ガンダム ビルド…ビビットアーミー艦隊これくしょん   作:黒瀬夜明 リベイク

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第25話 低軌道会戦(後編)

「ビビ、大丈夫か!」

「ああ。左腕を持っていかれたが、まだ動ける!」

「わかった。じゃあミモザたちと合流を―――」

アミオがそう言った直後、超巨大なビームの極光が宙域に出現した。それはディオリアス・改が放った。最大出力のヴァリアブルバーストライフルの光だった。

「何だあの光は!?」

「…おいアミオ!ミモザとクレアの反応が消えたぞ!」

「なんだって!2人が…墜とされたのかよ」

ミモザとクレアの撃墜に悔しそうにするアミオ。だが、アミオはすぐに気持ちを切り替えた。

「行くぞビビ!2人の仇を取るぞ!」

「ああ、勿論だ!」

「左腕がないんだ、無理だけはするなよ!」

そう言ってアミオとビビは深海の元へと向かった。

 

「はぁ…はぁ…あの2人がここまで強くなっているとは……」

深海はディオリアスウイング・改をバックパックのウイングバインダーに戻すと、息を整えていた。

(それにしてもマズいな。高度を下げ過ぎた)

そして深海は自分の現在位置を確認して、少し冷や汗を流していた。今回深たちが戦っているのは低軌道宙域。下手をすれば、大気圏に落下してしまいそのまま機体が燃え尽きてしまって撃墜判定を受けてしまうのだ。もっとも、耐熱フィールドやGNフィールドなどを起動すれば突破出来ないわけではないが、元々そう言った機能をガンプラに付与するビルダーはかなり少ない。そして深海のディオリアス・改もそれに準ずる装備は備えていない。

「今の内に高度を上げておくか……クッ!機体が重い!」

深海はディオリアス・改の何とか上昇させようとスラスターを噴かす。しかし、重力に引っ張られて高度はほんの少しずつしか上がる様子は見られなかった。深海は正面モニター端に映し出されて高度メーターを見ながら、やはり駄目か。と内心で呟いていた。そして、深海の耳が接近警報が鳴り響く音を捉えた。

(撫子を下したか…流石あの2人と言ったところだな)

ディオリアス・改のメインカメラが接近してくるフェネケースジャックと左腕を失ったサザビー・アサルトを捉えると、深海はほんの少しだけ笑みを浮かべた。

「撫子…いい仕事だ!」

そう言った深海はディオリアスウイング・改をすぐに射出した。バックパック左側のストライクフリーダムガンダムのウイングバインダーが展開すると、4基のディオリアスウイング・改が飛び立ち、ヴァリアブルバーストライフルの銃口に接続された。そしてバインダーからは青白い光、「ヴォワチュール・リュミエール」が展開されるとディオリアス・改はその高度を先程よりも更に早く上げ始めた。そして、フェネケースジャックとサザビー・アサルトの元へ向かって行ったのだった。

ここで決着をつけてやる!

 

一方のアミオたちもその視界にディオリアス・改を捉えていた。

「いた!深海さんの機体だ!」

そしてディオリアス・改がディオリアスウイング・改を射出したのを確認したアミオは、それに応じるようにフィンファンネルを展開した。

「行くぞビビ!今度こそ、深海さんに勝つぞ!」

「勿論だ!」

フェネケースジャックとサザビー・アサルトの2機はスラスターを噴かして増速し、ディオリアス・改との距離を一気に詰めにかかった。

「まずは私から行くぞ、アミオ!」

「ああ、わかった!」

サザビー・アサルトが前と出る。サザビー・アサルトは残された右手に握るビームライフルを腰裏にマウントすると、右腕に内蔵されたビームサーベルを抜き放った。

(どうせ射撃戦では埒が明かないんだ。なら、格闘戦で仕留めてやる!)

そのサザビー・アサルトの姿を見た深海は腰裏から右手にナイフ、左手には右腰サイドアーマーにマウントされた円筒状のビームサーベルを抜き放った。

(前の時に射撃戦で負けたんだからな。格闘戦で来るのは当たり前か…なら、応えるまでだ!)

深海はそう心で叫ぶと一気に加速した。そしてディオリアス・改とサザビー・アサルトの緑のビーム刃と黄色のビーム刃がぶつかり激しい火花を散らせる。

「まだまだぁ!」

サザビー・アサルトはビーム刃がぶつかったのち、軽く後方に下がると再び前進、右上段からの縦斬りを放ってきた。ディオリアス・改はそれを左手のビームサーベルを真上に掲げることで防いでみせた。

「片腕1本でよくやる!」

「以前までの私と同じと思うなよ、行方不明の英雄!」

「フッ、望むところだ!(いい加減名前憶えてくれよ…)…っ!」

そしてビビは、ここぞとばかりに腹部の拡散メガ粒子砲のチャージを始めた。その事に気づいた深海は直後に左足でサザビー・アサルトを蹴り飛ばした。

「ぐうっ!」

深海のディオリアス・改はその蹴りの衝撃を利用しその場でバク転をした。サザビー・アサルトの拡散メガ粒子砲はチャージの途中で蹴りをくらった事で発射シーケンスが停止したらしく発射されることはなかった。そしてバク転の最中であるディオリアス・改にフィンファンネルが襲い掛かった。

「攻撃の隙は与えませんよ、深海さん!」

「アミオか!」

フィンファンネルの砲口からメガ粒子砲が発射されるとディオリアス・改はプラフスキーパルクールを使ってジグザクな軌道を描いてフィンファンネルの砲撃を回避していた。そしてその隙に体勢を整えたサザビー・アサルトは再び拡散メガ粒子砲をチャージしていた。

「くらいやがれ!」

チャージが完了された収束モードの拡散メガ粒子砲が発射され、ディオリアス・改に迫った。しかし、ディオリアス・改はフィンファンネルの回避の最中、身を捻ったような態勢にあっても左足で足元を蹴ることで回避してみせた。

「これも避けるか!」

「今度はこちらから行くぞ!」

深海はヴァリアブルバーストライフルの銃口に接続していたディオリアスウイング・改を4基纏めて射出した。分離したディオリアスウイング・改が螺旋を描くように飛び立つと、それらは一斉にサザビー・アサルトの元へと向かって行った。

「くうぅっ!」

サザビー・アサルトの四方から攻撃を仕掛けてくるディオリアスウイング・改。ビビはこれらの攻撃を何とか回避しようとしていたが、数発を回避できず右肩アーマー、右腰、左脹脛、両脚先に被弾を受けた。

「グワッ!」

「ビビ!」

「合流などさせんぞ、アミオ!」

サザビー・アサルトが被弾したことに気づいたアミオだったが、ディオリアス・改がヴァリアブルバーストライフルを撃ってきたことで足止めをくらってしまった。

「くそっ、ビビッ!

ヴァリアブルバーストライフルを撃ちながらフェネケェースジャックに接近してくるディオリアス・改。フェネケェースジャックはシールドを構えたままバーストビームライフルを撃ち返した。

「くそ、しつこい!グッ!」

ディオリアスウイング・改は更にサザビー・アサルトの右側のV字アンテナと側頭部、胸部左側、右側のフロントアーマーに被弾を受けた。何とかディオリアスウイング・改を撃ち落とそうとビームライフルを撃つが、深海の操るディオリアスウイング・改の動きに長銃身のビームライフルでは照準が追いつけなかった。

(このままじゃビビが墜とされる!くそ、こうなったら!)

だが、アミオはビビがそのまま墜とされるのを静観する程の男では既になかった。心の中である決心を示したアミオは、手元の武装スロットを操作しフィンファンネルのターゲットをディオリアス・改から変更した。

「なんだ?フィンファンネルが―――」

 

 

フィンファンネル!ビビを護るんだっ!!

 

 

先程までディオリアス・改に砲撃を行っていたフィンファンネルが一斉にサザビー・アサルトの元へと向かうとサザビー・アサルトの周囲を取り囲むように展開、開放型のバレルの角度が大きくなると、サザビー・アサルトを中心にしたピラミッド型のビームバリアを作りだした。バリアが展開されたことで、それまで被弾を続ける一方だったサザビー・アサルトにディオリアスウイング・改のビームが直撃することはなくなった。

「ファンネルバリアか!?なら直接ファンネル本体を叩くまで―――」

深海が一瞬、フェネケェースジャックから目を離した隙をアミオは見逃さなかった。

 

そんな事、させるかよぉッ!!

 

直後、深海の耳がフェネケェースジャックの接近を告げる接近警報を捉えた。深海が視線を元に戻すと、フェネケェースジャックは既にディオリアス・改に衝突間近な距離まで接近を許してしまっていた。フェネケェースジャックはそのままディオリアス・改に衝突した。

「ぐわっ!」

 

うおおおぉぉー!!!

 

そして、衝突の衝撃にも怯むことなくフェネケェースジャックはそのままディオリアス・改の両腕を抑え込むと眼下の地球へ向かって落ちていった。それの光景を見たビビは、アミオに向かって叫んでいた。

「っ!?アミオッ!お前、何をする気だ!」

だが、アミオからの返事はなかった。

「くそっ、振り解けない!」

そして深海も、フェネケースジャックに組み付かれたことで身動きが取れずにいた。すると遂に、高度メーターが復帰限界高度を示した。その事に気づいた深海はその青い目を見開き、今日1番の驚愕を味わった。

「っ!お前まさか、このまま大気圏に落ちるつもりかっ!?」

低軌道宙域での戦闘において、戦闘不能となる条件は「撃墜される」「場外となる」の2つだが、これは大気圏に落ちた場合も場外判定となる。だが、一部例外が存在している。それが大気圏の突破に成功した場合で、戦闘に復帰は出来ないが場外判定とならない。という物だ。

「正攻法で深海さんには勝てるとは思っていませんでしたからね……僕はバトルが始まった時、最後の手段として大気圏に突入して相打ちにする事も考えていました」

「相打ち?……っ!まさかお前の機体は―――」

「ええ。大気圏を突破することは出来ませんよ。でも―――」

深海はアミオがグッと操縦桿を握りしめたことに気づいた。そして、アラートが鳴り響き続ける中、アミオは叫んだ。

 

 

 

それでビビを護ることが出来るならッ!!!

 

 

 

「っ!!」

その瞬間、アミオはフェネケースジャックのスラスター推力を全開にした。大気との摩擦で徐々に各部が燃え落ちていくディオリアス・改とフェネケースジャック。そして、アミオの叫びを聞いたビビはハッとした。今アミオは、自分を護る為に戦っている。数年前までは逆の立場であったビビは、この時初めて「護られている」という事を感じ取ったのだった。

(アミオ……)

だが、不思議と悪い気はしなかった。紅い流星となって蒼い地球に落ちていくディオリアス・改とフェネケースジャックをビビはただ眺めていることしか出来なかった。

 

そして、機体が燃え尽きる直前。深海はそんなアミオを見て口元に笑みを浮かべた。

「流石、俺と同じ心の強さを持った―――」

「え―――」

深海が最後まで話すよりも先に、ディオリアス・改とフェネケースジャックの2機は紅い流星となって消えていった。

 

続く

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