その日の夜。任務で出掛けた悟達、2年生は未だ呪術高専に帰ってきていない。だが、1年生は未だ明らかに危険な任務は受けられないのか、任務は良く日帰りで終わる簡単な物ばかりだ。
「ふー…疲れた。でも物足りないわね」
秋葉は任務を無事に達成し、1人で食堂で寛ぐ。今日の彼女は担任である七海との任務で総耶近辺に受肉して実体を持った悪霊の討伐と言った簡単な物であり、七海が側に居たとは言え実質1人で任務を終わらして帰ってきた。秋葉は歴代遠野家の中でも、鬼の素質が高く…その強さは純粋な鬼に迫ると言われている。だが、鍛練を行い出したのが有間に引き取られてからであり、身体捌きは未だ未熟な点があるし、彼女は1年生で唯一…術式をメインに戦うのだ。
秋葉の術式は奇妙な事に2つ存在する。先ず1つは遠野家相伝である血液を武器として自在に操る術式であり、秋葉の実父で現在は帝愛地下帝国に送られた槇久は血を刀のように使っていた。対し秋葉は鞭のように使ったり、大きな車輪状にして投擲したり様々である。
もう1つは略奪、及び略奪を応用した氷を用いる術式だ。略奪は相手の魔力や呪力を奪い…秋葉は気化熱を奪って相手を凍結させる事が出来る。そして、秋葉はその略奪を応用して氷を操る方法を既に編み出しているのだ。
「あの2人は今頃コンビで任務ね…今日、高専に居る生徒は私だけかしら」
自販機でアイスティーを購入し、優雅に飲みながら秋葉はのんびりとテレビを見る。悟達2年生は埋葬機関からの依頼で緋人とノエルと共に駒王に向かった。悠仁と流花はペアで任務を行い、少し遠出…だが補助監督官として琥珀と翡翠が付いてるから問題は無いだろう。
そんな時だった。
「えっ?」
突如としてテレビの映像が乱れ、勝手にチャンネルが変わったのだ。さっきまで秋葉は可愛い子猫が沢山出てくるペット特集番組を見ていた筈だが、変わったチャンネルでは耳がエルフのように長い悪人面で黒い翼を生やした男が映りだしたのだ。この男は最上級堕天使であるコカビエル。だが、秋葉は最上級堕天使の顔は知るわけがなく…兄と同じ勘違いを犯すのだった。
「誰かしら。烏天狗?」
血の繋がりは無くともやはり兄妹である。
『私はコカビエル。聖書に伝わる堕天使だ』
映像ジャックを起こし、コカビエルは人間の言葉で日本に…そして世界に呼び掛ける。
『この世界には君達人間の常識に当てはまらない事だらけだ。先ず、その1つに我々のような人外の存在が実在すること、そして世界各地でかつて信仰された或いは現時点で信仰されている神話は実在している』
コカビエルは語り出す。自分達、人外が存在していることを、神話が実在していることを、人間には神器と呼ばれる不思議な力が宿ることが有ることを。
『我が父…聖四文字、ヤハウェ、一神教の神と呼ばれる存在は既に亡くなっている。
ニーチェの言葉ではない。事実、父は亡くなっている。それからだ…可笑しくなったのは。だから…私はこの真実を全世界に報道する!!』
神の不在…コカビエルの言葉を聞き、秋葉は1つの心当たりが有った。先月の時だった。緋人がうっかりと口を滑らせて、神様は既に亡くなっていると言っていたのだ。
『我が父は朱い月……月から飛来した最強の地球外生命体に致命傷を負わせられ、暫くして傷が治らずに亡くなった。父は本当に人間が好きだった。だから…私は今、世界に反旗を起こす!!悪魔は悪魔の駒を用いて人間を悪魔に変える!!ミカエルは天界を護るために生きた人間だろうと迫害する!!そしてアザゼルは危険な神器を宿したからと、子供達の暗殺を私に指示した!!こんな…こんな弱者が犠牲に成って良い事が有るのか!!
私はこれより、悪魔が管理する駒王に単騎で襲撃する!!巻き込まれたくない人間は速やかに退去しろ!!私が用があるのは駒王を管理する魔王の妹達だ!!
開始は今から3時間後だ。巻き込まれたくない民間人は速やかに退去しろ。そして悪魔よ、首を洗って待っていろ』
コカビエルはそう告げると、放送ジャックは終わったのか映像は変わる。だが、コカビエルが世界的に大々的に報道を行った為なのだろう。臨時ニュースに切り替わっているが、臨時ニュースのキャスターは慌ただしい。まあ、仕方がないだろう…いきなり神話が実在するとか言われたのだから。
だが、事態は秋葉の想像の斜め上を行くことに成ってしまったのだ。
『大変です!!世界各地で、神々や天使が降臨してます!!なんと言う事でしょうか!!』
「ぶふぉ!?」
映像には世界各地で神々が降り立ち、降臨した事が瞬く間に報道されていた。北欧にはオーディンやヴァーザルと言ったアスガルドの神々が、何故か中国には帝釈天…インドラが、ギリシャにはゼウスやアポロンと言ったギリシャ神話の神々が降り立った。帝釈天は兎も角して、ギリシャ神話も北欧神話も結果的にキリスト教の布教で信仰が喪われた神話だ。聖書の神が死んだと報道されれば未だに実在している自分達こそが地に降り立ち人々を導こうと言うものである。
それは日本も例外ではない。だが、日本に降り立ったのは日本神話の神々ではない。悪魔だった。
『彼等は日本を今まで護ってきてくれたのです。悪魔こそが、日本の守護者なんですよ』
総理大臣の両サイドに立ち、総理大臣からそう紹介されたのは魔王サーゼクス・ルシファー。そして黒いツインテールでそこそこ巨乳の少女 魔王セラフォルー・レヴィアタンである。
悪魔、日本の政治と懇意な関係に有るためか日本での立場を更に強めるのだった。
だが、嘘で塗り固められて問題を起こす度に埋葬機関に半殺しされる天界も黙ってはいない。神様の死が広まってしまえばキリスト教の立場が危うく成ってしまう。そこでミカエルはヴァチカンに降り立ち、彼は演説を行った。
『皆様…我らが主は御存命です。あれはコカビエルが我々を貶める為に吐いた戯れ言です。ですが、日本の皆様御安心して下さい!!我々はコカビエル討伐の為に、ゼノヴィアとイリナという優秀な戦士を駒王に派遣してます!!コカビエルが打ち取られるのも時間の問題です!!』
そう、宣言した。確かにミカエルがヴァチカンに降り立ち、神の生存を世界に呼び掛けたら多少の信頼は間違いなく有るだろう。
「兄さんに伝えないと…」
悟は仲間達と共に駒王に居る。3時間後にはコカビエルが襲撃し、世界には神々が降り立った。秋葉はこの事を悟に知らせるために悟に電話をかけようとした。だが、悟は電話には出ない処か…電波が悟に届かない。
仕方ないとして、秋葉はアルクェイドに電話をかける。だが、アルクェイドも同じく電波が届かない。その後、シエル、ノエル、最後に緋人と連絡を入れるが同じく電波が届かない。
「どうなってるの!?」
無理はない。駒王は完全に崩壊してしまったのだから。
一方の駒王。
「一体…何が有ったんだ?噂のコカビエルの仕業か?」
駒王という町は死んだ。
銃刀法違反で現行犯逮捕されないように竹刀袋に日本刀を仕舞い、それを抱えた悟を先頭に彼等は死んだ駒王を歩いている。家々は燃えており、住民の醜い程にグチャグチャに潰された肉片や人骨が辺りに転がっている。家々も幾つかは燃えており、酷い有り様だ。
オフィス街の飲食店を窓から覗き込めば…酷い有り様であり胃の中から何かが込み上げてくる。だが、悟は呪術高専で昨年から活躍してた為かスクラップ物には見慣れている。だから、喉まで上がってきた胃の内容物は再び胃まで戻ってくれた。
壁一面は潜血で染まっており、床には人骨、人肉、浅いプールのように血で染まっていたのだ。酷い、ホラー映画が優しく感じる程の現実。
「嫌な記憶を思い出させますね…」
シエルはその光景を見て奥歯をぎしりと噛む。無理もない、彼女とノエルはこのような現実を経験しては居るのだ。それも裏側の現実なんて知る必要が無かった中学生のころにである。
「これはコカビエルは関係無いな。別の人物の犯行だ。間違いなくね」
「「「確かに」」」
緋人の言葉にノエルを除いた3人が賛同した。彼等は此処に辿り着く前に、人の言葉を話ながら人肉を食べる芋虫や動く死体等を見てきた。これは間違いなく、堕天使の仕業ではない。もっと根本的に異なる人物の仕業である。
「えっ?それってもしかして…」
「死徒27祖が1体、26位のアラクネだ。まあ、アラクネ本人は去ったかも知れないし…この町の悪魔はコカビエル討伐を任されたエクソシストの口からコカビエルの事を知らされているかも知れないから、コカビエルの犯行だと本気で思ってるかもね」
では誰の仕業なのだろうか?それは死徒27祖の26位。愛の異名を持つ巨大な蜘蛛のような死徒である。彼女は無力な人物に力を与えることを愛だと悟っており、様々な人物に力を…愛として授けてきた。だが、それは一方的な愛であり相手を人肉喰らう人の言葉を話す芋虫や昆虫だったり、怪しい薬品で強引に力を授けたり様々だ。そう、兵藤を薬品ドーピングで強化したのも彼女の愛故だ。此処まで言えば誰が死徒27祖26位なのか分かるだろう…そう言うことである。
「七夜先生、それって」
「悪魔は一番警戒しないといけないヤツに気付けなかったのさ。ヤツが事を起こしたという事は…アラクネはこの町での目的をある程度完了させた…って事だ。その目的の為には赤龍帝の強化が必要だったのか不明だけど……悩んでも仕方がない。取りあえず、悪魔の拠点である駒王学園に行こっか。未だ、悪魔の皆様が居るかも知れないしね」
此処で立ち止まってても仕方がない。一先ず悟達は悪魔の拠点である駒王学園を目指す事にした。未だリアス達が冥界に逃げず、駒王学園に居ればそこを拠点として活動している事は間違いない。
彼等は先頭を魔眼持ちの悟、アルクェイド、一番弱いノエル、シエル、殿を一番強い緋人の順番で歩き駒王学園を目指す。だが、その時…悟達と緋人を分断する為なのか、巨大な肉壁がシエルの背後から瞬時にせり上がり…悟達と緋人は見事に分断されてしまった。
「副長!!」
最強戦力と分断されてしまった。
「大丈夫、大丈夫。後で飛んで直ぐに合流するよ。
てっ!?なんじゃこの数!?足留めってレベルじゃないな。ハハ…ふぁ!?なんで下級吸血鬼がイデアブラッド使ってるんだ!?
あー、先に行ってて直ぐに片付けるから。てか、コイツ等、数が多いなおい!!」
その声が聞こえ、人を喰らうかつて人だった死者の叫びと肉を切り裂く音が絶え間なく壁の向こう側から響く。
「まあ、副長なら大丈夫でしょう。チートですし」
「だよね、マスクマンだもん」
まあ、彼なら大丈夫だろう。一先ず悟達は駒王学園に向かった。
「部長…俺達、どうなるんですか?」
「コカビエル…やってくれるわね!!」
リアス・グレモリーとその眷属達は教会から派遣されたエクソシストのゼノヴィアと紫藤イリナ、リアスと同じく魔王の妹であり駒王の悪魔であるソーナ・シトリーとその眷属と共に身を寄せながら駒王学園の運動場で籠城を行っていた。
町は改造された人食いの改造人間、死徒にゾンビに変えられた民間人のお陰で崩壊。町に異変が起きたのは僅か2時間前であり、その僅かな2時間のお陰で駒王は見る影も喪い…完全に死者の町と成ってしまったのだ。
なんとか兵藤やシトリー眷属の御家族、そして協力者であるDr.アラクは安全な冥界に避難させる事が出来た。だが、現在の駒王では携帯電話が一切使うことが出来ず外部とも連絡を取ることが出来ない。お陰か、冥界から頼れるお兄様へ応援を要請する事が出来ないのだ。
「しかし…コカビエルは未だ現れないのか」
「そうよね、ゼノヴィア。早くしないと、埋葬機関に先を超されるわよ」
状況が状況の為か、悪魔であるリアス・グレモリー及びソーナ・シトリーと協力体制を取ることに決めた2人のエクソシストがそう言った。
そのエクソシストはどちらも悟と変わらない歳であり、ピチピチで何処かエロい戦闘服を装備した2人だ。青い髪をした巨乳の美少女をゼノヴィア、栗毛でツインテールの少女を紫藤イリナだ。2人はミカエルが推薦し、派遣してきたエクソシストである。
2人はミカエルの命令を受けてコカビエルを討伐し、エクスカリバーを奪還する為に駒王にやってきた。だが、駒王にやって来て調査をしてみれば、駒王はゾンビや改造人間の町に変貌してしまい…仕方なく悪魔であるリアス達と手を結ぶ羽目に成ったのである。
「会長…俺達…どうなるんですかね?」
「匙。お姉様にも連絡が繋がらない以上、我々でなんとかするしか有りません。ですが、最悪はこの町を捨てる事も考慮するしか無いでしょう」
眼鏡をかけた貧乳な少女がそう言った。彼女の名前はソーナ・シトリー。魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹であり、その実力はリアスに匹敵する。
そんなソーナと親しげに話すのはソーナの兵士であり、この駒王で産まれ育った元民間人である匙 元士郎だ。ソーナの眷属は五大宗家の次女だった女王を除き…その眷属が民間人に近い人々で構成されている。匙、そして新入りなんて最近まで裏側の存在を知らず眷属に成った一般町民なのだから。
「ひっぐ…ひっぐ…どうしてこんな事に…」
そしてソーナの新入り眷属が泣き出した。無理もない、彼女は本当に何も知らない民間人であり、面白そうという軽すぎる理由で人間を辞めて悪魔に成ったのだ。だが、悪魔に成って今はどうだろうか?同級生も近所の人は全員死んだかゾンビに成った…或いは改造人間にされた。そして、そんな元御近所の人達を…同級生を殺さなければならず…彼女は正気を喪いそうに成っている。
「あっ…悪魔さん達が彼処に居る!!」
「あっ、本当だ。初めて見るヤツも居るな…」
「あれはソーナ・シトリーとその眷属ですね。彼女達は生徒会でしたよ」
「うう…数日分の給与、私は未だもらってないんですけど」
と…そこに悟達が到着する。なお、余談だがノエルは駒王学園時代の給与を貰っていない。まあ、それは仕方無いだろう。なにせ、潜入していたのだから。
「っっ!!埋葬機関に呪術高専!!てめえ…どうして此処に居るんだよ!!」
そんな悟達を視界に納めた兵藤は叫ぶ。まあ、彼としてはリアス達と楽しく修行していた時に、朱乃と小猫を悲しませた悟を許せない嫌いなヤツとインプットしてる為に仕方がないだろう。
「いや、仕事」
「どうして埋葬機関が出てくるのよ!!今回は私達がミカエル様に頼まれた仕事よ!!」
埋葬機関と天界に懇意な派閥は言わば水と油。埋葬機関は人間の敵を破壊する、対して天界に懇意な派閥は天界の名の元に悪を裁く。人間側なのか、天界側なのかの違いなのだが各々掲げる正義は全くの別なのだ。
「貴方達こそ状況が理解できてない!!第一、この駒王の現在の惨劇を引き起こしたのはコカビエルでは有りません!!
死徒27祖26位です!!ゾンビも改造人間も彼女の仕業だ!!」
シエルの言葉を聞いて、改めてゼノヴィアとイリナペアは勿論、リアス達も現在の状況を理解できた。そう、この惨劇を産み出したのはコカビエルではなく、死徒27祖なのだから。
そして…
「そろそろやろうか」
安全な所からDr.アラクは微笑む。彼女は事前に兵藤に魔術を仕掛けていた。兵藤が4本目の注射を接種して神器のリミッターを強制的に解除してパワーアップする時に魔術で気付かれないように縛りを課していたのだ。
「やりたまえ…我が王の復活だ」
Dr.アラク……いや、死徒27祖26位は指を鳴らした。
その結果。
「ッッ!?お前、暗示をかけられたのか!?」
悟が兵藤を見てそう叫び、速やかに刀を抜刀する。だが、遅い…遅すぎた。
暗示のお陰か、Dr.アラクが事前に仕掛けた魔術の影響なのか分からない。兵藤の力は一瞬で限界まで高められ…彼はその力をアルクェイド…いや、正確にはアルクェイドの中にある
『transfer』
籠手から響くドライグが力を発動させた事を知らせる音。その音が静寂を包み…
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁあ!!うっ!!あ゛あ゛!!」
アルクェイドは突如として胸を抑えて苦しみだし、倒れてその場で余りの苦しみのあまり、のたうち回り始めた。
「アルクェイド!!」
悟は速やかに刀を置いてはアルクェイドを介抱した。だが、悟の六眼は捉える。アルクェイドの中から何かが出ようとしていたのだ。
「はぁ…はぁ…うっう…」
アルクェイドの苦しみは突如として終わった。だが、悟の六眼は見てしまう。アルクェイドの中から霊体だが何かが出てきたのだ。その霊体はアルクェイドから離れた所に立ち止まると…地球からエネルギーを一気に吸収し、その霊体は肉体を瞬時に造り出した。
「なんだ…アイツ…」
六眼があるからこそ分かる。今、肉体を造り出したソイツは危険だ。いや、危険なんてレベルじゃない。1人で地球を制圧し、地球の全生命体を抹殺できる。
その存在は金色の髪をしており、朱い瞳を輝かせた男だった。肉体を作ったばかりの為か、衣類は纏っておらず…素っ裸だったが男は無から貴族風の衣類を産み出してそれを瞬時に纏った。六眼で見たから悟は理解する。それはアルクェイドと同じ空想具現化であったと。
「ふっふふ…ハッハハハハ!!最盛期には遠く及ばない!!だが、やっとだ!!やっとだ!!やっと私は手に入れたぞ。
地球の抑止力の影響を受けない…完璧な肉体をな!!ハッハハハハ!!」
男は叫んだ。そして男はその場から消える。速い、速すぎる…誰もがその動きを捉える事が出来なかった。
「ギャァァァあ!!」
その刹那、兵藤の叫びが響く。何事かと思った悟達だったが、兵藤を見て何が起きたのか理解できた。男が兵藤の首筋に噛みつき、血をゴクゴクと喉越しを鳴らしながら呑んでいたのだ。
「いでぇぇよ!!いでぇぇよ!!」
そこそこ血を呑んだのか、男は兵藤を解放する。赤龍帝の神器を宿した人間は宿した段階から龍の側面を宿し、兵藤の血はドラゴンの血でもある。
「クックク…龍種の血がこんなにも手軽に呑める時代とはな。ありがたい物だ。お陰で、失われた力をそこそこ取り戻せたぞ」
男の力が急激に上昇する。いや、戻ったと言うべきか。
「小僧。貴様、霊基が悪魔に成ってるのか。道理で我が眷属にならない訳だな」
男は興味深そうに兵藤を眺める。
『何故だ…何故、貴様が復活した!!朱い月のブリュンスタッド!!』
「む?その声はクソザコドラゴンのドライグではないか。イキってた割に、私に何度も殺されかけた小僧か。哀れな物だな」
ドライグは男を朱い月だと呼んだ。朱い月…文献だけだが、埋葬機関にはその詳細が伝わっている。朱い月のブリュンスタッドと言えば月の究極の一であり、全ての真祖のオリジナル。遥か昔、魔法使いに倒されたと言われていたが…その朱い月がまさかの復活を果たしてしまったのだ。
「あーあ、めんどくさいけど…一切の連絡が無かったから来てみたら」
その声が新たに響く。何事かと思った悟達だったが、駒王学園に新たな人物が現れたのだ。その人物は……剥げていた。もう一度言おう、ツルピカに剥げていた。ツルツルだった。そんなハゲ頭は何百もの悪魔の軍勢を引き連れていたのだ。
「魔王アスモデウス様!?」
そのハゲ頭は魔王アスモデウス。魔王ファルビウム・アスモデウスであり、世界最強の一角と称される人物である。
「君たち…めんどくさいの?はぁー眠い。あれ?コカビエルは未だかな?もしかして天界と堕天使に先を超されたのかな?」
悟達が知らない神仏の実在報道。当然、リアス達もその事を知らないのだ。
だが、朱い月はニヤリと笑みを浮かべてしまった。
「ほう…魔王か。面白い…私のリハビリ相手に丁度良いだろう」
朱い月は笑みを浮かべたまま、ファルビウムとその軍勢に近付いていく。その瞬間、ファルビウムの軍勢が砲撃の雨を降らせ、瞬く間に朱い月は砲撃の雨に撃たれて辺りを爆発が包みん混んだ。
「ふぁー、つまらない。しょせん、悪魔の敵じゃないね」
ファルビウムは大きな欠伸をしながら、爆煙に包まれた朱い月を眺める。生きてるわけがない。今の攻撃は神クラスと称される存在でも大打撃を与えることが出来るのだから。
「それはこっちの台詞だ。小僧」
風が吹き、爆煙が流れる。朱い月は無傷でそこに立っており、腕を大きく振り上げる。そして腕を思いっきり振り下ろす。その瞬間、腕を振り下ろした衝撃で莫大な衝撃波と真空の刃が発生し…その一撃で駒王学園の体育館は塵に変わり、ファルビウムとその軍勢達は死んだことに気付かず血潮を吹き出して骨片と肉片に変わって死滅した。
「あ…あっ…魔王様」
「そっそんな…」
魔王とは正に絶対的な存在。最強の存在。悪魔にとってのグランド。そんな存在がたった腕を振っただけで肉片にされた。余りの強すぎる異次元の存在を見て、リアス達悪魔陣営は言葉を喪ってしまった。
「さてと、私も地球の抑止力の影響を受けなくなった。だが、その前にだ…」
朱い月はそう告げ、アルクェイドを指差した。
「お前には用無しだ。真祖、我が子よ。創造主の1人として私が責任をもって殺してやろう」
「遠野君!!アルクェイドを連れて此処から逃げっ」
その瞬間…シエルの上半身と下半身は離れ離れに成った。血潮が吹き出し、その場に倒れるシエル。
そして…衰弱したアルクェイドの前に朱い月が迫り来る。朱い月は魔王さえ一撃で滅ぼした爪を立てて、アルクェイドに振り下ろす。だが、悟が刀を呪力で強化し、その腕を弾いた。
「悪いな…俺は彼女を殺してしまった責任が有ってな。彼女を死なす訳にはいかないんだよ」
「ほう…真祖を殺すか…だが、今の術氏に興味が湧いてきた。先ずはお前から殺すとするか」
ニヤリと笑みを浮かべ、朱い月はターゲットをアルクェイドから悟に変える。朱い月は過去、魔法の勉強不足で1人の人間に滅ぼされた過去を持っている。だから悟と戦い、今の術氏がどのような戦い方をするのか興味があるのだ。
(不味いな…なんとか、アルクェイドから俺に注意を向けたが…相手はあの朱い月。だとしたら術式も詳しいかもしれない)
悟は埋葬機関の幹部陣からボコボコに鍛えられたが、そこで1つ注意されていた。術式の応用が出来る人物なら、簡単に悟の空間防御を貫通できるのだ。
『遠野君。もし相手が領域展延を使ったら回避を優先しなさい』
埋葬機関第3位殺生院キアラは言っていた。術式の結界術の1つに領域展延と呼ばれる物が存在しており、領域展延は術者の周りに固有結界の膜を展開して相手の術式を中和してしまうという高等技術だ。それを使えば魔力砲撃や術式の攻撃に対し防御でき、固有結界の特殊効果も防ぐ事が出来る。但し、メリット尽くしだけではなく展延を使ってる最中は自身の術式が使えないのだ。
「さあ、こい…先手は譲ってやろう」
朱い月はそう告げて後方に三歩飛ぶ。三歩と言えど、軽く跳んだだけで50m程の距離だ。つまり、悟は朱い月からハンデを与えられた形である。
「悟……」
「行ってくる」
心配そうに見つめるアルクェイドにそう告げ、悟はゆっくりと動き出す。
「ノエル。私の下半身、早く、ください」
「仕方無いですね」
なお、シエルは不死身なので死んでおらず、ノエルに手伝って貰って下半身をくっ付けて治していた。
そして悟は地面を蹴り、空間を立体的に捉えたように複雑な動きで朱い月を翻弄しながら刀で斬りつける。
「なっなんなんだ!?あの動き!?アイツ、あの時より速い!?」
『アレはヒビトの体術。アイツ…余計な事を』
血を吸われ動けない兵藤の疑問に答えるようにドライグがそう言った。
悟は夢の200時間トレーニングで緋人から教わった七夜一族の体術。とは言え七夜一族が扱う物と違い、悟は空間操作を用いて空間を足場に使って跳んでるだけだ。七夜一族のように空間操作無しで立体的に空間を捉えて足場にするのは未だ出来ない。
「チッ!!」
だが、呪力で強化した二級呪具相応の刀では朱い月の身体に傷をつけられない。
「ふむ…速いな。だが、ただ速いだけじゃない。小僧、貴様は空間を操作してるな?」
朱いの瞳が輝き、悟は全身の毛が逆立った気が一瞬した。間違いない。朱い月は六眼を持つ悟と同じく魔力や呪力の流れを視ることが眼で出来るのだ。
朱い月は両手の爪を立て、両腕を使って悟を攻撃してくる。反撃なんて出来ない。悟はなんとか刀で弾く事しか出来ない。その上、悟が呪力を込めて強化した刀の刀身が悲鳴を上げている。もうじき、折れても可笑しくない。
「空間を操り、壁にしてるのか!!面白い…ならば領域展延!!」
やはり、朱い月は領域展延を使える。領域展延を用いた朱い月は爪で悟の日本刀を砕き、返しの左手で悟の顔面を引き裂こうと迫る。悟は咄嗟に空間操作の高速移動と空間を足場にして後方に跳んだ。空間防御で爪で起こる衝撃波や暴風は防げるが、朱い月の物理は防げない。
「くっ!!」
なんとか直撃は免れたが…悟の左頬に鋭利な爪で切り裂かれた切傷が出来た。あと少し…いや、もっと短い感覚でも跳ぶのが遅れたら悟の顔面は消しとんでいただろう。
「さあ!!次はどうする!!小僧!!」
朱い月の猛攻が迫る。
だが……
「なんとか間に合った…死人は人間では出てないね」
朱い月の攻撃を蛇腹剣が弾く。その蛇腹剣は破天であり、何時もと違い…赤い龍の甲殻で包まれており、性能が遥かに上昇している。そしてその破天を振るう緋人は極天聖典の魔導甲冑を纏っており……素顔の仮面が割れていて素顔が明らかに成っていた。
「先生の素顔が丸見え!!」
「マスクマンがイケメンだ!!」
「えっ…えっーーーもろ…もろタイプなんだけど!!」
上から悟、アルクェイド、ノエルの言葉である。
「さとるん。空間防御で皆を守れ。アイツが相手じゃ、君達を護りながら全力で戦えない」
「分かりました」
悟は緋人の言葉を受けて、アルクェイド達の所に移動して大きく空間防御を展開する。
「ほう…貴様…龍人か」
「元は人間だよ」
緋人はそう告げ、本気の禁手を発動させる。真の禁手と魔導甲冑を合わせた本気で戦う形態に変化し、彼は破天を振るう。
朱い月は破天の斬撃をいなし、領域展延を解除する。
「埋葬機関第1位…七夜家最後の1人!!世のため、人間の為、撃墜王 七夜緋人……参る!!」
両者が激突した瞬間、莫大な衝撃波で駒王学園は完全な更地に成った。
次回!!最強VS最強!!
駒王、完全終了のお知らせ。
番外編 アンケート
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三大勢力VS人間側チーム(ネタバレ有り)
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借金返済変わったバイト
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借金返済危険バイト(合法)
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借金返済駆除バイト
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FGOに殴り込み(さとるん、アルク)
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FGOに殴り込み(埋葬機関)
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FGOに殴り込み(高専1年生)
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FGOに殴り込み(全員)
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カニファン