気分やら何やらで進めていくと思うので遅いです。
転生。
それは今の世の中で割とポピュラーになっている創作ネタである。
大体は、不幸な事故や、何かの要因で死んでしまっていて、気がついたら別の世界に飛ばされていた、ということが多い。同率で転生を司る神様の力で違う世界に飛ばされて第二の人生を送るという展開が多い。
どちらにせよ、現代を特に何の魅力も感じずに生きている者からしたら、羨ましいと思うイベントではないだろうか。
多くの話では、違う世界に行って、少なくとも前世の記憶だったりそれまで過ごした時間からの経験で上手く立ち回り、色々な人に好かれ…と幸せを掴みやすい条件が整えられているのだ。羨ましくないわけがない。なお私がハッピーエンド系な話を好むというのも大いに関係はしているだろうが、それは置いておくとして。
まあ、何が言いたいかというと、私も多くの「転生」ものの創作のファンであり、「転生」を出来るならしてみたいと望む側である。
いいよね、私もこれまでの人生を糧にして有利に立ち回って、美少女に好かれたいし、転生特典で凄い能力とか貰えるなら貰いたい。時たま生まれ変わったらイケメンだったとか最高じゃないか。どれだけ話で明らかにされてない前世の部分で徳を積んだんだってくらい、好条件の第二の人生を歩ませてもらえるんだと、ラノベを楽しく読んでたはずなのに無性にイライラしたのは記憶に新しい。
うん、少なくとも昨日までの私はそう思っていた。
なら、今日は違うのかって?
答えは「違う」とは言えないが、「絶対に転生したい」とまでは強く言えなくなってしまった。
「さて、今日は…ネズミの駆除…? ようやく久し振りに聖剣の出番というわけだな!」
『ふむ、ネズミ程度に我を使うなど以前なら許さなかったが、ここまで出番がないとなると鈍ってしまって仕方ない。今回は許してやろう』
「ネズミ相手にそんな物騒なモノを持ち出さないでくれませんかねえ!普通に薬剤で駆除でいいんだよ!どれだけデカいのを想定してるんだよ!」
「んん、キャンプファイヤーのやり方を教えてほしい…? 中級の火魔法を使えば一発じゃ?」
「魔法を使えるのが一般的みたいな体で話を進めないでくれる!?」
全てはこの、唐突に増えてしまった同居人である「転生者」を受け入れざるを得ない状況のせいで。
「買い物…は、特に必要ないが甘味は必須か」
数日分の食料を確保していたことを思い出し、一人呟く。
いつも買い物に立ち寄るスーパーを素通りし、コンビニへと足を向ける。
ここ最近発売されたコンビニスイーツを忙しくて買いに行けていなかったので目的はそれだ。
今日は金曜日。土日に菓子を買わなくていいように、目的のブツとは別にコンビニ限定の菓子も適当に見繕い、会計を済ませた。これだけあれば外出しなくても済むだろう。
手荷物は増えたが、休みを楽に過ごせるという期待のおかげで足取りは軽かった。
そう、軽かったんだ。家に着くまでは。
「うぐ……」
「えぇ……」
なんで我が家の玄関前に人が倒れ伏しているのか。
なお、私の家は小さい賃貸。集合住宅みたいなものであり、決して広くはない。
何が言いたいかというと、この倒れている人を無視して家に入ることすらできないというわけである。
というか、他の住民は通らなかったのだろうか。
「はぁ……」
思わずため息が漏れてしまうが許してほしい。何をするにしてもこの人に声をかけないといけないのだ。面倒なことこの上ないし、憂鬱で仕方ない。見たところ男性なようなので、不用意に声をかけてもセクハラの冤罪はかけられないだろう。そこだけは僥倖と言っていいかもしれない。
ってか、すごい金髪なんだが。染めた感じのしない綺麗な色をしている。
「えっと、んん、大丈夫です?」
出来るだけ考えていることが表に出ないように気を付けつつ声をかける。さっき呻いていたから意識はあると思いたいが、なかったら病院だか警察に電話するしかなくなる。
「う、ああ……あ、あんたは……?」
あ、反応した。そして声的に思った通り男性だった。よかった。
「いや、そこの部屋の住人なんですが、倒れていたので心配で声をかけただけです」
「そう、か……。すまない。助けてくれないか」
「はあ、どこか怪我でもしているんですか?」
私が比較的落ち着いて会話している理由として、出血の様子などが見られないからというのがある。実は見えていないだけで重症だったりすることも考えられる。
「いや、怪我はしてはいないんだが……」
「なら、病気とかですか? 救急車呼びましょうか?」
「家に住まわせてほしい」
「……は?」
………………は?
「んん、うまく伝わらなかったか……?」
「いや言葉は嫌というほど伝わりましたけど、言っている意味を理解したくなかっただけです」
「俺としてもこんなことを頼むのは気が引けるんだが、この通り。恥を忍んで頼みたい」
「倒れ伏してるのをいいことに土下座っぽく見えるとか勘違いしてません?」
正直ちょっと余裕ありそうだからいいかなって放置してもいい気になってるんだが。
「無一文な上にここに気づいたら放り出されていたんだ。この辺りの情報とかそういったものも含めて頼りたい。この通り」
「……んん?」
何かおかしいことを言っていたが、直後に身体を起こして頭を下げてきたことに気を取られてしまった。
「……とりあえず家に入ってください。とりあえずそれからあなたの身の振り方について話しましょう」
「……助かる」
「すみませんが、あなたの希望に叶うかはわからないですよ?」
「それでも、話を聴いてもらえるだけありがたい。少しでも何かしらのパイプは欲しいところでもあるし」
とりあえず身体を起こすのを手伝い、身体を支えながら家の鍵を開ける。
正直この時はさっさと近辺の情報を伝えてさっさと追い出したら、この人との関係は終わると思っていた。
「ところで、名前はなんて言うんです?」
「ああ、名前は……」
まさか自分が。
「アルフ。勇者アルフと呼ばれていた」
「……はい?」
この出会いをきっかけに、異世界からの転生者を迎えていくことになるなんて。
この時は思ってもいなかったんだ。
できるだけ続けていけるように頑張りたいです。