戦死しているデジモンは明かします。
進示君、初っ端からでかいハンデを背負うことに。
アルファモンで数秒戦闘するだけで…
オリ主の子供が真のチート主人公というのは、主人公の子供が勇者のある作品を参考にしています。
終盤のおまけはトータス帰還後の未来の話です。
進示達がハジメたちに映像付き過去を見せてるので
そして初めて2万字を越えた…。
ミリア視点。
私達は今、ドップラー効果を上げながら走っています。
「タイガーウェスパモンか、何か随分狂暴じゃないか!?」
「出会い頭に剣をぶんぶん振り回してるーーー!?」
「私が足止めするので、進化を!!」
そう言って私は彼らが進化する時間を稼ぎます!
「リフレクション!!」
ただ、このデジモンは物理攻撃なので、対物理バリアを張ります。
ガギンガキン!!!
蜂の戦士、タイガーウェスパモンが剣を振るうたびに私のバリアにヒビが入ります。
流石に究極体…
「この世界じゃ長くは戦えない…速攻かますぞ!」
「うん!ミリアのケアがあっても進示は毒に犯されてるもんね!」
「「マトリックスエボリューション!」」
そして現れた黒い聖騎士、アルファモン。
それにしても、その進化方法を選んだんですか。
過酷な環境でも人間が適応できるようにソレをチョイスしたのでしょうか。
「聖剣グレイダルファー!!」
そうして速攻でたたき斬って敵がデータに分解されたのを見届けて分離する二人。すると
「ゲホッ!ゲホッ!!」
「進示!!」
膝をついて血を吐いて咳き込みだしました。
私はすぐに進示の毒を中和しますが、やはりこの世界を脱出しない限りずっとこの状態ですね。
大きな力を使えばそれだけ毒が回りやすくなるのですか。
…予想より不味いかもしれません。
それに、今の進示君の肉体年齢は11歳程度。
負担はかなり大きいはずです。
榊原進示くんと暮海杏子さんの二人と旅を初めて10日が経過しました。
彼等が召喚されて20日ですね。
その過程でこの世界特有の魔物や野生のデジモンが何体か襲ってきましたが、問題なく対応できました。
ただ、究極体であるタイガーヴェスパモンの時は流石に融合してアルファモンになりましたが、その時に確信しました。
マトリックスエボリューションだけではありえない命と魂の繋がりを。
その現象を伝えると、「やっぱり、なんか繋がっている感じがしたんだよね」って杏子さんが言ってました。
彼女は感覚的にわかっていたようですね。
そして彼はこの現象をデジモンとシンクロするという意味で【デジシンクロ】と名付けました。
旅をしていて不味いのは、進示が数日おきに咳き込んでいます。
私が転生者殺しの毒を中和していきますが、…症状が現れるスパンが短いですね。
そして彼が咳き込む度に泣きそうな顔になっている杏子さんは、本当に彼を失いたくないと心から思っているようです。
元々病弱らしいですが、世界中に蔓延している転生者殺しの毒が濃くなっています。
…これは彼から離れるわけにはいきませんね。
私がケア出来なくなった時点で、進示君は死ぬでしょう。
自力で浄化できる術を教えていますが、すぐに会得するのは難しいですね。
私の心臓を移植すれば話は別ですが、それに耐えられる程肉体強度は強くないようです。
この世界から脱出しない限り、この症状は治まらないでしょう。
ですが、この世界から地球に送り返そうとしても、今手持ちの魔道具と、エネルギーでは、地球の正確な座標を絞れないのと単純にエネルギー不足で宇宙空間や虚数空間、次元の狭間に放り込まれて行方不明
なんてこともあるかもしれない。
チャンスは1度しかないので、失敗は許されません。
本当は今すぐにでも元の世界に返してあげたいのですが、今言ったように世界を移動するにはそれなりの労力が必要です。
それに、この世界は滅びかけているため(表面上は滅ぶように見えないが)、出入りのセキュリティが厳しくて、私の力単体で出来ることではありません。
星のエネルギーもある程度頂くことになりますから。
魔力の通り道である龍脈は整備してるので、あとは機会を待つだけですね。
水質調査に来たのも、龍脈点検の意味合いもありますし。
ただ、念には念を入れて、二つの魔道具を返してもらいましょうか。
まあ、最終手段として私の空間航法と、トータスの【概念魔法】で何とかしますが、それは出来れば避けたいですね。デジモン化してしまえば魔法が使えなくなるので、私の力を進示に継がせるのは必須ですが。
この世界で出来るうちにパワーアップしておかないと、この先で詰むので。
そもそも、彼らは私の計画のために必要な人材であり、【デジモンと魂が繋がっている特殊な条件を満たしている】、そんな存在は恐らく現れない。
彼らのような魂があれば自分の体をデジモンに作り替えて、ジールの生命定義から逃れることも不可能ではないでしょう。
…そうなるとフェーが生き延びる事は出来ませんが、背に腹は代えられません。
そう言えばフェーとガラテアの母である彼女、すでに死亡報告がなされた【フーディエ】は遺体が見つかっていないんですよね。…でもこの世界のどこにもないし…
今は気にしても仕方ないですね。
計画とは【この世界が滅んでも私が生き延びる事】である。
私を含め、このジールという惑星には生まれつき超常的な力が使えるものはこの世界に紐づいた魂なのです。
私が使える力は【死者蘇生】。
それも、ただの死者蘇生ではなく、一人一度きりですが、魂が完全に消えた状態からでも蘇生を可能とする規格外の力であり、神の世界にもそう何人も使い手がいません。私が一度訪れたことがあるトータスに存在するものよりもはるかに上位互換であるものと断言できるし、
エヒトの目を逃れることが出来ていた理由は…心当たりはありますが断定は出来ません。まあ、今の私であれば戦いになればまず負けませんが、将来戦いに身を投じる人間達のために残しておきたいですね。
私が倒せばゲームでいうところの経験値泥棒になってしまいます。
そして、エルフのフェーが使える力は【千里眼】。
これはあらゆる過去、現在、未来、宇宙の果てや観測世界すら覗き見ることが出来る規格外の眼です。
まあ、フェーの話はおいおい。
私の前を無邪気に歩く杏子と「あぶないぞー」と言いながら杏子を見守る進示を見て思います。
杏子さんの方は記憶喪失で精神年齢が幼いですが大した問題はありません。
進示も転生者であり、見た目11歳、中身40代のコ〇ン君状態ですが、40代のおっさんでも私から見ればまだまだ子供。
まあ、そんなことを言ったら人間は皆子供ですが。
私の頭に流れてきたこれから起きる未来の情報がが同時に存在するせいで、情報源が未来からと勘違いしそうになりましたが、これは恐らく過去からの情報です。
この情報を送信してきたのは進示と契約を結んでいる守護天使、双葉樹さんこと大天使トレード様で間違いないでしょう。
この宇宙はおそらく一度消滅している。そして、造り直されている。
私ですらにわかに信じがたい情報ですが、現在世界を取り巻く状況と送られてきた情報を元に考察するとこれ以外の結論が出ないのです。
世界の状況と情報の送信元については一旦置いておき、私の目的は一つではありません。
【これから訪れる災害に備え、知的生命体の、肉体、頭脳を含めてあらゆる進化を促すこと】
それを進示君を足掛かりとして成し遂げます。
やり方自体は非人道的と誹られても仕方ないことです。
星の龍である私の心臓を進示に移植すると決めてもいます。タイミングには注意しなければいけませんが。
ちなみに野宿するときは大きめのタオルケットを使って3人一緒に包まって寝ています。
進示が女性陣である私達からのセクハラを訴えられたりすることを危惧して別々に寝ようといったのですが、そんな病弱な状態で離れて寝るわけにはいきませんと言ったら、降参しました。
実際、私のケアは必須だと分かっているのか、反論できなかったようです。
まあ、私は気にしないですし、ちょっとつまみ食い…ゲフンゲフン、童貞を頂きたい「直せてない、むしろ悪化してるぞ」え!?何でわかったんですか!?
「声に出してたよ」
杏子が何か冷めた目で私をを見ますが、その視線もいいですね…。
「進示、唐突ですがデジタルモンスターの看板デジモンは何故アグモンなのでしょうか」
私が地球に詳しい事情は進示は聞きたそうにしていますが、私は「まだ語るべき時ではありません」というと、何かを察したのか、追及してきません。
私個人の解釈ですが、惑星においてホモサピエンスが誕生する前に星を跋扈していたのは恐竜です。
デジモンが人の願いを元にして誕生した電子生命体だとしても、もっと他に種族的に選ばれてもいいものがあったはずです。
にもかかわらず、ヒト型でもなく、神型でもなく、恐竜に近いデザインのアグモンです。
これは恐らく、【シンプルに強い種族が恐竜】だからでは?と考えました。
子供の願いは純粋です。子どもの強くてカッコイイ存在を想像すると結構恐竜が多いのですよ。
ロボットとかでもよさそうなのに。
そして、恐竜型のアグモンが進化するとサイボーグ化したり、ヒト型に近くなったり、オメガモンになると、完全に人型ですよね?
コレって惑星において覇権を握った生物の進化に酷似してませんか?
ギルモンも進化すると槍と盾を持ったデュークモンになります。
道具を使うという事は、知的生命体はそれだけでインテリジェンス・デザイン型の進化をしますが肉体は退化しますよね?
乗り物や医療技術が発展すれば肉体を進化させる要因がなくなりますからね。
それに、植物や昆虫、水棲型デジモンもそういう環境に置かれれば自然とそうなるでしょう。
私が考えているプランは宇宙進出も視野に入れた肉体と知性の両方をいいとこどりする進化方法であり、生身の肉体でも宇宙線(この場合は乗り物の宇宙船ではなく、ガンマ線の方)に適応できる状態にするためです。
「ただ、チンパンジーの反射神経は人間の約2倍はあるそうです」
「体が優れているから人間は体力や俊敏ではチンパンジーには勝てん…いや、違うな。…人間の反射神経が鈍い理由は…脳か?」
「そう、人間は文明、心理状態、予測などといった様々な要素から脳のネットワークが複雑になってしまい、身体に伝わるまでに時間がかかるんですよ」
「ああ…そう言われれば納得だな。そうなると人間より遥かに処理能力が高いデジモンは体、頭、両方に優れた理想生命体というわけか。だが、デジモンはネットワーク文化のない社会ではリアライズ出来ない…待てよ!?デジモンがこの世界で生存できている理由って」
いいところに気づきましたね、進示君。
「ご明察の通り、この世界には機械、通信ネットワーク文明があったんですよ」
「過去形か?」
そう、この世界にはかつて高度な文明はあったのですが、色々あって、文明が中世まで後退してしまったのです。
そして、異世界召還を濫用しすぎたこの世界の末路は消滅しかありません。猶予は1年あるかないかでしょう。
「じゃあ、私が消えないのって」
「実はそれは別の理由で消える心配がないんですよ。…もう一度確認しますが、杏子と進示が心が繋がってる様な感覚あるといいましたね?」
私に問われて二人は「そう言えば…」と唸ります。
「東京にイーターが現れた事件。俺たち6人の転生者は、割と早く究極体になれたんだ。だが、俺とドルモンがマトリックスエボリューションをした時に、今までにない激痛と一体感を感じて…気が付いたらドルモンが小学生くらいの暮海杏子の姿になってたんだ…。多分サイバースルゥースの世界に何か異常が発生したか、相羽タ●ミ…グッ!?」
進示君が杏子の助手の名前を言おうとした途端、頭痛を感じたようですね。
「進示!?頭痛いの?」
「ああ、お前の記憶が戻るようにお前の経歴を覚えている限り話そうとしたんだが…」
「わたしがゲームのキャラクターなんだよね?でも、頭痛くなるなら無理して思い出さなくていいよ!」
「…進示、もしかして記憶にノイズが入ってませんか?」
私に言われてハタと考える進示。
「そう言えば…テレビのノイズみたいに何か不快な感じがする…。俺の知識に間違いがあるのか?」
「もしくは、世界そのものに異常があるかですね。…もしかしたら、貴方は思い違いをしている可能性もあります」
「…仕方ない、ゆっくり考察するしかないか」
「そうしてください。そして、杏子が消えない理由は人間のあなたと魂が繋がっているので、デジモンでありながら人間として扱われています」
「そういうことか…じゃあ、俺が生きている限りは恐竜時代のような文明でも、杏子は消えないんだな?」
「その通り」
進示が複雑な顔をしていますが、これ以上できる話ではないですしね。
「この世界は文明が退化した代わりに人間の身体能力が上がったのか?」
「そうですね。普通の人でもアスリートレベルは体力があります」
「マジか…」
スポーツなどはまた別の技術が必要なので、プロ選手になるのは難しいですけど。
「本筋に戻そう。なぜアグモンが看板デジモンかだな。…お前が言うように純粋に強いのだろうが、人類の歴史以前に存在した進化の原点に近いものだからじゃないか?」
「恐竜からヒト型になったり、技術の進化でメカメカしくなったりですね!まあ、この世界は歴史が後退して回帰したのですが、回帰して私のようなドラゴンが生まれたんでしょう」
「回帰…ねえ?【サイクル】ってんなら確かに【回】っているよなぁ…」
「ああ、サイクルという見方もできますね」
生命や星の命が連鎖していくように、デジモンが寿命を迎えてタマゴになってまた新しく生まれるように。
文明もサイクルしても何ら不思議ではありませんね。
…進示、社会で人と話すのが苦手なだけで、結構頭回りますね?
「本来の杏子ほどじゃあないさ。俺は探偵じゃないしな」
「うーん、進示は学者さんとか向いてそう。本来の私とは違う頭の良さだよ!」
「…だといいがな」
はあ、と進示君はため息をつきます。うーん、自己評価が低すぎるのも考え物ですね。
「ですが、本来情報体であるデジタルモンスターと融合するのって危険なんですよ。人体を情報レベルまで分解して融合し、再構築するんですから」
「…あー…人道・倫理・法の観点から言えばそれだけでギルティだな」
頭を抱える慎二ですが無理もありませんね。あ、すみません、進示でした。純粋に誤字ですが、慎二と聞いたら誰を思い浮かべますか?
それはそれとして、SF映画にあるようなテレポーションには諸説ありますが、人体を情報レベルまで分解して転送先で再構築するというものがありますが、【人体を分解する】のですからこれは倫理的に受け入れがたいですよね。
マトリックスエボリューションも、デジモンと融合するために人体を分解するのですから、さっきのタイガーウェスパモン戦前の進示と戦後の進示が同じである保証はないのです。
…そうなると半電脳体の体でコネクトジャンプを乱用したあの人も存在が消えかけていましたし、かなりまずい状態でしたよね。そのバラバラになった人体データも杏子が集めたんですよね。
その横で杏子が涙目になって「わたし、悪い子なの?」って進示を見ますが、進示は杏子を抱きしめて落ち着かせます。
本来の探偵、暮海杏子であればそんな涙目にはなりませんが、この杏子はまだ情緒が育ってません。
なので精神的には本当に小学生くらいですね。
一部の紳士や大きいお友達は「〇学生は最高だぜ!」というのでしょう。あ、そこ。反応したロリコン紳士の方、怒らないので手を挙げてください。実写は難しいですが、アニメなら幼女のイラストとかプレゼントしますから!!
あ、でも進示はロリコン趣味ではありませんでしたね。一緒にいるのは10日ですが、情報がなくても性癖は大体わかりました。
進示!あなたはバブみを感じさせてくれる精神年齢の高い女性が好みなのはもうわかってますよ(エロセンサー内蔵)!
ジールでは女性の扱いは正直よくありませんが、気に入られれば、武力・経済ともに庇護下に入れますので、一長一短ですね。
…そしてハグをサラッとやってますけど、ハグってお互いある程度気を許してないと出来ないですよね?女性は貞操の危険、男性側は訴えられたらまず勝てないですし。
進示は「大丈夫だよ」って言って頭をポンポン撫でます。
ですが、デジモンと融合できないとまずい事態が秘かに進行中ですので、するなとも言えません。
進示には【魂】に関するありとあらゆる術を学んでいただきましょうか。
極めれば人間・神などといった区別がついたり、感情がわかるようになったり、非生物の魂に干渉できるようになったり、惑星の魂にすらアクセス出来るようになったり、デジヴァイスを介することなくデジモンとの融合ができるようになったり、アンデットを浄化したり、場合によっては生き返らせたり、死者の魂が成仏しても一定期間以内ならサルベージできるようになったりと、魂の強化で肉体・精神の強化ができるようになったりと、色々便利ですし、これから必須技能になります。
…そう言えば、お師匠様は何で能力上必要ないのにデジヴァイスを持ってるのでしょうか?
「そう言えば進示、今のうちにコレを渡しておきます」
「コレは…S&W・М629!?」
「コルトパイソン357のほうが良かったですか?ガンマニアの転生者が持っていたものらしいですが」
「パイソンは杏子のほうに…じゃなく!エアガンはともかく実弾撃ったことないぞ!?」
転生者が沢山いたのは聞いているので、銃があることに驚いてはいないようですが、万が一に備えてです。
「もし、魔法を封じられたり、デジモンを進化させられなかったり、貴方は使えないようですが、デジソウルを封じられたらどう戦う気ですか?それに、アルファモンで数秒戦闘しただけで喀血しましたね?」
「ぐぅ…わかったよ。杏子のほうが膂力はあるから、反動にはすぐ慣れるだろうが、俺は練習がいるな…マグナムじゃなくてハンドガンはない?」
「だったらいろいろありますよ!」
そうして色々見せます。
「PC356でいい?」
「また随分マニアックなものを…。9ミリを撃てるバレルにしています。よろしければ進示が使いやすいほうにカスタムしますか?」
「今は頼もう。銃も勉強したほうがいいな…」
まあ、そのほうがいいですね。ため息をついてます。幸せが逃げると言いますが、実はため息ってはくと少しストレスが減るんですよ。
「じゃあ、後これも、魔力が通ってないミリタリーナイフです。魔力が封じられた場合、こちらを使ったほうがいいでしょう。出会った頃に渡した武装は全部マジックアイテムですから」
「転生者の遺品ばっかだな。だが、その亜空間倉庫、便利だな」
「でしょ?でもコレ、魔力使えないと開閉できないので、カバンを持ってるのは」
「そういう事か。そんな便利な倉庫があるのならカバンは必要なさそうだが、魔力封じに備えてか」
本当に理解が早くて助かります。
この後射撃練習をしたのですが、進示、射撃の才能はピカ一でビックリしました!
試しに、ウェスタンなショットガンも用意しましたが、片手スピンコックもすぐにマスター…なんで?
ただ、進示は体術の才能は並ですが。…中国武術とか進示には無理ですね。格闘技は10年単位で努力しても1流止まりでしょう。天才、超一流には多分なれない。何をベースにしましょう?空手?ボクシング?
杏子は進示の逆で、体術の才能はあるんですが、射撃の才能は並でした。練習がいりますね。
…SAリボルバーで練習させましょう。
地球、日本某所
樹視点。
進示様と杏子ちゃんが行方不明になって20日が経過した。
流石にニュースになってしまい、マスコミが詰めてくることもあったが、やんわりと、しかし何とかやり過ごす。
「おう、双葉さーん」
「お邪魔しまーす」
「いらっしゃい、皆様」
入ってきたのは進示坂と同じ転生者でご学友の5人。パートナーデジモンは幼年期まで退化させてバッグに入れていますね。
あら、出口さんの守護天使、シュトースもいますね。
「地球全域まで今許されている天使の力で捜索しましたが…やはり地球にはいないようです」
「マジかー…」
「警察は捜索を打ち切ってもよさそうだけど、まだ少し捜索するって。努力してないと思われたくないからだろうし」
「…実のところ、ここ数年で神隠し事件が起きているようなのです。小説や漫画でいうところの異世界召喚…お二人はそれに巻き込まれた可能性が高いでしょう」
「リアルなろ〇…いや、オイラ達も転生してる時点でいまさらか」
ふふふ…まあ、そうですよね。しかし、召喚から通ったルートを通じて呼ばれた世界自体はもう特定はできている。
だが、
「ジールという世界のようですね。この世界、私以上の神の力で障壁が張られています。私にリミッターがなくとも破るのはまず不可能でしょう。…一応人間であれば素通り出来なくもありませんが、この世界は異世界召還を濫用しすぎたせいで、世界中に転生者を殺す毒が充満しています。杏子ちゃんはまだしも進示様であれば持って2週間の命でしょう」
「「「「「はあっ!?」」」」」
私の声に焦りを見せる5人…すでに20日が経過しているにも拘らず、私が人間界から退去していないということは、進示様たちは生きている。
「現地で協力者を得たのでしょうね。それも、転生者殺しの毒を浄化できるような神でも使い手が少ない能力者の」
「ど、どんな確率ですか!?」
シュトースも驚いている。薄氷踏むような奇跡に遭遇し、生きながらえているのは確かだ。
「…あなた方転生者では、向こうの世界に行けたとしても、転生者である以上、毒にさらされるリスクがあります。…進示様が現地で得た協力者は…偶然ではなく運命としか言いようがありません。あまりにもタイミングが良すぎますので」
「じゃあ、榊原は…」
「協力者がついている以上、その方も進示様を害することはないでしょう…信じましょう」
二人とも…どうか無事でいて。
そして、二人に協力している方、叶うのならばお礼を言わせてくださいませ。
《お任せください!お二人は私の命に代えてもそちらに送り届けます!…見返りとして進示君をつまみ食い…ゲフンゲフン、童貞を頂きます!!》
あの…私の幻聴でしょうけど、全然隠せてませんよ?言い直せていませんよ?それから進示様の女性関係には余程のことではない限り口出しはしませんが、命を懸けないで貴女も生きてくださいね?
赤いロングのに黄金の目をした耳の少し尖った女性がサムズアップして無駄に歯を光らせている幻が見えた気がした。
再びジール。1000年前。
ゼロ視点。
この世界、ジールに置いて地球より文明が進んだ都市はすでに廃墟と化していた。
私達と魔王アルカディアの戦いで。
私は2000年前にこの世界に記憶と自我を奪われた状態で召喚され、召喚者の思い通りの操り人形となって、様々な戦場で殺し合いに加担させられ、男達の慰安もさせられていた。
それから、年を取らない私を永遠に衰えず、生涯【使える】ものとして見られたし、子供ができない体質もあって、散々弄ばれた。
そんなある時、出会ったのが大空宙田という転生者だ。
彼は私を見るなり、「自我と記憶を封印されているのか」と呟き、私の頭に手をかざすと、失って久しい、自分の心を唐突に取り戻して泣き叫んだ。
彼は一人の金髪紅目の女性を連れて歩いていたが、彼も女性も私が泣き止むまで待ってくれていたようだ。
「シュクリス、コイツが例の?」
「ああ、時間を越えていたとはな…」
守護天使システム。
転生者の第2の人生をサポートする天使というのは恐らく表向きの事だろう。
人類と共存する神と人類を滅ぼす神の勢力争い…それも正確ではないか。
人類を滅ぼす側の神が人間界に介入したため、共存する神側が新しく設立した組織にしてシステムだろう。
神は人間からの進行を糧とするが、滅ぼす側の神は人間無しで存命する方法を確立したのだろうか?
シュクリスに関しては謎が多いが、私が宙田に心を開くまで時間はかからなかった。
…なんだ?この女…天使ではなく神ではないのか?
独占欲がないわけではなかったが、それでも、彼の幸せに必要ならハーレムだろうと構わなかった。
シュクリスも彼とともに生きる姿勢は本物だった。
女は特別な出来事がない限り、世間一般的ないい男に惹かれやすい。絶対ではないが。
それに、大天使シュクリスは天使にしては格が大きすぎる気もしたが、彼女は超がつくほど真面目で律儀だ。
表情は殆ど動かないが、いたずらに人を害しないし、私の悩みも真面目に聞いてくれた。
人間に馴染もうとしてるのかたまに妙なタイミングでボケる事もあるが。
あと悔しいが、私も宙田も模擬戦でシュクリスに勝てた試しは一切ない。
彼女は過剰な本気も出さず、過剰な手加減もせず、【戦う相手より少し強い力で戦う】のだ。それもほぼ徒手空拳のみで。
彼女ならば同じ男を夫にしてもいいと思った。
宙田は頭が良く先見の明がある天才だが、もし彼が劣等生でも、落ちこぼれであっても私は彼を伴侶としただろう。
私に心を取り戻させてくれた。
私にはその事実だけで十分特別だった。
守護天使とは別に、彼がパートナーとしているデジモンがいた。
ロイヤルナイツ空白の騎士、アルファモン。
そう言えば私の母の一人は…。
彼の仲間にも私を紹介され、冷やかされもしたが、悪い気分ではなかった。
そして、私のパートナーになるデジモンも彼がデジタマを渡してきたのが始まりだったっけ…。
だが、この幸せは半年で終わった。
私の周りには無残な姿になった12人の転生者達。
もう誰も生きている者はおらず、彼等のパートナーたるロイヤルナイツも私のガンクゥモンを残して跡形もなく消え去った。
アルファモンのテイマー、大空宇田も、この戦いの直前、結婚も約束していた男だった。
完膚なきまでに叩きのめされた。
「無様だな。しかし、転生者とは負け犬の称号。一度目の人生で自己の運命を超えられなかった時点でたかが知れている。本来、人生にやり直しなどないのだから。転生者である限り私を超える事は出来ない」
そう、確かに私以外の面々は転生者だ。空田も自分たちが転生者である限りこの目の前の存在を打倒できない。故に非転生者である私に全てを託したのだろう。
「黙れ!!彼らは確かにどのような理由であれ、一度は人生をリタイアした!だが、そこから再び立ち上がって己の人生を生きた!!星そのものに優遇され、一度も敗北など経験していない貴様に彼らをあざ笑う資格はない!アルカディア!!」
「そいつらが私の目の前で死体になって転がっている事実は変えられん。そして、私が貴様ら転生者を間引くため、そして神どもを間引くために生まれた存在であることも覆せない」
そう、こいつの力は神以下ではあっても、人間やデジモンを超越した存在。
そして、神の権能ではこいつを傷つける事は出来ない。
宇宙を、そして世界そのものをなくせる力であっても、こいつは一切殺せないし傷つかない。
アルカディアを傷つけられるのは人間界の力だけなのに、人間やデジモンの手におえないという出鱈目なスペックがあるのだ。
転生者がこいつに戦いを挑むこと自体が敗因であり、死因だ。
神の力を使うより、ナイフ一本で戦う方がまだ勝てる見込みがある。
こいつと戦うのなら非転生者かつ神ではないものでなくては戦えない。
しかし、現実はこのザマ。
「神そのものから与えられた力でイキっているだけの3流魔王が…」
「なに…?」
私の言葉にアルカディアは訝しむ。
宙田からは『お前の観察眼は一流だ、自信を持て』と言われているが果たして…。
「何を馬鹿な…私はこの世界そのものが生み出した世界のアバターの一つ。神と転生者を滅する機構」
「…ほう、気づいていないようだな、これは評価を下方修正する必要があるか?」
私の煽りに
「よかろう、そんなに死にたいのならお前の愛しい男の後を追わせてやろう」
「ガンクゥモン」
私はガンクゥモンに指示をし、私と融合させる。
私の体質はデジモンを都合のいいように進化させる特性はあるものの、使い手が未熟なら生かしきれない。
今の私では私の個体が持ちえないX抗体を付加させるのがせいぜいだろう。
「またその姿か。通用しないのはわかりきっているだろう」
アルカディアの言葉通り、ここで死ぬしかない。
だが、私であればとある体質により、生き残れるだろう。
ガンクゥモンもまだ死なせないために私と融合させる。
つまり、この融合は勝つためではなく、生存のためだ。
アルカディアはこちらを完全に舐めているのか、生き延びるすべがあることを考えもしていない。
「消えろ、目障りな転生者」
「…フ」
しかも、こいつは私が非転生者であることに気づいていない。
父さんは戦えない、勝負の土俵にすら上がれないが、私なら戦える。
アルカディアの放つ光球は私達を飲み込み、直径一キロは更地になるほどの大爆発を起こした。
これでも範囲を小さく絞ったほうだが、奴がその気なら地球の半分は消し飛んでいただろう。
10日は眠っていただろうか。
デジタマから人間体に戻った私は、モクモンとなったパートナーを見る。
「やられたね」
「ああ…奴は強敵がいなくなったこの世界を退屈と断じ、眠りにつくだろう。次に目覚めるとすれば、この星が消滅する直前だ」
そして、私は思い返す。
私は初恋の人を失った。
少しぶっきらぼうだけど、確かな優しさと温かみがあったあの人を…
「うわああああぁぁぁぁぁぁ…宙田…!ごめんなさい!ごめんなさい…!!」
生存を実感して一番最初に感じたことがそれだった。
遺体も塵も残さず消し飛んでいるため、確認もできないだろう。
シュクリスも宙田が死んだことで天界に退去してしまった。
恐らく下界に降りるため、次の雇い主を探しているだろう。
彼の気配がないところを見ると、宙田は転生を選ばなかったか、天界にとどまっているか。…あるいは記憶をリセットして新しい生命に生まれ変わったか。
皆の遺体は回収できなかったが、墓標を作った。
ジールの滅びた文明がある国に向かい、そこに残っていた文明の残骸をかき集め、複数のデジモンを管理するデジヴァイスをどうにか作り出す。
ガンクゥモンのデジヴァイスは別にあるが。
「今後のことも考えるとしばらくは潜伏して力を蓄え、父さんの誕生を待とう。私の推理が正しいのなら【前回は失敗している筈】。そして、アルカディアはデジモンを形成する機械文明を破壊したということは、デジモンを恐れているということ。」
アルカディアの破壊活動で、文明の殆どは死に絶え、デジモンが生存するには厳しい環境となった。
ミリアが星によって生みだされたのもこのあたりだったか。
新しい文明はおよそ200年ほどで作り出されたが、やはりかつての機械文明を築くのは時間がかかりそうだ。
現在の文明は中世程度。
元々私がこの世界に来たきっかけは、
私は強くなるためなら何でもやった。
時には戦士として戦い、時には時の権力者に情婦として取り入ったり、時には鍛冶師に弟子入りして武器の制作のノウハウを教わったり。時に、この世の学問を改めて学びなおしたり。
地球より文明が発展した世界に赴いて科学、医学、機械工学、農業など様々な技術、産業を学ぶ。
魔法に頼らない方法から魔法で省略できる方法まで技術を磨いた。
戦士としても拳(ジークンドーが基礎)、剣、槍、魔法、銃火器など、およそ思いつく限りの戦い方を身に着けた。
指揮官としても兵法を学んだり、実戦で生かしたり…数百年もあれば普通の人間には不可能な知識、技術量が身につく。
私が製造された過程で基礎知識はあったのだが、やはり知識と実践は違う。
世界を救ったこともあれば最善のつもりで動いた結果滅びに繋がってしまった事もあった。
そして、デジモンという戦力も集めたりした。
あまり戦力呼ばわりはしたくないのだが、今後訪れるであろう事態を想定するとそうも言ってられないのだ。
出来ればロイヤルナイツレベルのデジモンが100騎ほど欲しいのだが、…いや、足りるか?…とにかくデジモンラボラトリーのようなバックアップがない私では、究極体を10騎管理できるかどうかだろう。
御神楽ミレイと交信ができればいいのだが、無いものねだりをしても仕方ない。
今後生まれるであろう父さんや父さんの学友で見どころがありそうな者をデジモンテイマーにする他はないだろう。
そして、可能ならば世界のどこにも属さない次元の狭間にアクセスできる方法も確立しなくては。
用意できるデジモンに限りがある以上、【彼女】の力は必要になる。
【彼女】の体質は父さんならフォロー出来るようになるだろう。
私のガンクゥモン以外にも私のパートナー…家族がいる。
それは、相容れない天使と堕天使の融合、次元を超える力を持つ軍師、マスティモン。
それは、ネットの海ならどんな場所にも行けるアンフィモン。
それは、ダークエリアを監視、守護するアヌビモン。
それは、私の母の力を引き出す可能性、オウリュウモン。
それは、世界のすべてを知る知識の神と言われるラジエルモン。
そして、竜の力を持つ戦斧を持ち、龍の力を持つ私と相性が良く、デジタルワールドにおいてすら【幻想】と呼ばれる。転生者という幻想の娘である私と共通点が多い、〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇モン。
アルカディアではないが、ある戦いでアンフィモン、アヌビモン、ラジエルモンがやられ、デジタマから戻せない状態になってしまった。事実上の脱落。
…これは、父さんの力だけでは足りないな。
特にデジタルワールドの大部分の知識を補完できるラジエルモンの脱落は痛すぎる。私情を抜きにしてもだ。
そしてオウリュウモンは自身が助からないと悟ると、死んでもなお私の力になりたいと言い、アルファモンの娘である私なら使いこなせると言って、自信を王竜剣にして託した。
その件は斧剣のみならず、オウリュウモンが使う双剣にも形態変化が出来る。
力を磨き、技術を磨き、知恵を磨き、コネを築き…
21世紀にはいる少し前に地球にも日本人のような黒髪に染め、戸籍を偽造して日本に潜り込み、会社を興し、海原白子(うみはらしろこ)という偽名を使い、活動する。
時期が来ればいずれ宇宙からやってくる災害に備え、父さんたちをバックアップするためだ。
双葉樹もよくやっているが、彼女一人では力不足だ。
ゲーム会社という彼女にしかできない役割もあるのだからそこは任せる。
ちなみに偽名は父さんと杏子母さんの名前と、杏子母さんの二つ名から捩らせてもらった。
そして時間は流れ…
「半年は戻らない」
「分かりました。貴女お一人で大丈夫ですか?」
「問題ない。それより、デジモンテイマーの候補者は?人間性を重視しろといったが」
「まだ小学生ですが、素質は金城明音という人物がかなりのものです。ロイヤルナイツには及びませんが、究極体でも上位のデジモンを育てるだけの善性とコミュ力があるかと」
「分かった。公安にも1名、自衛隊にも今のところ2名、デジモンテイマーに相応しい心を持っている」
「分かりました。調整しましょう」
「頼む。育成だけではなく、発掘も怠るな」
私は会社の秘書に指示を出し、部下の一人に私の影武者をさせる。
「それから、神隠し事件はどうなっている?」
「…こちらの世界から召喚やテレポーション技術で拉致して弄ぶ…阻止しなければなりませんな…確認が取れただけでも214件…実際はもっと多いでしょうな」
「…そうか。大半は私を生み出した宇宙のクズどもだ。生かしておく道理はないが、現状の戦力では返り打ちだ」
「貴方の究極体2体、転生者達の究極体6体でもですか?」
「そうだ。あと、正確には3体、ガンクゥモンは別行動だからな。そして、戦死して私の剣になったものが一体、デジタマの姿で固定されてしまったものが3体だ」
「貴方だけで7体もいるのですか」
「ああ、それを含めてまだ足りない。全然足りない。だが、大天使トレードがいれば究極体のデジモンを100騎単位で運用できるだろう。彼女の能力は情報を扱うものだからな。デジタルモンスターが情報体だからこそできる無法だ。…しかし、それだけでも駄目だ」
「ま、まだ足りないのですか!?」
驚く秘書だが、私は頷く。
「どれほどデジモンが強くても人間の精神の強さを生かせなければならない。同時に、人間はデジモンのみならず、どんな種族とも共存できる和の心がなければ、あのクズどもには打ち勝てないだろう…和の心と言っておきながら敵を打ち倒す必要があるとは…矛盾してるが、矛盾してるからこその人生だろう」
地球では21世紀、ジールで進示視点。
こうしてミリアと放浪生活を続けていた俺達は、テンプレな野盗に遭遇することになる。
「あ、進示!襲われているエルフは私の知り合いです!救助に行っても」
「なら急ぐぞ。この世界で俺と杏子の見方は現状お前だけだ。召喚したことを申し訳なく思ってた人も数名いたが、逆らえるだけのバックアップがなかったしな」
「手段は問いません!あ!もう下着を脱がされてます!?」
野盗は数名、ミリアは高火力の魔法だが、人質を傷つける可能性はある。
リーダー格以外はボンクラだが、リーダー格はミリアの魔力発動に気づいたそれにズボンに下げてるナイフに手を伸ばした。
俺はハンドガンを取り出し、腕を狙い撃つ。
「ぎ!?」
その発砲に驚いた部下は驚き、慌てている間に、ミリアが風の魔法で刃を放ち、首を切断した…おいおいマジか!?
その光景に俺は脂汗を流すと向き直った男に再度発砲するが…。
キン!
「!?その鎧」
みすぼらしい鎧ではあるが、リーダー格の鎧は銃弾を弾いた。
杏子はエルフの女性を確保した。…ならば強気で行けるな。
そう思ったが、
「おら!」
男は一瞬で俺に近づくと、銃を弾き飛ばし、俺の首を掴んだ。
「ぐ!」
「「進示!」」
…こいつ、ただのチンピラじゃないな…?
「舐めた真似してくれんじゃねぇか。殺すのは簡単だが、なかなか愛嬌のある顔だ。そっちの趣味がある貴族に売りつけてもいいな…」
「が…」
ミリアも杏子も迂闊に動けないようだ。…これは相手を侮った…そして、地球の倫理観は通用しないと思った。
「いや、やっぱ死ね、その赤髪の女からは逃げられねぇ…ならここで道連れだ」
……!ミリアの技量を一瞬で見抜いた!?
だが、俺は自分がまだまだペーペーなのは理解してる…そしてそれが隙でもある!相手は俺を舐めているのだから。そして、油断が亡くなればチャンスが無くなる。
サクッ
俺は旅装束の右腕部分に仕込んでいた暗器で、奴の頭を刺した。
…ははは…ついに殺っちまった…。
どうやら奴は子供の俺が暗器を仕込んでいるとは思わなかったようで、驚く間に即死した。
銃ですぐに頭を狙わなかったことも俺を甘く見た要因だが…すごく寒い…!
結局殺さなくてもなんとかなると思い込んでいた俺が招いた油断…自業自得と言われても仕方ない…!
奴の拘束を逃れ、地面に尻もちをつくが、立ち上がれない。
吐き気こそしなかったが、汗が止まらない、震えが止まらない…!
心臓を打ち抜いても10秒は動けるのに…!即死させなかったから…俺が選択を誤ったら、3人を危険にさらしたかも…でも、ころしたなまのかんしょくはとまらないさむいこわいどうすればよかったころすしかなかったのかころさなければよかったころせてよかったのかみりあはちゅうちょしなかったざいあくかんがとまらないでもきょうこはえるふはどうすればよかったきょこにかたがわりさせたのかきょうこたちがおかされたのかおかさせないころせころさない
そして、俺は誰かに抱きしめられた
「貴方、人を殺したのは初めて?」
「…ああ」
それは先程助けたエルフの女性だった。
「人を殺す必要はあるかもしれないけど、殺したくないという感情も捨ててはいけないわ。助けてくれたお礼にしばらくこうしてあげる。だから、気持ちをゆっくりでいいから落ち着けてね?」
彼女の柔らかい胸の感触と鼻をくすぐる心地よいにおいに、精神が不安定だった俺は抗えなかった。
「それにしても、あの野盗…野盗にしては強すぎますね…どこかの国が滅んだのでしょうか」
「南西のメタル帝国が滅んだわ。あそこは最近機械文明が出来てきた国だったのだけど、それが仇になったのでしょうね」
…俺はこの時、この会話の意味が分からなかった。
もっと考察すればよかったと後悔する。
「で、何でこんなテンプレ展開みたいに野盗に襲われて薄い本案件になりかけてるんですか?というか国を脱走してきたんですか?フェー」
「脱走だなんて人聞き悪いわ。国だと王女として振舞わないといけなかったのに、今なんて女王よ?お母様が
「事情は分からんがすごい社畜満載だな」
「でしょー?あ、貴方が噂の異世界人ね?随分可愛い男の子に女の子ね♪」
ミリアが言ってた通り、野盗に襲われて性的暴行をされそうになったエルフの女性を救助したが、ミリアの知り合いらしい。ちなみに服は破られているが、貞操は無事だったようだ。
そしてサラッと重い話が出てきたな。
母親は他界したのか。…いや、いなくなった…だな。
金髪碧眼、典型的なエルフだな。…失礼ながら胸も見る…多分着やせするタイプだな。
…さっきの感触でかなり落ち着いた。
「むー」
杏子が膨れっ面して俺を見る。…これって間違いなく俺に気があるよな…杏子…。
魂が繋がっているから?
俺は前世では女性にモテた試しはないので、確証は持てないが、一緒に生活している以上、そういう情が芽生えてもおかしくはないが…、俺に彼女の人生を背負えるかと言われればプレッシャーを感じてしまう。
その俺の心を感じ取ったのか、杏子は俺を抱きしめてきた。…励まそうとしてるのか?
僅かに膨らみ始めた第二次性徴期の柔らかさを感じながら俺は抱擁を拒めないでいた。
「…ふむ、やはり魂が繋がり始めていますね。そのうち何となくではなく、相手の考えていることが言語込みで分かるようになる可能性はありますね。…ふむ、デジモンと人間の魂のシンクロ、【デジシンクロ】というべきでしょうか?」
「あら、魂の繋がりで思いが通じ合うのね、素敵だわ…。妬ましい」
「フェー?あなた悪口なんて言う性格でした…?」
「…え?ごめんなさい…最近よく意識が飛ぶのよ…」
「それは働きすぎですね!少なくとも1日7時間は寝てください!!」
「今の慌ただしさじゃ無理よ…」
フェーさんに一瞬不穏な空気を感じたが、彼女が悪口を言う性格じゃないのなら…。
そう言えばイーターに取りつかれた真田アラタやアルカディモンに心を付け狙われた御島龍司が心の闇の側面を出し始めたが…ダメだ、この女性とは出会ったばかりでまだ判断できる材料がない。
「進示…フェーさん、優しい人だけど…何か嫌な感じがする…まるで手遅れみたいな…」
「……杏子ちゃんって言ったかしら?どうしてそう思うの?」
「だって、笑顔だけど苦しいの我慢してるでしょ?」
「…!」
杏子がそう言うと、フェーさんは驚いた顔をして杏子を見る。
が、すぐに平静な顔に戻り、柔らかく微笑む。
「大丈夫。エルフは頑丈なの…大丈夫よ」
そういってフェーさんは杏子の頭を撫でる。
この時、フェーさんの様子をもっと深堀しておけばよかったと後悔する。
そして、この世界で彼女と育んだ交流。
地球に残してきた家族と友。
どちらか一つを選ばなければならない日が来るとは…この時は思わなかった。
おまけ
ガラテア視点
トータス帰還後のとある日
「ふう…」
進示がおもむろに過去映像を見せるためのヘッドホンを外し、溜息を吐く。
その眼にはうっすら涙を浮かべながら嗚咽を漏らし始めた。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
机に突っ伏して泣き始めた進示。その謝罪はゼロに向けてのものだろう。
そしてこれから私の姉を殺す事に係る
血が繋がってないとは言え、娘がいる南雲ハジメは思うところがあるのか、拳を握り締めている。
特に、ゼロが過去へ召喚されてからの事は今初めて聞かされたのだろう。
と同時にミリアと同じ髪の毛と目の色、赤い頭髪に黄金の瞳だった毛がストレスで脱色し、白髪に銀色の瞳に代わってしまった理由も悟ったのでしょう。
記憶を奪い、召喚者の意のままに操るジール式異世界召喚。
ミュウちゃんの手前、言葉をぼかしてはいたが、操られるままに殺戮、輪姦、など凄惨な人生を歩ませてしまった事に悔いているのでしょう。
異世界召喚とはその世界の人類ではどうしようもない時の最後の手段、原則、【世界の外から来た脅威】に対するカウンターとして設計されたものでしたが、世界内の出来事、利益のための使用は【濫用】に当たる行為です。
エヒトの場合は私利私欲のものでしたが、エヒトが地球を攻撃すると宣言してしまったことで、地球人の召喚は【エヒトに対するカウンター】として扱われたのでしょう。
これに関してはエヒトの死で負債の大部分は払い終えているでしょう。
…いえ、それも正確ではありませんね。本来下界に存在しないはずの存在が介入したことによって、異世界召喚の負債は少ししかなかったと言うべきでしょう。
エヒトも本来はトータスの住人ではありませんしね。あの世界を開拓したのは事実なので、どのみち英雄以上の存在として崇められたでしょう。英雄ではなく、神として崇められましたが。
脱線しましたね。ゼロが進示とトータスで再会した時は、余計な気を揉ませないために言わなかったのでしょう。
ゼロ、ああ見えて顔は進示に似ませんでしたが、心は進示に似てますから。
進示も大体は推理してたとは思いますが、本人の口から改めて聞かされて、やはり溜め込んだ感情を抑えきれなかったのでしょう。立場もあるでしょうが、その感情は根が普通の心根の進示が抑えてはいけないものですよ。
そういう意味では南雲ハジメも心配ですね。
彼の場合は生き残って地球に帰るという以外の感情をそぎ落とし、そこから今の人間関係、即ち、【大切なモノ】が増えた状態ですが、それが失われるとむしろ進示より反動が大きそうですから。
そこが進示とハジメの違い。
弱さを隠さなくなり、自身の弱さを認めることができる進示は万が一の事態が起きても復讐に走ることはしないでしょう。
ハジメは基本的に自分の弱さを隠す。黒歴史も含めて。トータスを旅行した時もかなり自分の過去を見せたがらなかった。結局見られたとはいえ、自身の弱さを隠すのは若さですね。
まっとうな生まれ方をしなかったとは言え、血の繋がった娘に何もしてあげられなかった、ハイネッツから脱出した直後の宇宙船の中で召喚を阻止できなかった自分を責めているのだろう。
そして、ゼロが危惧した通り、ああして泣き始めて周りが声をかけてもなかなか泣き止まない。
でも、だからこそ私達はミリアたちと同じ、この人を夫にすることに決めたのだ。
それに、姉はどの道助からないし、姉をヒトのまま(エルフだが)死なせることから逃げてしまった私が進示を責めるのはお門違いなのだ。
とは言え、一先ず休憩となり、
「ところで杏子。【あの子】はどうしているのですか?」
「仕事があってまだこちらに来れないそうだ。…働かざるもの食うべからずと言った事があるが、その影響を受けすぎているようだな。進示は生活に馴染むまでは無理して働く必要はないと言ったが、あの子自身が申し訳ないと思っているのだろうな」
私達の中では一番の一般人なので無理はしてほしくないところだが。
杏子も少し丸くなっていますね。【来るもの拒まず去る者追わず、働かざる者食うべからず】は確か本来の杏子の父の教えでしたね
と、
「遅れました、もう始まっていますね?」
「お母様…」
そこには私や姉さんをさらに大人の雰囲気にしたような女性…つまり、私のお母様であるフーディエが入室してきた。
俯いている進示を見て大体どこまで話が進んでるかを察したらしい。
「これから私と戦うところでしょうか?
「ああ、ミリアからも忠告されていたが、父さんが魔力に頼らない兵器、電磁レールガンを開発しようとしたきっかけでもある。トータス召喚前にリボルバーや、単発式ランチャーは間にあったそうだが、セミオートの銃は構造が複雑で壊れやすい。まだ技術的蓄積の足りなかった父さんではセミオートの脆弱さを魔力で補ってたようだしな。ガトリングもフレームとモーターを魔力で無理矢理補っていた」
「ライセン大迷宮で、回転ノコギリを粉砕したアレは」
「あの大型拳銃は魔力で補強した拳銃だ。デジタルワールドなどで使えば直ぐに破損するだろう。魔力も使わず、環境を極力破壊せず、クロンデジゾイドを打ち抜ける武器はもう出来てるが、セミオート化が難しすぎる。リボルバーなら何とかなるんだが、反動がでかいので普通の人間には使えねぇ…もうすこし時間をくれ。軽量化する。歩兵で使える強度を保つのにランチャーサイズなってるけど」
泣き止んだ進示がハジメの疑問に答える。
実のところ錬成師としてはハジメのほうが上なのだが、魔法を使わない科学能力は進示のほうが優れているのだ。
「ハジメと優花は魔物の肉を食ったから身体強化は魔力便りだ。ユエもデジタルワールドや魔力を完全に無効化される環境に放り込まれたら【自動再生】も働かねーぞ。環境の制限を受けないのはゼロと天使だけだが、ゼロ達に頼りきりでもいけない。雫はあんま心配はいらないが」
「…わかった」
進示の言葉に神妙にうなずいた皆さん。そう言えば私もゼロや進示に言われて銃の練習を始めたんでしたね。
精霊の力を借りられない、魔法を使えない状況になったりデジモンを進化できない状況になっても困らないように。
おまけ2
第3視点
「またあなたとこうして生活することになるとは、不思議なものですね、大天使シュクリス」
「…ゼロ、宙田は残念だったな…。ただ、奴は転生せず、あの世にとどまっている」
「!?事実なのですか!?」
「『仕事はするからあの世にとどまらせてくれ』と言ってきてな?私との契約はどうするのかとも聞いたが、『契約満了でいい。おまえにも下界ですることがあるはずだ』と言ってきてな」
「…」
「心が強すぎると親しい関係を切る事にも躊躇がない。特に男は」
「…」
「宙田は決してお前を蔑ろにしていたわけではないが、それでも」
「分かっています。世界が滅んでは会う事すらできなくなりますから」
「そうか」
(宙田…あの世で何をするつもりですか…?神童もいるはずですが…)
「そして、あの時は言えなかったが、アルカディアの造り主が分かった」
「…!………そうですか、利敵行為も行うのですね、あの女は。ある意味エヒトの真逆でしょうか。人間を嫌っているのに一縷の希望を捨てきれない…誰も傷つかない世界を目指そうとした神らしくない理想を」
Q、ミリアがトータスの神代魔法を教えなかった理由は?
A、それは後付けでもなんとかなるので、自分の力を継がせる方が先だった。
ちなみにミリアの魔導書は、百科事典レベルの分量の論文を手書きで魔力を込めて執筆した特注のワンオフ品。
まだ6年程度の経験の浅い進示には必需品である。
デジモンとの魂の融合理論も書かれている。
Q、ミリアがエヒトにバレなかった理由は?
A、シュクリス「私は覚えがないな…」
オリジナルキャラ、魔王アルカディア
以前からちょくちょく触れていたが、神の力は一切効かないのに、人間界の力を大きく逸脱した出鱈目スペックの存在であり、神や転生者を間引く(完全に絶滅させるわけではない)反則級の存在。
ただし、ありふれのエヒトは神と崇められていても、人間の規格は出ていないのか勝率は0ではない。
逆に樹や設定上エヒトが一切叶わないシュクリスは神判定であるため、アルカディアに勝つことは100パーセント不可能。
一応人間界で得た力なら通せるという抜け道はあるが、如何せんリミッターをつけることを義務付けられる神や守護天使の手には余る存在。
しかし、ゼロはアルカディアはデジモンを恐れていると分析している。
肉体を情報レベルで分解し、再構築。
これは本来倫理的には受け入れがたいところがあるもの。
理論上は再構築しても人格が以前のままという保証はないからだ。
人格と記憶の維持、保持を担うのがデジヴァイス。
ミリアのエロセンサー
見ただけで相手の異性の経験人数や性癖とかがわかる(どんなセンサーだ)
実は娘のゼロにもあったり。
リリアーナはどちらのヒロイン?
-
オリ主(榊原進示)
-
南雲ハジメ