ガンダム ビルド…ビビットアーミー艦隊これくしょん 作:黒瀬夜明 リベイク
クレアに呼び止められた深海はその場で脚を止めると、クレアの方に振り返った。
「どうしたんだクレア?」
「あ、あの…深海提督さんはこの後お時間あるっさ?」
「ん?まあ、後は基地の宿舎に戻るだけだから時間はあるが……どうしたんだ?」
そう尋ねられたクレアは少しだけ、言葉を詰まらせていたがやがて口を開いた。
「ちょっと、深海提督さんと話がしたいのっさ」
「クレア?」
その話を聞いたアミオが反応した。アミオも過去に深海との話す機会があった為、少し気になったのだろう。だが、ビビはそんなアミオの手をグイッ!と引っ張った。
「うわっ!」
「ほら帰るぞアミオ。日が暮れる」
「ちょ、ちょっとビビ!引っ張らないでくれよ!」
「じゃあなクレア、行方不明の英雄。私らは先に帰るから」
「あ…さ、さよならっさ!」「ああ。またな(名前……)」
そう言いながらビビはアミオを引っ張って駐車場へと消えていった。そして店の前に残された深海とクレアの2人。少し気まずい空間がその場に広がっていたが、深海が店の前にあるベンチに向かって歩いていったことでクレアは慌てて深海に声をかけた。
「し、深海提督さん、何処に行くっさ!?」
「ん?そこのベンチだ。そこで話を聞こうと思ったんだが…」
そう言った深海は1つのベンチを指さしたが、クレアはそれを聞いて黙り込んでしまった。そんなクレアを見た深海は不思議そうに首を傾げ、尋ねた。
「どうした?」
「あ、あの……」
「?」
そしてクレアは少しだけ、ほんの少しだけ顔を赤らめて言った。
私の家で、お話がしたいっさ!
深海は思わず、は?と言ってしまったのだった。
その後深海は基地の守衛に連絡を入れ、更にその後撫子に連絡を入れて自分たちがガンプラバトルアリーナ「ノブリス」に停めた車を取りに来るように頼んだのだった。連絡を入れ終えた深海は、クレアの運転で彼女の自宅へと向かうことになった。クレアの自宅は今でも高校時代と変わらずブルービーチ・シティの下町にある狭い安アパートだ。そしてクレアの運転する車はアパートの駐車場に到着した。車を降り、アパートのとある部屋の前に辿り着いた。
「ここがお前の家か?」
「はいっさ。今、鍵を開けるっさ」
クレアが鍵穴に鍵を差し込み、鍵を回す。ガチャン!という音と共に扉の鍵が開き、クレアが玄関の扉を開けた。
「どうぞ上がってほしいっさ」
「ああ。お邪魔するぞ」
深海が先に部屋へ上がり、クレアが扉を閉めた。クレアがそのまま玄関を施錠している間に深海はリビングへと足を踏み入れていった。リビングに足を踏み入れた深海は室内を見まわした。部屋は綺麗に整頓され、奥にはベットと一体化した本棚、その前には小さなテーブルとその向かい側に小さいテレビがあった。そして後ろを振り返ると、部屋の入り口上に日本でもよく見かける神棚が飾られていた。
「神棚か…」
「深海提督さん、もしかして少し驚いたっさ?」
「まあな。ビビッ島でも神棚があるとは思わなかったよ…何か信仰でもしてるのか?」
「いえ、朝と夜の寝る前に拝んでいるだけっさ。それよりも、好きな所に座ってくださいっさ」
「ああ。すまないな」
そう言って深海は壁沿いにベットの方を向いて胡坐をかいて座った。クレアはその反対側、テレビに背を向けて座った。そして早々に深海が話を切り出した。
「それで、話ってのは何なんだ?」
「あ、はいっさ。その…深海提督さんは、どうしてガンプラバトルを始めたのっさ?」
「…どういうことだ?」
深海はクレアの投げかけてきた質問の意図を読み取ることが出来ず、聞き返した。するとクレアは語りだした。
「私がガンプラバトルを始めた理由は、私の兄がガンプラバトルの大会で優勝したことが理由っさ。いつか私も、兄の様になりたいってガンプラバトルを始めたっさ」
「………」
「でも、深海提督さんは私とは全然違う立場の人間っさ。だから、それを知りたいと思ったっさ!」
「……最初は、娘たちと一緒にガンプラバトルをする為だった」
「え!?」
深海から返ってきた言葉に思わずクレアは大きな声を上げてしまった。しかし深海の言葉は続いた。
「だが、その理由もすぐに消えてしまったよ……もう今では、家族を護る手段に成り下がっている」
「家族を護る手段……という事は、深海提督さんは心の底からバトルを楽しんだことはないってことっさ?」
「いや、お前たちのような友人や家族とのバトルは別だ。現に今日は凄く楽しませてもらったからな…だが俺にとって、ガンプラバトルは家族を護る為の手段。ガンプラは家族を護る為の道具でしかない」
「………」
上を向きながら発せられた深海の言葉に、クレアは思わず消沈してしまった。それを見て深海はフッと小さな笑みを浮かべながら尋ねた。
「ガンプラを道具としてしか見ていない俺に、流石に引いたか?」
「少し引いてしまったっさ」
「まあいいさ。普通にガンプラバトルを楽しんでいるお前たちには、到底理解なんかされないってずっと思っていたからな」
「じゃあ深海提督さんは迷ったりしないっさ?」
そしてクレアは、深海に対して1番聞きたかったことを尋ねた。
「…俺は迷ったりしない。迷っている間に何かを……誰かを失ってしまうかもしれないからな」
「誰かを失う?それはどういう事っさ?」
「言い方が悪かったな。大切なもの、と言った方が良かったな」
「大切なもの……」
「もしお前が今、何かに迷っているのなら俺の言った事を鵜呑みにしては駄目だ。お前はお前自身の考え……心が信じたことをやり通せばいい………なんて、俺のガラじゃないな。ははは…俺は戦うことしか知らないのにな」
「深海提督さん……」
「神様に向かって手を合わせてるお前に言うことではないのかもしれないが、俗に言う「心に従え」ってことだ」
「なるほど……ありがとうっさ深海提督さん!」
「俺は自分の考えを言っただけだ。大したことは言ってないよ」
「そんな事はないっさ!とても為になる話だったっさ!」
「そうか……」
深海はクレアがそれ以上何も言わなくなったことを確認すると、その場からスクッと立ち上がった。
「話はこれで終わりか?」
しかし、クレアは立ち上がり玄関の方へと歩いていく深海を慌てて呼び止めた。
「あ、ちょっと待ってほしいっさ!」
「ん?まだ何か―――っ!」
深海がクレアの方に振り返った直後、深海にクレアが飛びついてきたのだ。流石の深海もこれには驚きを隠すことが出来ず、思わず目を丸くしてしまっていた。
「お、おいクレア!いきなり何をするんだ!?」
「しばらくこうさせてほしいっさ」
「どういう意味だよ!?」
「ごめんなさいっさ。でも、深海提督さんと話してたら…お父さんが恋しくなってしまって」
「父親が?」
深海が尋ねると、クレアは14歳で交通事故で両親を失った事。高校に入学した時からずっと1人ぼっちで過ごしてきたこと。故に父親の様に話をしてくれた深海に亡くなった父親の面影を感じてしまったことを深海に語った。その話を聞いた深海は、右手でクレアの青い髪を撫でたのだった。
「っ!」
「お前も辛い思いをしていたんだなクレア。今日まで1人でよく頑張ったな、偉いぞ」
「み、深海…提督さん……」
「大丈夫だ。今は俺が一緒にいてやる…だから寂しくないだろ?」
「うっ……うう…深海……提督さ…んっ……うううっ」
うわああぁぁぁぁぁー!!!
今まで心の奥底に溜めていた寂しさが一気に押し寄せてきたクレアは深海に抱き着いたまま泣き崩れてしまった。深海は優しく、よく頑張ったな。と囁きクレアの髪を優しく撫で続けたのだった。
続く