デジモンと命を共有する転生者   作:銀の弓/星の弓

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サイバースルゥース

始動。


第20話 子供が笑えない世界に何の価値がある?

ハジメ視点

 

「で、これはどういうことだ?」

「行方不明者の捜索ですよね?人数は多い方がいいと思いますが」

 

朝起きて町のはずれに止めてある進示の車両に向かおうとしたら先生と玉井たちがいた。

 

「ハジメ…連れて行くの?」

「…ここで放置したら追いかけてきそうだ。生徒の事になると妥協しないし、協会の力で指名手配される方が面倒だ」

「生徒さん思いなんですねえ」

 

シアが感心したように呟く。

 

「ただし、馬は返してこい!進示の車で行く!」

「く、車…!?」

「俺もバイクや車は造ってるが、医務室は進示の車にしかない。ミレディを覚えているか?アイツの処置もあそこでやってる」

「…ミレディさん、どこか悪いんですか?」

 

先生が疑問に思っている。昨日見た感じではそこまで具合悪そうには見えなかったしな。

 

「…それも道すがら説明する」

 

俺達は進示の車にたどり着くと、そこには何やらコンソールを操作している暮海と発汗が酷く、顔色が青く震えている進示と、進示を落ち着かせるように抱きしめている園部とミレディがいた。

 

「よ、よう…来たか」

「例の発作か?」

「まあな。もう少しで落ち着く」

 

発作、という事は、死人の声を聴いたか。

 

魂を見る力、魂と共感する力、魂の性質を見抜く力が強すぎる代償だ。

 

進示の精神は強い方だが24時間365日気を張り続けられるほどじゃない。

 

このように体調を崩しているという事は、気を抜いているときに発作が起きたか。

 

それに、感受性も高い故か死人の気持ちとか、怨嗟とかダイレクトに聴いてしまうんだろう。

 

「だ、大丈夫なんですか!?」

「暮海が進示そっちのけで何やら作業しているから、大丈夫だろ。暮海は何してるんだ?」

「ああ、地球への通信が出来るように調整している。いつでもいくらでもとはいかないが、とりあえずキミ達の親御さんへ声を聞かせることは可能だろう」

「「「「「「!?」」」」」」

 

それに驚き、希望を持つ皆。

 

まあ、当然か。

 

「先ほど樹にメールを送って、あと20分で招集が終わるので、その時に通信を始める」

「お、おい、マジかよ!?」

「この状況でくだらない嘘はつかないさ。それと進示。ミレディのカルテを送ったそうだが、それに関する資料が届いた。ミレディの治療が捗るだろう」

「そ、そうか…」

「嬉しいけど無理しないでね、シンちゃん」

「今ご飯作るからね…杏子はおとなしくしててね?」

「…私もスキンシップくらいいつでもするさ」

 

園部が暮海に若干【威圧】をかけながら忠告する。

 

油断すると【創作料理】を作ってしまうからだろう。

 

アイツの創る【コーヒー】は俺も地球にいた頃飲んだことがある。

 

味音痴はむしろ記憶回復後の方が酷い。

 

…進示には正直無理をしてほしくないが、現状は頼らざるを得ない部分が多すぎる。

 

飛空艇の建造だって手伝ってもらってるし。フェルニルって名前にしようか。

 

 

「ん?メールが来た。…キミ達の親御さんが集まったそうだ。回線を開くぞ」

 

 

 

 

 

進示視点。

 

 

夢を見た。

 

いや、これは夢ではない。

 

魂を見る力ががある俺に強制的に見せられる光景。

 

ジールにいた頃は殆どぼやけていたが、大人になるにつれてだんだんはっきり見えるようになってきた。

 

 

 

そこは…処刑場だった。

 

 

オスカーの隠れ家にいたときも何回か見た光景だった。

 

これは…トータスという星に刻まれた怨嗟の声。

 

次々と処刑される人間。

 

『私は彼らに傷薬を与えただけだ!!魔人族のものにだって争いを好まない者はいる!!!』

 

そう言って処刑された…内容は全て見えないから理不尽かどうかは分からない。

 

だが、

 

その男を重力魔法で処刑しているのは

 

「ミレディ…そうか、彼女が」

 

『ライセンの法は絶対…どうせ無意味なんだ…無意味だから…何も感じない方がいい…』

 

…戦力勧誘で引き込んだつもりだったが、こんな光景を見せられては引き込んでよかったとさえ思えてしまう。

 

これはマジの子供の頃だから、俺達と出会うのはここから1000年以上も先だ。

 

次の死刑囚は異端扱いされた男だ。

 

『どうして神官様に暴力を?こうなると分かっていたはずです』

『…大変だな…嬢ちゃん』

『?大変なことをされましたね。分かっているなら何故』

『…そうじゃない。嬢ちゃんがそんな顔をしてるからさ』

 

『?』

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

『子どもが笑えねぇ世界に何の価値がある?』

 

 

 

 

 

 

 

ミレディの目が見開いた。

 

…あ、心が動いたのか。

 

…つまり、これがミレディの原初の原動力という事になる。

 

この死刑囚の男がミレディの心に楔を打ち込んだのだ。

 

そして、ミレディが無意識に望んていたモノ。

 

そして次の一言がその原動力を核心に導く言葉。

 

 

 

『いつか人は…自由な意思の元に生きられるってよ』

 

『自由な……意思…?』

 

『アンタだって…笑って生きていたいだろ?』

 

 

 

こうしてこの男もミレディに執行された。

 

 

この時、ミレディの心に波紋が生まれた。

 

 

 

 

『お風呂にする?ご飯にする?それともベルたんにする?ちっこいのに毎日お疲れ様~』

 

次の瞬間ずっこけた。

 

シリアスぶち壊し。

 

…このメイドはミレディの…?

 

まさか…

 

こうして映ったのはミレディとメイドが大の字に寝ている光景。

 

 

 

 

 

『愛したことが罪か!?』

 

 

…ミレディがかなり動揺している。

 

もう彼女は死刑執行の装置だけではなくなっている。

 

 

『ベル!!私が何とかする!!だからすべて話して!!』

 

 

ベルというメイドが牢屋に捕まって…酷いけがをしている。

場面が飛び飛びだから子細は分かりにくいが…この後の展開が読めてしまった。

 

 

 

『私の名はベルタ・リエーブル。元は聖光教会総本山大司教に名を連ねる信託を受ける巫女よ』

 

 

 

 

…俺は無意識に自分の胸を抱くように蹲る。

 

 

手袋が外された手で俺の手を握る暖かい感触。

 

デジタルデータなのに確かな温もりがある。

 

「杏子…」

「…フ」

 

彼女は微笑み、俺に寄り添う。

 

ここは俺の夢であり、星の記録であるはずなのに、杏子がここにいられる理由。

 

優花や他のメンバーがいない理由は…1つしかない。

 

「そうか…デジシンクロ状態だからか」

「そうだ。私とキミは魂が繋がっている。私も記憶回復前はなんとなくしか分からなかったが、記憶回復後も何回か意識を共有してこうして来られるようになった。…優花やミレディが羨ましがるかな」

「…もう何回も見ているはずなのにまだ慣れないなんて…情けないか?」

 

震える俺の手を杏子が握りしめる。

 

「…おや、キミはこの発作を予想して私と一緒に寝たのではないのかい?」

「…いや、発作は不定期だ。樹でも完全には干渉出来ない…が、杏子という前例が現れたのなら、共有できるかもしれない」

「そうか…いや、ヒトであれば当然の感情だ。恐れすぎるのもいけないが、慣れ過ぎるのもまた良くないことだ。…デジモンの私に言われても実感はわかないかもしれないが」

「デジモンこそヒトの精神に影響されるだろう。ロードナイトモンやアルカディモンが著者だしな…お前と暮海杏子は精神性がほぼ同じだからいい塩梅になってるが」

「そうだったな。…それにしてもこれが…」

 

 

杏子がベルが無残な姿でいるところを見る。

 

ミレディが駆け寄ってベルを回復させるが…回復が追い付かない。

 

魔力が霧散される環境もそれに拍車をかけている。

 

『手を取り合う事は…罪かしら?情をかわすことを…好きな事を好きというのは…罪…ですか…?』

 

『罪…なんかじゃない!!』

 

『妹みたいに…』

『姉みたいに…』

 

『『思ってた…』』

 

 

願わくば…人が…自由な意思の下に生きられる世界になりますように…

 

 

 

 

『進示様。…いえ、■様。何度でもいいます。本来神も天使も必要以上に人の世に干渉しません。

どうしても関わる必要があるときは力を制限し、一定の条件のもとに転生者と契約します。

 

転生者を守護し、その手足となるのは人類の手に負えないものから人々を守るため。そして天使にも情はあります。共に暮らし、ともに戦えば絆されることも決別することもあります。

 

…私は進示様の幸せを願っています。そのためにこの私を如何様にもお使いください。

進示様ならば私の力を悪用しないでしょう。

 

…実のところ、貴方様は面倒くさがりで、支配することも『管理が面倒だから』という、人が聞けばしょうもない理由でしないでしょう。善行も目に見える範囲でしかしない。悪行もむやみに犯さず、しかし、本意ではないのに必要悪で泥を被る。善意と義務と罪悪感の間で揺れながら。…ですが、だからこそあの方と私は貴方様を選んだのです。打算がないとは言いませんが、だからこそです…フフフ、矛盾した感情で動くなんて…私も人間臭いですね』

 

 

そんな声を思い出した。

 

…ああ、もう。こんな時に思い出すなんて…抱きしめてあやしてほしくなるじゃないか。

 

 

 

 

 

「…」

「予想より30分ほど早い目覚めだ」

 

添い寝をしている杏子に声を掛けられる。

アレはしてないので服を着たままだが。

…こういう時こそこの温もりがあってよかったと思う。

 

 

「…視てただろう…?」

「ああ。話には聞いていたが、今回初めてはっきり実感した。これからは悪夢にも寄り添おう」

「ありがとな。…通信設備の整備を頼む」

「大丈夫か?」

「樹もお前も優花も知ってるが…ミレディにも話そう…隠す意味はないからな」

「…そうか。時間はそれなりにある」

 

そう言って、杏子は優花とミレディに『進示を慰めてほしい。例の発作が起きた』と説明し、自分は通信設備の整備に向かった。

 

夢の事をミレディに話したら、最初は驚かれたが、徐々に俺の能力と視た記憶が符合することを悟り、すぐに俺を抱きしめるようにしてくれた。

優花もミレディのあまりの境遇に絶句してたが、優花は俺だけじゃなく、ミレディも抱きしめるようにした。

 

これがハジメの見た朝の抱擁の正体である。

 

…そう言えばデジモンがゲーム以外で実在することは何人かは知らないぞ。

 

あ、俺も人の事言えない。

 

別室からエテモンとギルモンが出てきたときは叫び声があったが気のせいやろ。

 

 

 

 

 

日本某所

樹視点

 

「来ました。杏子ちゃんが回線を開きます」

 

私の言葉に気を揉む生徒の保護者達。

 

新しく連絡を取れるのは菅原さん、宮崎さん、相川さん、仁村さん、玉井さん、そして畑山先生だ。

 

記録映像を見る限り、最大の成果は、解放者のリーダーにして最後の生き残りであるミレディ・ライセンさんの加入だろう。

しかも癖はあるものの、エテモンという強力なデジモンの加入もある。

 

あまり生徒さんを戦力呼びしたくはないが、優花さんの短時間での大幅な成長、デュークモンへの進化。

 

そして、まだ粗削りではあるものの、将来有望なシア・ハウリアさん。そのパートナーデジモンのパタモン。

 

そして杏子ちゃんの新しい武器…世界の意思が働いてるようにも感じるが、進示様が【友愛神殺剣】と名付けた神殺しの武器。

 

…天使としてどうかとは思うが、実は個神的に一番の成果はこの神殺しの剣だ。

 

私たちがトータス召喚前から戦おうとしてたものの敵の規模と性質を考えると、これは欲しかった剣だ。

 

イレギュラーなトータス召喚であり、かかずらってはいられない…はずだったが。

 

「やはりシュクリスが動いていましたか」

『ああ、ミレディの証言と、特徴が一致する。そのシュクリスはお前より格上だったな?』

「ええ。ですが気になる点…頭の痛すぎる案件がありますね」

『地球の神霊が7柱も召喚されている。これ本来究極体デジモンが何体いても我々の手に負えない案件だ』

 

進示様の言葉にざわつく周り。

通信していられる時間は限りがあるので話を強引に進める。

 

「そう悲観することもないかもしれません」

『分霊だからだな。本体と違って、【人類が知恵と技術と力を振り絞ればなんとかなる】範囲の強さに収まっている』

「その通り。神を形成すものは信仰。その信仰はヒトの祈りである以上、人類がどうにもできない規模以上の力にはなれない」

 

つまり人類の敗北は100%になる事はない。

 

7柱の神霊は転生者と天使の討伐対象ではないが、無視して通れる問題ではなくなった。

 

ただ、この問題を呼び込んだのは

 

「エヒトでまず間違いないでしょう。それと…イーターが召喚された形跡もあります」

『…やはりか!』

 

どういう理由で召喚したかはまだ不明だが、推測は可能だ。

 

ユエさんが叔父上からされた仕打ちと封印。

 

ユエさんの再生能力は魔力が尽きるまでだ。

 

不死身に近い肉体だが、叔父上がユエさんの魔力が尽きるまで攻撃せず、封印にとどめた理由。

 

杏子ちゃんが察した。

 

『そういうことか。…依り代を地球から調達しようとしたのか』

『…そういうことか!!』

 

進示様がやや遅れて察したようだ。

他の面々は「?」顔だが、簡潔に噛み砕いて説明するには…。

 

『すぐ気づくべきだったなぁ』

「進示様は探偵ではありません。…我々がサポートしますから、万能である必要はありません」

 

進示様をフォローしつつ、話を進める。

 

進示様が持つ知恵も力も既に凡人のものではないのだが、正直それでも厳しい戦いになると言わざるを得ない。

だが、進示様の精神性は意外と凡人の域を出ないし、どれだけ鍛えても出られないだろう。

 

少なくとも、【一人で勝手に成長できる】ことを天才とするならば。

 

だが、孤高の天才ではダメなのだ。

 

繋がりを持つ凡人でなくてはならない。

 

だが、それでも常識の埒外を持つ力でないと太刀打ちすら出来ずに蹂躙されるしかない災害。

 

一般人の中にそれが出来る人材はなかなかいないのだ。

 

力があってもそれをむやみにひけらかさず、かつ、面倒ごとを避けたがり、それなりの俗物的欲求があり、しかし、必要な時は戦える人材。

 

コミュ障の進示様を選んだのはそう言う理由もある。

 

…この世界で一番の適性者はハジメさんかしら?

 

「エヒトは存在するだけで世界を物理的に揺るがすエネルギーを持つわけではないようです。

となれば、人間が信仰で神に昇華したタイプ。ならば神気を観測しながら神として格が低い理由も頷けます」

『うわぁ、あのクソヤローを【格が低い】で済ませるなんて…それが本当ならクソヤローもミレディちゃんも井の中の蛙だっけ?そんな感じなんだなぁ』

「貴女がミレディさんですね?私が双葉樹であり…」

 

そう言って、私は神気を解放し、4枚の翼を持つ大天使になる。

 

映像越しで私を見たミレディさんは圧倒されているようだ。

 

映像の向こう側の畑山先生と生徒の人達も本能で跪きそうになっている。

 

他の保護者方はもう見慣れた光景ではあるが。

 

いけない、神気を強くし過ぎた。少し抑えて…

 

「膝まづく必要はありません。楽にしてください。敬語も不要です。そして、大天使トレードとも呼ばれる存在」

『因みに階級は大天使、系列は維持神、管轄は情報管理警備だ』

「ミレディさん。記録映像を拝見しました。進示様が貴女を迎え入れるなら私も歓迎します。貴女の戸籍も用意しておきますね…戸籍というのはステータスプレートのような身分証という認識で構いません。私達は世界の外側からくる災害と戦わねばならないので、安息ばかりの暮らしではありませんが、貴女の好奇心を満たせるものも溢れています。勿論一定のルールはありますが、貴女であれば適応は難しくないでしょう。

…失礼を承知で言わせていただきますが、進示様の見た夢の記録、不完全ですが、見させていただきました。齢二桁に満たない年齢で処刑人を務めて、紆余曲折あって神の世界を卒業し、ヒトの自由意思を示そうとし、戦いぬいた貴女の功績に敬意を。」

『…!!』

 

私の言葉にミレディさんが感極まる。

 

「仲間が全滅しても1000年以上もの間たった一人でよく頑張りました。そして、進示様や杏子ちゃんと出会ってくれたこと、ありがとうございます」

 

『は、はい!!』

 

「それから、進示様はお気づきですか?」

 

『ああ、ミレディの周りをモヤモヤしていたが、樹の言葉で確信を持った。オスカー・オルクス。ナイズ・グリューエン。メイル・メルジーネ。ラウス・バーン。リューティリス・ハルツィナ。ヴァンドゥル・シュネーだな?』

 

 

『え!?みんないるの!?』

 

進示様の言葉にミレディさんも…杏子ちゃんも驚いている。

 

『どうやら6人とも1000年以上もの間魂が霧散せず意思だけ留まり続けたようだな。普通はあり得ないぞ…ただ、会話も出来ないし、』

「シュクリスがミレディさんの肉体しか復元できなかった理由は、復元出来るほどの魂が残っていないからですね。ミレディさんが特殊なケースでしょう」 

『ニコちゃんマークのゴーレムに自分の魂を定着させて生きながらえていた。…迷宮で何があったかは、時間があれば記録映像を見せよう。…肉体の復元については気になるところがあるが、今は関係ない。…シュクリスの術式ではなさそうだしな。話をユエに戻す』

「エヒト神は完璧な神ではないが故に長生きし過ぎて自らの肉体を持ちません。現在は魂だけの状態で生きているのでしょう。…それにしては反応が弱すぎますが」

 

そう、魂だけの状態で生きてるのなら反応はあるはず。

 

…感知できるそれらしい霊体反応はオスカーさんたちより弱々しい。

 

『?』

「…いえ、続けましょう。エヒトが自由に動けるようになるには、誰かを依り代にする必要があった。…それがユエさんです」

『!』

 

モニターの向こうのユエさんは目を見開くと、次第に震え始める。

 

『叔父様は…私を守ろうとしていた?』

『十中八九な』

 

ユエさんの推測にほぼ間違いないと告げる杏子ちゃん。

 

『だが、ユエくんが見つからなかったのだろうな。他の世界からそれなりに依り代に適した人物を調達しようとした。…それが天之河光輝だ』

「光輝が!?」

 

天之河さんのご家族が叫ぶ。

『あの時魔法陣が天之河の足元に出てたからな。俺達は単純に【近くにいたから巻き添えになった】だけ。…だが、それで天之河を責めるのはお門違いだ。立案・実行犯はあくまでエヒト』

 

そう、それは進示様の言う通り。

 

『だな。少々思い込みは激しいが、召喚に関しては天之河光輝は完全に被害者だ。勿論我々もな』

『さて、エヒトがどうなったかを知りたいところだが、現在俺達は仕事で行方不明者の捜索をしなくてはならない。考察は時間がかかりすぎるから、こっちを先に片付けよう。今の話は思いのほか時間を取った』

『ハジメ君、申し訳ないが運転を任せていいかな?』

『あいよ、暮海。進示はこの合間の時間で少し寝ろ。ミレディの処置で疲れてるだろ』

『助かる』

『さあ、先生。それから皆。この合間時間でそれぞれの親御さんと好きなように話すと言い。…先生たちの別の目的も恐らくは』

 

そこまで言って杏子ちゃんは先生を見る。

 

先生はまだ何も話していないのに、なんでわかったのかと聞くと。

 

『初歩的な事です。昨日レストランで再開するときに、清水幸利の名前が出てて、『どこに行ったのか』と話されているのが聞こえましたから』

 

杏子ちゃんがエア眼鏡をくいっとしながら答える。

 

…眼鏡杏子ちゃんも可愛いかもしれないわね。今度買ってみようかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

「どうした?」

「もしかしてコレって、どんな夢も共有するってことは」

「ああ、性的な夢も共有してしまうだろうな」

「プライバシーもクソもない!?!?」

「ははは、私とて守秘義務は心得ている。大丈夫。キミと私はどこまでも運命共同体だ」

「…樹も知ってて言わないんだな」

「私もキミに不利になる事は吹聴しないさ」

「『不利にならなければ話す』って事でもあるだろう。赤裸々な事を…!!」

「彼女たちはどんなキミも受け入れると言った。大丈夫さ…しかし、これは考えようによっては便利かもだぞ?」

「なんだよ」

「これからは夢の中でも情事が出来るな。しかも夢だから誰にもバレない!夢の中だから法にも問われない!これから先転生して肉体年齢が幼くなっても夢の中だから遠慮なく出来る!」

「お前デジモンなのにとんでもない発想するな!?」

「ミレイも想像してなかったかもしれない!」

「しねーよ!?」

 

 

 

 

「ミレディ」

「?」

「他の解放者の言葉は聞こえないほど魂が弱っているが、言わんとしている事は…感情はなんとなくわかる」

「…な、なんて言ってるのかな?」

「『ミレディのやりたいことをやっていい』ってさ。みんなお前の自由意思を尊重している」

「…!こんな短い期間で何回泣かせるのさ…。ありがとう…みんな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

杏子の記憶が回復したので観測できるようになった御神楽ミレイはというと…。

 

「杏子、貴女がそういう関係でいいなら私は特に口出しはしないけど、そんな発想をあなたの口から言うこと自体予想g…いえ、ある意味好奇心旺盛なアルファモン(貴女)らしいけど」

 

 

何やら悟った口調で薄ら笑いを浮かべていた。

 

そしてミレイは手元のノートパソコンを叩く。

 

「七大魔王を倒そうが倒さまいが、どっちにしろ別の形で別の世界に面倒ごとが流れるのね。

…ええ。ちょうどいいわ。こういった経緯で彼女は今も戦っているのよ。不可抗力で杏子がパートナーにならざるを得なかった彼もあなたを助けようとしてくれてるし、貴方に会わせようともしてくれている。…彼等に力を貸す気…ある?」

 

ミレイは目の前の赤毛の少年に問いかけると少年は迷いなく頷いた。

 

「人がいいわね貴方。じゃあ、そのままじゃ戦えないから、すぐにはトータスに行けない。行っても殺されるだけよ。戦力を整えることからね。貴方が育てたデジモンは向こうに連れていけないけど、暮海探偵事務所…依頼で縁があったデジモンなら連れていける。

…杏子がピートと名付けたワニャモンもそうだし、軍の兵器にされてしまったタンクモンも同様ね」

 

ミレイがそう伝えると、少年は直ぐに心当たりを探し始める。

 

「一先ずは今あなたが思いついたデジモン達を連れてくるところからね。全員は連れていけないでしょうから人選は任せるわ」

 

少年はは不敵に笑った。

 

「頼もしいでしょ?彼は」

「ええ…私も半電脳体というモノになってしまったときは困惑したけど…あの彼の頼もしさはあのデジモンが私だった時の影響なのね?」

「ええ、暮海杏子さん」

「世界が消えてしまった時もどうなるかと思ったけど…何とかなるのかしら?」

 

【本来の】暮海杏子がミレイに問いかける。

 

「なんだかんだで何とかするわよ。波乱万丈な展開はあるでしょうけど」

 

 

「そうですよ、杏子さん。それに子供が笑える世界がいいことだって言うのは共感出来ますから」

 

少年は力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それから、海ぶどう粒あんコーヒーはいかがかしら?」

「元々趣味じゃなかったけど…そうね、飲まず嫌い話良くないわ!」

「うん!美味しいですよ!」

 

 

 

この場面に又吉刑事や真田アラタ、神代悠子、白峰ノキアがいれば全力で止めに入っただろう。

 

ストッパー、不在。

 

 

 

 

 




進示。完全にプライバシーを失う(ついでに樹には気を使われてただけと知り、さらに凹む)。
デジシンクロで杏子が夢にも介入できるようになったため、無意識領域の趣味嗜好も完全に駄々洩れ。これはキツイ。
それに優花やミレディに羨ましがれる。

???「あ、進示のプライバシーは私も完全に握っていますから!でも、ヒトってプライバシー握られることに耐えられないから、どこかでお詫びをしないといけないですねぇ。でも私の下着で【ピーッ!】はしなかったんですね?ちょっと意外でした。してもよかったんですよ?」


サイバースルゥース、始動。

しかし、世界が失われたため、現在サイスル主人公と本来の暮海杏子は半電脳体の状態になった。主人公は2回目の経験である。

この二人は七大魔王を放置したままエンディングを迎え、歴史改変が行われてしまった世界線である。

愛ちゃん護衛隊含む他にも何人か原作で心が折れてドロップアウトしたクラスメイトをデジモンテイマーに特化した戦士にする?

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