デジモンと命を共有する転生者   作:銀の弓/星の弓

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長い事更新がなかったのも申し訳ありません。
エヒトの使途の扱いをどうするかもかなり悩みました。

そして何気に初めての18000字越え。





第30話 抑えていた本音(後編)

ノイント視点

 

 

私は、主であるエヒト様に造られて以後、任務以外で人と会話をしたことは皆無に近い。

主に命じられるがまま任務をこなし、時として間接的に種族の滅びに手を加えてきた。

 

勇者召喚がなされて数日後、一瞬だけ主と繋がっている感覚に違和感が生じたが、元に戻ったためすぐに気のせいだと思いなおした(後で聞かされた話から推察するに、この時には既に入れ替わっていたのでしょう【※第4話参照】)

 

その時、私に自主的に話しかけてきた一人の人間がいた。

名を…榊原進示と言いましたか。

彼は私を見ると驚きで目を見開いたようでした。

…私の何に驚いたのでしょうか。(これも、後で聞かされた話では私が造られた存在であることを看破したようです)

 

『ノイントと申します』

『榊原進示です。…進示がファーストネームですね』

『わかりました。それから敬語は不要です。…どのようなご用件で?』

『この世界の宗教体系がどうなってるか、イシュタル・ランゴバルド達以外の視点も聞きたくてね』

『かしこまりました』

 

彼は聞けば王族や貴族などに宗教のみならず、政治、経済、軍事など様々な情報を得ようとしているのだとか。

…私は表向きはシスターですが、シスターの目線も知りたいというので、私が真の神の使途であることはぼかしつつ、開示しても問題ない情報を話します。

 

…何気に魅了が効きませんね。

しかし、現在主からは【別名あるまで様子を見よ】という名を受けていますので、国の話、神の話、そしてとりとめのない雑談もします。

 

…こうして他愛もない話をするというのはいつ以来でしょうか。…いえ、初めてかもしれません。

 

『…もう訓練の時間だ。また来る』

『分かりました。良い成果を期待します』

『お前も働きすぎるなよー』

 

こうして彼は修道の間を去っていった。…何故でしょう。何気ない一言のはずなのに【想う】ところがあるとは。

 

考え事をしていたので、彼らが次のような会話をしていたことに気づきませんでした。

 

 

 

 

 

 

『どうだったの?進示』

『間違いなく人間ではないな。少なくとも…2000年以上は生きている。ミリアに魂視る力を鍛えられたおかげで、それくらいはすぐわかった。…それから下級の天使以下だが神格もある』

『じゃあ、ノイントって人が神様?』

『…いや、どちらかというと人造の使い魔に近い。多分アレが本当のエヒトの使途だ』

『…どうするの?』

『とりあえず様子見。手を出してくるなら倒すが、敵対しないのならわざわざ戦う必要もない。…天之河が戦争参加を表明しちまった以上、…いや、魔女狩りのリスクを考慮するとどっちみち参加は必要だったが…アイツ、進路に弁護士が視野に入ってるだろ?交渉とか覚えた方がいいだろどう見ても』

『ストーカーみたいな情報収集能力だね』

『杏子、記憶を失う前のお前の方がもっとえげつない方法で情報収集してたからな?信号機のハッキングとか普通にやるし』

『えへへ…』

『ともかく、俺と杏子以外誰も殺人をしたことがない。現代日本人の感性なら殺人を忌避するのは当たり前だし、俺達だって人殺しをしたことはあっても慣れない。それは慣れても慣れるなっていう矛盾したまま抱えて向き合わなきゃいけない』

『…うん』

『一番キツイのは先生だ。地球に帰ったら一般人の騒ぎを収めるためのスケープゴートにされかねん。あるいは、謂われのない誹謗中傷で心が病む可能性もある。…それ以前にこの性も含む暴力と戦争が当たり前の世界で精神が持つかどうかだな』

『…そうだね』

 

 

それから、初めての実践訓練まで何度か修道の間を訪れては、彼は探りを入れてきます。

 

彼も私が腹を探りに行っている事は承知の上で話しているようですね。

 

…ですが新鮮な出来事にいささか彼の訪れを楽しみにしている自分がいる…いえ、何でしょうかこの感情は。…感情?私にあるはずのないものなのに?

 

 

その後、榊原進示を含むオルクス大迷宮の訃報を聞き、私は少し自分の心が相反する二つの感情を自覚しました。

一つ、彼が死んで喪失感があるというモノ。

二つ、彼の立ち振る舞いは他の召喚された使徒とは違い、歴戦…とは言い難くもあの年齢としては分不相応の修羅場を潜り抜けていると確信できるとわかるため。それと遺体を確認しているわけではないため、生存している可能性は高いと。

 

表向きの職務をこなしつつ、自信の感情の変化に驚きながらも彼らを監視し続けた。

 

 

 

 

それから数ケ月。定時連絡を取っているはずの主、エヒトからの返事がない事を怪訝に思った私は神域に赴いた。

 

 

 

そして神域に広がっていたのは…。

 

量産型とは言え私より後に製造された妹達の…死骸だった。

 

『…こ、これはどういう…!?』

 

まさか…主は既に…!?

 

『ベルフェゴールもさぁ、いくらめんどくさいからって、自分の権能他人に譲ってまで仕事したくないのかなぁ?…いや、遊ぶのも面倒なのかなぁ?』

『何奴!?』

 

そこには如何にも気怠そうに振舞う黒髪黒目の20歳前後の男性がいた。

 

『覚える必要はないよ?僕もゴミみたいに使われる転生者の成れの果て。まあ、神童みたいに真面目に仕事する気はないからね~。そんな僕だからこそ神の力は使えず、ケモノガミ…デジモンの力しか使えないんだろうけど、人間の姿のままでこの力を使えるならまあ、マシかな?…あの世界で序盤で死ぬとは思わなかったし、結末も知らないからどうでもいいけどね?主人公補正、転生者補正もあてにはできないかな?』

 

…言っていることの意味は半分も分からなかったものの1字一句間違いなく【記憶】しました。…今思えばこの私の記憶、検索能力もスカウトの決め手だったのでしょう。それに、監視はしていたので、デジタルモンスターの事もある程度は把握していますが…ケモノガミ?

 

 

『ギフト・オブ・ダークネス』

 

彼の手…正確には爪から発せられる深紅のオーラを視認した瞬間…

 

私の剣は砕け、私の意識はそこで途絶えた。

 

 

 

…私は何を…。

 

『お前は運がいい。アレと遭遇して生きていられるとは』

 

…何者ですか…

 

『我が名はゼロ。現在エヒトルジュエの使途はお前とエーアスト以外は死亡が確認された』

 

…!?

 

『エーアストは最近まで行方が知れなかったが、アンカジにいるようだ…凄まじく意外な人物と行動を共にしているようだが、エーアストがいなければ通訳もかなわないか。そして、お前の本来の主は既に消滅している、量産型も含めてだ…勇者召喚を行った数日後にな』

 

…エーアスト姉さん…以外の姉妹が…!?

…あれ?以前の私は…このような怒りを抱いたでしょうか…?

 

『ほう、自我が芽生えたか。エヒトがいなくなった後に父さんとコミュニケーションをとったが故か。なるほど、エヒトはお前たちに感情が出ないように制御していたのか…それとも作り物の人形に自我が芽生えぬと過信したか。どちらでも構わんか』

『父さん…?』

『榊原進示の事だ。…いいだろう、父さんの元に身を寄せるがいい。場はセッティングしよう…ただ、ミレディ・ライセンと、お前たちが間接的に滅びを促した種族の生き残りも父さんと同行している』

 

…ああ、ダメージで頭がはっきりしませんでしたが、少しずつ思考がクリアになってきました。…思い出しました。

異世界から召喚された使徒達の中で唯一私に話しかけた人間ですね。

…しかし、ミレディ・ライセン…?生きていたのですか…いえ、いくらか方法はありましたね。

竜人族の方も…。

…あの吸血鬼の姫も…。

 

…そして、主であるエヒルジュエが既にいなくなっている…あの時の違和感はこれでしたか。

…何でしょう。主との繋がりが完全に消えたことは理解できます。長年仕えてきた主がいなくなったというのに、…喪失感というものがない…。

 

『それはそうであろう。エヒトに仕えている間は自我がなかったのだから。だが、偶然か必然か、自我を持ったことが影響してるのか…いずれにしても姉妹を失った喪失感はあるようだな。…となれば貴様らの感情を抑え付けてた説の方が濃厚か?』

 

私の目の前にいる女性は私の考えを読んだのか、そう言ってくる。

 

『何をするにしてもまずは治療だ。私の亜空間倉庫に入れ。抵抗はするなよ?私は弱体化していても貴様よりは上だ』

『…何故私を助けるのですか』

『少しの憐れみと未来の戦力。本来の歴史…いや、【ウーア・アルトと繋がっている本来の世界】でも貴様の力が必要になる時が来る。…ノガリさんというネーミングはいかがなものか…。…オホン。それに、貴様の脳は作り物の生命体であるが故にデータ量が人間より膨大で精度も高い。トータスに万が一のことがあれば、貴様の脳からデータを引き出してバックアップが出来そうだ』

 

『貴様の力が必要になる時が来る』のセリフの後にボソッと呟いた言葉は聞こえませんでしたが、要はスカウトですか。

 

 

 

『今回の一連の件、一筋縄ではいかんだろうな。エヒトと同じ世界の出身者である到達者の亡霊がどうなるかわからないのだから。

そして、父さんは龍の因子を移植した影響で永遠を生きなければならなくなった。精神は人間の域を出ない父さんが壊れないために、お前のような不老不死の存在が助けになることもあるだろう。そのための利用…いや、私もなるべく一緒にいるつもりだが…、父さんの元ならば少しは人間らしい生活もできるだろうよ。

…そしてすまない…フェー。…私が長年過ごした世界のエルフの王女であり、ガラテアの姉なのだが、イーターに寄生されたフェーが地球とこの世界を観測した時点でそれぞれの世界にイーターが出現するのは必然だった。

フェーの千里眼はありとあらゆる世界、この世界の上位次元である観測世界も見渡せるのだが、それ故のデメリットもある。人体、あるいは世界に害を及ぼすモノに寄生された状態で世界を観測すると、観測された世界に寄生されたものと同種のものが出現してしまうという特性だ。これ故にトータスに災害を振りまいてしまった。もういない彼女に代わって謝罪する』

『…話を聞く限り能力の性質上災害の出現阻止はほぼ不可能でしょう。…謝罪は確かに聞きました…ですがこの世界の遊戯を幇助した私に言っても詮無きことですが』

 

話の内容は専門用語が多くて理解に少し時間がかかりましたが、仮にこの世界特有の病気にかかった状態でその能力持ちが世界を観測すると、観測された世界はその病気が出現してしまうという事ですか。

それとは別に…少し引っかかりますね。【元居た世界】ではなく【長年過ごした世界】ですか。

 

『故に彼女は父さんに介錯を懇願した。千里眼を封じることはできないので、無意識でも観測した世界を増やさないためには殺すしかない。当時は自殺も出来ないほど体の自由を奪われたからな。すでに観測されたトータスや地球は手遅れだが、他の世界はまだ大丈夫』

 

さあ、話は終わりだと言わんばかりに彼女は空間に穴を開けます。…この中で傷を癒せと。

 

『私はこれからホルアドで【傲慢】と接触する。彼らがあの未熟な勇者たちを救助するまでは足止めをしなくてはならんのでな』

 

そのセリフを最後に私の意識は停止しました。

 

…次に目覚めるのは…。

 

 

香織視点。

 

ここって…周りがゲームとかで視る電脳世界とかそういうものに近い見た目だなぁと思ったのが第1印象。

 

そして、

 

身長4メートル程の黒い騎士がこっちを見降ろしていて、ビックリしたけど、

「…まさか、杏子ちゃん!?」

「そうだ。これが本来の姿でな。アルファモンという。…呼び方は好きにしたまえ。

驚いているところ申し訳ないが、進示もキミの存在証明をいつまでも続けられない。きちんとした設備もない状態で、死人を蘇らせる魔法との同時行使状態だ。そんな状態では脳の負担が大きすぎる…20分がタイムリミットだ」

 

…短いけど、話のスケールからすると、20分持つだけでも凄いのか。

 

「ここへ来たのはデジモン以外では私だけだけど、南雲君は魔人族の人と戦ってるからこっちまで手が回らないとして、他の人は来れなかったの?」

 

ハジメ君の姿が変わっていることには驚いたし、強くなってることも他にも色々驚いたけど、瞳の光彩とか、指紋とかは間違いなく南雲君だった。それと…杏子ちゃん、喋り方違わない?

以前は私達と同じ…いや、ちょっと幼い感じの話し方だったのに、今はこう、ハードボイルド系の感じがする。

 

「ハッキングスキルを持っているものがいればよかったのだが、そうでないものは他人の精神世界で存在を維持できない。遠藤君や永山君、雫君はパートナーデジモンともコミュニケーションをとっていたようだが、たった今リアライズさせたばかりだからな。それに、存在証明の人数が増えればそれだけ証明する側の脳に負担がかかる。…雫君のパルスモンはこの雫君の精神世界にいる。そして、雫君がこの自分の心の殻を破らないと、生き返ることが出来ない。従って雫君の本音を君が受け止める必要がある」

「本音…」

 

うすうすそんな感じはしてたけど…ううん。私が目を背けて雫ちゃんに甘えていたんだ。

…そしてそれ以上に光輝君の方が雫ちゃんに甘えている。

 

『香織…その、南雲君が好きなのはわかったから、その…もうちょっと周りに気を使って…ね?』

『え?周りってどういうこと?』

『…貴女ねぇ…まあ仮にも学園の女神って言われてること自覚しなさい?』

『女神って呼ばれてるのは雫ちゃんもでしょ?それに、女の子にも慕われてるし』

『…それは言わないで…無下にも出来ないけど』

 

「多分、南雲君への嫌がらせとか、光輝君が南雲君への日頃からの言動って………私が原因だよね?」

「ようやく気付いたか。恋は盲目というが、このような状況でなければ春が青いキミ達の様子を見守っていたが、今はそんなことを言ってられないしな」

 

そうすると下半身が何本もの触手が生えた生き物…

「ああ、あれはデジモンだ。今地球にあるゲームで実装されているデジモンの中にベーダモンがいるが、その進化先でもあるイーバモンさ」

「ベーダモンの!?」

 

南雲君がプレイしてるゲームだから私も触ってるけど、そんなデジモンもいたなぁ。…てことは究極体だよね!?

 

「本来なら君の戦いの練習台にさせるところだが、今回は時間制限ありだ。よってイーバモンは私が倒す」

 

そういうと杏子ちゃんは何もないところから剣を取り出し、

 

「聖剣グレイダルファー!!」

 

すると、イーバモンに攻撃すらさせずに一瞬で真っ二つにした。

 

「ジ・エンドだ」

 

か、カッコイイ…。

 

「杏子ちゃん、こんなに強かったんだ…」

「この程度ではアルファインフォースも必要ないな。流石私」

《お前、普段は戦闘が不得手な探偵とか言ってる癖に、こういう時は自画自賛するのかよ》

「ハハハ、流石に最近は活躍の機会が少ないのでな。ホラ、人身売買の組織…フリートホーフの時はほぼチンピラ相手の無双ゲーだったし、ウルの時は私はほぼ出番なしだったし、ミリアの判断ミスで君が暴走したときはハジメ君と私が君の腹に剣を刺したしな」

《要するに、探偵のくせに目立ちたかったのね》

「こういうのも癖になるな。幼児化する前の名探偵の気持ちが分かる」

 

それってコ〇ン君だよね?

 

「…って、今更だけど、気になる情報が多すぎるんだけど、榊原君、こっちに声かけられるの!?」

《そりゃ、この存在証明してるのは俺だし、オペレートぐらいは出来るさ。しかし、こういう時杏子はほぼ後方だったのに、今は前線だもんな…ってそんな話は後でいい!そっちに八重樫らしき反応がある!…パートナーと融合進化…いきなり究極体になってやがる!?》

 

嘘!?確か、成長期→成熟期→完全体→究極体だったよね?

 

「パルスモンの性質と雫君の特性を踏まえると、進化先はカヅチモンの可能性はあるな。雫君は刀を使うし、カヅチモンも刀を使う」

 

刀使い…雫ちゃんらしいな。でも、雫ちゃんの趣味を知ってる私からすると、もっと可愛いデジモンの方がよかったのかなぁ?

 

「アステロイディス!!」

「ムッ!?」

 

どこかから飛来してきたデジモンの神速の蹴りが飛んできたが、杏子ちゃん…アルファモンが受け止める。

 

「…雫君か…今のは手が痺れたぞ」

『八重樫…だと?何故アキレウスモンに…?』

 

古代ギリシャを思わせる防具にクロヒョウのような外見。

 

そこにいたのは自分のパートナーデジモンと融合した雫ちゃんだった。(人間のパートナーと融合する進化があることは聞かされてたけど)

 

「…香織。この世界に来たってことは戦うって事でいいのね?」

「雫ちゃん!?」

「…アキレウスモンか。…そういえばギリシャ神話のアキレウスはヘクトールを殺害した後その遺体を戦車で引きずりまわすといったエピソ-ドがあったな」

『そういうことか…俺の記憶を垣間見たな?その中には俺が戦車で引きずり回されたものもあったはずだ』

「ええっ!?」

 

密会の時はそんな事言ってなかったよね!?

 

「流石にその話は平和な世界を生きてきた君達には刺激が強すぎると思ったからね。…さて、香織君。今の雫君は一度死んでしまったことで幼少から溜めていた様々な不満、ストレス、その他諸々が綯い交ぜになった状態だ。

香織君が進化するのを待っているのは、ギリギリの理性だろう。武術を学ぶ者の精神としてな」

 

杏子ちゃんがそう言って私に戦うかどうかを促してくる。

答えは…決まっている!

 

「…やるよ!手を出さないでね!杏子ちゃん!」

『…一人で戦う気か?』

「うん!それに一人じゃないよ」

 

私は足元にいるプロットモンを見る。

 

「ようやく一緒に戦えるね。これまでは一緒にお話しすることしかできなかったけど」

「私もあなたと一緒に戦えるのを楽しみにしていた。…ハジメ君とかいう人の話は長すぎてちょっと引いたけど」

「だってハジメ君の魅力を語ろうと思ったら百科事典100冊以上はいるよ!」

「そう言えば君は肉眼で指紋や虹彩までわかるのだったな」

「え?ハジメ君のなら分かって当然だよ」

 

…なに?周りから引かれているけど好きな人のなら普通分かって当然だよね?

『とにかく白崎、そのデジヴァイスを自分の胸に押し付けな。レベルはまだしもパートナーとの精神的つながりは十分なはずだ…ただ、地力は八重樫が上だという事は念頭に置け』

「…うん!」

 

榊原君の言葉を受けて言う通りにする。

 

そしてデジヴァイスが光だし

 

――MATRIX EVOLUTION――

 

私はプロットモンと融合する。

 

『あれは…ユノモンか!?』

「…ある意味、香織君にピッタリのパートナーだな。恐らくはエンジェウーモン経由だろうが…、いや、デジモンの可能性を考えればあまり当てにはならないか」

 

…私にピッタリってどういう事かな?かな?

青いマントにちょっと露出の多い白の法衣に金の防具。

金色の杖のようなものもあるけど、武器だと思う。

 

理屈はわからないけど、今プロットモンと一つになっていることはわかる。

 

「…女神みたいじゃない…香織。私はこんな戦士のようなデジモンなのに…やっぱり私は男女かしら?」

「…雫ちゃん。それは違う…。雫ちゃんは立派な女の子だよ。でも、雫ちゃん本人はそう思ってないってことだよね?」

「…そうよッ!!!!

 

雫ちゃん…いや、アキレウスモンは回し蹴りを放ってくる。

私は咄嗟に杖で受け止めるけど、衝撃を殺しきれずにたたらを踏んでしまう。

 

『ギリシャ神話やデジモンのオリンポス12神の格はユノモン(ヘラ)の方が上だが…テイマーの差か』

「しかも、今はお互いに融合進化している身だ。長年武術をしてきた雫君ならばユノモンより下であっても、修練と経験の差でカバー出来てしまう」

 

榊原君と杏子ちゃんが解説を入れてくるけど実際その通りかな…。

 

私は自立志向を持った2本のランスで雫ちゃんを牽制する。

 

「グレイスランス!」

「私はねぇ!『あんた男だったの』って言われて虐めを受けてたことがあった!!!」

「!?」

 

…薄々はそうじゃないかと思っていたけど、雫ちゃんが話したくないなら無理に聞こうとは思わなかった…。けど、これは無理矢理でも聞き出すべきだったのかな?

 

「元々私は剣なんかよりもっと女の子らしいことしたかった!!」

 

オート追尾のランスもそれがどうしたと言わんばかりの槍捌きでいなしていく。

っていうか雫ちゃん、槍術も出来るの!?

 

「でも、お爺ちゃんもお父さんも!周りの皆も期待するから辞めるに辞められなかった!!みんなに褒めてもらおうのが嬉しかったのもあるけど、それが余計に沼に嵌る原因になった!!」

 

…雫ちゃん。

 

「ニードルハイブ!」

 

ユノモンの装備している小手(カタール)から出る針で攻撃する。

 

「喝ッ!!」

 

嘘!?気合で弾き飛ばした!?

 

「…おかしい。香織君も同じ究極体。確かに究極体にもピンキリまでいるが、アキレウスモンとユノモンには絶望的と言える差はないはずだ。…進示」

『悪い、パソコンはミリアが持ってる!』

『データを解析してますが、コレ、通常のアキレウスモンではありませんね!?明らかに神格が混じってます!?…これ、海の女神の気配ですね…?』

「…そうか!アキレウスの母テティスか!?」

『はい!ホンの僅かですが、アキレウスモンという媒体を通じてテティス神の神力が入ってます。八重樫さんの名前は【雫】ですが、拡大解釈すれば【海】とマッチしますし、トロイア戦争では息子…つまり【身内】のために献身した。身内に優しい雫さんの精神性ともピッタリ嵌ってます!!…そして』

 

まだ何かあるの!?

 

 

『今の雫さんのデジモン抜きでの生身のステータスをトータス基準で測ってますが、全ステータス10000越えですよ!』

 

嘘!?雫ちゃんって一番高くても敏捷の1000越えのはず!?

 

 

「私が男扱いされて!光輝に相談したわよ!!他の女子から『男女の癖に光輝の傍にいるのが気に食わない』みたいなニュアンスで罵詈雑言浴びせられた!!バケツの汚水を被せられることもあった!!」

 

そう言いながら雫ちゃんは持っている槍で神速の突きを繰り出してくる。

 

私は雫ちゃんみたいには上手くいなせず、何発かは当たってダメージを受けてしまう!

 

『香織!』

 

光輝君の声には構っていられない。…多分事態を悪化させたのは

 

「光輝に相談したら一旦は収まったけど、ほとぼりが冷めてからまた嫌がらせは始まった!!今度は光輝に気づかれないように光輝の見てないところでね!!!」

 

『…』

「進示も地球で虐めを受けていた事があるからな。共感しているのか」

 

そうだったんだ。でも、私を雫ちゃんの精神世界にいつまでもいさせるのは榊原君にとっては負担なんだよね。

 

…だったら早く決着をつけないと!

 

 

「それも光輝に相談したわよ!!でも『キチンと話し合えば、彼女達もわかってくれる』『みんないい子だよ?』って言って取り合ってくれなかった!!」

 

…光輝君。いじめの再発は防げないにしてももうちょっと何とかならなかったかなぁ?

 

『当時は小学生だったらしいから、そこまで知恵が回らないのは仕方ない…しかし、対応が八方美人な上に自分が言って聞かせたんだからこれ以上何も起きないという過信だな。

まあ、小学生であれば一度でも対応に当たっただけ立派と言えなくもないがね。学校に告発しても大体は握りつぶされるし、仮に動かぬ証拠を用意して告発しても虐めが出る学校として評判が悪くなるから、尻尾を切らされる教師も出る。この場合、無関係な教師が責任を取らされることもあるしな。まあ、色々難しいよな』

 

「アステロイディス!!」

 

またしても神速の蹴り咄嗟に後ろに飛び引いてダメージを減らすけど、かなり痛い。

 

私はデジモン固有の必殺技ではなく、進化・退化したデジモンに継承できる技を選択する。

 

「サンダーフォール!!」

「ハイドロウォーター!!」

 

私の出した雷もそれがどうしたと言わんばかりに雫ちゃんの水流が飲み込んでいく。

私は水流に思い切りたたきつけられた。

 

「…これ以上は無理だ。私も加勢する」

「…ダメ…【杏子ちゃんは手を出さないで】」

「…自慢に聞こえるだろうが私はこれでもロイヤルナイツ最強のデジモンだ。彼女が神の力を僅かとはいえ、獲得していても十全に使いこなせていない今、私ならほぼ完封できる」

「それでも…だよ」

 

これは親友である私が向き合わなきゃいけないんだ…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雫視点

 

ふわふわ

 

ふわふわ

 

ふわふわ

 

はじめはじぶんのこのじょうたいがわからなかった

 

でも、じかんがたつにつれてだんだん自分のじょうたいがわかってきた。

 

ああ…わたしは死んだんだ…

 

このままねむれば…らくになれるのかな…?

 

 

「いや、それはまだ早いな」

 

…どこかから女の人の声…

 

そこには

 

 

金色の長い髪をストレートに流し、

 

いかにも神様とか女神さまが纏うような法衣(若干露出高めのスマートなフォルムだが)に、背中には4枚の純白の翼。

 

そして若干キツ目で真っ赤な瞳の…とても綺麗な…存在だった。

 

「…私、死んだのね?…私を連れに来たのかしら?…あ、敬語…」

「いや、敬語は不要だ。お前とは長い付き合いになる可能性があるのでな。…お前には申し訳ないが楽になるのはまだ早い」

 

…香織が進めてきたラノベにこういう展開があるけど、まさか

 

「…転生でもするの?」

「それは転生者を管理する神の管轄だ。あいにく、私は()()()なのでな、戦争や破壊であればともかく、創造の類は出来ん」

 

…破壊神…破壊の神…?

 

「そうだ。星や世界を破壊する神…その認識で構わん。お前をよみがえらせるのは榊原進示だ。体感時間はともかく、お前が死んで…現実世界では数分もしないうちにオルクス大迷宮の底に落ちた4人がお前達の救援に来た…この世界の現地協力者とともに」

「…か、彼ら…優花や杏子も生きてたの!?」

「ああ。この世界にも魂に干渉できる魔法はあるがこの世界の魂魄魔法を誰も使えない以上、死者をよみがえらせる力を持つのは現状榊原進示のみ…いや、もう一人いるが、魔人族の女と一緒にいたデジモンの対応で精いっぱいだな。しかし、現状ではお前は蘇れない」

「な…どうして!?」

「お前、本心では楽になりたいと思っているだろう?」

 

…それは…否定できない…!

 

「さらに生き返っても…異世界召喚という経歴があるだけで、地球に帰っても波乱万丈の人生が待っている…SNSの類が普及し始めた地球では、謂れのない誹謗中傷を世界中から受けることもあるし、マスコミの追及もあろう。…む、榊原進示が死者蘇生を行使したようだ」

「…!せ、戦闘は!?」

「魔人族の女は南雲ハジメが対応している。今のお前や天之河光輝よりも遥かに強い。錬成の腕も上げて銃を作り、戦っている」

「…そ、そうなんだ…」

「…時間がないので簡潔に言う。私がこの死の境界にてお前に接触したのは、神卸しのきっかけを掴む手助けをしに来た」

「…神…エヒト?」

「いや、地球の神だ。デジモンという媒体を用いた情報信仰による神卸し。…お前のパートナーデジモンを考慮すると、適性があるのは武御雷、アキレウス、シヴァ辺りか。お前の適正であれば武御雷であろうが…、素戔嗚はまだ足りんものがある」

 

…どれもビッグネームじゃない!?…でもそれなら女神とかが良かったなぁ…。

 

「言い分はわかったが、贅沢を言える状況ではない。それに、小規模ではあるが、女神として信仰されているお前ならばある意味適性は高いのだが…あぁ、後は【義姉様】だったか」

「な゛っ!!??」

 

ちょっ!?好きで信仰されているわけじゃないわよ!?

 

「我らも似たようなものだが…ともかく榊原進示が死者蘇生を行使した以上、彼と多少の精神共感があるはずだ…そこで、お前は榊原進示の過去を垣間見るだろう」

「榊原君の…?」

「特に拷問を受けた記憶は【死の感覚】に近い。」

 

拷問…?

 

疑問に思っている間にとある一つの光景が浮かび上がる。

 

これは…拷問部屋かしら?

 

拷問椅子に拘束され座らされている小学校高学年くらいの男の子…え?これって榊原君?

…彼もかなりやせ型だけど、それでも、体には無数の打撲痕と裂傷、…そして、骨が浮き出るほど脂肪が少ない。

 

《あの龍の女とバケモノ娘の居場所を吐いてもらおうか》

《…ミリアと杏子か。ハハ…もう逸れてから結構時間経ってるからな。どこにいるかなど俺にもわからん》

《黙れ!》

《グッ!》

そうして鞭で叩かれる。傷は増え、出血も増える。

嘔吐感が出てくるが、何も吐き出される様子がない。

ここが精神世界だからか。

 

そうすると別の拷問官が何やら瓶のようなものを持ってきた。

 

それを榊原君の左腕…二の腕にその中に入っている液体をかけた。…嫌な予感がする。

 

 

するとそれはジュ~っと肉が焼けるような音とともに腕から煙が上がりだす。

 

《~$#&?+=>#!?ッ!!?》

 

そして…左腕がボトリと落ちた

 

「ッ!!?」

 

あれは酸!?

 

《おい、これでも吐かねーぞ》

《仕方ない。戦車(チャリオット)を用意しろ。暇を持て余している貴族どもへのいい見物にもなる。入場料もそれなりに取れるだろうさ》

 

そんな人を人とも思わないような行いに寒気が止まらない。

 

 

…あれ?今一瞬榊原君の左腕を誰かが拾ったような…

 

《…腹減ったなぁ…》

 

 

その間にも場面は進み、

 

榊原君がギャラリーの見世物になりながら戦車で引きずり回されている場面がある。

しかも、聞えてくる声から察するに、いつまでもつか賭博の対象にもなっているようだ。

 

《ぎっ!?ががが!?うげっ!?》

 

地面に引きずられたり、バウンドしたりで、どんどん傷を増やしていく。

もう、拷問する側も杏子とミリアさん?協力者の女性の居場所を吐かせるための拷問のはずが、最初の趣旨を忘れて、ひたすら甚振ることが目的になっている。

 

あ、…戦争に負けたりしたらこういう事になるの…?それに、私は女だから…もしかしたら…。

 

 

「と、これ以上はお前の精神が持たんか」

 

破壊神と名乗った女性が映像を切ったようだ。

 

「心とは天秤のようなものだ。彼はこの後も地球に帰還するための逃走劇をすることになるが、それまでに彼のメンタルに追い打ちをかける出来事があと2回発生する。そして、現地協力者も全滅…いや、1名のみ生存していたな(ガラテアは接触していないのでノーカウント)。だが、辛いことがあって耐えられるうちはまだいいが、気を使いすぎて黙っててもそれはよくない。

そして、今からここにお前を救わんとお前の親友という女がここに来る」

「…香織」

「そうだ。奴本人にも不満がないわけではあるまい?お前の不安を受け止められるかは白崎香織次第だが、お前の心の受け皿になる奴も必要というわけだ。まあ、本来お前達の社会において、小学生の頃のいじめは本来親が対応すべきことだ。だが、お前は親にも気を使って黙ってた」

「…」

「その辺りは次に両親や祖父と話す時にでも言うんだな」

「…あなたは何故そこまで知っていて、そこまで助言してくれるんですか?」

 

初対面のはずの神様らしき人にここまでしてもらえるなんて…心当たりがない。

 

「我が名はシュクリス。階級は大天使。系列は破壊神。管轄は戦神。榊原と契約した【1人目の大天使】だ。…最も、ある事情故に、私と契約したときの記憶は封印させてもらっているし、まだ彼と接触したことは契約以来一度もない。トレード(双葉樹)の未熟さと、トレード、アパルの右目の件があって数回介入した事はあるが。人間、天使共に複数の契約は禁じられてはいないが故の裏技を使っている。…見守るだけというのも案外つらい仕事だが」

「…て、天使」

「私が自らに課した役割は、榊原進示達への慰謝料の支払いという名の奉仕と、彼らが戦う必要のないイレギュラーな戦闘の代行、進示やその仲間達にデジモンという媒体を通じた奥義、【神卸し】の体得の手助けにある。まあ、他にも仕事はあるが。後は…、トータスでもいくつかイレギュラーはあったがな」

「神卸し…?さっき言ってた?」

「そうだ。トータスのみならず、地球や様々な世界での災害を打ち払うための力だ。…さて、そろそろ来るぞ。私の自己紹介と今言った仕事の内容に関する記憶は封印させてもらうが、時期が来れば思い出せるようにしておく。あの創造神の大天使に聞かれたくない情報もいくらかあるのでな」

「あ、まだ聞きたいことが…!」

「今は目の前のことに集中しろ。友人と本音でぶつかり合う時だ」

 

そう言われて私の意識は一瞬途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

進示視点

 

「南雲…何故殺した…捕虜にすればよかったじゃないか…」

 

天之河が魔人族の女をハジメが殺したことに文句を言っている。

 

まあ、21世紀の日本人の感性なら殺しを受け入れがたい心情も理解はするが、戦争参加を最初に表明したのはお前だ、天之河。

 

「敵だからな…それに、敵の女と幼馴染の生きるか死ぬかの窮地。お前にとって気に掛ける優先度が高いのはどっちだ?」

「…ッ!!」

 

ハジメの指摘に天之河は慌てて八重樫の方に振り向く。

 

これは流石に反論できなかったか。

 

 

ミリアが俺のパソコンを開き、俺が視ている八重樫の精神世界の戦いを他の皆に見えるようにしている。

 

俺の頭にヘッドホンのようなものをつけられているが、そのコードはパソコンにつけられている。

 

なお、この状態で俺は死者蘇生と存在証明の同時行使をしているので、脳がヤバい。データ処理でキャパオーバー起こしそうだ。

 

そのせいで発汗が酷い。

 

因みにミリアは俺と杏子の記憶からパソコンの操作方法を知ってるため、動かすのは特に問題はないようだ。タイピングも妙に速いし。

 

ティオは「そんな薄い板でそんな事も出来るのか…」とぼやいているが。…まあ、俺のパソコンは特注品だが、市販のパソコンでもちょっと改造すれば行けると思う。

 

「うーん…このままじゃ白崎は押し負けるかな?白崎までいきなり究極体化したことは驚いたが、」

「な、何でだ!?…榊原!お前…雫や香織、暮海さんに何をした!?何故香りと雫が争わなければならないんだ!!」

 

天之河が自分の大切な幼馴染同士が戦っている事に耐えられないようだが、どこか怒りのポイントがズレていて会話にならない。

 

というか、俺達が白崎や八重樫たちを害する理由はない。…まあ、俺達を落とした檜山は別として。

だが、ハジメは檜山には特に復讐したいと思っているわけではない。

しかし、檜山がノーペナルティで行動で来てることを踏まえると、事故で処理されたか、発覚されたとしても天之河か、教会が許したと言ったところか。

仮に復讐心があったとしても、後者かつ、教会が檜山を許したとあっては、社会的にはまず教会に太刀打ちできないため、檜山に復讐するのはマズいという事になる。

俺達であれば最悪力業でどうとでも出来るが、その場合は虐殺者にならないといけないこともある。

なので、武力解決はあくまで最後の手段。

そう言えばノイントにも数ケ月会ってないな。

彼女が人間ではないことは初めて見たときからわかってたし、色々探りを入れていたが、おおよそ黒幕…エヒトに繋がっていると読んでいる。

だが、クラスメイトが自衛できるまでに成長するまでは核心に触れないように会話には最大限配慮した。

さりげない雑談の中に少しずつ宗教や社会の話をしたりとか。

ノイントもこっちが探りを入れてることは承知だったようだ。

 

…魅了を使ってくるとは思わなかったが、勿論弾いた。

 

…話がズレたが、天之河が場違いな怒りポイントを向けてくる理由は…嫉妬か。憶測の域は出ないが。

 

「八重樫がぶちまけている言葉を聞いてないのか?言葉から察するに幼少からずぅーーーーーーっと抑えてた本音だ。それに、白崎が八重樫に押し負けそうなのは、武術の練度の差だ…そして、杏子はアレが本来の姿。杏子はデジモンなんだよ」

 

杏子がデジモンであるという事に、事情を知らない面々は驚いている。

中村が妙な反応を見せたが…やはりか。

 

八重樫が剣術をかなりの練度で納めているのは知っている。

故に、パートナーと融合しても慣れるのにさほど時間がかからなかった。

本心をぶちまけて心が荒れているとはいえ、パートナーとコミュニケーションを円滑にとっていたのであれば、パルスモンが八重樫に合わせるのも難しくはないのだろう。いまはアキレウスモンだが。

 

一方、白崎はセンスはあるし、パートナーとのコミュニケーションも問題なかったが、彼女はもともと剣術や武道の類を収めているとは聞いたことない。

 

戦闘能力は、トータスに来てから身に付いたものだが、正直付け焼刃感がある。

つまり、同じ究極体でありながら、ここまで差をつけているのはテイマーの地力の差だ。

2~3年後は不明だが、今のままでは負けるのは100%白崎だ。

 

俺も二つの世界の経験や、樹から数年に渡って習った格闘技に、時々公安から依頼される怪異退治、悪友達とのギャグ交じりではあるが、数々の模擬線で身に着けたからこそわかる。

 

…それに、八重樫が使っているのは恐らく神卸し。その雛形と言ったところか?

 

しかし、八重樫って誰かから信仰を…受けてたな。学園の3大女神(杏子含む)の一人だし、八重樫は不本意だろうが【ソウルシスターズ】を地球でもトータスでも形成してしまったので、僅かながら神格受容体が出来たのか。

 

「加えて、テイマーの方に地力の差がある。杏子は律義に白崎から手を出すなって言われたの守るつもりだし、かと言って自力で存在証明できない人間を八重樫の精神世界に送り込むのは…いや、ユエ、行けるか?」

 

突然の俺の名指しにこの場の全員、特にハジメが驚いている。

 

「問題ない。私ならその計算式も理解できる…私の魔法の教え方、進示と杏子とミリア以外理解してなかったし」

「おめぇは教え方が両極端なんだよ。普通の人間が理解しずらい数字や数式を列挙したかと思ったら、【もきゅっとこねこね、しゅるんでそぉいっ!!】ってアレで理解できる方がおかしいぞ」

「ということは進示もおかしい。進示と杏子は前者の方法で理解してた。ミリアは両方」

 

やっぱ理論でも感覚でも天才だわ、ミリア。まあ、今のミリアはデジモンだから、魔法理論は理解は出来ても使えないのだが。

 

…俺はこの後そのもきゅっとこねこね、しゅるんでそぉいっ!!で理解できてしまう人材を目の当たりにしてしまう。

 

「じゃあ、ダイブさせるぞ!今のユエなら究極体になれる」

 

ユエは地球人じゃないから地球の神とは相性が悪いのかもしれないが、ルナモンはデジモンだ。

アルテミス(ディアナ)が源流とは言え、デジモンとしての力を使うだけなら、さほど時間はかからないと思ってる。

 

「ルナモン」

「ええ!」

 

ユエがデジヴァイスを掲げユエとルナモンは一つになる。

 

――MATRIX EVOLUTION――

 

オリンポス十二神族の1体で、水と氷を司り、絶対零度の状況下でも戦闘可能な神人型デジモン。月の表裏のように二面性をもった性格で、美しくも恐るべき力を秘めている。

ルナモンの正統進化系にして、アポロモンと対を成す究極体デジモン。

白き月のようなフォルムのそのデジモンは

 

「ディアナモン」

 

驚く皆をよそに俺はユエとルナモンの究極体、ディアナモンを八重樫の精神世界にダイブさせた。

 

…やはり自力でデータ処理は出来ているようで、俺がユエの存在を証明する必要はなく、俺の負担が増えない。

 

 

 

杏子(現在アルファモンの姿)視点

 

進示と魂が繋がっているので当然先のやり取りは当然伝わっているので、ユエ君とルナモンがディアナモンに進化してこちらにやってくるのはわかっている。

 

「アロー・オブ・アルテミス!!」

 

放たれた一条の矢がアキレウスモンの足に備えられている盾に当たる。

 

どうやら防具のないところは撃ち抜くつもりはなかったようで、アキレウスモンは少し怯んだだけだ。

 

 

「あ、あなたは…」

「私と融合しているデジモンはルナモンの究極体、ディアナモン。そして私はユエ。ハジメにこの名前を付けてもらった」

「は、ハジメ君に」

 

ユノモンの杖を握る手が震えたが、地雷だったか?

 

「ハジメや進示、優花からあなたのことは聞いている。白崎香織。ハジメは貴方の事は人格は嫌いじゃないけど、やってる事は迷惑だったって」

「……ッ!」

「わかってはいたけど、言われるのはやっぱり堪える?でも今回ばかりは向き合わないとダメ。貴女がハジメに声をかけること自体、勇者や周りの嫉妬を買い、虐めや嫌がらせを誘発させ、ヒヤマとやらがハジメを奈落の底に落とす凶行に走らせた」

 

ズバリ言われて震える香織君。

厳しいようだがもう起きてしまったことなので、向き合ってもらう必要がある。

 

「そう、香織もさぁ、南雲君に声をかけるなら時と場所を選んで欲しいって言ってんのに伝わらないんだもの。しまいには南雲君の家に非常識な時間帯に張り付くこともあったわよね、病み崎ストー香織」

「あ、渾名はいくら何でもヒドイよ!?雫ちゃん!?」

「それと、南雲君の趣味を知りたいからって、18禁のゲームコーナー突撃に付き合わされたこともあったわね…何がお父さんのお使いよ」

「ほう、そんな赤裸々なことがあったのか」

 

意外に行動力があるんだな、香織君は。

…しかし、この会話が記録されている事も知らない彼女たちはどんどん赤裸々なことを話すのだろう。

特に娘を可愛がっている白崎家と八重樫家の男親たちはどんな阿鼻叫喚の地獄絵図を見せてくれることか。

今から実に楽しみだ。

…勿論そんな私の思考は魂で繋がっている二人には筒抜けなので

 

《いくら何でもドS過ぎるだろ杏子》

《私は見てみたい気もしますが。特にエロゲコーナー突撃の件♪》

《…たく、まあ、地獄絵図が起きたら仲裁くらい手伝えよ。話拗れたら俺達の苦労が増えるんだから》

 

分かっている。キミ達に頼り切りにするつもりはない。

キミ達二人には返せない恩もあるしな。

 

「…香織、あと少しだけ私の我儘に付き合いなさい」

「何かな?」

「この姿で全力の一撃を放つわ。貴女も全力で対抗して。そっちの彼女と、…杏子よね?も一緒でいいわ」

「雫ちゃん」

「今までの問題が解決するわけじゃないし、まだまだ吐き出したりない事もいっぱいある。…でも同時に少し光輝たちとは距離を置きたいとも思ってたの。でも他に行く当てもないんだけど…」

「ならば、我々とともに来るか?」

「杏子?」

「我々は独自に地球に帰る方法を探し、7つの手がかりのうち2つを既に入手している。世界中を巡る旅になるから、気分転換にもなるだろう」

 

手がかりとは神代魔法の事だ。

私がそう言うと、雫君は考え込む仕草をし。

 

「いいわ、乗った」

「そうか。では、あと少し体を動かすとしよう」

 

そうして私達は構える。

 

アキレウスモンである雫君は自らの神槍を投擲する技

 

「ロンヒ・アディスタクト!!」

 

ユノモンである香織君は本来ユピテルモンの力を増強する技である力を直接攻撃に使う。

 

「ラブバスケット!!!」

 

彼女が召喚した雷を補強するため、私はそのエネルギーを収束させる。

 

「パワーエナジー!!!」

 

こちらは本来は攻撃技だが、ラブバスケットの補強には十分だ。

 

この雷撃で槍を都止められるかと思った、威力は弱まった。

 

「クレセントハーケン!!」

 

ディアナモンの鎌が刹那のタイミングで、アキレウスモンの神槍を打ち上げる。

 

槍は空中でくるくると回り、見せかけの地面に突き刺さる。

 

「…」

 

雫君は何も言わずに分離し、疲れたように膝をついた。

 

『よし!八重樫の精神的蘇生拒絶が無くなった!いい加減現実に引き戻すぞ!もう俺の脳がヤバい!』

 

きちんとした設備もなしに2つの高度な術方を行使し続ければ、進示の脳がマズいことになっているのはわかる。

発汗も酷いし、喀血もしたようだ。

 

「え!?私達、体が光っている!?」

 

突然自分の体が光りだせば驚くだろうが、これは現実に戻る現象だ。

 

「皆、これから現実世界に戻るから怯えなくていい。雫君が目覚める気になったのであれば、早く戻ろう。この状態を維持している進示が喀血している」

 

「「「えええっ!?」」」

『まあ、その通りだ。八重樫の体は汚してないから安心しろ。ティオ、水を取ってくれ』

『わかったのじゃ』

 

こうして私たちの視界は暗転し…

 

 

 

 

 

 

 

 

オルクス大迷宮90層に戻ってきた。

 

「ユエ!」

「ただいま、ハジメ」

 

私も暮海杏子の姿に戻り、ユエ君も香織君もパートナーと分離して、それぞれのパートナーを労う。

 

そして香織君が雫君を抱き起すと。

 

「……香織」

 

意識が戻った雫君が香織君返事をする。

 

「雫ちゃん…良かった…!」

「雫…」

 

天之河君は複雑な顔で成り行きを見ている。

 

いつの間にかシア君に治療されたメルド団長も安堵した表情で見守っている。

 

進示はティオに水を飲まされている。もう、自力で飲む力もないのか、彼女に少しずつ飲まされている。

 

進示は水を飲まされながら、私に向かってサムズアップをしてきた。

 

私もサムズアップで返す。

 

「…お疲れさまだ、進示」

 

今回一切戦闘行為はなかったものの、彼の力なくして雫君が蘇るのは不可能だっただろう。

後に魂魄魔法なるものを会得しても、今この場で彼女を蘇らせることが出来るのは進示しかいなかったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

ドオオオオオオオオオオンッ!!!!!

 

 

そんな爆発音とともに一人の露出が高めの黒いローブを羽織り、黒い龍の杖、黒龍杖を持った女性が吹っ飛ばされてきた。

 

 

「「師匠!?」」

「お師匠さまっ!?」

 

ふっとばされてきた女性、ゼロはこちらの姿を確認すると。

 

「ゼロ…」

 

いや、その前に進示が彼女の名を呼ぶ。

 

「…その様子ではもう正体を隠す必要はありませんね、父さん」

 

謎の女性から父さん呼ばわりされれば誰もが疑問に抱くのは当然で、全員の視線は進示に集中する。

 

「…戦闘準備を。ルーチェモンが来ます」

 

その一言にデジモンを知る面々の緊張が一気に増す。

 

 

 

 

そして

 

 

 

「そうか、カトレアは死んだか。僕にはどうでもいいけど、…それに、僕は後2回変身を残している」

 

この全身が総毛立つ感覚はなかなかない。

 

 

見た目は少年の天使のような姿。

 

それが徐々に姿が変わっていく。

 

「これほどの数のデジモンテイマーがいるとは驚いたなぁ。仕方ない。まだ馴染んでないけどこの姿で戦うしかないか」

 

姿は青年に。

 

背中は()()()()()()()()に、

 

「自己紹介が必要かな?僕はルーチェモン。このくだらない世界を滅ぼし、自分の世界を作り上げるモノ。しかし、この複数の世界においては競合相手も強すぎてね?キミ達には僕の経験値になってもらおうか」

 

我々の知るルーチェモンではない…!これは…むしろ私と同じ…!?

 

「よりによってX抗体…!」

 

やはりそうか…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「簡単に死ぬなよ?人間ども」

 

 

死へのマラソンが始まった。

 

 





補足

雫の究極進化。
元々デジヴァイスに複数進化ルートを保存する機能をつけていたため、本来の進化先は杏子が睨んだ通りです。


エーアストと一緒ににいる人物
日本人男性でデジモンテイマー。
トータス用スキルが一切なく、トータスの言語もわからないので、言語理解の技能を持つエーアストが通訳を行っている。

ゼロは神の使途の遺体をどうしたか。
ネームドの遺体はすべて回収した。量産型までは持ちきれないため、諦めた。


フェーの過去・現在・未来・観測世界すら視える千里眼のデメリット。
デジモンテイマーズで例えると、仮にデ・リーパーに触れられた状態でよその世界を観測すると、観測された世界は必ずデ・リーパーが出現する。
ジール編で描写するが、箱入り娘のような気性も描いていきたい。
なお、ジールに残ったフェーの魂はとある破壊神がジールごと破壊したため、魂は完全消滅。フェーの魂を復活させたいならジールごとサルベージするしかない。


【ありふれた職業で世界最強】という物語。
ゼロは知っている。しかし、どうしようもない状況になったっと機以外は開示しない。
進示や杏子、ミリアは知らない。樹は知っているが、【天使が】原作情報開示することは禁じられている。但し、すでに覆せない過去の情報はこの限りではない。これは虚偽の回答が出来ない決まりの数少ない例外。

イーターを滅ぼすことは可能か?
原作でもほぼ不可能に近い。イーターには【時間の概念が存在しない】ためである。
サイバースルゥース本編でも、イグドラシルですら機能不全になり、ほぼ無力化した程。
次元の壁に穴が開けばそこから漏れ出る可能性はある。
進示の完全上位互換であるゼロですら【隔離】以外の解決法を持たない。しかし、それも事故か何かで次元に穴が開けば漏れるので、時間稼ぎ以上の意味を持たない。
ロードナイトモン、ドゥフトモン曰く、イーターは【人間の原罪】。


ユノモン

オリンポス十二神族の一体にして、ユピテルモンのパートナー。
ユピテルモンの意思に背く反乱分子を予測・索敵して排除する。
慈愛に満ちた性格で、ユピテルモンを深く愛するためか、ユピテルモンの動向は全て把握している。ありふれキャラにこんなのがいる(すっとぼけ)。


ユノモン(香織)VSアキレウスモン(雫)
若干ユエへの補足。

雫が少しとは言え、神卸しを身につけたため、仮にユノモンの方が各上だったとしても、雫の武術の練度と神卸しの差で雫の方が強くなってしまった。
逆にユエは地球の神と若干相性が悪いため、究極体への到達も若干遅くなった。
ハジメとの絆は深いため、ジョグレス進化への条件の大部分は既にクリアしている。
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