地味に今回、トータスでデジモンが活動できる理由に触れます。
先日アダルトの方を更新しましたが本編再開です。
また、ジール編第4話とハイネッツ編第1話を執筆中です。
ゼロ視点
ルーチェモンに吹き飛ばされて倒れた状態ではあるが、数年ぶりに直接父さんを見た。
そして遺伝子学上の母、暮海杏子とミリア。
造られた命、遺伝子操作で生まれた身であるが、親を見れてほっとしている自分がいる。
父さんにはあれだけの仕打ちをしておいて、今更許されるとは思っていないが…父さんなら私を許してしまう気がする。
ゼロ。
それが父さんがつけてくれた私の名前。
母である暮海杏子=アルファモンの二つ名、【空白の騎士】の空白=0【ゼロ】という解釈からこの名前をくれた父。
そしてルーチェモンが成長期からX抗体に変化する姿を見て私は声を振り絞る。
このルーチェモンは本来あり得ない能力がある。
「アルファインフォース!!!!」
その言葉に咄嗟に反応した父さんが右足に魔力を限界まで込め、園部優花を守るように躍り出て、ルーチェモンが発した風の刃を蹴り落した。
ミリア母さんから譲り受けた武装を取り出す暇もなく、ハイネッツから得た科学技術による武器はルーチェモン相手には効果が薄い。龍の杖、赤龍杖(私の持つ杖は黒龍杖)は万が一にも破損はさせられないとわかっているのか、体術を選択したようだ。
ミリア母さんの武装は杖と魔導書が残っていれば最悪良いのだが。
因みに八重樫雫の蘇生と白崎香織の補助に使ったであろう魔導書はミリア母さんが何十年もかけて魔力を込めて手書きで(わざわざ日本語とジール標準語で)執筆した特注の書だ。
パソコンの印字では絶対に作製できない神秘が込められている。
刃は相殺されたが、父さんの右足が切り飛ばされてしまった。
「「「「え!?」」」」
他の連中からすれば何が起きたか理解できないだろう。
アルファインフォースは本来過ぎ去った戦闘時間を瞬間的に取り戻す究極の力。
アルファモンの攻撃は一瞬だが、実際には何回もの怒濤の如き攻撃を他者が見る事は出来ず、確認できるのは理論上敵が倒れる最後の一撃のみ。
つまりは時間操作の亜種ともいえる力だ。
それを応用し、ルーチェモンは、静止した時間の中で風の刃を飛ばし、園部優花の首を刎ね、ついでに射線上にいるティオ・クラルスや、メルド・ロギンスや天之河光輝やクラスメイト数名をついでに巻き込もうとしたのだろう。
アルファモンである杏子母さんと繋がりがある父さんとミリア母さんだけが反応していたが、その顔には驚愕の表情に染められている。
「進示いいいぃぃっ!?!?」
叫んだ園部優花の眼には、コマ送りでもない、いきなり進示の足がなくなったようにしか見えないだろう。
「おや?イレギュラーである園部優花の首を狙ったんだけど、…ああ、君はそこの人間の振りしたアルファモンのテイマーだったね。であれば反応出来てもおかしくはないか」
「馬鹿な…なぜテメェがその能力を使える!?」
父さんの疑問はデジモンを知るものであれば聞かずにはいられないモノだろう。
「一番心当たりがあるのは君と暮海杏子じゃないか?…3年前とか?」
「…!!」
「健康診断の血液…ピンハネしていたのか」
そう、3年前にハイネッツ宇宙域に拉致された父さんと杏子母さん。
当時はすでに父さんはミリア母さんの心臓を使っていたので、間接的にミリア母さんの進化できるデジモンの能力も獲得してしまっただろう。
と、いうことはドルゴラモンの力もあるはずだ。
…デクスモンの力は流石にないと思いたいが油断できない。
地球より文明が進んだ世界で、面倒な尋問をされることなく仮の住居を手に入れるためにアルフレッドの提案で手続きに必要だった過程の一つ、健康診断。
その時に採取された血液を奪われてしまった。
父さんはアルフレッドの魂を見て邪な気配は感じていなかっただろうから、アルフレッドの保護を受ける事はベターな選択と言えただろう。
そしてそれがなければ私は誕生しなかった。
やがてハイネッツでデジタルハザードが起き、脱出直前で私が2000年前のジールに召喚されてしまったが、それは別の機会に。
杏子母さんは急いで切り飛ばされた父さんの右足を持ってきて、切断面にくっつける。
勇者一団が、特に天之河光輝がルーチェモンに対して、剣を構え、敵意をむき出しにしているが、はっきり言って叶う相手ではない。いや、デジモンなしで太刀打ちできる相手ではない。
「どうだ?接続できるか?」
「3分は稼いでほしい。いや、八重樫の蘇生と白崎の保護で脳を酷使したから5分」
「わかりました!…優花さん?」
切られた足の接続はミリア母さんの龍の心臓がある父さんだからこそ出来る無茶だ。
再生魔法や変成魔法をまだ会得していない彼等ではそれしか治療の手段がない。
ん?園部優花が何か震えている?
「また、守られた…」
あ、これは…観察の限りでは彼女は責任感が強い性格だ。
杏子母さんと一緒に懇ろな仲になるとは想定していなかったが、あの様子を見る限りでは絆は深いようだ。
必要な時は的確な判断が出来るし、未熟な時代からも、最悪の選択肢はまず選ばないが、根が甘えん坊で、背負い込みやすい、コミュ障、世渡り下手な性格から自分を追い詰めて、園部優花の前で弱音を吐いてしまった。それを聞いた園部優花が、父さん達との仲を知りながら割って入った形か。迷宮では殆どが父さんと杏子母さんがまだ経験不足の南雲ハジメと園部優花を導く形で戦っていたはずだ。
過酷な迷宮生活で色々21世紀の倫理観が壊れて開き直ったか。
今後、父さんたちを待つ理不尽な運命と戦うなら、父さんと一緒にいる者は増えた方がいいかもしれないな。
それが友情であれ、愛人のような多妻のような関係であれ。
彼女も魔物の肉を喰ったのなら、寿命は低く見積もっても150年以上は生きるだろう。
彼女から父さんの匂いもする。
そして、父さんと肉体関係があるということは、彼女の中に僅かながら竜の因子が入っている。
彼女の心情ではまた父さんに負担を負わせたことと、奴の能力上仕方ないとはいえ、反応すらできなかった自信に対するふがいなさと、父さんを傷つけた奴への怒り。
そして彼女のパートナーはギルモン。
そこから連想できる答えは…。
「ん?」
「アンタを許さない!!」
「ちょ!?優花!?」
「園部!こんな狭い場所で進化したら!」
八重樫雫が驚き、南雲ハジメが何かを察したように園部優花に呼びかけるがもう遅い。
彼女は感情のままギルモンを巻き込み、紅き破壊竜、メギドラモンに進化する。
『GAAAAAAAAAAAAAAッ!!!!!』
紅き竜、吠える。
「そ、園部さん!?榊原!、お前!園部さんに何をした!?」
ドラゴンの姿になった天之河光輝の場違いな質問に「何言ってんだ?」といいたそうな顔で天之河を見る父さん。
…この様子ではガラテアの報告通り、座学が優秀なタイプで自分の価値観だけで物事を言っているようだ。
まあ、今回の場合は園部優花の進化ルートを開拓(意味深)したのはある意味父さんだが、天之河の言いたいことは違うだろう。
『榊原に酷い目にあわされた園部さんを俺が救う!』とでも思っているのだろう。
彼の魂の動きは自分自身しか見えていない。周りを観察していない。
才能はあるのに…、ヒトのままで神に匹敵するポテンシャルがあるのにもったいない。父さんが普通の人間のままだったら絶対に天之河に勝てないだろうに。
…夢を見るなとは言わないが、現実も見てほしいものである。そして、自分の物差しだけで測らない方がいいぞ、勇者よ。
私は地球で別人になって(変装だが)とある会社の社長をやりながら、父さん達の動きはずっと見守ってきた。
父さんたちは学生と公安が依頼してくる怪異退治に、いずれ来たる侵略者迎撃のための宇宙船建造と、自分たちの修行とやることが山積みすぎて学校で寝てしまう父さんにも落ち度はあるが、それでも相手の気持ちや事情を1パーセントも考えたことはないのだろう。
今は私の影武者が社長代行をしているが。
父さん達が地球に帰れば私が彼等の活動を援助するよう下地を作ってきた。
あと、事が終われば行く当てがなくなった岸辺(ロードナイトモン)も雇うか。
園部優花と融合したメギドラモンは、ルーチェモンに肉薄し、竜というよりは獣のような戦い方で奴を追い詰める。
ルーチェモンの方は防衛戦で手いっぱいのようだが、本人が言ってた通り
一度にX抗体のみならず、様々な要素を入れすぎるからだ。
本来ならメギドラモン1体だけで対抗できるか怪しいほどなのに。
しかし、奴が父さん達の血を使いこなしてしまうと形勢は逆転する。
「ゆ、優花さん!?進示さんみたいにデジヴァイスを使わずに!?ですぅ!」
「俺たちも進化すべきなんだろうが、こんな場所じゃ崩落の危険がある!」
そう、南雲ハジメの指摘通り、ここはオルクス大迷宮、表の90階層。
究極体デジモンの技など崩落の危険がある。
マスティモンを出す選択肢もあるがそれはまだ避けたい。
ガンクゥモンは父さんのスマホにいる。
そして、ロイヤルナイツの亜種たる私のもう1体のパートナーは現在別行動中。
【9番目】もまだ出すべきではないし、ティオ・クラルスがいる以上、火種に爆弾を入れるようなものだ。いずれ機を見てミレディ・ライセン共々邂逅の場を設けるべきか。
だが、この大迷宮にアレーティアが封印される前より作って設置してきた【サーバー】が壊れれば、父さんのパートナー以外のデジモンがトータスで活動できなくなってしまう。最悪、データロストの危険がある。
父さんのパートナーは父さんと魂が繋がっている故に通信ネットワークがない世界でも活動できるし、半人間半デジモンの私はどんな環境でも活動できるが、一般のデジモンはそうはいかない。
八重樫雫、白崎香織は初めての究極体進化で疲労がある。
永山、遠藤はまだきっかけがない。それ以前に疲労困憊。
南雲ハジメ、ユエは進示やクラスメイト達を守るような立ち位置に、進化は先も言った通り、崩落の危険がある。
シア・ハウリアは動かない?…伏兵を警戒しているのか。それとも未来視で何かを見たか。
で、あれば私は魔力を振り絞り、迷宮の補強をを行う。
メギドラモンとルーチェモンが暴れてもしばらくは持つだろう。
巨大な紅き竜に変貌した優花を父さんのクラスメイトの大半が恐怖の眼差しで見ている。
「優花!止まれ!!俺は大丈夫だ!!」と、声をかけているが、頭に血が上っている優花に対しあまり効き目がない。
暴れてるメギドラモンが口を大きく開けて息を吸い込んだ。
「まずい!!みんな!耳をふさげ!!」
杏子母さんの言う通りに耳を塞ぐものが大半だが一部は間に合わなかったようで、空間をも揺るがす地獄の咆哮が放たれた。
【ヘル・ハウリング】だ
『 ッ!!!!!!』
もはや言葉では表現できない衝撃波が直接向けられていない者たちの耳を劈く。
「ぐうううう…!!人間の小娘が…!デジモンと一体化したところで…!ぞ、臓物がかき乱されるようだ!」
ルーチェモンが忌々しく叫ぶ。だが、ルーチェモンも今の自分では優花に理性が戻れば危ういことは理解しているだろう。奴はかなり見栄っ張りだが、余裕がなくなり、メギドラモンの攻撃を統べてさばききれないのか、体に無数の傷を作っている。
ただ、南雲ハジメ達も今迂闊に踏み込めば、メギドラモンの攻撃の巻き添えを食うとわかっているので、様子を見るしかない。
…私のパートナーは元々七体いた。
この1000年の間で内、既に4体が脱落したが、うち1体は死してなお私の力になり続けている。
であれば
私はティオ・クラルスに向き直る。
「ティオ・クラルス…」
「わ、妾を知っておるのか?」
「お師匠様…いえ、ゼロ」
「!?」
私たちの関係はある程度聞いていると思うが、改めて口に出されるとやはり驚くか。
「園部優花の肉体と、精神の負荷を考慮しても時間がない。ルーチェモンのX抗体はまだ馴染んでいない。お前が父さん…榊原進示と心を通わせれば、アルファモンをさらに高みへ登らせる。その原型とも言える竜を武器化したのがコレだ」
私は王竜剣を実体化させる。
それを見たアルファモンとオウリュウモンの関係を知る面々は驚く。
そしてリュウダモンは何かを感じいるように王竜剣を見つめる。
そして、榊原進示に対する父さん発言で回りがざわつくが構っていられない。
「お前、パートナーにオウリュウモンがいたのか!」
「死ぬ直前で剣にしましたが…、まあ、アルファモンの娘である私ならこの剣を使えない道理はありません」
その様子を見ていたティオは何かを決心したように頷く。
「榊原進示…いや、ご主人様。先の攻撃から優花のみならず、妾や他の者まで守ったその行動、その心。改めて惚れ直した。そして同時に妾の天職が守護者であるのに、守るどころか守られて…感謝と歓喜と不甲斐なさと怒りと悲しみと後悔が同時に押し寄せてきておる」
「…ティオ」
「改めて妾の伴侶はお主しかおらん。初めて妾の暴走を止めた時から感じ入ってはいたがな?ミリア先生…500年前に貴女の言ってたことは間違っておらなんだ」
話を振られたミリア母さんは。
「あはは、まだ確定した未来じゃなかったけど、私も進示のために進示が生まれる前からあれこれ準備していましたので。意図してなかったとはいえ、私が歴史を変えちゃったようなもんですね。でも、私はティオなら歓迎しますよ!」
「人生モテ期到来だな、進示。だがまあ、こうなる気はしてた。ハーレムの理想より人間関係のリスクを嫌っている進示だが、ティオならそう悪いことにはならんだろう。それに、ミリアだけでなく、他の人間も頼ることをさせたくてオウリュウモンの枠をティオに譲ったのだろう?ミリア。歓迎しますよ!じゃなくて決定事項じゃないか。お膳立てをしたんだな」
ミリア母さんは未来視はできないはずだが、こうなることを予想してたのだろう。
杏子母さんは元がデジモンだからか、それとも人間界とデジタルワールド双方で揉まれてるからか、ハーレムは特に気にしていないようだ。…もう一人の杏子母さんは未知数だが。
いまだに足がくっつききらない父さんはティオをまっすぐ見つめ、
「ティオ、これから先、俺たちと一緒に人生を共にするなら安穏とした人生を送れる可能性は低い。今の優花みたいに怒りや悲しみに飲まれる可能性もある。俺は安穏としたいけど」
「なら、妾がご主人様の…心のよりどころは先生がおるし…」
ティオは戦闘を続けている園部優花とルーチェモンを見る。
見ればメギドラモンを見ると、爪や牙、尻尾で襲い続け、距離を話すと【メギドフレイム】でルーチェモンを攻撃し続ける。
いまだ理性が戻る兆しはない。
そのおかげでバリアを張っていても、迷宮はすさまじい揺れを起こし続けている。
ルーチェモンもこちら側に優花の攻撃が当たるように同士討ちを仕向けようとしているようだが、それもできない様だ。こちらに攻撃は飛んでこない。
ただ、私のバリアが切れて崩落を起こしたらまずい。
地震というか揺れに慣れていないこの世界の住人は時折バランスを崩している。
「ええい!攻撃はワンパターンなのに勢いが強すぎる!今の僕では、攻勢に移れない!だが、このまま奴のエネルギー切れを待てば…それに、他の連中は崩落を恐れて進化をしない!自分達は平気でもそこの人間たちまでは助からないからな!」
「ふむ…あれではマズいのぉ。それに、勇者も恐怖に足が震えているようじゃし」
それは勇者だけではないのだが、根拠の無い自信にあふれていた天之河の足が震えていて動けないようだ。呼吸も荒い。
「は、はあ…、な、何故だ!なぜ足が動かない…!?」
先ほどまでの戦闘の疲労もあるだろうが、動けないほどではないはずだ。
だが、デジモンの究極体同士の戦闘を目の当たりにして【恐怖】を感じたようだ。
八重樫雫と白崎香織の戦闘はモニター越しでしかなかったしな。
そう言えば桧山大輔の股座が濡れているようだが、自分自身に対して話しかけているような…いや、あれは桧山大輔の中に何かいる!?
そして中村恵理は、デジヴァイス…【裏で密約を結んでいる相手】から彼女もテイマーだと報告は受けているが、ロードナイトモンを呼び出すつもりか。さすがに自分がテイマーだと隠しておくのも限界か。
そういえば5年前の父さんも魔王アルカディアにアルファモンや自分の力で全く歯が立たなかったのを感じてヒトやデジモンを超えた領域に踏み込もうと決意したのも【どうあがいても歯が立たない圧倒的な力】を目の当たりにしたからだったか。
まだ肉体をデジモンにしてないミリア母さんとアルカディアの戦闘は宇宙空間で行われ、その衝撃波は必殺技ではない普通の殴り合いで周辺惑星を揺らすほどだったからな。
ミリア母さんの弱体化ぶりがわかる。
アレに対抗するには人とデジモンがともに魂の絆を深めた先にある領域にたどり着く必要がある。
と、アルカディアのことはひとまず置いておこう。
「これは竜人族の誇りじゃが…竜人の種族ならずとも、どの種族も共通かもしれんの」
そういうと、ティオは、まっすぐ父さんを見つめ、荘厳な目で
その風格は女の私ですら見ほれるほどだ。
実際、この状況なのに女子生徒の数人もティオに見惚れている。
そうしている間にも優花はメギドラモンの爪、牙、尻尾で、引き裂き、噛みつき、引き裂き、叩きつけようとするが、理性をなくして攻撃が読みやすいのか、
「我等、己の存する意味を知らず」
その言葉は、ティオにとって己の人生に対する命題だろう。
「この身は獣か、あるいは人か。世界の全てに意味あるものとするならば、その答えは何処に」
「ティオ…それは500年前にも」
ミリアが驚きに目を見開く。
「答えなく幾星霜。なればこそ、人か獣か、我等は決意もて魂を掲げる」
「竜の眼は一路の真実を見抜き、欺瞞と猜疑を打ち破る」
「竜の爪は鉄の城壁を切り裂き、巣食う悪意を打ち砕く」
「竜の牙は己の弱さを噛み砕き、憎悪と憤怒を押し流す」
「仁、失いし時、我等はただの獣なり」
父さんはここまで聞いて園部優花の方を見やった。
今の園部優花の戦い方は竜ではなく獣に近い。
「されど、理性の剣を振るい続ける限り――」
そこまで言ってティオは暴走しながらルーチェモンに攻撃し続けている優花ーメギドラモンに視線をやり、
「――我等は竜人であるッ!!!!!」
「「!?」」
「と、止まった…?」
ルーチェモンもメギドラモンもお互いダメージを受けてボロボロの状態だ。
メギドラモンとテイマー歴の浅い優花のレベルを考慮してもX抗体のルーチェモンにかなうとは考えづらかったが、やはりX抗体をはじめ、色々馴染んでいなかったのだろう。
ルーチェモンは本調子とは言いづらかった。
「優花、デジモンとは意志の強さに大きく影響を受けるようじゃが、それではただの獣じゃ。まあ、愛しい男が傷ついて怒る気持ちはわかるが、それでは破壊しか生まん」
「「ティオ…」」
「守るつもりがあるのなら、怒りのみならず、冷静に視野を広げよ。ご主人様は逆に冷静すぎるところがあるか、負の感情を表に出さなすぎる」
「ティオ…」
「ならば、守護者たる妾がお主たちの心も体も仲間も守って見せよう。前だけじゃなく後ろも見んか」
その言葉に目の色に理性の光が戻る優花。
南雲ハジメは「か、かっけぇ…」といい、ユエは頬を赤く染めている。ほかの面々も似たり寄ったりだ。
「だが、いいのか?お前は自分の正体を隠して調査に赴いたはずだ」
「遅かれ早かれバレるとは思うておった。だから罪悪感など持たんでよい」
父さんはティオの本来の目的について言及しますが、それでどうにかなるほどティオの器は小さくはないようだ。
「「ごめんなさい」」
「よいのじゃ。お主はちと真面目過ぎる。が、その背中は妾が守るから安心して力を抜くがよい」
「「ありがとう…今の言葉、竜人族でもない私の心にも響いたわ」」
優花たちはエネルギー切れなのか、パートナーと分離する。
もうメギドラモンになっても暴走する心配はないだろう。…父さんにもしものことがあればわからないが。
…私、いつの間にか園部優花を優花とだけ呼ぶようになったが、父さんがその気なら彼女も私の義母になってもらってもいいかもしれんな。彼女の指の指輪を見る限り【そういうこと】なのだろう。
「優花、暴走したとはいえよう頑張った。…妾もデジヴァイスを使わず融合できそうじゃ」
「ああ、私とティオなら可能だ!」
そういうとティオはリュウダモンと融合し、便宜上はソウルマトリクスと呼ぶ融合状態になり、オウリュウモンとなる。
本来の彼女とはかけ離れた黄金の鎧竜だが、不思議と違和感はない。
「うそ…ティオもデジヴァイスを使わずに…!?」
「「ふむ、これがデジモンとの融合か、コミュニケーションは取ってた故、融合自体はそう難しくなかったぞ」」
…簡単言うが、それは高等技術だぞ?
しかし、それが出来ているなら【その先】も視得ている筈。
優花はメギドラモンの精神制御からだ。
「人間とデジモンの魂をデジヴァイスを使わず直接融合だと!?…どうやらこの場は退散するしかなさそうだ」
ルーチェモン、逃げる気か?
まだ移植した力が馴染んでいないうえに優花とメギドラモンから受けたダメージが大きいのか、息切れしている。
それにこの場で逃がして力が馴染めばメギドラモンやアルファモン、他の究極体も何体かいるが、それらの戦力でルーチェモンを撃破することは難しくなる。
オウリュウモンも、ティオの竜の姿より若干小さめだが、狭い洞窟の中では行動が制限される。
…しかたない、体の大きさが人間と大差がないマスティモンで…
「あら、ずいぶん変わった融合方法なのね。お姉さん感心しちゃったぁ」
…この猫撫で声は。
緑色の髪に現在はメイド服ではなく、ビジネススーツを着こなした装い。
ハイリヒ王国ではいつの間にか紛れ込んでメイドになってたベリキシエこと岸部リエ。思い切りアナグラムだな。
「恵理ちゃん、危なくなったら私に気を使わないでもっと早く呼び出しなさい?」
「ぎりぎりまで正体隠す気だったんでしょ?」
「…え、エリリン…?」
「お友達は驚いているようだけどいいのかしら?」
「気に食わないけどある意味僕に一番向き合ったのが鈴なんだよね」
「そう」
そういうと岸部は正体を現す。
細身の体にピンク色の体、右腕のパイルバンカー。
全てのナイトモンを統べる王であり、ロイヤルナイツでも数少ないウイルス種。
神代悟を殺害した張本人であり、人類を滅ぼす計画に加担し、人間社会に人間として紛れ込んだ薔薇の騎士。
彼女はチラリと杏子母さんを見やる。
杏子母さんが探偵の目をしていることで、記憶が戻ったことを悟ったらしい。
「今の私は中村恵理のパートナー、人間に加担するなど業腹だが、人間どもの行く末を見定めるため、今一度戦おう。ロイヤルナイツの薔薇の騎士、このロードナイトモンがぁっ!!!!!」
「次から次へと…!」
いつの間にか持っていた薔薇を投げ、戦闘態勢に入っていたオウリュウモンを置き去りにし、ルーチェモンに突っ込んでいった。
アルフォースブイドラモンやスレイプモンに劣るとはいえ、ロードナイトモンもなかなかに速いのだ。
オウリュウモンも一瞬だがロードナイトモンを見失ったようである。
しかし
「ところで、お仲間の兎人族は探さなくていいのかな?」
「…シアッ!?」
いつの間にか、シア・ハウリアとパタモンがいなくなっていた。
私はふと、自分の亜空間倉庫の中身の違和感を感じていた。
治療中の【9番目】がいなくなってる!?
第3視点
とある男がルーチェモンから遠ざかり、1人の兎人族、シアとパタモンを抱えて飛んでいる。
ルーチェモンが逃走する時間を稼ぐためだ。
ルーチェモンは7大魔王デジモンクラスの力を持つこの男にやる気がないのはわかっているため、時間稼ぎだけでいいとは言っていた。
バグウサギなどと呼ばれ始めるシアコンビを一撃で昏倒させ、他の連中に気づかれることなく運び去っている。
ロイヤルナイツに匹敵するオリジナルの自己進化をしたとはいえ、まだ経験の浅い奴をこうして拉致するのは男にとっては簡単だった。
だが、その男の前に立ちふさがる影が一つ
「…追手か?めんどくさいね。それとも姉妹の敵を討つのかな?人形の君が情を持つとは意外だ」
「…ノイントと申します。あなたをここで倒します」
「傷が癒え切ってないその体で?万全の状態でも僕に叶わないのに?」
「…私一人であなたを討つつもりでしたが、予想外の来客です」
「?」
ノイントの視線の先を見る男、
そこには
「そんなに急いでどこへ行くのですか?」
青い体に赤い翼、V字型のアーマーを装着するその姿は。
「アルフォースブイドラモン…言葉遣いに違和感はあるけど、憑依した人間の体の影響だな?」
「知っているとは光栄ですね。その兎人族とパタモンを置いていきなさい」
一方そのころ。
日本某所ではあちら側の通信がないとはいえ、進示が持ってる端末から音声はどうにか拾えていた。
映像は来ないが。
「雫…よかった」
「雫…すまなかった」
どうやら(孫)娘が死んでいたことや生き返ったこと、彼女の隠した本音に気づけなかった不甲斐なさなどがあるのだろう。
一件落着かと思った次の瞬間、ルーチェモンが現れたりと再び緊張が走る、親御さんたち。
スピーカーから聞こえるゼロの声に既視感を覚えたあるクラスメイトの父親は
「あれ?この女性の声…家の取引先の社長の声だと思うのですが…ゼロさんと呼ばれている方だと思いますが」
「「「「「「……え!?」」」」」」
榊原進示の娘のゼロ、日本に潜伏していた模様。
後書き
ゼロの優花から感じた匂い。あと、ひそかに思った(意味深)
間接的ではあるが、エッチ魔女のミリアの娘である。自重できるだけで、ゼロも結構えっちぃネタには敏感。
進示。
ルーチェモンの初見殺しを防いだが足を切断され戦闘不能。
人外であるために、接続可能。
くっつき回復までそんなにかからないが、ルーチェモンとは戦えない。
せめて自分の力無しで杏子がアルファモンに戻れる方法がないか模索する。
ミリア、今のところ進化できる究極体はドルゴラモンのみ。迷宮の狭さでは崩落の危険を考慮し、進化していない。
かといってグレイドモンではさすがにパワーが足りない。
ドルグレモンはサイズの問題で動きにくい。
進示にデジモンのサイズを変更する方法を提案しているがまだ形にならず。
シアが動いていない?
詳細は次回にて
ハジメとユエ、ひと先ず様子見。伏兵の可能性も考慮し、優花の戦いを見つつ周囲を警戒ってシアがいねぇ!?
>ゼロが進示達の動向を把握し過ぎている。
惑星の魂に直接アクセスし、情報を閲覧できる。未来の情報は見られない。
鍛えれば進示もできるようになるが、進示はまだそのレベルじゃない。
また、魔法能力を失う前のミリアも出来ていた。
あとは本編の通り、トータスでエヒトの目を掻い潜って、デジモンが活動できる基盤を作り上げた。
デジヴァイスを使わずパートナーと融合。
このSSではこれが出来るようになってようやくスタートライン。
究極体になれる程度では雑兵扱いになってしまう災害がいるため、非常に難易度が高い世界になってしまった。
この時点で原作魔王様を超える強さを持つ進示ですらまだ赤子扱い。現実は非情。
天之河が生まれて初めて恐怖を感じた。
ご都合主義は原作とほぼ変わらないが、目を背けられない恐怖を目の当たりにした。
これがどう響くか。
桧山の中に何かいる。
これが面倒な事態を引き起こす。
中村恵理とロードナイトモン。
自信を偽ったり、原作では目的のために人類を滅ぼそうとしたり、実は結構共通点が多い。
ロードナイトモンの中の人はサイバースルゥースで女性声優に変更されたが、中の人の熱演もあって見事なハマり役だった。
鈴
恵理がデジモンテイマーということも岸部がデジモンであることも知らなかった。
岸部とは面識がある。
常時スーパーティオさん。
惚れた男とその伴侶、仲間を全員護る宣言。
これで暴走が止まった優花も内心ティオを受け入れた。
これに男女問わず惚れる者多数。ハジメも「かっけぇ」と呟くこと。
進示はご主人様呼ばわりはよしてくれと言ったが、もうどうでもいいやと思っている。本人の覚悟が本物なんだから。
「前だけじゃなく後ろも視ろ」奇しくも原作ハジメと同じことを言ってる。
原作ハジメがコレを見たらなんて思うだろうか。
正体隠すことより、惚れた男の伴侶を守る行動をした。器が大きい。
また、ソウルマトリクスを一発成功。原作で精神力チートと言われるだけはある。
とあるクラスメイトの父親の社長。
小説版にてある女性生徒が社長令嬢ということが発覚した。
ゼロについては最初からこの設定だったが、クラスメイトに社長令嬢がいたため、急遽ぶっ込んだ。