デジモンと命を共有する転生者   作:銀の弓/星の弓

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長い事更新せずすみません。


今のミリアって杖を含めた装備を全部進示にあげちゃったし、一応格闘技の心得はあるけど、デジモンにならなきゃ武器がないし、人間体のままでは出せる身体能力はせいぜい成熟期クラス。

…閃いた!

進示「オスカーの隠れ家にあった【コレ】を改造してミリアの武器にしようか」
杏子「それはいいのだが、今の彼女はデジモンで魔力がないから、ハジメ君の武器のように魔力前提の装備では使えないぞ?」
ハジメ「何だ何だ?何造る気だ?」
進示「ミリアの武器。どうせだから変形機構もつけちゃおう」
ミレディ「うわぁ…ミーちゃんの武器にそれを素材に使うなんて皮肉が効きすぎてるねぇ。シンちゃんドS?」
進示「ミリアはああ見えて結構パワー型だから重量級の武器がいいかな。せっかくだし、俺の戦闘スタイルの元ネタの要素も入れてみようか。もう一つは…うん、ドラモンブレイカーをモデルにできるかな」
ハジメ「名前はどうするんだ?」

進示「…そうだな。変形機構も含めて二つの形態は【竜】、もしくは【龍】がモデルだから…うん。【龍王剣】にしよう」


なお、原作と同じシーンは大幅カットします。


第29話 抑えていた本音(前編)

ガラテア視点

 

ハイリヒ王国に不穏な風が流れる。

 

王国でメイドとして働きながら進示と杏子の帰還を待っている私だが、ホルアドの方から強大なエネルギーを感知した。

 

「これは…ゼロからもらった知識では…七大魔王…?それにしてはいささか弱い…?」

 

私の知識に間違いがあるのかそれとも…。

 

「いずれにせよ、あなたの出番は近そうね…フーディエモン」

 

私は胸元にいる自身のパートナー…デジヴァイスに語り掛ける。

 

失われた世界のバックアップに必要なピースの一つが私…正確には私の脳ね。それとこのフーディエモンなのだ。

 

「七大魔王…伝説には聞いたことはあるけど、人間界にもそういうものはあるわよねぇ~?この場合はデジモンかしらぁ?」

 

そう言いながらコツコツと歩いてきたのは岸部リエだった。

 

「岸部さん。ご存じで?」

「ここではメイドのベリキシエよぉ。アナグラムなんて単純だけど意外と便利よねー♡」

 

キャラづくりが激しいこの女性(デジモンだが)はしかし、とてつもない野心家でそうでありながら人間社会でCEOまで務めた人物だ。

 

「地球であなたが隠れ蓑にしていた会社はどうなっているのでしょうね?」

「…どうやってあなたがそれを知ったかは気になるけど、私がケアできなくなって一気に傾くでしょうね~。殆どの人間は楽をしたがるから」

 

それは否定できない。

 

ジールでもほとんどの権力者が他力本願だ。

 

ゼロが召喚された時代は被召喚者の記憶を奪い、召喚者の意のままにコントロールする術式があった。

 

ゼロの純潔もその時に奪われたのだろう。

 

これを実父である進示が、実母である杏子とミリアが知ったら…杏子は読めないが、ミリアの怒りはマズすぎる。

 

ミリアが全盛期であれば、地球規模の惑星など一瞬で木っ端みじんだろう。

 

進示と杏子が召喚された時代には失われていたが、あの二人に邪神を倒させて自分の手柄にしようとしたのだ。

 

用が終われば始末する腹積もりで。

 

進示は恐らくそのことに気づいていたが、後ろ盾がない状態では逃亡生活も困難だっただろう。

ミリアがいなければ逃亡生活もままならなかっただろう。

 

勿論私は【隠れて見ていた】のでその心労は察して余りある。

 

「まあ、あの会社は別にどうでもいいわ。その気になればどうとでも立ち回れるし。今の私にはぁ、恵理ちゃんの方が大事♡だけど、あの場は任せても大丈夫そうね」

「…心配ではないのですか?」

 

今の岸部と中村の関係を鑑みれば助けないという選択肢はないはずだ。

 

「あの場にはロイヤルナイツの中でもスピード自慢の子がいるし、アルファモンとそのテイマーがホルアドに近づいてる情報があったのよ。アレが成長期なら殺されはしないでしょう?さらにお仲間の園部優花ちゃんもロイヤルナイツ、デュークモンのテイマー。さらに究極体が2体、完全体が2体…うち1体はあの分じゃきっかけ一つですぐに進化できるわね。そしてもう1体の完全体は病み上がりとは言え、テイマーが解放者、つまり本物の戦場を知るもの」

「!」

 

そういう事ですか。

 

「…今は、待つしかないと」

「そういう事♡」

 

 

 

 

 

 

 

杏子視点。

 

君達は【対話】というものをどう考えているだろうか。

自信と相手を理解し合い、人生に彩をもたらすもの…まあ、一般的な認識はこの辺りか。

仕事を円滑に進めるためのコミュニケーションだったり、友情、色事、趣味の共有のためだったりとコミュニケーションの動機は様々のはずだ。

近代では【飲みにケーション】なるコミュニケーションが存在するようだが、お酒が飲めなかったり、人とかかわるのが苦手な人種には受け入れがたい方法だろう。

進示は人と関わることに苦痛を感じるタイプだが、理解者には寄りかかるタイプだ。

 

…しかし、誰しも【自分の主観】というものが入ってしまうのは致し方ない事だろう。

例えば、人生という物語の主人公は自分だと思っているような認識だ。

 

私はアウトローな生活を送っていたのに少々自画自賛をすることがあるという事は進示とミリアから言われていた。

流石に岸部(ロードナイトモン)程ではないと思いたい。

 

 

 

 

天之河光輝の剣を親指一本で止めている進示の姿があった。

 

「自分の主観でしか物事が見えないのは誰でもあることだし、殺す直前で日和ったのも21世紀の日本で育った以上仕方ない面もあるが…、他人に責任転嫁してるに飽き足らず、『決闘だ!』とほざきながら準備もなしに剣を振りかざし、あまつさえ杏子たちを賭けの対象にするか…。お前、自分がどれだけ我儘言ってるかわかってるのか?」

「黙れ!!みんなを開放してもらうぞ!」

「八重樫やハジメにケツ拭かせといて、顧みることもしないのか…才能があるだけに残念というほかはない」

 

 

フム、魂が繋がっている進示の考えは手に取るようにわかるが性格さえ治せば自分すら超える素質があると睨んでいるようだ。

進示の場合は経験と龍の因子で上回っているだけで、素の素質は認めているらしい。

 

そういうと進示は残った右腕で天之河君の鎧ごとボディブローをする。おいおい、鎧に罅が入っているぞ。

あ、泡拭いて気絶した。

 

「手加減はした。この映像はもう送信されているし、こいつの御両親や妹がこの醜態視たら何て言うかな…」

「…送信って、え!?どういうこと!?」

「そう言えば通信に必要な魔力量は既に溜まっているな。それに、地球への通信が確立したのは、大迷宮落下後だったしな。君たちが知らないのも無理はない」

 

オルクス大迷宮に救助に行ってからこの現象が起きるまでの間を語ろう。

語るのは私だけではないが。

 

「それにしても父さんの性格上、あまり修業はやってないと思いましたが、予想以上に腕を上げていますね。それに、身長に対して体重が軽すぎませんか?」

 

思わぬところで再会を果たした我らの師匠兼娘である女性、ゼロ。

 

もう正体を隠す必要は無くなったのだが、よそよそしい態度はこれまでの経歴故か…まあ、性格は父親に似たのだろう。

私たちの師匠をやってた頃は自分を押し殺していて、殺気がしょっちゅう出ていたのだが、今は穏やかな雰囲気だ。

穏やかな方こそ本来の彼女だろうが、天之河君に景品の対象にされてしまったので、やや剣呑なオーラがある。

 

「進示は178センチ58キロだ」

「…いくらなんでも軽すぎませんか?」

「心労もあるし、この数年休む暇がないほど働いている。公安や政府の依頼で退魔師のようなことをしているが、その裏でもいろいろ準備をしなければならないことが多い。それに、労働基準法を適用できない仕事だからな。かといって休めば関原君たちの負担も増える。ふざけているように見えて彼らも多忙だ」

「過労死して異世界転生しそうだな」

 

突如、私とゼロの会話に割り込んできたデジモン。

 

「ガンクゥモン…久しぶりですね…。ですが、先ほどまで父さんのスマホにいましたね?いつの間に杏子母さんのスマホに移動したのですか」

《勇者が進示に突っかかってきたあたりからだな。めんどくさくなりそうだし》

 

私のスマホから声を出すガンクゥモン。

 

「ぶっちゃけましたね」

「え、実際めんどくさくありません?ある意味さっきの【傲慢】より、かといって下半身で動いているわけでもありませんし」

「ミリア母さんの下ネタもいつも通り」

「わあ!お師匠様ってば結構突っ込んでくれるんですね!」

「…もう私を師匠と呼ぶ必要はありません」

「勇者君は色恋以前の問題ですが、坂上君のブツは結構大きかったですよ!」

 

ミリアに突然水を向けられた坂上君が「何で知ってるんだよ!?」と目を全開に見開いて叫んだ。

 

するとミリアは

 

「ホラ、召喚されてから初めてオルクス大迷宮に向かうまでの間スチュワー〇大佐ごっこしてましたよね!」

 

スチュ〇ート大佐ごっことは、ダイでハードな映画のワンシーンで、マッチョメンが全裸で太極拳の型を取るシーンの事である。

 

すると案の定坂上君は再度「何で知ってるんだ!?」と言いながらミリアの肩をがっくんがっくんと揺さぶった。

 

ミリアは肩を掴まれたぐらいでセクハラを訴える龍ではないため、そして坂上君を弄った侘び替わりなのか笑顔でされるがままになっている。

 

「なるほど…、あの事案は進示が目撃者だったな。ならば進示が話さなくても私とミリアが知らないというはずはないか」

 

つまり、魂が繋がっている私たちは当然ながら坂上君の股間の大きさを知っているという事だ。

事情を知らない者たちにデジシンクロの概要を説明する。

 

…先ほどからゼロは檜山君を警戒しているようだが…彼に何かあるのか?

ハジメ君を突き落とした事による警戒ではないな。

 

「…は!?待って!?という事は…あれ?そう言えば杏子って私たちと一緒にお風呂入ったことはないわよね?」

 

という事は私とミリアが見たものも進示が知っているという事になるのだが、八重樫君が疑問に思ったことを口にする。

 

「あの当時はまだ見聞きしたこと全て読み取れるほど魂の繋がりは深くはなかったが、断片的には読み取れたのだろうな。だから私を他の女性と入浴させたり着替えさせたりすることを避けたわけだ」

 

私の言葉で女性陣は胸を撫で下ろしたようだ。

 

因みにトータスに来てからはガラテアが私と一緒に入浴していたが、『今後榊原進示と一緒にいる事になりますので視られることにも慣れておかないと…』と言っていた。

 

記憶をなくしてた時は意味が分からなかったが、今ならはっきりわかる。

 

ガラテア…デジシンクロの特性について知ってたな?

 

 

 

 

『それと、どうせ後で伝わるでしょうから言っておきますね。進示には姉さまを介錯したこと…私は感謝しています。進示にとっては【2回目】の殺人だったでしょうけど、そのおかげで姉さまは世界を喰らう化け物に変質することなく苦しみから解放されました。その感謝の言葉も言えないままこの世界に流れ着いて数年経ちますが、もう少しで礼が言えそうです。勿論直接言うつもりでいますが…私の心の整理もありますし…ね?』

 

 

その情報は当然ミリアにも伝わったが、そのことに対してはかなり複雑な感情らしい。

 

ミリアはホープに捕まった時に【進示は人を殺せない】と言っていたが…ミリアは見誤っていたのだ。

 

そのあたりに関してはいずれ進示の心の整理がついたら過去編で語ろう「メタいぞ」…むう、進示、私こそがメタ代表なのだが。

 

 

気絶した天之河君の傷を治療しつつ鎧も修復している進示は深い安堵のため息をついている。

 

ここで私の眼を使って女性の入浴を覗いていたことが知れたら集中砲火間違いなしだからな。

 

話がそれてしまったが、今度こそ何があったのかを語ろう。

 

ギルドへの報告と通信の準備をしながら…な。

 

「杏子~魔力のある優花とティオとミレディに亜空間倉庫の操作権預けたから、通信準備しといて…八重樫の蘇生と、白崎のオペレートで脳を酷使しすぎて限界…」

 

あ、天之河君の治療をしていた進示が倒れた。

 

「すごい熱じゃない!?」

 

優花君が進示を背負う。目測だが41度を超えているな。

 

ユエ君が氷を作っているな。

 

八重樫君も自分を救うためにそこまで無茶をした進示を心配そうに見ている。

 

「一先ず進示は宿に運ぼう。私は進示からのオーダーを果たす」

 

 

 

 

 

 

 

香織視点

 

魔人族の女の人との戦闘は私たちの敗走…殆ど潰走状態で終わった。

光輝君が「仲間をやられて引き下がれるか!」って言ってたけど、そこは雫ちゃんが一喝して光輝君を黙らせる。

 

こうして人目に付きにくい場所で負傷したメンバーの治療を私と辻さんでしているけど、他の皆は光輝君と言い合いになっている。

 

魔人族に降伏するか逃げるか。

 

檜山君を含む数人は降伏に傾いているみたい。

 

私はハジメ君を探すためにここまで来たのに降伏なんてできない。

 

結局魔人族に見つかって戦闘再開になったけど、重症のメルドさんを人質に取られたじょうたいで限界突破を使った光輝君が負けてしまった。

 

敗色濃厚ムードで魔人族の女の人から降伏勧告をされるけど、みんなが迷っている中メルドさんが私たちに「お前たちはお前たちの思う通りにしろ!最初からこれは私たちの戦いだったのだ!」と言いながら…多分自爆しようとしたんだと思う。それを魔力を吸収される形で防がれたうえ、腹部を貫かれたメルドさんに光輝君が激怒。

限界突破のようにも見えるけど、より強力な分さらに体にかかる負担も大きいはず。

 

光輝君が魔人族の人にとどめを刺そうとした瞬間、「ごめん……先に逝く……愛してるよ、ミハイル……」というセリフに光輝君が手を止めてしまった。

 

…その時点で何かを察した雫ちゃんが疲労困憊にも関わらず動き出す。

 

正直来るべき時が来てしまったんだと思う。【人を殺す】という事に。

 

それを躊躇した時点で…

 

限界突破の協力版(後で覇潰と知った)が切れて動けなくなった光輝君をこっちにぶん投げて、魔人族の女の人に向き合う。

 

「アンタは殺し合いの自覚があるようだね」

 

魔人族の女の人いう通り、この中で殺し合いの自覚があるのは雫ちゃんだけかもしれない。

 

他の人もあったとしても覚悟は揺らいでいると思う。

 

私たちのパートナーデジモンも専用の端末なしではスマホから出れないので何もできない。

 

いや、仮にでれたとしても、魔物と勘違いされるリスクも考えると迂闊には出せない。

 

次の瞬間。

 

「っ!?」

 

し、雫ちゃん!?

 

魔物に貫かれた雫ちゃんが地面に倒れ伏し、動かなくなってしまった。

 

「雫ーーーっ!?」

 

光輝君が叫ぶが満身創痍で動けない。

 

他の皆も信じられないという顔をしている。

 

「おやおや、あの坊やに強化してもらったアハトドだけど、加減を間違えたかねぇ?でも、剣士のお嬢ちゃんの剣が折れてないとかどんだけ頑丈何だい?」

 

彼女が何か言っているが、私の耳には入ってこない。

 

私は雫ちゃんの亡骸にしがみつき、泣くことしかできない。

 

…ああ、ごめんね雫ちゃん。

ごめんね南雲君…約束、果たせなかった。

 

 

 

その時

 

「ハジメ、ユエ。魔人族は任せる。シアはメルドたちを診て、必要なら神水を使え。

 

杏子、ティオ、はこいつらを守りながら必要に応じてサポート。優花は戦場を俯瞰しながら迎撃態勢。ミリアは俺のサポートをしろ。…俺は」

 

 

え、

 

「ぶっつけ本番だがやるしかない。八重樫の魂を呼び戻す。ミリア。魔法が使えなくなっても感覚はわかるはずだ。サポートしろ」

 

「はい!」

 

南雲君…榊原君、優花ちゃん、杏子ちゃん…!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

進示視点。

 

「進示、そこはもっと弱く!」

「…魔力の流れと魂の固定は何とかなりそうだが、八重樫の魂を呼び戻すには足りねぇな」

「そんな!」

 

ハジメたちが戦っている横で殺された八重樫雫の魂を呼び戻す術式を組んでいる。

 

これはジール発祥の魔法で元々ミリアから習っていたもの。

 

白崎が悲鳴を上げ、天之河が何か抗議をしているようだが、術式を組むのに集中して彼らの言葉は俺の耳には入ってこない。

 

「…進示。今更ながら謝罪があります」

「何だミリア、こんな時に」

「…元々私の異能である【死者蘇生】を会得するにはあと一つ足りないものがありましたが、進示はきっかけは掴んでいるのです…あの時わざと助けを遅らせましたから」

「…わかってはいたが、直接口にされると堪える…ってまさか!!」

 

ジールにいたとき、濡れ衣を着せられて俺が公開処刑でギロチンで首を刎ねられた時、俺の死体を回収したミリアが死者蘇生で俺を生き返らせて(首もくっつけて)いたが、わざわざ俺の処刑を待つまでもなく彼女には俺を助ける手段があったという事だ。

 

デジシンクロで魂が繋がった今、その当時のミリアの心境まで知り尽くしているが、…死者蘇生を感性かせるには術者が死ぬ必要があったのか…!死ぬ感覚の経験が必要だったのか。

 

「…私を軽蔑しますか?」

「いや、勘だが、それが最適解だ。まあ、そのせいで杏子を泣かせちまったけど」

「…」

「いや、ホント申し訳ありません」

 

俺の言葉に彼女は頷く。

しかし、杏子が半眼でミリアを睨む。

…必要だったとはいえ、俺を見殺しにしたミリアを睨むってことは杏子の中で俺の存在は大きいという事。

 

天之河が「暮海さんを泣かせただと!?」とか言っているが、それは杏子本人が「天之河君、黙っていてくれたまえ。それに関しては進示と私、ミリアの問題だし、既に折り合いはつけている」といって封殺した。

 

生と死の狭間の感覚…。

 

「…捉えた!」

 

俺自身の死の感覚を縁にして彼女の死の感覚を掴み、彼女の魂を補足した。

…あと20分遅ければ手遅れだっただろう。

…結構後で後で知ったことだがこの世界の魂魄魔法とやらでも生き返れる時間に限界があるようだ。

 

しかし、ここで予期せぬ事態が起きた。

 

 

「八重樫の首が繋がっているのは幸いだった。それと、体のどこも欠損がない事も幸いだ。今の俺では切断部位の接続までは出来ないからな…ん?」

「どうしたの?」

 

白崎が聞いてくる。

 

「…ちょっと予想外のことが起きた。生き返るのに必要なものは揃っているが、八重樫が目覚めを拒否している」

「「「えええっ!?」」」

「そんなわけあるか!適当なことを言ってるんじゃないだろうな!榊原!」

「ちょっとお前は黙れ」

 

天之河が八重樫の幼馴染だからか、俺の言葉に我慢ができなかったようだが、八重樫の魂の声を聴いてみると、八重樫のストレスの原因の一旦は天之河にもある。

 

断片的に聞こえる声は…

 

『本当は剣道じゃなくてもっと女の子らしいことをしたかった』

 

ふむふむ。

 

『《雫ちゃんも俺が守ってあげるよ》そんな光輝の言葉にどれだけ期待したか。彼なら自分を女の子にしてくれる。守ってくれる。甘えさせてくれる。そう思っていた』

 

天之河の奴そんなこと八重樫に言ってたのか。

 

俺は警察庁に来る鷲三さん達とは面識はあるが、八重樫雫とは高校に入ってから出会ったので、プライバシーに関わる部分には踏み込まなかった。

俺も俺で世界消滅に対抗する手段の構築や、樹や仲間たちとの殴り合いという名の修行(まあ、全く遊ばないわけでもなかったが)。街に現れる自衛隊の手にも負えない人害生物の処理(これに関しては警察や政府、自衛隊でも限られた人間しか知らない)で忙しかったので。

 

『光輝を好いてる女の子の1人に言われた言葉。“あんた女だったの?”…とてもショックだった』

 

…ここまでならよくある。女子社会は小学生の段階からエグイ面がある。全員が全員ではないが、その傾向は強い。

 

『光輝にとっては既にイジメは解決したという認識なのか、もう一度相談しても《話せばわかる》、《みんないい子たちだよ?》って言って私の言葉を信じてはくれなかった』

 

…なるほど。セリフのニュアンスから言ってこれは小学生時代の出来事だ。

小学生なら表面上しか見えなくても何ら不思議はないが…、きっとその女子たちは天之河の見てないところで隠れいじめをしていたのだろう。

天之河に見つからないように巧妙に。

イジメは俺も前世で受けていたからその気持ちはわかる。

 

…これ、現状死人の八重樫を救えるのが俺しかいないよな?まさかフラグ立たないよな!?

『多分勃ちますね♪進示の進示みたいに♪』

おい!楽しそうに言うんじゃねぇ!?ミリア!あと、【たつ】のニュアンスが違う!?

それにそうなったらもう半ばハーレム出来てるけど、お前にとってもライバルが増えるだろ!?

 

『前提から違います。進示も知ってるはずですよ?私は貴方と情を交わした相手を初めからライバルだなんて思ってません。ライバルでも恋敵でもなく、【同胞】なんです。私、ドラゴンですから!』

 

今はデジモンだが、ミリアの本質はドラゴンだ。

それも、本物の神にさえ比肩する。

デジモン化して大分弱体化してるが…それでもコイツは自分の存在意義を捨て、自分の力を俺に継承させるためにわざわざ日本語で何百年もかけて魔法論文を執筆し(現在百科事典400冊分の文量分読破、実践したが、まだまだ論文はある)、数々のマジックアイテムや龍の杖、亜空間倉庫を俺に遺し(結局生きてたけど)、魔法の全てを代償にしてまで俺の傍にいる事を選んだ。

 

…俺はそんなお前に縋りたくなるほど好きなのに…初対面の人間にすら遠慮なく下ネタかます以外は最高にいい女だ。

 

でも、それでも…。

 

『進示のやりたいようにしてください。問題が起きたら私も一緒に考えます』

『八重樫君は私から見ても死なすには惜しい人間だ。若さゆえの未熟さはあるが、それでもいい娘だ。だが、大事なのは八重樫君を見捨てたことで君が後悔しないかだ。…キミの思う通りにしたまえ』

 

デジシンクロで魂の会話をする俺達。

 

杏子とミリアが背中を押してくれた。

…済まないな。こんな迷いだらけの男で。

『迷うからこそ、葛藤するからこそ進示です。不器用に【進んで示す】だからこそ進示です!』

 

無意識で付けた偽名ではあるが…、そうか。

 

俺は優花とティオをチラ見する。

二人とも力強く頷いた。

ミュウの護衛と立場上迷宮に入れないから留守番させてるミレディも反対はしないだろう。

 

「杏子、八重樫の精神世界に入り込んでくれ。八重樫にアルファモンの姿を見せたことはないが、精神世界の中じゃ、魔法の類は一切使えないし、身体能力も一般人レベルになる。戦闘が想定されるが、デジモンであるお前が頼りだ。現実世界では俺と融合しないとアルファモンに戻れないけど、精神世界は【現実世界としては扱われない】。なんで、本来のお前に戻れる」

「了解した。…進示は死者蘇生の術式を維持しないといけないからこの場を動けない」

「俺も行くぞ!俺が雫を救うんだ!それに榊原!暮海さんをまたあんな化け物にする気か!」

 

…思い込みは激しい天之河だが、そこは覚えているのか。グレイドモンの事を言っているのだろうが、説明の時間は惜しい。

時間をかけすぎると八重樫を蘇生出来なくなる。

 

「話聞いてました?精神世界の中ではあなたの力は一切使えませんよ?それに、戦闘が想定される中でデジモンしか戦闘を見込めない以上、パートナーデジモンがいない人では戦力になりません」

 

ミリアが補足してくれる。早く杏子を送り込まなくてはと思ったが、予想外のところから待ったがかかる。

 

「わ、私!パートナーデジモンがいるよ!私だけじゃなくて雫ちゃん、遠藤君、永山君も!」

 

「「「っ!?」」」

「か、香織!?」

 

俺達や現在魔人足の女ともう戦闘が終わりそうなハジメですら驚愕の眼差しで白崎を見ている。

 

「デジモン…だって?あの坊やと同じ」

「テメェ…何を知ってやがる?」

 

ああ、クソッ!術式の維持だけで面倒なのに…!魔人族の女の対応はハジメに任せるしかない。

しかし、白崎のパートナーはリアライズができないのか。話を聞けば、今挙げたメンバーのスマホにデジモンがいるのだという。

 

「だったらコレを!」

 

俺は亜空間倉庫からニュートラルな状態のデジヴァイスを人数分取り出す。それぞれがデジヴァイスを受け取ると、パートナーがリアライズする。

 

白崎はプロットモン、遠藤はスティングモン、永山は…手のひらサイズのオメガモン…!?オメガモンNXか!あの状態では成熟期くらいの力しか出せないか。

 

しかし、

 

「雫ちゃんのパルスモン、出てこないね」

「ちょっと待て…。パルスモンらしきデジモンは八重樫の精神世界にいる。八重樫を護ろうとしているようだ」

「ええ!?」

「く!そんな奴に雫を任せておけない!俺が…!」

 

天之河…噛みついてくる理由は大体想像できるが、問答の時間はない。

山科誠の精神世界に入り込んだ相羽タクミと、それをサポートした神代悠子と同じ方法を使う。

 

「デジモンはまだしも、他人の精神世界の入る人間は一人にしてくれ。他人という異物を追い出されない正常な状態として処理し続けなくてはいけない。どこかの世界では存在証明とも呼ばれる、存在してはいけない世界に存在させるデータ処理がいるんだ。それを俺の脳みそでやらないといけないから、人数が増えた分だけ俺の脳の負担が増える」

 

杏子やプロットモンならデータ処理を自分で出来るからいいが、白崎は出来ないので、白崎の存在証明は俺がやる必要がある。

 

山科誠の精神世界に入り込んだ相羽タクミを神代悠子がナビゲートしていたが、彼はただでさえ半電脳体という体の状態でいつ存在が揺らぐかわからない状況だった。

最も、厳密な意味での【空想の存在を現実に馴染ませる】というには意味合いが違うが、現状他に適切な呼び名がないので、存在証明とする。

 

魂が繋がっているミリアもサポートしてくれるが、魔法能力を失っている今、いくらかの負担軽減にしかならないし、龍の杖も強力な演算装置の一面も持つが、基本的に処理するハードは俺の脳だ。

龍の因子がなければ間違いなく廃人になるデータ処理になるぞコレ…。

 

「白崎香織さん。八重樫さんの中にイーバモンらしき存在がいますが、杏子なら秒殺できます。…ですが、貴女は幼馴染の八重樫さんが貴方に今まで言いたくても言えなかったことと向き合わなくてはいけません。

…その覚悟はありますか?八重樫さんからどんな罵詈雑言を浴びせられても?」

 

ミリアが白崎に問う。

 

「うん!大丈夫!それに、雫ちゃんが言えなかったことも全部聞かなきゃ…光輝君はアレだし」

「あ、アレってなんだ!?香織!?」

 

言外に天之河に戦力外通告を出した白崎。

 

「じゃあ、時間がない!精神ダイブを始めるぞ!」

 

俺は3人を八重樫の精神世界に送り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

?視点

 

 

オルクス大迷宮、進示たちから離れた場所。

 

「へえ、よく防いだ」

 

色白で黒いドレスのようなローブを着た女性が少年の言葉に悪態をつく

 

しかし、グランドクロスを受けてノーダメージとはいかなかったようだ。

 

「その程度か?」

「…」

 

少年は挑発と分かっていても、少し苛立ったようで、

 

「そんなに死にたいなら」

 

もう一度グランドクロスを放つ

 

「お望み通り…ぐっ!?」

 

…その前に女性の拳が少年の腹を捉えた。

 

その衝撃に吹っ飛ばされる少年。

 

(今のスピードは!?いや、まるで時間を飛ばしたような動きだった…!?)

(コイツ…完全に不意打ちをしたのに、感か?とっさに後ろに飛び引いた…。アルファインフォースでもダメなのか…)

 

アルファインフォース。

本来は過ぎ去った戦闘時間を瞬間的に取り戻す究極の力だが、この女性はその能力を応用する。

 

エネルギー消費の少ない【時間操作】として利用したのだ。

勿論本来の使い方も可能。

 

(時間を稼がなくては…)

 

女性は歯を食いしばる。

 

5年前に一度デジタマになってしまったことで弱体化は避けられなかった。自分は盤面を整えて後方から策を練り、トラップを使う戦い方をするのが主流だが、直接的な格闘技も磨いてきた。

 

それでもこの始末。

 

現状では完全体程度の戦闘能力しかない。

 

歴史上仕方なかったとはいえ、父につらく当たってしまったことを謝りたかった。

 

ここで父の邪魔をしてしまえば申し訳が立たない。

 

この女性…ゼロの奮闘は続く。

 

「…失念していたよ。君の母親を考えれば使えて当然の力だね。だが、その技はエネルギー消費が激しい。いつまでもつかな?」

 




いずれ過去編で処刑されるところは書きたいけど…以前の歴史を知っているはずのメンバーも雫の死は予想外でした。



裏話

ミレディ=まだ本格戦闘は厳しいが、リハビリ開始。ミュウの護衛は務まるくらいには回復。フルスペックまでもう少し。

香織=テイマーデビュー。しかし、次回雫との壮大なケンカが…。

進示=死者蘇生の魔法を維持しながら、きちんとした設備がない状態で香織の存在証明という常人なら廃人間違いなしのデータ処理をすることに。

雫=死んだときの走馬灯で現在精神がぐちゃぐちゃ。家族にすら隠した本音でもうどうしていいかわからない。

杏子とプロットモン=デジモンなので存在証明は自力で可能。

アハトド=【傲慢】の細工で本来の物より少し強くなっている。その差が雫の生死を分けた。雫は原作でもギリギリ綱渡り状態だった。

雫の試作型刀=進示とハジメの合作で特殊な力はないが切れ味鋭い頑丈な刀。罅一つ入っていない。本格的な刀を作る前に進示たちが奈落行き。


スチュワー〇大佐ごっこ=小編集より。

岸部がティオの分を数えていない=変則的な融合状態のティオをデジモンに分類していいかわからないため。
清水の分をカウントしていない=ウルから動いていないのでノーカン。
ガンクゥモンはカウントしていない=進示のスマホにいる事は想定していない。


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