモンは格納している。
申し訳ないが、騒ぎを起こされるわけにはいかないからだ。
ミレディは帽子を被ってもらう。
因みにミレディは戦闘はまだ無理だが、日常生活であれば問題ないため連れてきた。
独り留守番も申し訳ないしな。
優花君がレストランのレシピを覚えて、デジモン達のために作るそうなので、それで納得してもらうか。
覚えのある気配を感じたが、ハジメ君はスルーして、席に座る。
「いやー米料理楽しみだな」
「【ハジメ】さん!女心を理解してくださいよ!いい加減ユエさんもハジメさんの隣譲ってください」
「ハー君も罪作りだねぇ。ユーちゃんとシーちゃんに迫られ…あ、地球ってとこにも言い寄られてる女の子がいるって?」
「白崎香織の事か。トータス召喚前日も夜中からハジメの家の前で出待ちしてたから、八重樫雫に摘まみだしてもらったっけ」
「そんなことがあったのかよ…」
香織君と雫君の…特に香織君の行動に戦慄しているハジメ君。
と、
「な、南雲君!?榊原君!?暮海さん!?園部さん!?」
「……先生?」
畑山先生と菅原妙子、宮崎奈々、相川昇、仁村明人、玉井敦史がいた。
「…やっぱり南雲君…生きてた」
「いや、人違いです」
何故か他人のふりをするハジメ君。
…まあ、先生たちの席をスルーした時点で予想はしていたが。
「ちょっと待って下さい! 南雲君ですよね? 先生のこと先生と呼びましたよね? なぜ、人違いだなんて」
先生が南雲の腕を掴んで引き留める。
「いや、聞き間違いだ。あれは……そう、方言で【チッコイ】て意味だ。うん」
「それはそれで、物凄く失礼ですよ! ていうかそんな方言あるわけないでしょう。どうして誤魔化すんですか? それにその格好……何があったんですか? こんなところで何をしているんですか? 何故、直ぐに皆のところへ戻らなかったんですか? 南雲君! 答えなさい! 先生は誤魔化されませんよ!」
「ハジメ、髪の毛と目の色が変わってない俺と杏子がいる時点で誤魔化せねーぞ。…それと、先生。日頃から威厳のある教師を目指していると仰ってるそうですが、威厳のある先生になるためにはもう少し余裕のある態度でいてください。…ま、年取っても威厳のある教師なんて俺が知る限りほんの一握りですが」
今更だが、先生は25歳と社会人としても人間としてもまだまだ若い故に空回りするのは仕方ない部分もあるが。
「これはこれは、お久しぶりです畑山先生。それに菅原妙子、宮崎奈々、相川昇、仁村明人、玉井敦史も壮健そうで何よりだ」
「「「「「!?」」」」」
生徒たちが驚いて私を見る。
…ああ、私の記憶が戻ったのは奈落に落ちて(私は自ら飛び込んだが)からだったな。
「改めて自己紹介をしよう。私は暮海杏子。現在は榊原進示のパートナーだ。今まで記憶を失っていたが取り戻した。こちらが本来の話し方だ」
そう、記憶がない私は年頃の無垢な少女のような話し方だった。
外見に引っ張られたこともある。進示と融合して現れた人間体の私は当時の進示の肉体年齢と同じ10歳程度だったからな。
皆驚いていたが、宮崎奈々と菅原妙子が優花君を見つけ、再会を喜んでいた。
「優花ッち~!!よかったあぁ…」
「奈々…妙子…」
優花も友達の心情を察したのか抱擁を受け入れる。
「ところで…、そちらの女性たちは誰ですか?」
畑山先生がそんなことを言ってきた。
「ユエ、ハジメの女その1」
「シアで数ですぅ!!ハジメさんの女その2ですぅ!!」
「おい!上はともかくシアは違うだろ!!」
あ、これは一波乱あるな。
「そんなっ! 酷いですよハジメさん。私のファーストキスを奪っておいて!」
「いや、何時までそのこと引っ張るんだよ? あれは…………」
その話を聞いていたクラスメイトの男子陣が、
「おい聞いたか? 南雲の女って言ったぞあの子達」
「くっ………何故だ!? 俺達には出会いがないのに何故南雲があんな美人の金髪の女の子とウサ耳美少女に…………!」
男性陣が何やら悔しがっている。
…女性がどのような男性を好むか個人差はあるが、ここにいるメンバーは全員特殊過ぎる経歴を持っている。…一般のナンパ術はあまり参考にならないかもしれない。
時間があれば助言くらいはするか。
「南雲君…………?」
「な、何だ先生………?」
「女の子のファーストキスを奪った挙句、ふ、二股だなんて!? 直ぐに帰ってこなかったのは、遊び歩いていたからなんですか!?」
冷静さを無くした先生がハジメ君に掴みよる。
「榊原君も何か言っておやりなさい!!複数の女性と付き合うなど不純だと!!」
水を向けられた進示。
「残念ながらトータス召喚前から倒錯的な関係を持っていた人物が一柱いる。…そして」
進示に目を向けられた私たちはその意図を察した。
…確かに樹であれば【一人】ではなく、【一柱】が正しい。
天使とは言え神の世界の住人故に。
私と優花が進示の肩にしなだれかかる。
玉井君達がギョッと目を見開いたが、ミレディも進示に寄り添った。
「進示の女の一匹その2、暮海杏子だ」
「進示の女の一人その3、園部優花よ」
「シンちゃんの女の一人その4、ミレディたんだよ☆」
「ミレディまで乗ってくるか…」
「…もう何があってもついていくからね」
ミレディはそう言う。
孤独の時間が永過ぎたためか、進示にべったりだな。私と優花君に気を使ってはいるが。
あ、先生が爆発しそうだ。
「お、お説教ですーーーー!!!許しませんよ!!!」
因みに生徒の恋愛事情は先生が査定する義務はないはずだが、地球の常識に染まり切っているため、認識のすり合わせが大変そうだ。
そして、先生もこの後倒錯的な人生を歩むことになるとは本人も想像してないだろう。
…私が進示を愛しているかははっきりと断言できる。
魂が進示と繋がっているせいか、心は大分人間に寄ってきたしイグドラシルとのつながりは完全に途絶えている。
…私は本来イグドラシルの命令を受けるプログラムに過ぎないが、今では進示が最優先になっている。
…ただ、名前も発音できない■■ ■■■の事は気がかりだった。
…一目だけでも会いたい。
すると進示はこちらに目を合わせ
(会わせてやる)
そう言ってくれた気がした。
…ありがとう。
「そう言えば、暮海さん、自分の事を【一匹】って言ってなかったか?」
「そうだよ!榊原の女【その1】は誰なんだ!!?」
「【三大女神】の一人が…」
…優花君を除いて進示の女が全員最低数世紀以上は生きていると知ったら驚くかな?
このメンツで私がデジモンであることを知っているのは先生のみだ。
…む?女神とは私の事か?
進示視点
その後、VIPルームに通され、
質問攻めを受けることになった。
腹が減ったので、カレー(ニルシッシルというらしい)を食いながらだが。
先生たちのそばにいる騎士は、先生の開拓作業の時の護衛として宛がわれた教会騎士と言ったところか。
「南雲君と園部さんの神が白くなっているのは何でですか?それから、南雲君の左腕の鎧と右目のアイパッチは一体…?」
ハジメは答える気はないので代理で俺が返答する。
「ハジメの腕は魔物に喰い千切られて捕食された。元の腕は還ってこない。したがってソレはハジメ自作の義手」
「…!!?」
先生絶句。当然か。
「右目も魔物との戦いで失ったからソレは義眼」
「…そうですか」
先生は俯いた。
彼女の性格からして、苦しい時に傍に入れなかったことに責任を感じているのだろうが、ハッキリ言ってソレは教師の領分を越えている。
だが、世間はそんな事情を理解できずに唯一の社会人である先生をバッシングするのだろう。
…公安と政府の方針で地球にヤバい案件が迫っているのは秘匿しているが、…現実だと認識した場合、世間の大パニックは避けられない。
発狂して核ミサイルをぶっぱする狂人が現れる可能性もゼロではない。
俺達の力を狙う奴も当然出てくる。
トータスの存在を知ったら資源をアレコレ理由をつけて略奪しに来る可能性もある。
交易による取引であればまだマシだが、武力制圧をしようとするならこちらも武力で叩き潰す事も考慮しなくてはならない。武力解決は出来れば最終手段にしたいし、戦争はない方がいい。
基本的には地球側の味方ではあるが、それも程度による。
こちらはトータスに無理矢理拉致された存在ではあるが、ぶちのめしたい存在は基本実行犯のエヒトだけだ。
この世界全員に連帯責任だとか言っても仕方ない。
地球側の人間が拉致を理由にあの手この手を使ってトータスの資源を奪いに来る可能性は大だ。
それに憲法その他はトータスには存在しない以上、地球の法を持ち出しても効果がない。
情に訴えても聞き入れる人間は少ないだろう。例外は何人かいそうだが。
武力に訴えないことを至上にしている国であれば間接的なちょっかいであっても流血沙汰は少ないだろう。
それに、情報戦に強い記憶が戻った杏子、大天使であり、天界の情報管理警備担当の樹もいる。
二人とも人間ではないが故に扱える情報量、推理力、洞察力、その他諸々シャーロック・ホームズレベルでないと対抗出来ないだろう。
あるいは歴史に名を遺す頭脳の天才でもない限りは。
俺もそれなりの経験はあるが、造る(創る)方が得意であって、情報戦はそこまで得意ではない。
樹や生前(生きてるとは聞いたがまだこの目で確認してない)のミリアのサポートがあってこそだ。
杏子の記憶が戻っている以上、彼女のサポートも受けることになる。今まではほぼ戦闘でしか出番がなかったので。
問題は武力に訴える国であれば間違いなく大惨事になる。地球、トータスどちらもだ。
最も、トータス同士の問題であれば巻き添えにならない限り極力介入は避ける。
…まあ、この世界にいる間も衣食住云々のために、金になる事はしなければならないが。
俺は身近な人間以外はどうでもいいタイプだ。
しかし、地球とトータスなら地球、日本と海外なら日本などと言ったように、括りごとにある程度線は引いている。
【全てを救う】等と言うのは神でも難しいのに、人間がそんな考えを持つなんざ、俺から言わせてもらえば井の中の蛙だ。
しかし、こちらでも殺人は極力最低限で済ましたい。
帝国兵に関しては、護衛対象のハウリア族を売り払い(絞ったという言葉から何人も殺されている)、杏子たちを問答無用で性処理の対象としてみたからだ。
しかも俺達を殺したうえで頂くつもりだったようだ。
…まあ、色々御託を並べていたが、要は先生の責任ではない。
が、ソレを言ったところで、先生は聞きいれないだろう。真面目過ぎるし。
「俺達を救えなかったことに関しては先生の責任ではありません。この世界の社会構造と世界情勢を鑑みれば遅かれ早かれ起きていた問題です。避ける手段はないに等しいでしょう」
「…で、ですが!」
「愛ちゃん、愛ちゃんは一般の教師でしかないんだから、戦争経験もない愛ちゃんが説いたところで実感として分かる人は極僅かよ」
「ええ、それにここは神を絶対とする宗教国家。そこの騎士は先生のために教会の信仰を捨てると言ってたようですが、シア君の耳を見て殺気が抑えきれないようですね」
「デビットさん!?」
優花と杏子が先生は悪くないと言ってるが、話の矛先を護衛騎士に向けた。
どうやらイケメンハニトラ要因のようだが、逆に先生に魅了されたか。
因みに俺は少々童顔のフツメンだ。身長は178cmで、かなりの瘦せ型。…体重60キロ無いのよ僕ちゃん。
…それで昔はよく拳で腹に穴が開いただけで済んだな。両断されてもおかしくなかった。
「薄汚い獣風情を人間と同じテーブルに着かせるとはな。しかもなんだそのふしだらな格好は、汚らわしい!!」
どうやらシアがお気に召さないようだ。…露出に関しては同意見だったが、本人がその服装でいいなら止めはしない。
「デビットさん!なんてこと言うんですか!」
「魔法は神より授かり力、それを使えない亜人は神に見放された存在だ」
「…私達とそこまで変わらないじゃないですか!」
「ならば耳を切り落とせば人間らしく…ぶげ!?」
そこまで行って騎士が突然すっ飛んだ。
剣を抜刀しかけたところで、ハジメがスプーンを飛ばしたからだ。
みればシアを侮辱されたことで、ユエ、ミレディの機嫌がかなり悪い。
…ミレディも亜人の仲間がいたな。
「話はこれで終わりか?」
「待ってください!」
愛子先生が待ったをかける。
「足りない情報をいうと、ハジメと優花の髪の変化は魔物の肉を食ったことによる、変質。死なないように処置を施しながらだ。リターンもあるが、それでも死ぬリスクの方が高いので、お勧めはしない」
「私と進示は魔物の肉を食べていない。召喚前から持っていた非常食で乗り切った」
「ひ、非常食ってそんな都合よく…」
玉井が疑問を投げるが、
「あいにく、トータスという世界は今回が初めてだが、俺と杏子は異世界召喚は今回が初めてではないのでね」
「「「なっ!?」」」
事情を知らない3人が驚く。
密会のメンバーにはいなかったが、密会のメンバーは冷静な判断が出来そうな人間を選んだので…ん?
「宮崎、菅原、キミ達は驚いていないな…?」
「…そう言えば…まさか!!」
杏子は何かに思い至ったようだ。
「進示…キミについていたメイドは…ガラテアはあの王女の妹の可能性が高い…いや、もう確定だ」
「まさか、直接面識はなかったが…生きていたのか!…だが、耳は人間…」
いや、偽装であれば…耳を隠す手段はあるか!可能性は…左耳のイヤリング!
そして、シール脱出の直前、ミリアを見殺しにしたとき
『フェーの妹はもうこの世界を脱出したそうです。どんな世界に流れ着いているかまではわかりませんが、再会する可能性は高いでしょう。さあ、進示と杏子も早くジールから脱出を。貴方たちがイーターと呼ぶ化け物は何とかしましょう。他の世界に伝播させないだけなら何とか。…というか、アレ、あなた達の言う北海道より大きくなってません?まだまだ大きくなってますし』
その時の彼女はちらりと上を見て上から天使の羽が舞ったのが見えて上を見た。
上空に背中の羽が4枚の大天使。
当時は考察には情報が足りないが、直感で脱出を選んだ。
まさか、トータスに…。
「そのことを知ってるのは?」
「クラスの女子生徒と、私、リリアーナ王女とへリーナさんたち数名のメイドさんです。…リリアーナ王女が彼女の言動に不自然な点があったことを指摘していましたので」
「それ以外の人間はしらない?」
「うん…」
宮崎が答える。
「他に変わったことは?」
「ないかなぁ。…あ、最近新しいメイドさんが入ったみたい。ベリキシエさんていうメイドさん。猫なで声で話す男子受けするあのキャラづくりしている人」
「うん、あの【きゅん☆きゅんケーキ】って言ったっけ?名前はあれだけど美味しいのよね」
「…ブッ!?!?ゴホッ!?ゴホッ!?」
突然杏子が紅茶を噴出した。俺ですら見るのは初めてだ。
ハジメ達他のメンバーも驚いている。
杏子が飲み物を吹き出すシーンなど見ないからな。
俺は杏子の背中をさすりつつ、考察する。
「…なるほど、岸部リエのアナグラムか!」
「おい、それって確か!」
ハジメが通信の事を思い出したのか、俺に聞く。
「ああ、現在の中村の保護者だったはずだ」
「…あ!?」
先生は何故知って…あ、3者面談か!
「先生、3者面談で岸部リエにあってますね?」
「は、はい…私は担任ではありませんが、その時の担任の先生が体調を崩されて、私が代理で面談を…その…その独特な方でしたが、中村さんを大事にされてるみたいで」
「そういう事か…」
杏子は頭を抱えたが、岸部の性格ならやりそうだと考えたのか、すぐに襟元を正す。
…俺もゲームで彼女は知ってるが、直接会ったことはないんだよな。
…っていうか、学校でもそのキャラで通してたのか!?
大丈夫か!?男性教師にRー18なことしてないよな!?
そしてその一連の事をロードナイトモンがやってると思うと…シュールだ。
「因みに岸部は何の仕事は分かりますか?」
「最近大きくなった○○の秘書をしているらしくて…」
「…なるほど、適当な人間を盾代わりの社長にして、隠れ蓑にしていたのか。社長は優秀でも無能でも岸部ほどの手腕なら上手く立ち回れる」
杏子がうんうんと唸っている。
「あの、暮海さん?岸部さんをご存じで?」
「…私の同胞で何かと因縁のある相手です」
「それはどういう…」
先生が疑問に思って杏子に聞くが、騎士どもが見ている前で喋り過ぎた。地球の事業方式は理解できないだろうが。
「さっきから何の話を…」
「お喋りはここまでだ。本来ここへは仕事で立ち寄った。仕事の準備があるから行かせてもらう」
ハジメが席を立った。もうカレーは食ったらしい「ニルシッシルだ」あ、ハイ。
先生がハジメを止めようとするが、
俺は先生に近づいて耳打ち。
「どうしても俺達から話を聞きたいなら教会騎士のいないところで」
とだけ言った。
先生は意図を察したのか頷いた。
「じゃあね。奈々、妙子」
「ゆ、優花っち…!私達と一緒に…」
「悪いけどそれは出来ない。それに、進示についていくって決めたのよ」
そうすると優花は俺と同じように宮崎たちに耳打ちした。
話だけでも聞かせるつもりだろう。
こちらの邪魔をしない分には構わない。
…そう言えば彼らの保護者の心労も考えるとどこかで通信した方がいいな。
そんな俺の悩み顔を優花が見ていたのか、優花が俺を見る。
「…分かった、明日の朝までには何とか整えよう…。と言っても俺は医務室でミレディの処置もあるから杏子にも手伝ってもらう」
「任せたまえ」
杏子が頼もしい返事をしてくれる。
杏子は医療方面は知識はあっても専門じゃないし、地球にはないオカルト分野の治療もある。
通信設備の整備は頼んでもよさそうだ。
「悪いな」
「適材適所だ。キミ達はキミ達にしか出来ない事をするんだ。…いや、今は私の立場の方が下だったな」
「杏子。俺とお前は上下関係にした覚えはない。樹は彼女自身の出自もあって例外だが」
「…そうだな。私たちはパートナーで…家族だ。少々変則的すぎるがね…」
そうして俺と杏子は微笑み合った。
そこに優花がやってきて、「そこに私も入るでしょ?」と言ってきた。
さらにミレディが俺の服の裾をちょいちょいと引っ張る。
…まさか、ミレディ!本気か!?
それに対し、女子生徒がキャーキャーと黄色い悲鳴をあげている。
そう言えば玉井たちの様子が見えないな?
「おのれ…異世界の美少女をどうやって口説いたんだ!?」
「南雲のプレッシャーにビビったが、今はあの二人に殺意しか沸かない!」
「どうやって口説いたかテクを教えてもらうか!!ウサミミ…モフモフ…」
…何やら殺意の〇動が沸いてきている玉井たち。
「命がけで魔物がうごめく迷宮から助けたり、一族全体の全滅の危機を救ったりすれば惚れられるかもな」
俺は玉井たちにすれ違ってわざと聞こえるように呟いた。
それを聞いた3人は何やら落ち込んだようだ。
そこまでのリスクは犯せないか。
まあ、無理強いはしないし、命あっての物種だ。
仮に何かしようとしても今は力を蓄える時だぞ?
「春が青いな…いや、今の私もか」
杏子が遠くを見るような目で俺に続いた。
夜。
ハジメ達のグループは宿を取ったが、医務室は車両にしかないので、町から少し離れた場所に車両を出している。
杏子は通信設備の整備、優花は食事の片づけを終え、俺の処置のサポート。
車両ならギルモンとエテモンを出せるので、デジヴァイスから出しているが、2匹は寝ている。
「…ミレディ、本当についてくるのか?」
俺は昼間のミレディの言葉を確かめるように尋ねる。
「うん…それに言ったよね?望むなら地球の娯楽も見せてやるって」
「…言ったな」
俺は頷く。
「正直ミレディちゃんは、あのまま力尽きるか、クソヤローを倒すまで…でも倒してから消滅するかと、思ってた。それに他の仲間に…オーちゃん達に悪いと思ってたんだ。私だけ生き残っちゃって」
「…そうか」
仲間が倒れそれでも1000年頑張った彼女の精神力は計り知れない。
「でも、エっちゃんやシンちゃん出会って孤独を忘れたら一気に死ぬのが惜しくなっちゃった。
…それに、オーちゃん達とは…どうせ死ぬならお土産話増やしてからの方がいいって思ったんだ」
「…」
ぽつりぽつりと話すミレディ。
「それに勧誘される側になって、昔のオーくんもこんな気持ちだったのかなって…まあ、ウザそうにはされたけどね?」
ウザい自覚はあったのね。
君だったりちゃんだったり安定しないな。
「立場上は迷宮攻略には付き合えないけど、シンちゃんやキョウちゃん、ユッカちゃん、ハー君、ユーちゃん、シーちゃんならやり遂げるって思ってる。デジモン達もね!」
「杏子もデジモンだけど」
そう言うと「そう言えばそうだった」と舌を出す。
「その…キョウちゃんやユッカちゃん…イツキって人とも仲良くするから…ミレディちゃんも…キミの家族になれないかな?」
おずおずと手を差し出すミレディ。
俺は優花を見る。
いつの間にか休憩してたらしい杏子もいる。
俺達は目を合わせ、頷き合い、俺がミレディの手を取り、杏子と優花がその上に手を重ねる。
それにミレディが満面の笑みを浮かべた。
「皆…そっちに行くのは当分先になりそうだけど、お土産話、いっぱい増やすからね!」
「あ、抱くのは魂を治してからな」
「えーいけず!!」
「こればかりは仕方ないだろ!お前最近まで死ぬ寸前だったろうが!」
「ところで、シンちゃんはミレディたんのどこが好きなのかな?」
ミレディが医療ベッドで寝そべりながら聞いてくる。
寝るまでは付き添って欲しいとのことで今は二人きりだ。
「…俺は…敢えて失礼な事を言うけど体は理想よりかなり小さい」
「ホントに失礼だな!」
「だが、体は細かいこと。俺はお前の精神性が好きになったんだ」
「…私、ウザいよ?」
一人称が【私】になったな。これマジの時か。
「もうお前は本来とっくに人生を終えてもいい存在だ。にも拘らずたった一人で孤独な戦いを生き抜いた。仲間は死ぬまで…いや、死んでも見捨てなかった。体は仕方ないにしても心は一度も見捨てなかっただろう?」
「それは…私にも戦いを始めた責任はあるし」
「それだよ、お前は最期まで絆と責任を捨てないだろう?からかって遊ぶことはあっても、その精神性は本物だ。…それに」
「それに?」
「本来俺はクソ雑魚メンタルだ。コミュ障のくせに、一人が好きなのに孤独に弱い。周りや環境に流されて戦ってきたけど、俺は一人じゃ戦えない。
【絆】で強くなる精神性だって樹にも杏子にも言われたんだ」
「【絆】か。クソ雑魚メンタルって今のシンちゃんからは想像もできないな。オーくんもコミュ障の毛はあったけど」
「今もだよ。それに、お前の一人称、普段はミレディちゃんとかミレディたんだけど、マジの時は【私】になるよな」
「!…意外とよく見てるなぁ?」
ミレディが目を見開く。
今の俺の指摘は自分を見てくれていると思ったのか、完全に顔が赤い。
「樹にも杏子にも優花にもみっともない泣き顔を見せちまったけど、もし俺が泣いたら慰めてくれるだろう?」
「…フフフ!泣き虫さんなんだね。…うん、その時は私にも頼ってね?」
「俺は不安定な人間だ。でも、お前たちがいてくれるなら戦える。一度は生きることをあきらめてしまったが、また諦めそうになったらお前たちが引き戻してくれ。そして、俺は俺の力の限りお前たちを大切にする」
「私も正直生きることを諦めそうになったことは何度もある。…でも、私が諦めそうになったらシンちゃんが引き戻して?」
「ああ!勿論だ!…今更だが、今の俺はハーレム状態だがいいのか?」
「今更だね…。あんな仲睦まじい様子を見せられて離れろなんて言えないよ」
「ハハハ…。まあ、色々あったし。全員一般人とは言えないし。優花だけは一般人だったけど、もう手放せなくなったし、手放す気はない」
「…私が生きることを諦めそうになって泣いたら慰めてね…」
「ああ…!」
そうしてミレディはすやすやと寝息を立て始めた。
暫くミレディの手を握っていたが、通信設備の準備もある。
ミレディの掛け布団を治し、医務室を後にした。
おまけ
「杏子…ゲームでも岸部の性格は知ってたけど…」
「何だ?」
「【リエちゃん☆モエモエ】とか、【リエのきゅんきゅん日記】とか…あと、未成年には言いづらいパスワードとか…あれ、ロードナイトモンがやってるんだよな?」
「…そう考えるとなかなかシュールだな」
「…アレ、神代悠子が摘出したパスワードだよな?」
「…悠子君には赤面ものだったな…いや、平静を装ってはいたが」
「そしてあの時彼らが事務所に帰還してからの下着ネタには突っ込みなしだったが」
「?」
「下着ダンスの中に電脳犯罪捜査課のファイルがあったのさ」
「…!惜しいことをした…!!いや、年頃の彼らに女性の下着ダンスを調べさせるのは酷か…」
「まあ、それは天沢ケイスケと御島エリカが見つけたんだけどね。ホラ、臨時の助手くん」
「そうか…彼が。クレニアムモンの件と言い、中々優秀なようだ。コーヒーをご馳走してあげられないのが残念だ。海ぶどう粒あんコーヒーの材料も彼がミレイを通じて調達してくれたそうだしな」
「まあ、御島エリカに軽蔑されるという尊い犠牲を払って又吉刑事を素早く動かしたんだけどな」
「…あの世界でもセクハラ問題は厳しいからな」
「まったくだ」
「…ん?通信が繋がりそうだ!」
「やったな杏子!今の魔力量だと…、出来て5時間…」
「神結晶や魔力回復薬の類は…もったいないな」
「龍の因子をもう少し力を引き出せれば、魔力の自己生産も可能なんだが」
「ないものねだりをしても仕方ないさ。さあ、もう寝ないと睡眠時間が足りなくなるぞ?」
「ああ、杏子、久しぶりに抱き枕になってくれ」
「おや、しないのかい?…いや、寝不足になるな…デジモンの私が性愛を知ったが…なるほど、癖になるのも分かる気がする。そしてスキンシップが恋人や夫婦にとってなぜ必要かも…理屈ではなく感覚で分かったよ。この世はやはり理屈では片づけられないことが溢れかえっているな」
杏子、紅茶を吹く。
杏子にとっても岸部の存在と行動は予想外過ぎたようです。
相川、玉井、仁村、異世界ナンパ術を知りたい。
命がけでピンチを助ければ惚れられるかも?(確約は出来ない)
ハジメがデビットを吹っ飛ばしたスプーン。
これはコミック版を採用しています。
ハジメが先生の部屋で真実を告げるシーンは原作と変わらないためカットです。
アンケートを4つ目取ります。
投稿直後に新しいアンケートを設置します。
愛ちゃん護衛隊含む他にも何人か原作で心が折れてドロップアウトしたクラスメイトをデジモンテイマーに特化した戦士にする?
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する
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しない