ガンダム ビルド…ビビットアーミー艦隊これくしょん 作:黒瀬夜明 リベイク
結局その後、クレアは深海に抱き着いたまま泣き疲れて眠ってしまった。深海はそんなクレアをベットに寝かせると部屋の電気を消し、自分は部屋の隅っこに座り込んだ。今は一緒にいてやる。と約束をした上に、女性の家の鍵を開けっぱなしにして帰る訳にもいかない。と深海は思ったからだ。
(明日の6時には帰らないといけないからな。すまない、クレア)
深海がそう思った時、彼の目に1つの写真立てが目に入った。先程話をしている時には気づかなかったが、テレビが置かれている台にポツンと1つ写真立てが置いてあったのだ。気になった深海はその写真立てに手を伸ばした。そこにはクレアともう1人、暗くて少々分かりにくいが男性だろうか。2人のツーショット写真が入っていた。
(ふむ…今のクレアに容姿が似ているな。という事は、兄との写真じゃないな……)
写真を手に取った深海は考えを巡らせた。
(さっきまで一緒にガンプラバトルをしていた
深海は考えを巡らせていく中で、ある1つの考えに行きついた。
(クレアにとって大切な人物なのかも知れんな…もしかしてクレアが悩んでいたのは……)
そう考えた深海は寝息を立てるクレアの方を向いた。しばらく視線を向けていた深海は、何かを感じたのか口元に笑みを浮かべた。そして深海は部屋の真ん中にあったテーブルの上に置かれたメモ帳に自分の連絡先を記入し、何か相談があれば連絡してくれ。と文章を添えた。そして深海は撫子に連絡を取った。
「……撫子、まだ起きているか?」
「深海か。どうしたのじゃ?車なら、ちゃんと回収しておいたぞ」
「ああ、すまないな。撫子、明日の朝5時にブルービーチ・シティのブルーアパートまで迎えに来てくれるか?」
「お主、なんでそんな場所におるんじゃ?」
「クレアと話をしていたんだ。それで、迎えは頼めそうか?」
「うむ、任せておけ」
「ありがとうな」
深海は電話を切ると、部屋の隅に座るとしばらく仮眠を取ったのだった。
そして翌日。
「……そろそろか」
午前4時半に目を覚ました深海は、もう1枚メモ用紙を千切ると、クレアに対して書置きを残した。そして書置きを書き終えたのと同時に撫子から、到着したぞ。とメールが届いた。深海は机の上に置かれた鍵を取ると、玄関に向かった。そして内側の鍵を開けると目の前に撫子が立っていた。
「待たせたな深海」
「撫子、もう1つ頼みがある。外から鍵を掛けたら移転の技で部屋に鍵を返してきてくれないか?」
「それくらいならいくらでもしてやるさ。先に車に向かっておいてくれるかの?」
「ああ、わかった」
そう言って深海は玄関の扉に鍵を閉めると撫子にその鍵を渡した。撫子は鍵を受け取るや否や、移転の技を使った。深海はクレアの眠る部屋の方を向いて呟いた。
幸せになれることを願ってるぞ
そう言って深海はクレアのアパートを後にした。
「う……うーん」
深海がアパートを去ってから4時間が立った午前9時頃、クレアはゆっくりと目を開けた。照明は暗いままで、誰かが出入りした形跡はほぼ無いままだった。クレアは目を擦りながらゆっくり体を起こした。そして、ボーっとしたまま電気のリモコンを取ると照明をつけた。
「うーん……深海提督さん、おはようっさ……」
クレアが眠そうに深海に朝の挨拶をした。だが、返事は返って来る筈もなく部屋は静まり返っていた。
「……あれ?深海提督さんは……」
クレアがベットから立ち上がると机の上に2枚のメモ用紙、深海の書置き。が置かれていた。クレアはその書置きの内の1枚である、言伝が書かれた方のメモ用紙を手に取った。
クレアへ
すまないが、俺は仕事があって先に出させてもらった。玄関の鍵は撫子に頼んで部屋に返しておいたから安心してくれ。お前と話が出来て楽しかった。またいつか会おう。
Ps.
勝手ながら、お金と連絡先を置いていくことにする。好きに使ってくれ。お前の父親にはなれないが、せめてもの手向けだ。幸せにな。
深海より
「………」
クレアはもう1枚の書置き、深海の連絡先の紙を手に取った。するとその下から、深海が置いていったのであろう1万円札が姿を見せた。そしてその1万円札を見ながら目に涙を浮かべていた。
「ズルいっさ……本当に、お父さんみたいな事して………うっ……」
しかし、クレアは涙を流すことはなかった。
ありがとう……
クレアは口元に笑みを浮かべたのだった。
続く