ガンダム ビルド…ビビットアーミー艦隊これくしょん   作:黒瀬夜明 リベイク

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第14話 お遊び

そして撫子と深海のバトルは始まった。舞台となったのは、月が真上で輝く障害物が1つもない円形のコロシアムだった。

「ほお?円形闘技場とは、1対1の死合(しあ)いに持って来いではないか」

「………」

「さあ、黒野深海よ。死合(しあ)おうぞ!」

「Battle Start!」

「八乙女撫子。ヤオトメガンダム、参るぞ!」

「黒野深海。ガンダムディオリアス、出る」

そして、深海と撫子のガンプラが出撃した。そして、重力下では飛行できないヤオトメガンダムはすぐに地上に降り立った。障害物は一切ない。つまり敵は正面から向かってくる。ヤオトメガンダムは右手のビームグレイブを構え、ガンダムディオリアスが来るのを待っていた。だが、直後だった。

 

 

 

Dトランザム

 

 

 

「ん――」

撫子の耳が謎の単語を聞いた時、ヤオトメガンダムは先程まで立っていた場所から何かに押されてコロシアムの壁に叩きつかれた。

「な、なに!?いつの間に妾はここに!?」

撫子は正面下部モニターの損傷個所を確認した。両肘、両膝、左脇腹に五カ所、何かに突き刺された損傷があった。

「どういうことじゃ!?奴の機体は何処にも―――」

「目の前に居るぞ」

「!?」

その直後、先程まで何も映っていなかった正面モニターにガンダムディオリアスが姿を現した。

「黒野深海!貴様、いつの間に!?」

「答える義理は無いな」

そう言った深海のガンダムディオリアスは、ヤオトメガンダムの首を右手で掴んだ。その手に押されてヤオトメガンダムの頭部が若干上を向いた。ガンダムディオリアスはそのまま首を握る手をどんどん強く絞めていった。ガガガガ!とヤオトメガンダムがゆっくりと持ち上がっていく。

「な、なんてパワーじゃ!?」

そして、ガンダムディオリアスは振り向きながらヤオトメガンダムを地面に勢い良く叩きつけた。

「ぐわぁっ!」

撫子は何とかヤオトメガンダムを動かそうとしたが、関節を破壊されたヤオトメガンダムがまともに動くわけもなかった。

「貴様、姿を消して襲うなど卑怯じゃぞ!」

そしてガンダムディオリアスは腰からもう1本のナイフを取り出した。そして深海からの通信が入る。

「撫子。さっき言ったよな…」

「な、なにをじゃ!?」

 

 

 

 

 

俺の家族に何かしたというのなら、お前を殺すって

 

 

 

 

 

「!?」

そこで撫子が目にしたのは先程の姿、額右側に青白い炎を纏った黒い角を生やし、その下から血の様に赤くなった瞳を覗かせた深海の姿。ではなかった。

「お、お主…その姿は―――」

 

 

 

額の両側から(あか)黒い炎を纏った黒い大角が現れ、血よりも朱く染まった両目から大角が纏っているのと同じ紅黒い炎が揺らめき、両頬には深海海月姫の左目を覆う焼け焦げた鉄の様な痣が浮き上がった深海の姿だった。

 

 

 

(な、なんじゃこの殺気は!…いや、これはもはや―――)

そしてガンダムディオリアスはヤオトメガンダムの首を絞めたまま、ナイフを握った左手を掲げた。

 

 

 

殺人衝動ッ!!

 

 

 

キエロ

 

 

 

深海がそう呟くように言った直後、ガンダムディオリアスのナイフが目に映らない程の速さでヤオトメガンダムの胴体部に突き刺さった。

 

ガンダムディオリアスはその左手をすぐに持ち上げ、すぐまた別の場所へ突き刺した。

 

そしてまた左手を持ち上げ、別の場所を突き刺す。

 

そしてもう一度。

 

更にもう一度。

 

またもう一度。

 

続けてもう一度。

 

更に速度を速めてもう一度。

 

ナイフを振るう腕を速めてもう一度。

 

より深くもう一度。

 

更に深くもう一度。

 

早く深くもう一度。

 

抉り刺すようにもう一度。

 

捩じり刺すようにもう一度。

 

もっと腕を速めてもう一度。

 

更にさらにもう一度。

 

そしてガンダムディオリアスがヤオトメガンダムの胴体部をナイフで突き刺す速さはさらに加速していった。ヤオトメガンダムの胴体部からは破損によって飛び散ったプラスチックの破片が、返り血の様にガンダムディオリアスに当たり続けていた。

「な、なんという事をするのじゃ!?お、お主、これほどまでに怒っておったのか!?」

「………」

深海からの返答はない。ただただ、真顔で左手の操縦桿を前後に振り続けていた。

「あ、謝る!謝るから、これ以上妾のガンプラを壊すでない!」

「………」

しかし深海からの返答はない。撫子が喋っている間も、ガンダムディオリアスの左手は何度も何度もヤオトメガンダムの胴体部へと突き刺さっていく。そしてその光景は、撫子のメインモニターがしっかりと捉えていた。

「止めろ!止めてくれ!これ以上妾のガンプラを壊さないでくれ!」

「………」

ガンダムディオリアスの左腕は止まらない。回り出したら止まることを知らない歯車の様に、何度も何度もナイフを突き刺す。だが、その時だった―――

 

 

 

バキンッ!!

 

 

 

と、ナイフの刃が折れる音がした。その音が鳴った瞬間、遂にガンダムディオリアスの左腕は止まった。ガンダムディオリアスの眼下には何度も何度も何度もナイフで突き刺され、原形を留めない程にまでぐしゃぐしゃにされたヤオトメガンダムの胴体部があった。

「ふ、ふう……やっと止まりおったか。黒野深海よ、気は済んだか―――」

「―――!」

だが、それでガンダムディオリアスは…いや、深海は止まらなかった。ヤオトメガンダムの首から離した右手と、折れたナイフを捨てた左手が、今度はヤオトメガンダムの胴体に突き刺さったのだ。

「お、おい!もう止まるのじゃ黒野深海!これ以上やって何を得る気じゃ!」

「………」

そしてヤオトメガンダムの胴体部にめり込んだ右手が、やがて何かを掴み勢いよく胴体部から抜かれた。その手にはヤオトメガンダム胴体部のポリキャップと無数のプラスチックの残骸が握られていた。

「な!関節に使うパーツを抉り取ったじゃと!?」

すると今度は左手が無数のプラスチックの残骸を握りしめてヤオトメガンダムの胴体部から引き抜かれた。そしてガンダムディオリアスは更に残骸を抉るように取り出していった。

「おい!黒野深海、聞こえておるのなら返事くらいせえ!おい!」

「………」

だが、それでも深海の返答は無かった。それからしばらく、ガンダムディオリアスはヤオトメガンダムの胴体部をバラバラにし続けていた。そして今度は、ヤオトメガンダムの右肩アーマーとその肩口に手を掛けると、左手が握った右肩アーマーの接続部を捩じりながら、折った。そしてその右腕を投げ捨てると、次は左肩アーマーと肩口に手を掛け、同じように折って、投げ捨てた。

「止めるのじゃ黒野深海!妾が悪かった!謝る!全力で謝るから許してくれ!」

「………」

するとガンダムディオリアスは背中を向いてヤオトメガンダムの股関節部分。両脚部の接続部をその剛腕で折ると、両脚部を投げ捨てた。そして再び向き直ると、左脇腹に刺さっていたナイフを拾い逆手に持った。そしてそのナイフの刃先をヤオトメガンダムのメインカメラへと向けた。

「や、止めろ黒野深海!止めてくれなのじゃ!」

そしてメインカメラの正面にナイフの刃先を向けられた撫子は、恐怖した。いくらガンプラとは言え、メインカメラ。つまり目元にナイフの刃先を向けられているのだ。そして、今までの深海の行動から、何が起こるかは明白だった。そして、撫子の泣き叫ぶ声と共にナイフはメインカメラへと下ろされた。

 

 

 

わあああぁぁぁぁぁぁー!!!!!

 

 

 

そしてガンダムディオリアスはヤオトメガンダムの頭部を踏み潰しながら立ち上がり、月に向かって吠えるような態勢を取ったのだった。

 

「Battle Ended!」

 

ようやくバトルは終了となり、深海は元の姿へと戻っていった。バトルシステム台の上には、無残な姿となったヤオトメガンダムと、吠える様な態勢を取ったガンダムディオリアスがあった。そして撫子含め、そのバトルを見ていた全員は完全にフリーズした状態でその場に突っ立っていた。

「撫子」

不意に深海が撫子を呼んだ。撫子は反応が遅れたが、返答をした。

「……何でございましょうか?」

「二度と俺の家族にちょっかいを出すな。いいな?」

「御意にございますでありますで御座候」

「よろしい」

(語彙力が恐ろしいほど低下してる!?)

撫子の返事を聞いた深海以外のその場の全員が、同時に同じことを思ったのを知る者はいない。

 

続く

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