ガンダム ビルド…ビビットアーミー艦隊これくしょん 作:黒瀬夜明 リベイク
深海と大鳳、そしてアミオを乗せたキャンピングカーは5台ほど駐車できる駐車場に到着した。キャンピングカーを降りた深海たちは、その駐車場に隣接した白い壁に青い屋根の建物にやってきた。片開きドアの上の方には「スノウ」と書かれた看板が付いていた。
「ここは…」
「俺の行きつけの店だ。ここなら深と呼ばなくていいぞ。店長は俺の事、よく知ってるからな」
「あ、わかりました深さん」
そして店の扉を開け店内に入っていった。店内に入るとカランカラン!とベルが鳴る。正面にはバーカウンター、そしてその奥にはいろいろなお酒が陳列している棚があった。店内はオレンジ色の照明で照らされており、ゆったりとしたジャズが音量抑え目で流れていた。
「いらっしゃいま―――おお、深海に大鳳ちゃんか。よく来たな!」
「ああ。しばらくぶりだなマスター」
「お久しぶりです!」
カウンターバーには、眼鏡を掛けた170センチくらいのスッとした背格好のバーテンダー姿の男性が立っていた。
「紹介する、この店のマスターだ」
そして深海はアミオにマスターを紹介した。
「初めまして、アミオと言います!」
「ほぉ?お前が赤の他人のを連れてくるとは珍しいな。なんかあったのか?」
「まあな。全部母さんのせいなんだけど…」
「ははは!なるほどな、把握した!おおそうだ。お前の待合人、来てるぞ」
マスターは親指を立てて左側を指さした。そこにはカウンターの背の高い椅子に腰掛け、手でグラスを揺らすとにかく真っ白な長髪と、肌。真っ赤に染まった両目、そして額には2本の白い角を生やした白いワンピース姿の身長170センチくらいの女性が座っていた。マスターの声を聴いたその女性は顔だけをこちらに振り向かせて笑った。
「久しぶりだな、深海」
「ああ。待たせてすまなかったな中枢棲姫」
「え!?」
深海が告げたその女性の名前を聞いたアミオは思わず驚愕した。それもそうだろう、目の前に座ってお酒を楽しんでいる者が、深海棲艦を束ねる長である「中枢棲姫」その人なのだから。
「ん?深海、お前の後ろに立っている奴は誰だ?」
「ああ、母さんのせいで俺の話を聞きたいと言ってついてきたんだ。紹介するよ」
「あ、ああ、あみ、アミオです!どどど、どうぞよろしくお願いします!」
「フッ、そんなに緊張するな。取って食おうなんてしたりしなよ」
「説得力皆無。って言葉知ってるか?中枢棲姫」
「ん?アハハハ!それもそうだな!」
「中枢棲姫さんもお元気そうでよかったわ!」
「お前もいたんだな大鳳、元気そうだな!ほら3人とも座れ」
そして中枢棲姫の右隣りに深海、その隣にアミオ、そして中枢棲姫の左隣に大鳳が座った。マスターは早速注文を取りに来た。
「で、注文はどうするんだ深海?」
「俺はいつものを頼む」
「はいよ。てことは、大鳳ちゃんはノンアルカクテルだな!」
「はい。いつものノンアルカクテルをお願いします」
「ああわかったよ。んで、アミオ君。君はどうするんだ?」
「あ、僕はこのカクテルをお願いします」
「オッケ!んじゃ、ちょっと待っとけよ」
そしてしばらくして、3人分のグラスが運ばれてきた。マスターはそれぞれ3人の前にグラスを置いていった。
「お待たせ。んじゃ、ごゆっくり」
そう言い終わったマスターはカウンターバーの反対側は時に移動しそこで別のグラスを磨き始めた。
「それじゃあ深海、乾杯だな」
「ああ。乾杯」
そして4人はそれぞれのグラスを乾杯した。グラスが弾かれる音がジャズに交じって鳴り響く。それから4人はそれぞれのグラスに入った飲み物を少しだけ飲んだ。すると深海は早速、アミオに話を振った。
「それで、俺に聞きたいことってなんだ、アミオ?」
「あ、えっと。その、深海提督みたいに大切な人を守れる強い人間には、どうやったらなれますか?」
「……お前、初っ端からとんでもないこと聞いてくるんだな」
「あ!す、すみません!」
「まあいいが……」(俺の言った事が相当響いてるようだな……無理もないか)
そう言った深海はグラスに少し口を付けた。そして、そうだな。と言った後、少しだけ考えたような表情になった。
「……あの、深海提督?」
「………すまないアミオ。俺はその答えに、物理的な方法でしか答えられそうにない」
「は、え?ぶ、物理的な方法?」
深海の返答はアミオが予想していた内容の180度反対側な内容だった。
「ハハハ!実にお前らしい返答だな。深海」
「うるせぇ……俺は、この方法しか知らないんだよ」
そう言った深海はもうひと口、酒を飲んだ。
「アミオ。大切な人を守れる人間のなり方は、俺に聞くもんじゃないぞ?」
「え?」
「アミオと言ったか?
「ああそうだよ!俺はな、家族にちょっかい出した奴を叩き潰して倒すことしか出来ねぇんだよ!」
「は、はあ……?」(てうわっ!深海提督の顔、もう真っ赤になってるじゃないか!)
そして深海はグラスに入ったお酒をもうひと口飲んだ。
「だから俺のガンプラは、プラフスキーパルクールなんてもん付けてんだ!」
「ぷ、プラフスキーパルクール?」
「お前も見ただろアミオ。俺のディオリアスが何もない空間を蹴ったりすることで移動していたのを」
そしてアミオは思い出した。昨日と言い今日と言い、深海のガンダムディオリアスは足場になるような壁や地面がない場所を蹴ったり弾いたりすることで移動していたことを。
「あれは、ビルドバーニングガンダムの動きから思いついたんだよ。あのガンプラは、宇宙空間を蹴るような動きをしていたからな。機体の各所にプラフスキー反射パーツを取り付けたんだよ」
「な、なるほど。あの動きは、そんな秘密があったんだ」
すると大鳳が小さく笑った。
「うふふ…提督は相変わらずお酒に弱いですね。自分のガンプラの事、カミングアウトしてますよ?」
「え?………あ」
深海は再び、ポカをやらかした。そしてそのポカをやらかした深海の顔を見て、中枢棲姫は笑いをこらえるので必死だった。その後、深海は中枢棲姫と保護している海月のことや、最近の深海棲艦側の情勢について話し合っていた。
そして深海たちが飲み始めてから1時間が過ぎた時には、深海はカウンターに突っ伏せて寝息を立てていた。
「み、深海提督ってお酒に弱かったんですね」
「ええ。提督はそんなにお酒に強くないんですよね」
「それにしても、こいつの寝顔は子供の寝顔そのものだな。フフッ、普段は堅物だが可愛い一面もあるんだな」
「フフッ、そうですね中枢棲姫さん。マスター、お会計をお願いします」
「おお、少し待っててくれ」
そして寝息を立てる深海を大鳳が背負い、スノウ店内を後にした3人はキャンピングカーに乗り込んだ。眠ってしまった深海をベットに寝かせた大鳳は運転席に行くとキャンピングカーを出発させた。
「アミオさん。アミオさんの泊まっているホテルは何処なんですか?」
「あ、駅前の「ホテル海原」です。駅前で降ろしていただけると嬉しいです」
「わかりました」
それから数分後、キャンピングカーは駅前のロータリーに到着した。
「大鳳さん、中枢棲姫さん、今日はありがとうございました!」
「いえ、礼には及びませんよ」
「フッ、楽しかったぞアミオ。ではな」
「はい!ではまた!」
アミオはそう言ってキャンピングカーを降りていった。
夜の街に消えていったキャンピングカーを見送ったアミオの目にビビの姿が映った。どうやら、駅前でアミオの帰りを待っていたようだ。
「ビビ!?待っててくれたのか?」
「まあな。それで、いい話は聞けたのか?」
「うん。いろんな話を聞くことが出来たよ!有意義な時間を過ごせたと思う!」
「そうか。なら、さっさとホテルに戻るぞ。今夜はちょっと冷えるからな、風邪なんかひかれたら、たまらないからな」
「お、おい!待ってくれよビビ!」
そしてアミオとビビの2人はホテルへと戻っていった。
続く