デジモンと命を共有する転生者   作:銀の弓/星の弓

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まえがき

おまけの方は未来のアフターのような一幕です。見方にってはユエとシアにアンチと言われるかもしれませんが、更生はしますので。(公安が原作アフターよりもそれなりに力を持ってる事による差ですね)

あと、お気に入りが170件超えました。
登録してくださった皆様、ありがとうございます。

痔ネタに関しては作者の経験談ですが、早期発見早期治療ができれば入院しなくても済む場合が多いので放置しないようにしましょう。


進示「それじゃあ、みんな。続きを流すぞ。かなり胸糞悪い話があると思うが、既に終わったことだ。暴れないでくれよ?」
ミリア「あの国本当に酷いですからね。イシュタル・ランゴバルドより酷いです」
ハジメ「そんなにか?」
ユエ「…気になるけど、視ればわかる」
ノイント「…(思うところはある模様)」


ジール編第5話 何をしようと必ず何かは弊害が出るが、何もしなければさらに面倒が増える

進示視点

 

夢を…見ている。

 

高校生くらいの俺と杏子?

街が…ボロボロだ。どこの世紀末だ!

空も赤いし、人の死体が野ざらしだし!しかも日本でだぞ!?

 

空も…随分濁った青色だ…。

…関原達の死体も野ざらし…!?

まるで地球の終焉のようじゃないか!?

 

『杏子…ついに俺たち以外生き残りがいなくなったな』

『うん…、もう地球の復興は出来ないよね?』

『樹も死ぬ直前に何かメッセージを送信したらしいが』

『もう、この宇宙は制圧されちゃうね…兵力の差が大きすぎる』

『アルファモンがそれなりに強い戦士扱いにしかならない核も効かない…俺たちの遺伝子を鹵獲されちまったしな。それに、あの人工デジモン…アルファモンじゃ倒せて5~6体程度だろう。ギリシャ神話みたいな見た目してるけど、デジタルワールド・イリアスのサーバーがあるんじゃあるまいな?』

『向こうに居た時はそこまで調べる時間なかったもんね』

『くやしいが、ハジ■も他の皆も死んじまった…地球上で生きてるのはせいぜい2000人程度だが、それらが潰されるのも時間の問題だ。世界中の軍も全滅してるし、トータスや他の世界への転移も出来ないように念入りに障壁を張ってやがる。何が何でも逃がさないつもりだ』

 

これは…未来…いや、()()()()()()()なのか…。

確証はないし、直感だが…そんな気がする。

…ハジ■って誰だ!?聞き取れねぇ!?

 

そうしてる間にも夢の中の俺達は文字通り、決死の覚悟を抱いたようだ。

 

…やめてくれ…

 

『行くも死ぬ。逃げても死ぬ…なら前のめりだ』

『やるだけやろう…』

『『ソウルマトリクス!』』

 

ちょ!?ソウルマトリクスってなんだ!?

どんなデジモンに進化した!?

 

形状はぼやけていてわからねぇ…だが、白いアルファモンに見える…!?

いや…あれは〇〇〇モンの羽と腕!?

どんな状態だ!?かといって〇〇〇モンじゃない…。

 

 

『私たちは諦めない!』

 

魂は永遠に!!!(何が何でも生き残る)

 

何だ…、その詠唱、その信念…!?

…場面が飛び飛びだ。

 

 

そうして夢の中の俺たちは戦い…そして、立ったまま死んだ。

 

 

『間に合わなかったか…障壁を解除するのに手間取ってしまった。力ずくで破壊しては、地球人たちが爆発に巻き込まれるからな』

 

そこに現れるのは金髪赤目の天使。

 

翼が四枚あるということは大天使か

 

俺に死体をお姫様抱っこ、杏子の死体を背負う。

 

『お前の魂は一度天界に連れ帰り癒す。本来生きるべき人間が既に何人も死亡しているもう、この宇宙の崩壊は避けられない。また世界を138億年…更新しお前たちの誕生を待とう…いや、待て!?榊原進示の魂がない!?』

 

天使は驚いているようだが、死んだら魂は消えるんじゃないのか?

 

『…これはただの転生ではないな…。どの道、地球は放棄して身を隠すしかないだろう。天界も既に7割が機能停止。身を隠し、レジスタンスを結成するしかあるまい。…それでもダメなら138億年、再びこの時間が訪れるのを待つしかない…後者の方が可能性は高そうだが…人間も神も役所の腰が重すぎるのは変わらんのか…。おかげで初動を許し、被害が広がり切ってからの出動要請。…しかしあまりに手際が良すぎる』

 

そして、赤い目の大天使は金色の髪の毛を靡かせ、灰色となった空を見上げる。

 

『で、あれば黒幕は神の世界の身内だろう。そうでなければ私が間に合っている。それに、私に見つかる前に急いで撤収したおかげで痕跡を隠しきれてないな。このエネルギーを照合して…初代最高創造神、クラフトを暗殺した奴と同一犯か』

 

その大天使はエネルギーの痕跡とやらを回収し、空を見上げる。

 

『榊原進示、暮海杏子。この絶望的な戦力差で、土壇場で力を目覚めさせ、せいぜい5体倒せれば良い方の人工デジモンを200体狩り、連中を一時撤退に追い込んだだけでも大したものだが、命を燃やし尽くしてしまったか。…連中が戻ってくる前に天界に退避するか…、この世界はどのみちエネルギーとして世界ごと回収されるだろう。この戦争は間違いなく神が人間に入れ知恵をしているな。であれば、この我々もある程度は遠慮する必要もあるまい。…お前達が生まれ変わったら…そうだな、私がトレードとともに守護したほうがいいな。転生を担当する女神は動かせないしな』

 

そういうと天使は既に息絶えた俺の唇に自らの唇を重ねる。え、え!?

 

『榊原進示。記憶は引き継げないだろうが、私と次の因果は確かに結んだ。あるいは、この出来事を何らかの形で138億年後の未来に送信できれば対抗策はあると思うが…さて、あと何週するのやら』

 

そう言いながら俺をお姫様抱っこで抱え、杏子をおぶった大天使は地球から消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!はあっ!うろろろろろろろ…」

「進示!?大丈夫!?」

 

起きて早々、四人で包まって寝ていた俺が唐突に起きだして近場の草陰で、吐瀉物を吐きまくっている。ただでさえ、苦しいのに、吐いてしまうなど栄養を無駄にするようなものだが、それでも吐かずにはいられない。

 

「ち、畜生…」

「進示、おかゆを作りますね。野菜もくたくたに煮た方がいいでしょう」

「どうしよう…私王女だし、お料理したことないわ。ガラテアなら料理できるんだけど」

「さっき人を殺したことについてなら、【手段を選ぶな】と言ったのは私です。進示が気に病まないでください」

「それもあるけど、はっきりと夢の内容は覚えてないけど…高校生くらいの俺と杏子が、人類ほとんど皆殺しにされて滅ぼされた地球で…最後の一人になるまで戦って…みんな…みんな…樹も死んじまう夢だったんだ…。多分、映像が飛び飛びで継ぎ接ぎだらけだったけど。それは分かる」

 

それを聞いてミリアとフェーは顔を見合わせた。

 

(どう思う?)

(私が受け取った情報とあなたの千里眼で視た光景と符合する部分があります…が、進示がこの精神状態では迂闊な言動は慎むべきでしょう…)

 

二人が何か小声で相談してたようだが、はっきりとは聞き取れない。

 

「俺と杏子の死体を背負ったのは金髪のストレートなロングヘアーに赤い瞳…、クールビューティーな感じの大天使だ。翼が4枚あったから間違いない」

 

俺の言葉に眼を見開いた二人。心当たりがあるのか。

 

「そうね…もしかしたら未来でその天使様とかかわりが深くなるかもしれないわ。契約外の天使様が自分から因果関係を結ぶなんて相当な事態よ?」

 

過去の記憶にそんな関わりがないと思ったら未来…。

 

 

『ようやく会えたな、だが、今はまだ』

 

…何だ?今の大天使は…俺達を背負ったあの大天使と同一人物のようだが…。

考えても仕方ないか。材料が少ない。

 

 

「ミリア…毒は抗毒剤で済みそうだ…おかゆとしじみ汁を頼む」

「はい、少しお待ちくださいね」

「シジミ汁?」

「肝臓に優しいお吸い物ですよ」

 

そう言うとミリアは手際よく料理を完成させた。

…下ネタは多いけど滅茶苦茶頼りになるな…腕っぷしもそうだが、精神的に寄り添う方法を分かっていて…安心できる。

それに、本当に嫌な一線は越えてこない。

 

それもこの女に気を許している要因だった。

 

「はい、召し上がれ。杏子とフェーもどうぞ」

「いただきます!」

「日本じゃこうして手を合わせるのよね?頂きます」

 

フェー…(呼び捨てでいいと言われた)、何でそんな作法知ってるんだ?

 

「私はほぼ何でも見通せる千里眼と言うものを生まれつき持ってるの。過去、現在、未来、異世界…そして並行世界や観測世界も見渡せるほどに」

 

フェーが俺の疑問に答える。

…と言うことは?

 

「!?そ、それって…俺の事も日本の事も知ってる?」

「妹みたいに一度に処理できる情報量こそ多くはないけど、そうね…私の知り合いやミリアのサポートがあれば、情報アドバンテージではほぼ負けないわ」

「…それでさっき野盗に襲われてるのを回避できなかったのか。君一人じゃ扱える情報量に限りがあるから」

「そうね。他に見るべき情報も沢山あったから、お母様の行方も探りたいのだけど…妙にジャミングが酷くて」

 

そう言えば母親がいなくなったと言っていたな。

 

「ジャミング?視えないの?」

「杏子ちゃんの言う通り、視えないのよ…千里眼があるからと言って情報アドで勝てるわけじゃないと痛感したわ…ほぼって言った通り、例外もあるのよ」

 

…そうか。聞いた話じゃエルフの国の王族らしいし、母がいなくなったら一大事だもんな。

 

「少なくともお母様はこの世界にはいない…思えばこの世界にも不自然な事が多いのよ…ミリアの考察が正しければ、この星は天然の惑星ではなく、人工惑星の可能性があるの」

「はあ!?」

「嘘!?」

 

この星そのものが人工物だと!?天然自然は地球の感覚と変わらないぞ!?

 

「前にも話した通り、この惑星は本来地球より文明が進んだ惑星なんです。デジモンがリアライズ出来ていたのもその証左。現在でも多少残っていますが、私の知り合いにこの世界がゴミ捨て場と表現したものがいますが、この世界に本来誕生しないはずの怪物が時々出現するんです。今ではこの世界が創りものだなんて信じる人はほぼ皆無でしょうから、怪物の出現原因を特定するのも困難です」

「この世界の今の文明は中世ヨーロッパ…大陸によっては産業革命初期だと言ってたな」

「はい」

 

「その文明レベルじゃ天体の知識は乏しいから…宇宙に文句を言う事も出来ない…ゴミ捨て場…もしかして、他の世界や惑星から怪物を不法投棄されてる?」

「恐らくは」

 

マジかよ…これはあまりにもスケールが大きい話だ。

異世界ジールの問題だけではなく、宇宙全ての問題として対応しなければならない案件になってしまう。

そして、俺達が拉致された以上、地球から他の人間が拉致される可能性があるという事。

 

まあ、天体知識はあったとしても、それを知ってる学者は…いるかなぁ。いたとしても探す時間なさそう。

 

「この世界は異世界召喚を濫用しすぎたせいで本来召喚は出来ないはずなんだけど、貴方たちは召喚されてしまった…この原因は…私にはわからないわ」

 

…なにか不自然な間があった気がするが…聞いてもはぐらかされるだろう。

物事には順序がある…。なんとなくそう感じた。

 

「…聞けば、それに答えてくれるか?」

「…ごめんなさい…確証はないの。…それに、私の気持ち的に当たってほしくない推理なの」

「…そうか」

 

当たってほしくない推理程向き合わねばならぬこともあるが、今は置いておくしかないか。

それに、俺に回る毒もミリアがケアしてくれるとは言え、完璧ではないのだ。

 

「あまり無理に頭を使わないでください。本来療養が必要なあなたに流浪の旅をさせなければならないのは気の毒ですが、地球に転移させるのも一回きりしかできないので失敗は出来ません。万全の態勢で臨みたいのです」

 

本当はすぐにでも帰りたいが、失敗できない以上、どこともわからに世界に放り出されたくはない。

 

「それと、貴方たちがホープ王国で召喚された様子もこの眼で視ていたけど、あのまま国についていても、死ぬだけだったわ…貴方は死を偽装して逃げるという選択肢を取ったけど、それで正解よ。…と、いうよりそれしか生存の道はないって言った方が正しいかしら?あの王様は進示君を爆弾として使うつもりだったみたいだし」

「!?ゲホッ!ゲホッ!」

 

驚きのあまり、喀血してしまう。十二指腸からも血が出てないかこれ!?

ケツの穴からも血が出てきてる。

ミリアはそれを魔法で除去する。

服についた血も消えたな。

 

「フェー!?」

「ご、ごめんなさい…」

 

ミリアはフェーを嗜める。

 

「気づいていなかったでしょうけど、爆弾は既にミリアが取り除いたみたいね。まあ、爆弾と言っても魂に紐づいたものだけど」

「アレか?いざと言うときは俺についた爆弾でアルカディアを倒すつもりだったのか?」

「あれ?でもアルカディアには神や転生者の攻撃は効かないっていってなかった?」

「杏子の言う通りですが、あの国の人間はそんな事情知りませんし、知ったとしても一蹴されるか発狂されて首を刎ねられるかですね」

 

まあ、王女とかは申し訳なさそうにしていたが、あの国王に異議を唱えられるだけのバックボーンなり意思があるようには見えなかったし。

 

「それに、貴方には転生者殺しの毒にこの世界にいる限り侵され続ける。ミリアと出会ってなければどの道死ぬわ。つまり」

「…どっちみち逃げるしかなかったって事か」

 

転生者殺しの毒の浄化する術法は神でも使い手が少ないと聞く。

 

…すげぇ綱渡りだな、今の状況。

 

と、そこまで話して、食事が止まってることに気づき、シジミ汁を飲む。…まだ暖かいな。

 

「あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝…シジミ汁が五臓六腑に染み渡る~」

「進示、ジジ臭いよ」

「中身おっさんですし、あながち間違いないのでは?」

「これ、飲むとちょっと体が楽になるな」

「私の術ほどではありませんが、解毒作用の薬草も入っています」

「そうか。そんなに苦くないな、ホウレン草のような感覚で食えるな」

「美味しいね」

 

フェーも日本食を食べるのは初めてなのか、時々頷いている。

如何やら美味しいらしい。

 

「そうだ、進示君。こっからエルフの国までは遠いし、暫く一緒に居てもいいかしら?」

 

彼女の申し出に答えたのはミリアだった。

 

「まあ、エルフの国までは遠いですが、道中寄るつもりだし構いませんが…そう言えば何でこんなところに?空間転移の事故に巻き込まれたんですか?」

「実はそうなの…同胞のエルフが異界から別の世界に転移される未来を視たんだけど、それも絶対ってわけじゃない。調査中に空間転移のゲートが突如発生して、この周辺に落ちて、後は野盗に襲われて…そこから先は言わなくてもわかるわね?」

 

それを聞いた俺は、こっちを殺そうとしてきたやつとは言え、殺してしまった事に罪悪感を抱き、吐きそうになるが、今度は堪える。

 

「そうだな。間に合ってよかった」

「ふふ。ちょっと重いものを背負わせてしまったけど、私だって聖女じゃないわ。私を助けてくれてありがとう、小さな王子様…中身は小さくないけど、あの瞬間はそう思えた」

「フェーさん…」

「呼び捨てで良いって言ったでしょう。でも、貴方の中にあるどれだけ悪人でも殺したくない気持ちもわかるけど、時としてそれが必要になる場合もある。でも、貴方の気持ちも大切にしてほしい。矛盾するようだけどね。迷ってもいいから自分なりに考えて自分の心を決めてね?」

「…」

 

矛盾か…あ、やべ、お腹痛い。

俺はミリアに目配せする。

 

「杏子ちゃんも。今はカルガモの雛みたいに進示君にくっついてるけど、記憶を無くしていない貴女は自分の判断で動ける。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()今は仕方ないけど、進示君と一緒に居たいなら、自分の考えを出来るだけ持つようにしてね?全部進示君に任せるのは結構負担だし、それに…」

 

そこまで言ってフェーは俺を見る。

 

胃や腸からも血が出てたので、ミリアに魔法かけてもらうついでにお腹をマッサージしてもらってる。

この世界、少なくともこの大陸には点滴無いんだよなぁ。

それも考慮したうえでおかゆなのだろうが、美味しく食べれる。

とにかく点滴がないから食べるしか栄養摂取が出来ない。

 

「彼、今あんな状態だから、今の進示君の状態、普通の人間なら死んでもおかしくないのよ」

「進示…うん!何が正しいのかよくわからないし、進示や樹と一緒ならそれでいいと思ってたけど、そればっかじゃ駄目だよね」

「…平和に暮らすんなら一緒にいるだけでもいいかもしれないが、今はこんな状況だからな…生きるか死ぬかの世界で俺達側の常識が通用せず、地球の法や条約もないし、認知もしてないこの世界で地球の道徳や倫理観も持ってこれねぇし、通用するのは少数だろう。だが…殺しに慣れてしまうとむしろ帰れた時日常に支障が出る」

「難しいね…」

 

そもそも俺を爆弾として使おうとして召喚し、杏子を王子たちの性欲処理係に利用しようとした時点であの国に未練はない。

よくよく話を聞くと長い歴史を持ち、大体力業や略奪、圧迫外交で何とかなってしまったせいで、驕るようになったとか。

さらに異世界召還を濫用したのは、異世界な拉致被害者を取り返しにこないし、抗議も飛んでこないから面倒がなくていいのだそうだ。クソが。

加えて、良心的な妃や第一王女が諫めようとも効き目は無し。

 

国王の妾にもまともなのが何人かいたが、残りは上手いこと利用できないか、目障りだの異邦の蛮族だのという輩が多く、陰口もフェーが千里眼で【視て】いたようだ。

 

因みに、俺が病弱何なのを隠して部屋やトイレで咳き込んでいたところも視ていたらしい。

あの頃から世界中に蔓延してる転生者殺しの毒に蝕まれていたんだな。

 

ミリアのケアで少し楽になったので、食事を再開する。

現状ミリアの手持ちの食材から言って節約の必要性は低い。

食べれる時に食べないとな。点滴もないし。

 

尻も今は問題ない。

脱腸しなくてよかった。

 

「とりあえず、夜が明けてきました。時間に余裕があるとは言えないですが、進示がこうまで体調を崩した以上、昼までは寝ましょう。一応万が一の手段は残していますが、出来ればこの世界で力をつけてほしいです」

「そうね。進示君、異世界召喚は今回限りではないし、貴方の想像通り、宇宙規模の戦いになるかもしれない。私の未来視で視た限りでも、これからも貴方に厄介ごとがどんどん降りかかってくるでしょう。それも、放置すれば地球が滅びかねない案件が山ほど」

「うげ…聞きたくなかった」

「ごめんなさいね?でも、言えるうちに伝えたかったから」

「…それはどういう意味だ」

 

俺がフェーを見ると、彼女は悲しそうに目を伏せる。

 

「ごめんなさいね?女の子には秘密があるのよ」

「おい、それ、命に係わる秘密だったら笑えねぇぞ」

「…そうね。でも、大丈夫。子供の貴方に命を賭けさせるほど私も鬼じゃないわ?ただ、貴方もかなり苦労するけど」

「…俺の中身は」

「そうね。でも察してなんて言わないし、本来これは私達の世界の問題。あなたたちの世界は巻き込まれただけで、貴方も杏子ちゃんも巻き込まれただけ。貴方達が優先すべきことは、可能ならこの世界で力をつけ、何よりまず地球に帰る事。この世界の人間を助けようなんて思わなくていいわ。最悪、何が何でも生き延びてこの情報を持ち帰ってほしい。この世界だけじゃなく、宇宙規模で人攫いが起きている情報を。そうすれば貴方のお仲間やデジモン、守護天使様たちも対策を立てられる」

 

…俺も子供じゃない。道徳、倫理上、困っている人たちを助けるのが日本の基礎理念だが、死んだら意味がない(守ってない人間も多いが)。そんなことは分かってる。

死んででも意味を持たせるサムライ精神など持ち合わせていない。

 

「でも、道中貴方達の心が折れるかもしれない。いや、折れないほうが異常とも言える事態が起きる。その時はミリアに当たっていいわ」

「うお!?さりげなくキラーパス!?」

 

フェー…何気にヒドイ事言うな。

 

「ミリア、貴女もそのために準備し続けてきたのでしょう?ドМでショタコンで逆光源氏計画を立ててたな星の駄龍さん?」

「おうふ!?私の性癖まで!?」

 

俺はミリアから少しずつ距離を取る。

 

「ふぇ、フェーは汚部屋でめんどくさがりで!進示の前だからいいカッコしようとしてるだけの駄エルフでしょう!?」

「まあヒドイ。東京に紛れ込んだどこかの漫画のエルフみたいに私もゲームとかしたい!プラモも組み立てたい!お菓子食べたい!この前ガラテアからも【おやつ食べ過ぎです】って注意されて、エルフだからそう滅多なことでは体重は………………増えないでしょう!?」

 

おい、何だその間は。まあ、目視では結構細いけどな。…あれ?ちょっとお目立たないけどお肉が…お腹に…。

…そしてどっかの世界にはそんな漫画あったのか?

千里眼でどんな世界視た?

後ガラテアって誰?

 

「ガラテアは私の妹ね。ちょっと真面目な委員長タイプの性格してるけど、それなりに融通は効くし、進示君好みのエルフよ。あ、むしろお母様の方が進示君好みかしら?」

「おい、何故俺の好みを決めつける」

「進示?」

 

杏子がちょっとむくれてる。

頭を撫でてやるとすぐ機嫌が直った。

フェーの言う通り…これは記憶喪失というよりは生まれ変わり…あるいは別の人格が生えてきた?

そして聞き捨てならない単語が。

 

「お母様って…夫はどうした。お前の父だろう」

「お父様は以前に人間が起こした侵略戦争で亡くなってしまったの。何とか再興しようとしたのだけど、土地に毒を撒かれて一次産業が壊滅的になって…。元の国を捨てて、今しがた言ってた王国に居を移したのだけど、前の国に比べて急造で拵えただけに、結構不便な生活だけど、作物は育つから何とかやっていけてるの」

「そ、そうか…悪いことを聞いた」

 

彼女は笑っているが、そんな悲劇が起きても笑って切り替えないとやっていけないほど過酷なようだな。

 

ん?となると今のエルフは人間不信じゃないのか?

 

「私とミリアが仲介すれば大丈夫よ。ミリアもああ見えて色んな種族にコネがあるし」

「コネは大事ですよ?そして世の中大体根回しが大事なんです。不正行為かと思うかもしれませんが、人間って生き物はどんなに理屈が正しくても、そんな理論やルールだけで動けるのはごくごく一握りです。大体の知的生命体は感情で動きます」

「神様もあんまり変わらないわね、ミリアは混沌属性だもの、法に意味は見出してないわね」

 

…社会の闇だな。

いい人ほど搾取される。

子供にルールは守れとか言っといて自分は守らない。俺もそんな大人になってしまうのか…俺は前世は独身で生涯を終えたから子育ては実感としてわかってない。

 

 

 

「ところで、俺につけられた爆弾ってどれくらいの威力だ?」

「爆弾をつけられたものの魂の強さで威力が変動しますが、貴方が戦士として完成されていれば、七大魔王デジモンを全て消し飛ばしてもおつりが来ます」

「ファッ!?」

 

ビックリしてしまうが、抗毒剤のおかげで出血はしなかった。

 

「そして、一般人に毛が生えた程度の貴方でも…まあ、完全体なら消し飛ぶでしょう。腐っても奴らが秘術にするだけはあります」

「マジか…だとすると、腐った魔法だが、勇者のような連中を呼び出してそいつに爆弾をつければ強力になるから、連中の中では筋が通っているのか。で、異世界に渡る術がない世界から拉致っても反撃が来ないから、奴らからすれば爆弾を補充し放題なのか」

「その通りね。特に王様は異世界は人間が勝手に増えるから召喚で補充すればいいって考え方なのよ。先代の王様…今の王様の父親は人道的観点からそれを禁じ手としたのに、彼が無くなってから今の王様が禁じ手を解禁したのよ」

 

そうか…先代が生きてれば少しはマシだったのか?

 

「ただ、どのみち7世紀も異世界召喚を濫用したので、この世界の召喚が出来なくなってたはずなんです…転生者殺しの毒がある時点で、私と出会わないと、転生者の進示は生存できません」

「…だな」

 

ミリアがいなければ召喚された時点でアウトだったのか。

 

「聞けば聞くほど詰んでるな、この世界」

「【死は救い】という言葉はありますが、他の世界に迷惑をかけまくって拉致元の世界に何も還元していないこの世界が滅ぶのは必定です。仮に救う方法があったとしても、何十、何百年単位で時間をかけて取り組まなければならない問題です。しかし、その前に星の寿命が来てしまいます。寿命は後1年」

「そうなると、1年以内にジールを脱出しないといけないんだね?」

「失敗できない以上パワースポットの最終整備と、エルフの力も借りたいですね。水質調査に来たのもそれが目的ですし」

 

…魔力を集めるためと、座標をずらさないための龍脈整備か…。

 

「それから、この本を見てください」

「写真集…これ、宇宙の星などを色んな位置から撮影している?」

「私の力で何百年もかけて撮影し、データを集めました」

 

この写真の宇宙は…宇宙なんだけど、地球で視れる天体情報とは違和感がある。

 

「…おい、これはまさか」

「地球に戻ったら改めて照合してみてください。…ここは【違う】宇宙なんです」

 

…当たってほしくない推理だった。

 

現行の地球の技術じゃどうやってもこの世界を探し当てて、救助に来るのは無理だ。

 

…大天使であるはずの樹がいつまでたっても来られない要因は別にありそうだが。

 

「…頭が痛い…抗毒剤をもう少しくれ」

 

ミリアから追加の抗毒剤を受け取り、飲む。

如何やら精神的ストレスでも出血するようだ。

 

「進示君。エルフの国に戻るまでは私も同行するわ。千里眼で視てはいたけど、直にお話ししてみたいの。これまであんまり国を出ることはなかったから、肌で感じたり、耳で聞くのも新鮮で!」

 

おいおい、典型的な箱入りお姫様だったのか。

 

…まて、では

 

「ごめんなさいね?お花摘みの様子も視ちゃった。進示君ってお花摘みの時『ふんっ!』ってするのね?ほかにもいろんな癖はありそうだけど、痔になっちゃうわよ?」

「余計なところは視ないでくださいますかねぇ!?それから男はキジ撃ちだ!」

「おお!?ではフェー、進示の自家発電の様子も視てましたか!?」

「ええ、それはもう。好きな女優さんもアニメのキャラも。特に、体型的にはバランスのいい体つきの娘が好みかしら?大きすぎず小さすぎず崩れず?ポニーテールも好みみたいね?好きなシチュエーションは露天混浴かしら?まあ、シチュエーションに関しては結構守備範囲は広いみたいだけど。それから女性が男性を甘やかすあまあm…」

 

王女様の口からさらなるそんな猥談が出るとは思ってなかったため、起動に時間がかかった。

 

 

「おおい!?何人の性癖曝してんだ!?」

 

「進示、自家発電って何?(無垢な好奇心)」

「お前はまだ知らなくていい!?」

「ええーなにそれー!」

 

俺がフェーのほっぺを引っ張り、しゃべるのをやめさせたり、「恥ずかしがることないのに…」とか言いながら俺にほっぺを引っ張られるフェー。…いや、普通にハズいわ!?

ミリアは「おお!?ではどこか温泉を貸し切って混浴4Pでも…」とか言ったので、ベリィ・トゥ・バックで頭を打ち付けて黙らせた。

「おい、何で頭撃ったのに幸せそうなんだ…キモイ…」

「ありがとうございます!」

 

ミリアは倒れながらサムズアップしている。

 

「何で?」

「4Pって何?(無垢な好奇心)」

 

 

 

翌日。

 

起きてエルフの里に向かう道程で何時間歩いただろうか、夕暮れに差し掛かった時、その化け物を見た。

 

「何…コレ」

 

ペストマスクをし、全身が鎖で巻かれた奇妙な化け物がいた。

 

体中から、禍々しいオーラが出ている。大きさは成人女性くらいか。

 

その化け物は、高速移動で俺に近づき、

 

「進示っ!」

 

ミリアが魔法で化け物を迎撃しようとするが。

 

「!」

 

俺はよけられないと判断し、咄嗟にクロスガードをした。

 

俺は鎖の化け物の腕の振り回しを食らい、吹き飛んでしまう。

 

「…ま、魔法が発動しない!?」

 

何だと!?

 

「…ま、まさか…」

 

フェーが何やら震えているが、何だ?

 

「だったら…」

 

ミリアからは、いずれデジヴァイスなしで進化できるように言われているが、今はデジヴァイスに頼るしかない。

 

デジヴァイスにカードを通すが…。

 

「し、進示!進化しない!」

 

これもダメか!?デジヴァイスの画面は…ノイズだと!?

 

「た、大変です!亜空間倉庫も開きません!魔力の発動もデジモンを運用するエネルギーも阻害されます!…身体強化も出来ません!」

「ダメ!メタルキャノンも撃てないよ!」

 

マジか!?能力全部封じられた!?…八方塞がりか…!あのオーラがエネルギーの発動を阻害しているのか…ということは…。

 

「がふっ!!」

 

俺は喀血した。

 

転生者殺しの毒のケアも出来ないということだ。

このメンツに使い手はいないが、恐らくデジソウルもダメだろう。

 

「!」

 

鎖の化け物が腕を下から振り上げるが、俺は後ろに転がり回避する。

 

「これならどうだ!」

 

俺はS&Wをホルスターから抜き、発砲!

 

当たったのは、右足だが、着弾地点から血が噴き出る。ん!?

 

「質量武器は効くのか!?いや、使えるのか!?」

 

「待って!もしかしたらあれは!」

 

フェーが俺達の攻撃に待ったをかけるが、

 

「か、こ、…ころして…」

 

ペストマスクの奥の唇から、殺しを嘆願される。

…何だ!?

 

「ていっ!」

 

杏子のコルトパイソンが、火を噴き、マスクの上部に当たる。

俺と違い、転がりながらの射撃ではなく、しっかり構えたからかマスクがなければヘッドショットだったろう。

 

バキィン!と、マスクがはじけ飛び、その顔を見る。

 

金髪碧眼、フェーが順調に年を取れば、そうなるだろう顔つき、いや、女子大生でも通用しそうだが顔には酷い火傷の跡がある。

 

「お、お母様…!」

「フーディエ…」

 

お母様だと!?

 

じゃあ、拉致されたエルフの中には…。

 

「こ、…ころし…て…!でき…くば…にげ…さい!」

 

そう言いながらも、今度はフェーに向かって高速で接近し、フェーを蹴り上げる。

 

「ぐあ!」

 

あ、フェーの腹部から嫌な音が…アバラが逝ったか!?

フェーが転がった先は崖だ!不味いかも。

魔法が使えない現状では治療が出来ない。

 

だが、言葉と裏腹の行動…彼女は体の制御が効かないのか!?

 

「…ファントムペイン…」

 

 

え!?ソレ、リリスモンの技!?

 

「進示!!」

 

咄嗟にミリアが俺を投げ飛ばし、フェーにぶつける。

 

ぶつけられたフェーは反応が出来ず、俺ごと崖から落ちてしまう。

 

ミリアは、彼女が吐き出した吐息を俺の代わりに受けてしまう。

ファントムペインの呪い受けると体の末端からデータが消失し、死してなお、その痛みに苦しむといわれているが、大丈夫か!?

 

 

「彼女から離れれば魔法が使えます!!体勢を立て直してください!私と杏子は自分で何とかします!!」

 

なるほど、そう言う事ね。

 

抗毒剤もいくつかあるし、暫くはしのげるな。

ただ、抗毒剤は一度にたくさん調合できないらしいので、無駄遣いは出来ない。

 

「よく落ちるな…」

 

突然、抱きしめられる感覚がして顔を向けると、アバラが折れて痛いはずのフェーが俺を抱きしめていると分かった。

 

「大丈夫、エルフは人間より頑丈よ。能力が使えなくてもね」

 

そうして俺とフェーは川に落ちた。

 

「が!?」

 

川は思ったより浅く、フェーは咄嗟に俺の下敷きになって俺が地面に激突しないようにしてくれたが、背中を打ったようだ。

 

「…フェー…無茶するなぁ…」

 

外見小学生の俺はフェーより体が小さいため、やむなく自分が先に上がり、その後で川岸からフェーを引っ張り上げる。

 

「…体の魔力が息を吹き返した…どうやらフーディエさんから離れれば力は使えるようになるようだ…ゲホッ!ゲホッ!」

 

…俺は血を吐きながら抗毒剤を飲む。

 

「…早く合流したいが…フェーをこのまま放置はできないな…それに、俺も結構きつい…」

 

俺は体を強化し、フェーをお姫様抱っこすると、手近な洞窟を探す。

 

如何やら背中を打った時に気絶したようだ。

 

「…先が思いやられる…」

 

 

 

 

 

 

 

第三視点

 

 

 

 

「ミリア!!」

「心配いりませんよ…」

 

 

暗黒の息を振り払い、出てきたのは、

 

普段の残念な美人を一切思わせない凶悪な目つきに、瞳孔が龍のごとく縦に開く。

 

腕と足を赤い龍の形に変化させ、背中から龍の翼を生やし、犬歯が長くなった凶悪なフォルム。

 

「フーディエ…()には守るものが出来た。汝を救いたいが…救えずとも恨むなよ?」

 

一人称と雰囲気が変化したミリアに戸惑う杏子。

 

「50%の姿でも力が大きく抑えられてしまうのか。不便よな、そのオーラのせいか…」

 

フーディエから溢れるオーラの分析を続ける。

 

「杏子、呆けるのは後だ。進示とフェーとの合流を優先だ」

「う、うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ1

 

 

進示視点。

 

進示の過去、ジールの戦いを映像再現で見せる前のお話

 

「…全く、俺のせいで起きた始末書ならまだ納得できるが、お前らが起こした案件の始末書をもう何百枚何千枚も書かされてると思うといい加減脳の血管がキレそうだ。一般にはまだバレてないとは言え、公安や政府の説得したり頭下げたりするこっちの身にもなってほしいな…あ!?」

 

そう、今俺はハジメやユエやシアが起こした案件の始末書を書いている。

日本語がまだ完璧ではない(もうかけるだろと言いたい)のを理由に帰還者や異世界人を監督する俺にお鉢が回ってきてハジメには自分で書かせてるがもう何度誤って頭払わせて自力修繕とかしかぞえてない

 

 

 

 

「進示、モノローグを略しすぎです。頭のおかしい文章になってます!?ほら、また胃から血が出てますよ!?頭払うってどういう意味ですか!?」

 

 

 

 

おっと、頭がおかしいことになってた。ミリアからもらった胃薬を飲みつつ続きを書く。

 

俺にトータスの魔法は効きづらいため、普段はミリアの調合する薬が手放せない。

魔法使えなくなったのに、色んな事ができるな。彼女がいてくれなかったら俺は何回死んだだろう。

 

 

始末書は流石にハジメには自分で書かせてるが。

 

表向き平和に見えても、今の俺に、いや、()()()が視えているものに休養が許される状態ではない。

ざっくり言えば「死にたくなければ働け」って奴だ。

 

俺達や公安の裏理事が観測した限りでは、ハイネッツが俺達を粛正しに地球に来るまで後3年は無い。

 

いや、俺達を始末するだけならばすぐ出来なくもないだろうに、奴ら、足場を固めてるらしい。

 

ま、それもそうか。樹についていた【アレ】を取り除いたものの、そこから情報が洩れていたようで、こちらの戦力が少なくないことを知られてしまった。

 

と、言うことはだ。裏で糸を引いているのは少なくとも樹より格上の神であるという事。

でなければ樹に気づかれることなくバックドアを仕込む事は出来ない。

 

そして、7年ほど前に見た夢の中の俺が語っていた通り、デジタルワールド・イリアスが向こうにあることが分かった。

 

 

 

引退した最高神が天使になってまで下界に降りてくるのも納得だ。

人間は勿論並大抵の神では手に負えない案件だ。

シュクリスは転生者にくっついていないと下界に居られないハンデがあるが、それを利用して様々な布石を打ち続けていたのか。

 

 

 

デジモンを護るためにも政府や公安との関係は悪化させられない。

理由はまた別の機会にするが、サブカルチャーも護らなきやいけないし。

異世界人やデジモンの区別がつかない民衆からいらん風評をつけられれば、世界規模で否定されるだろう。

そうなればデジモンを討伐しようと躍起になる。出来るかどうかは別だが。

 

そして、

 

因みに半年くらい前に新たな錬成品のテストで発電所の電気をごっそり持ってったハジメには流石に拳骨を落とした。

小さい案件なら説教だけで済ませるのだが、今回は国民の生活に支障が出てしまった。

 

あと、個人的案件だが、たまに天之河の財布で焼き肉を食ってるらしい。

昔散々迷惑をかけられた当てつけなのはわかるが、限度を考えろ。思わぬ形でしっぺ返しが来るぞ。

 

で、始末書を肩代わりさせることに慣れたこいつらは。

 

「地球の物は脆すぎですぅ!」

「ナンパしてくる方が悪い」

「地球に来る前言ったよなぁ!?警察や自衛隊の手に負えない相手はともかく民間人相手に暴力沙汰にするなと!?天之河の方がまだ面倒見やすいわ!!」

「「ゆ、勇者(笑)以下…!?」」

 

召喚前の地球やトータスでさんざん問題を起こした天之河だが、現実を受け入れてからは逆にこっちが心配になるくらい自虐的になってきているのだ。

トータスでも過労死が心配になるレベルの事をしてるらしい。

俺も帰還前は内心で勇者(笑)と思ってしまった事はあるが、現在は叱るのと心配する奴が入れ替わってるような…気のせいか?

 

そして、魔王ハジメに拳骨付きで説教できる数少ない存在の俺に他の生徒から尊敬されたり、公安の服部さんからも半ば「君だけが頼りだ!」と泣きつかれている。

 

あと、今は警察庁に居ないが、ユエとの口喧嘩で「ブンカイッ!」してしまった時に始末書の書き方を教えた時には頭を痛めたし、悪ガキ軍団もまだ手がかかる。

 

因みに進示は帰還者の生徒のカウンセリングなどのケアもほぼ無償で受け持っているため(女生徒は杏子やゼロが対応してくれている)とにかく休む時間が取れない。

 

ここでクラスメイトのケアを怠れば、ストレスをためた連中がどんな問題を起こすかわからないからだ。

 

因みにユエとシアは地球に来てからはすっかり立場が逆転。ユエはニート姫になり、シアも問題を起こさないわけではないが、ご近所のあいさつ回りなどはしっかりしてるため、シアのほうがマシなのだ。

それでもシュタイフで公道を爆走しないでほしい。

 

因みに、ミレディもミレディで、問題は起こしてるのだが、あってもお金絡みで、暴力沙汰の問題は一切起こしてない。

 

 

 

「発言の撤回を要求しますぅ!!」

「…いくら進示でも言ってはいけない事である」

 

そういってシアはさらにバージョンアップしたドリュッケンを構え(ヴィレドリュッケンとか言ったか?)、ユエは5色の龍を召喚した。

とは言え、こんな問題児でもこれから迫ってるハイネッツどもの相手の戦力なので切る事は出来ない。

こいつらの怒りが収まるまでいなすしかない。

 

「あ!バカ!?」

 

ユエの魔法、五天龍が警察庁やその周辺を蹂躙しかけたため、俺が全力で被害が出ないように、警察庁とその周辺を防御魔法で固める。

壊しても元に戻せばいいという発想はやめてほしい。

 

因みにハジメの電力かっぱらいはまだマシな方である。いや、いけないのだが。

 

何とか防ぎ切ったものの、侮辱された発言の怒りが収まらないのか、シアはさらにハンマーを振りかざし、ユエはさらに魔法の龍を出現させる。

 

 

 

 

 

ぶちっ!

 

 

 

ここからさきは、記憶がない。

 

起きた後にミリアと共有した記録を見る限りでは、俺が立ったまま気絶した直後にシアのハンマーが俺の頭を直撃するところに、瞬時にグレイドモンになったミリアがハンマーを受け止める。

 

ユエもシアも何故片手で止められるはずの俺の代わりにミリアが止めたのかわからなかったが、俺と魂を共有している彼女は俺の状態を正確に知り尽くしていた。

 

同期が途切れる直前で俺がどこの神経をやってしまったかが分かったミリアは、慌てて警察病院に搬送するための救急車を呼ぶ。

 

「く、くも膜下出血ーーー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺こと、榊原進示、くも膜下出血で入院。

一命は取り留めたし、大慌てで飛んできたゼロのおかげで翌日退院したが、これには全員肝を冷やしたらしく、問題児軍団はしばらく大人しくなったそうな。

なお、問題を起こした連中は漏れなくゼロに【お仕置き】されてしまった。

さらにシュクリスの地獄の修行コースが追加されてしまったのである。

 

そして、ゼロのおかげで一応完治はしてるが、流石にこの件で俺は2ヶ月仕事禁止を言い渡された。

更に緊急時以外、1年はストレスフルの仕事も禁じられた。

 

 

関原達が差し入れてくれた見舞いの品が豪華で泣きそうになった。

 

とは言え、これ以降は流石に反省したのか、問題児軍団が問題を起こす回数は激減した。

 

…のだが、地球では流石に自重するようになったが、トータス含めた異世界ではっちゃけるようになったのだ。

 

ハジメは迷宮のトラップの魔改造だとかでまだ大人しい方。

 

ユエは異世界で股間スマッシュが更に酷くなってしまったので、スマッシュゴッデスの名は安泰だろう。だが、ストレスを別の趣味とかで自分で消化するにはまだ時間がかかりそうだ。

 

シアは…すっかり丸くなってしまった。戦うときは戦えるのだが、一番最初に出会った謙虚さが戻ってきたのである。これが日常でプラスに働くか、いざ戦いでマイナスになってしまうかはわからない。

 

シュクリスは「進示が死んでまた138億年再走は流石に嫌だな」と意味深なことを言ってたが…え?再走ってそういう事?

 

 

 

 

 

 

二ヶ月後。自宅の自室のベッドの上。

 

くも膜下出血で倒れて二ケ月。

仕事はまだフルで出来ないが、そこそこ再開、戦闘訓練もリハビリ用のメニューを開始し始めている。

トータスの再生魔法や精神面は魂魄魔法で治せば?と何人かから聞かれたが、仮に俺にトータスの魔法が効きやすかったとしても、それは最後の手段。

再生魔法で物質的なものが治せても時間のズレはまた別だ。

 

人体も惑星も再生魔法で時間をずらしたら、惑星の魂もメンテナンスも必要になる。

 

トータスのライセン大迷宮でミレディが仲間になってすぐ、俺はミレディの体を治す段階で肉体と魂にズレがあると、寿命が縮まり、人体であれば細胞破壊のリスクがあると踏んでいた。

 

ミレディがゴーレムに魂を移して何千年も生きながらえていたのは奇跡に等しい。

魂魄魔法でゴーレムに移植してたとしても、1000以上ノーメンテだったという事だ。

俺がミレディにやってたことはいわゆる大掛かりなメンテナンスだ。

 

その再生魔法も魂魄魔法も魔法が使えない状況に陥ったら解除されてその瞬間、肉体と魂のズレで肉体が自己崩壊を起こさない保証はないのだ。

 

タイムトラベラーのゼロも定期的に診断している。

 

 

もっとも、俺が地球のメンテをしているせいか、地球の意思そのものが話しかけてきた事があった。

 

『いや~、あんさんに面倒ごと背負わせてすまへんなぁ。メンテの例にあんさん好みの美女と運命で巡り合うようにしたろか?』

『結構だ………お前の本音は?』

『あんさん200年もこっちの世界におられへんのやろ!?この前死にかけたし!?だったらせめてもっと種ばらまいてほしいねん!!ワイのメンテのために!!』

『整備士がいなくなると困るのは分かった。だが、子供が増えすぎても育児キャパシティは有限だし、お前が考えるほど単純じゃない。それに、才能ある子供が優秀に育つとは限らないのは歴史が証明してるだろう』

『そこを何とか…』

『地球の意思よ、無理強いするな』

『あ、破壊神様…』

『大雑把すぎる貴様が運命介入したら、どんな第三次…もとい、大惨事が起きるかわからん』

『(コマン〇ーを見たのか…)』

『成り行きに任せろ。そも、惑星とて死んでも転生する。私人としてはともかく、公人として言っておく。…あまり受け入れられないかもしれないが一つの魂が一つの世界に永く留まるのは本来あまりよろしいことではないのだ』

『…わかりやした。破壊神様。あんたさんは繰り返される世界を止めるために来たんやったな』

『…そうだ』

『シュクリス。理由はどうあれお前が前世の俺の命を奪ったのは間違いない…だからこそ、俺は恨むのではなく、責任を取ってもらう。お前が嫌だと言っても次の転生、そのまた次の転生も付き合ってもらうぞ。子の魂が擦り切れて完全消滅するその時まで』

『無論だ。それがお前の求める償いなら謹んで受けよう』

『俺に殺されてもいいと思ったらしいが、そんな罰は与えない。安易な死は逃げだ。安易に殺す事も逃げだ。俺達が言っても説得力はないが、それでもギリギリまで考え、殺っちまったら、その後悔を抱える』

『なるほど、仕方なかったとはいえ、トータスでした殺人もその罪悪感を抱えるというのか』

『コラテラルダメージ。口にするのは便利だが、その考えに染まりすぎると感覚がマヒする。俺は戦いより日常が好きなんだから、かといって躊躇すればこっちが殺される』

『ゲームだったり、動画やアニメを漁ったりか…もし辛ければ汚れ役は私が負ってやる』

『…何か世界の仕組み的にそれは出来なさそうな気がする』

『お前の負担を軽くするために、私やトレードがいる。こっちの都合でそうそう手は貸せなかったが、これからは違う。お前の女たちや仲間のデジモンにも頼るがいい…まあ、今回のくも膜下騒ぎは公安の無茶ぶりや、マスコミやソウルシスターズ(過激派)の対応、問題児軍団の感覚をなかなか地球に戻せなかったり、馴染めなかったり、PTSDが発症した生徒のケアで夜中に呼び出されたり…私は新参ということもあって、顔通しから始めないといけなかったしな。だが、断る勇気も必要だぞ?』

『それはそうだが、地球が戦場になった場合、精神不安定の生徒が爆弾になる可能性があるし、親族も心労から何をするかわかんないし』

『進示が幼児退行してる間にあった公安から言伝だ。節度は守ってほしいが、今後は多少手荒な対応も多めに見るとのことだ。あと、スケジュールがキツイ場合は怪異退治断ってもいいそうだ。『流石に甘えすぎた』とさ』

『ほう?異能力者の育成も目途が立ったか?』

『いや、パワードスーツだ。関原のような高性能といかないが、量産型を造れる目途が立ったらしい。デジモンテイマーに関しては、人間は大人になると心が複雑になって、パートナーの全面信頼が難しくなる故、数はそういないが、自衛隊の方で公安の裏理事以外で究極体の育成に初めて成功したようだ。ガンドラモンらしい』

『それはまたロマンがあるデジモンだ。ハジメ好みじゃないか?』

『…あの、ワイ、もうお役御免?無視?』

 

「父さん。暇さえあれば思考するのは療養が必要な今は悪癖です」

「そうだな。スマン」

 

「ああ…こんな問題児軍団を許してしまう俺も甘いのだろうか」

 

純粋な地球組では悪ガキどもがまだ少し手がかかるが、概ねいい方向に行ってる。

 

「甘いですよ、父さん…とはいえ、今回は流石に堪えたようですね…しかし、あの問題児達くらい振り切れてないとこれから先の災害を乗り越える事が出来ないのもまた事実。ユエ達に抜けられた場合、地球人類の全滅する確率がおよそ40%以上アップする計算です」

 

とは言え、私も人の事は言えませんと言って、ゼロは過去の俺に対する仕打ちを謝罪する。

ハジメたちが始末書と罰金で許されてるのは、反社会勢力が問題起こした時の制圧と、人間達の手に負えない怪異退治の功績があるからだ。それがなければ討伐対象になってしまってもおかしくはない。

 

だが、今回俺が倒れたことで、流石に思うところがあったのか、すっかり問題が無くなったのである。

…ていうか俺にトータスの魔法が効きにくい以上、ゼロがいなかったら死んでなかったか!?

 

「いえ、その心臓の力なら、血管さえ塞がれば後は自力で回復できたかと」

 

ユエの再生能力には劣るが、なかなか便利である。とはいえ、ミリアの心臓に頼りすぎるのもいつか何かの弊害が来そうで怖い。

だが、ミリアの心臓がなく、トータスの魔法が効きづらい俺が普通の人間のままだったら再起不能もありえたという。

 

樹は今回の俺を回復できるかは5分5分だったし、シュクリスは破壊神なので、くも膜下出血は対応できない。ウイルスならウイルスだけ破壊する事も出来るのだが。

 

 

 

「すみません、万が一を考え、裏理事に根回ししてたことが裏目に出ました。フェーが観測した本来の歴史の公安にそこまで力はなかったので。別格なのは裏理事だけとはいえ、問題を無かったことにするのは難しいです」

「ああ…そうなると、そっちの歴史では何かあっても隠蔽は容易なのか」

 

とは言え、それは悪いことではない。

何故なら、俺達が地球を開ければ、地球は無防備になるからだ。

裏理事はゼロの個人的な知り合いらしいが、デジモンテイマーとして超究極体まで育てられたのは、転生者、異世界関係者を除けば、現状彼だけだろう。

文字通り【別格】だ。

しかし、それが原因で俺があちこち飛び回って関係各所に頭を下げる事が多くなってしまった。

 

だが、裏理事を診察した限り、かなり体を酷使しているようだ。

後何年も現役ではいられないだろう。

代わりを探そうにも練兵難しく、自衛隊もあまり成果はよろしくないらしい。

完全体までなら何とかなるが、究極体までは難しいようだ。

 

「反省出来るだけまだマシだ。元から人類とはそういうものだ」

「父さん…もう諦めているのですね」

「少し違う。折り合いをつけ続けるだ」

 

大なり小なり全人類、神ですら問題児軍団と言ってもいい。

問題を起こさなければ平和かもしれないが、それは思考停止もしてしまうということだ。

 

人間とはつまり忘れる生き物だ。

 

何故忘れるか?

 

決まっている。生きるため、そして新しい事に適応するためだ。

メモを始めとする記録は覚えるために記すのではない。忘れるために記すのだ。

 

 

何故か?決まっている。人間の記憶(キャパシティ)には限界があるからだ。

 

戦争が長らく起きていない日本では戦争の仕方を忘れ、風化し、侵略を受けても対応しきれない脆弱な状態になってしまう。

異世界召喚は流石に俺達以外誰も対応できない案件なので仕方ないが、それにしても危機意識を持ってるのは政府や警察、自衛隊でもごく一握りである。

 

服部さんの苦労がわかる。

服部さんもプロではあるが、流石に積もり積もったストレスでつい本音が出たらしい。責めはしない。

 

自分と世の中、秩序と混沌。

 

永遠に続く戦争もないが永遠に続く平和もない。

 

人類とは戦争の歴史だし、そもそも争いのない世界を作るには、人類は飲まず食わずで生存出来る時間が短すぎるのだ。

 

それに、気分の問題で殺し殺されも知的生命体の特権だ。

狩猟動物は気分で殺さない。

 

「今回の件でハジメ達の牙は少し丸くなった。地球で過ごすにはプラスだが…」

「もう数年以内に地球に来るクズども相手に仕置きの件も含めて、叩き込んだことがマイナスに作用してしまわないかですね。まあ甘さは通用しないでしょうが」

「何をやっても何かは弊害出るのかよ…」

 

何しろ地球含めてよその星の人間を拉致するのに一切躊躇しない、こっちが宇宙航行技術がないので文句を言う事も出来ないのをいいことに、人を攫い続けている。

 

しかし、それが無ければ我が愛娘が誕生しなかった。

皮肉が効きすぎて笑えねぇ…。

 

「こうなっては仕方ありません。父さんは大雑把な方針だけ考えて提示してください。細かい部分は全て我々で詰めます」

「だが…」

「トータス召喚前から過労死同然のレベルの仕事をしていて、帰還後さらに異世界組や問題児軍団の面倒に、帰還者や親族のメンタルケアやマスコミの対応など正気ですか?これを機に人に任せることも覚えてください。訓練は私や大天使シュクリスが考えたメニュー以外は禁止です。日々の積み重ねを重視したメニューです。歯がゆいでしょうが、病み上がりなのでこれで我慢して下さい」

 

帰還した生徒の何名かは未だにPТSDが完治せず、夜中に飛び起きたり、その反動で親族にケガをさせてしまったり(進示やゼロ、ハジメ、香織、愛子達が対応。ユエも少なからず手を貸している)奇声を上げたりすすり泣いたり、異世界に行ったことがない人達では対応が難しい問題ということもあり、大部分は複数回異世界召喚を食らった進示や杏子が生徒たちのケアをすることになった。

帰還者で定期的に集いパーティーをしてるのはPТSD患者の生徒のケアも兼ねている。

 

なお、クラスメイトではない他の転生者達では接点があまりないため、進示がやる仕事を変わったりしている。

 

「…わかった。暫く雑務からは離脱する…やることがないな。この際時間が取れなくてキャンセルしたみんなとデートするか…積みゲーでも消化するか?…いや、俺の記憶から過去の映像を編集するか?」

「父さん…それは…」

 

ゼロは心配そうな目で俺を見る。

 

「大丈夫。また泣いちゃうかもしれないけど、泣くことで感情を吐き出せるからさ。それに、教訓も兼ねてる。それに俺の過去はいつか話すつもりだったしいい機会だ」

「…そうですか。ならば止めません。異常が起きた場合はすぐ止めますが」

「わかったよ」

 

こうして俺達の過去語りが始まったのである。

 

 

 

 

おまけ2

 

トータス召喚組やトータス組、一部のクラスメイトの親族に過去映像を見せて小休止している間、俺はとある患者のレポートを見ている。

 

人間と同じ療法が通じるとは限らないので、生体データをチェックしながらである。

 

 

「進示、それ、何のレポート?」

 

優花がながら読みしてた俺の持ってる書類に目を向けた。

 

「人のケツの穴に起きうる症状…つまり、痔だ」

「痔!?」

 

トータスの医学では痔に関してはあまり進んでいないが、症状緩和の軟膏はあるようだ。

それと、飲み薬か。

 

最悪魔法で直してしまう場合もあるようだが。

 

「そう言えば父さんは前世は痔に苦しめられたとか」

「何で知ってるんだ…」

 

魂が繋がってないはずなのに、ゼロは何で俺の個人情報を知ってるんだ。

 

「何故でしょうね?それはともかく、私も様々な世界を見てきましたが、私が知る限りトイレ事情が最も清潔なのはこの世界、この時代の日本でしょう」

「ハイネッツも昔は温水を使ったウォシュレットがあったらしいが廃止されてて、あの星に居た時は専用の薬液を使ってお尻を拭いていたな。まあ、もう木っ端みじんになった星だが」

「進示君、それはどうしてだい?」

 

ハジメの父である愁さんが質問をしてくる。

 

ハイネッツのトイレ用薬液にはお尻を洗っても爛れないための成分があるのだ。多分地球ではまだ確立してないもの。

 

ウォシュレットの要因を含めても清潔な要因になってる日本では当たり前だが、既に古き時代の遺物になってたとしたら驚くよな。

そして、外国人が日本に着てウォシュレットにハマる人がいてもなかなか普及しない理由がある。

 

俺が口を開くより先にゼロが答えた。

 

「人の肛門周りには多少汚れてても、バイ菌などに強い、まあ、どうとでもなる仕組みがあるんですよ。ですが、水、特に温水で過剰に洗ってしまうと、その仕組みが崩れて爛れてしまうことがあるんです…赤く腫れたり。ぶっちゃけデジモンも似たようなことが起こりうるんです」

 

それは言外に自分もそうなった事があるような言い方だった。

 

若い女性であれば気恥ずかしくてできない話ではあるのだが、ゼロは…何というか若いというには常軌を逸した年月生きてて達観しすぎているようだ。

 

「…年寄りと思わなかっただけ良しとしましょう。ともかく、痔は自然治癒はしませんし、発覚が遅れると、10日は入院しないといけないような事案になりえますので、早めの受診を推奨します。早期発見が出来れば手術になっても日帰りできるケースも多いですし」

 

そういうと、ゼロが薬液が入った瓶を取り出した。

 

「今、国と医学会の審査を受けていますが、通れば我が社、海原の正式な商品になります。これは試験用のものですね。痔を治す薬ではありませんのであしからず。日頃のケア用と思ってください。トイレットペーパーに浸して拭くだけですし、水に流しても害はありません。審査が通るまで渡せませんが、まあ、まず通るでしょう」

 

まあ、ぶっちゃけ事情を知らなければよその惑星の技術鹵獲とは思うまい。

 

 

「で、何故そんなレポートを纏めてるの?」

「ユエ、仲間のお前と言えど…患者の個人情報もあるから黙秘する(魂が繋がってる杏子とミリア、俺の行動を逐一把握してるゼロ、心を読めるシュクリスには隠しようがないが…ティオがウォシュレットに感銘を受けて…調子に乗って洗いすぎたんだよな…)」

 

 

 

 

 

おまけ3

 

「おいおいマジか、魔法も使えないデジモンの進化も出来ない」

「ああ、お前のドンナーを始めとした武器も使えないだろうな…ユエも恐らく【自動再生】も無力化させられる」

 

過去映像を視ていたハジメの感想である。

 

「神力も大幅にパワーダウンするのが厄介なのさ」

 

 

シュクリスも話に乗る。

…え、神の力も封じるの?

 

「完璧ではないがな。何故進示が魔法を使わない純粋な科学にも力を入れているか理解したか?」

「ああ…数字を見る限りじゃ、ライセン大渓谷以上だ」

「あそこ以上か~」

 

「それに加えて、私を改造した時に使ったデジモンはリリスモンなの」

 

過去映像鑑賞会、途中参加のフーディエが補足する。

「だからファントムペインが出来たんだな」

 

それにしても

 

「おい!なんだミリアのあの姿!?ただのエロドラゴンじゃなかったのか!?トータスじゃあの姿一回も見せてないよな!?」

「自分の体をデジモンに改造してあの姿にはなれないんですよ、ハジメ君。いつかはなれるようにしますが」

 

「それにしても…進示につけられた爆弾がえげつないわね」

「ミリアがいなかったらもうあの時点で進示は…」

 

ぶつぶつと過去映像に対して思ったことを口にする優花と雫。

 

 

 

それと過去の猥談は上手くカットしたが、ゼロが自分のスマホの映像を俺に見せつけてくる。

 

「ゼロ…これは温泉?」

「ええ、私の会社の息がかかった温泉です。貸切って療養(意味深)しましょう?父さん」

 

…何で俺の性癖知ってるんだ…いや、フェーから聞いたか?

 

「あの猥談を直接聞いてました。過去の映像ではまだミリア母さんが持ってますが私の黒龍杖と貴方の赤龍杖は対になっています。…赤龍杖を通じて直接様子を探っていました」

「やっぱりぃ!!?」

 

父より年上の娘は強し。

 

 

 

 

 

 




あとがき


Q、おまけのユエとシア、よく殺されなかったね?
A、それまで積み上げた信頼と実績、この先の戦力と異世界カルチャーに馴染む為に長い目で見ていましたが、この時期はまだ地球に馴染んでいないこともあり、更生しようとしている人物が複数いるのにこいつらが更生できない道理はないという進示の方針もあり、首の皮1枚繋がった。
但し、公安の裏理事には今回の件はバレてしまったため、暫く監視がつくことになった。
事件からひと月、信頼回復は順調である(但し、ユエとシアの体感時間はお仕置きにより1年だが、この件で二人は原作より1年分余計に年を取った)。

但し、ハジメは自主的に始末書を書いていたことと、事件を起こした後のフォローは普段からそれなりにしていたため、比較的軽い罰で済んだ。

進示はトータスに居た時は勇者に「もうヤダコイツ」思っていたが、その対象がユエとシアになるとは思ってなかった。
と、言うのも、他の異世界出身組が地球の常識にすんなり馴染んでいたため(問題があるとすれば金銭を使いすぎるのと、他人をおちょくる癖があるミレディだが、お金の件は数回の注意で治ったため、比較的手がかからなかった)、異世界と地球の感覚のカルチャーショック問題に直面することになった。

原作ではトータスの件が初めての異世界召喚だったが、このSSでは異世界召喚は多く前例があったため、一部の人間には隠蔽できなかった。

加えて、進示が異世界組と帰還者の監督責任者(公安の裏理事は愛子では力不足と見抜いていた)にされてしまったため、問題を起こすたびに胃から血が出ていた。

しかし、ユエとシアを光輝より面倒見づらいと発言したため、ユエとシアが激怒。
日々のストレスがあったとは言え、回復した後は発言が迂闊だったかと、反省した進示。「そういうところが甘いんですよ!父さん!」

なお、くも膜下出血自体はゼロのおかげですぐに回復したが、精神面まではそうはいかず、数日間は一人でトイレに行けないほど幼児退行してしまったと聞いて死にたくなった進示である。この年でお締めをするとは思わなかった。死にたい。




Q、公安はよく監視だけで済ますね?
A、ジール帰還直後の進示と杏子に対しやらかしたことに眼を瞑ってもらっていることと、地球の防衛力を考慮し、妥協点を見出す。ゼロの根回しもあったが。
公安相手にゼロが説得とは皮肉が効き過ぎている。
とは言え、このまま改善しない場合は物騒な手段も考えていた。
現在信頼回復は上手くいっている。

大人しい部類と思われた雫や優花も一度だけやらかしている。
詳しくは割愛するが、ソウルシスターズ(過激派)の対応や、しつこいマスコミの無神経な質問を浴びせられ続けた結果である。
進示はこの時別件でやらかした香織と一緒にこの二人にも始末書の書き方を教える。





公安の裏理事。

公安のボスの事。
この世界のオリキャラでいかついが厳しさと優しさを併せ持つ愛国者(それはそれとして締める時は締める)。ゼロが打った布石の一つ。
神童竜兵も一枚嚙んでる。
他の世界の価値観にも寛容。
生身の戦闘能力は60近い年齢もあってか普通の警官に毛が生えた程度。
ハジメたちのトータス帰還直後、デジモンテイマーとしてルールありの勝負をしてハジメとユエをノックアウトした。
対戦直前に進示から「せいぜい揉まれて来い、大人を甘く見ない方がいいぞ?特に本物の傑物は」と言われたことが耳から離れないハジメとユエ。
何でもありなら自分たちが勝つとは言え、この敗北はハジメ組に大きな影響を与える。

とは言え、流石に2回目以降はハジメ達が勝ち越しているが、一度きりとは言え、負けたのはかなり悔しかったらしい。

宇宙からの侵略情報に精通している数少ない人物。
苦労性の進示の事を心配しているが、立場上全面的な味方になれないことも若干歯がゆく感じているが、進示を支える人が増えたことでその心配は減ったかと思いきやぶっ倒れたのでまた心配。

デジモンはゼロからもらったもので、進示と杏子とミリアとゼロが特殊な親子であることを知っている。
その最終進化は日本という国を愛する彼らしい進化を辿った。

いざ、決戦の時は自分達が最終防衛ラインになる覚悟をしている。

ハジメからの評価はメルド団長レベルで敬意を払われている。

対戦自体はハジメ達の増長を危惧した進示からの提案である。
この事もあり、トータス帰還組は原作より慢心が減ってる。
多忙な立場ではあるが、いざと言うときのために、定期的にテイマーとして模擬戦をしている。
修業の時間がなかなか取れないため、伸び悩んでるのが悩み。

体を酷使しているため、決戦が終わったら引退しようかと思ってる。

他の公安や自衛隊のデジモンテイマーの練兵の難しさにどうにかならないものかと感じてるが、デジモンも感情を持つ以上、地道な信頼関係構築とと修練以外ないかと思っている。楽してもしっぺ返しが来そうだと勘づいている。




ユエ達へのお仕置き。

今回の件は進示の嫁たちも怒ったが、戦闘訓練の地獄だけでは大した罰にならないと思ってどうしたものかと思案したが、こめかみを引くつかせた樹が、ユエには最も苦手な分野である花嫁修業を徹底的に叩き込んだ。シアにも世の中の繊細さに対応できるメニューを叩き込む。
シアには例のコーヒーを流し込んだ。

樹はお仕置きだけでなく、ハジメの嫁に対する気遣いや異世界組の社会への適応などいろいろ先を見据えた上での飴と鞭を与えた。ハジメにも気を使ったのである。樹は影の功労者。

これにより、ユエは原作よりそれなりに花嫁スキルが上がっている。
ハジメは樹に感謝し、礼品を送った。

戦闘訓練に関しては、途中から話を聞きつけたハジメや鈴谷ら龍太郎やら転生者達やら、戦う気のあるメンバーの殆どが参加し、かなり腕を上げる…え、遠藤?
忘れてませんとも!

なお、進示は彼らの特訓を見ながらリハビリ用のトレーニングメニューをこなすが、かえってパワーアップしてしまった。
これに戦慄するハジメ達だが、ゼロやシュクリスは休養不足がパワーアップを阻害していたと分析。休むことも大切だった。


悪ガキって誰?
クラスメイトの問題児達。誰かは…今は語らずにおこう。

Q、何で進示を魔法ですぐに治さず警察病院に搬送したの?

A、魔法で治しても魂魄魔法の精神治療もその場しのぎにしかならないため、無理矢理でも休みを取らせるため。

Q地球の意思
A本作オリジナル。形はない概念的なもの。自分の寿命を回復できないまでもメンテ出来る進示に目をつけた模様。神には逆らえないが、神側も地球の意思に原則不干渉である。基本成り行き任せ。

リリアーナはどちらのヒロイン?

  • オリ主(榊原進示)
  • 南雲ハジメ
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