ヤバイ・・・
食事に夢中になっておかわりし続けていた
妹狐は焦っていた
うっかり、忘れていた
気づいたときには既に壁は破壊され、城外には数万の亜人が待機していた
別に妹狐は関係ないし、なんて言いたいが、借りを返すなんて格好つけておいて、食事に夢中で忘れてたなど恥ずかしすぎる上に同僚からの言われのない
「食いしん坊」というレッテルが定着しかねない
幸いにもこの先で戦闘が起こっているようで、名誉を挽回するにはもうこれしかないだろう
あまり走ることは慣れていないが仕方ない
妹狐はクライ・アンドリヒに化けて現地へ急ぐ
道行きには崩れた瓦礫などがおおく、邪魔すぎてイライラしたが、我慢した
「魔法最強化・聖なる槍」
成人した女の声が聞こえる、どうやら戦闘の真っ最中なようで、魔法の槍や矢などが飛び交っている
黙視できるほどに近づき、敵の姿も確認する
(強そう・・・)
巨大な悪魔、それが印象だった
普通に強そうな敵にめんどくさくなってきた妹狐はすぐに帰りたいと思うようになってきた
我慢我慢
足を止めることなく女の元へ急ぐ
(あの悪魔、強そうだし思いっきり攻撃するか)
どうやって助けるか、そう思案する妹狐
突如、悪魔が姿を消したと思ったら金髪の偉そうな女の前に姿を表した
妹狐は渾身の力で大地を蹴る
あまりの力に大地には小さなヒビが入り、破片が飛び散る
人間とは思えない高速移動
悪魔の剛腕が人間の女、ケラルトとカルカに触れる直前に華麗に二人を救いだした
ー終わりだ、
それはカルカとケラルト、二人が同時に感じたことだ
迫る悪魔の腕、避けることは出来ない
高速で迫る、それに時間が止まったとも思えるくらいゆっくりにこの世界を感じる
人は自信に生命の危機が迫ったさいにはこのように感じる全てがゆっくりに錯覚すると誰かから聞いた
(本当だったんだなぁ)
諦めに近い感想
ゆっくりなのは自分も同じ、例え自分は例外だったとしても避けられないところまで悪魔の腕は迫っていた
(私は良い王になれたのでしょうか)
走馬灯が彼女の頭にめぐる
国初めての王女
不安だった、期待が重かった
それでもケラルト、レメディオス、親友たちの応援から頑張った
(私は私にりに後悔のないように生きたつもりです)
それが彼女の人生に導きだした答えだった
だがしいて後悔をあげるなら
「お婿さん・・・欲しかったなぁ」
そんな可愛らしい夢を呟くとともにカルカは瞳を閉じた
ドゴォッ!!!!!!轟音
衝撃がいつまでたってもこない
不思議に思いつつ
ゆっくりと眼を開ける
そこに先程までの醜悪な悪魔は居らず、代わりに一人の黒髪の青年が立っていた
冒険者というにはあまりにも格好が心もとない、何せ武装をしていないのである
一般人ではないだろう、彼から感じる重圧(プレッシャー)は並大抵ではない
一体何者なんだろうか?
呆然とするカルカに青年は言う
「大丈夫ですか?アダマンタイト級冒険者クライ・アンドリヒ助けるに参りました」
丁寧に自己紹介する彼の言葉はカルカにはほとんど耳に入っていなかった
心臓が高鳴る、先程までとは別の意味の鼓動
胸を抑え、顔が熱くなる
「怪我はありませんか?」
「あ、あ、え、えっと・・・」
自分に背を向け、悪魔と対峙する青年に
カルカは上手く言葉を返せないでいた
彼をみると、胸が痛く、熱くなる
格好良かった、自分のピンチに颯爽と助けてくれた青年が
そんな中、瓦礫から吹き飛ばされたであろう悪魔が立ち上がる
「キサマナニモノダ?」
瓦礫を押し退け
悪魔が問いかける
周囲の温度が急激に上昇する
悪魔の周囲は特に温度が高いのか、木材で出来た扉などは発火していた
「何者?そんなの決まっているだろう?」
青年はやれやれと言うような仕草をするとともに
悪魔を真っ直ぐと見据える
「僕はお前を倒す冒険者だ!!!!」
テンプレの台詞、この場に最も相応しいであろう言葉が木霊する
カルカは運命を感じていた、目の前の青年に
ピンチの自分を助けてくれた王子様に
「・・・・・・」
何か言おうとしても声が出てこない
青年が心配そうにこちらをみるが、顔が熱くなり眼を反らしてしまう
それでも彼の背中をみる、立派な英雄を
「ソウカナラバシネ!」
悪魔は青年へと向き直り、拳を振りかざす、それと同時に青年は大地を蹴り跳躍する
空中に身を乗り出す青年、その手に武器はなく、魔法を使う気配もない
まさか素手であの悪魔に立ち向かうというのか?
無理だ、断言できる
レメディオスの持つ聖剣でさえ傷をつけることすら出来なかったのだ
だが、何故か出来ると期待してしまう自分がいる、悪を倒してくれると、正義の味方に憧れる子供のように
宙へ身を乗り出した彼に悪魔は拳を振るう
眼にも止まらぬ速さ、空中では逃げ場がない
当たる、、そう思った、
だが拳は青年にあたる直前に何かに流されるようにそれる
青年は振りかぶり、醜悪な悪魔の顔を殴りつける
それと同時に悪魔は大きく吹き飛ぶ、住宅街を破壊しながら、
青年は悪魔を殴り付けたあとに何事もなかったように
地面に降り立つ
その姿にカルカは想う
信じられない、その力に、その勇姿に、
自分を助けてくれた英雄に
カルカは一目惚れしてしまった
なお、嘆きの亡霊と本物は亜人達と交戦中でした