ガンダム ビルド…ビビットアーミー艦隊これくしょん   作:黒瀬夜明 リベイク

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第29話 出港

深海がクレアの家を後にしてから5時間が経った午前10時頃、基地の正門に1人の男がやって来た。アミオである。

「ふぅ…何とか深海さんの出発時間には間に合ったか」

今回はビビは付いてきてはおらず、アミオ1人だけがこの場にいた。そして基地の正門をくぐろうとした時、アミオのよく知った声がアミオを呼び止めた。

「アミオ、そこで止まるのじゃ」

「うわっ!撫子じゃないか、何でこんな所にいるんだよ!」

声の正体は撫子だった。正門の陰から出てきた撫子はアミオの前に立ちふさがり、その行く手を遮った。

「お主、まさかこの基地に入るつもりか?」

「そ、そのつもりだけど。一体何の用―――」

「はぁ…お主の様な一般人が、公開日でもない軍の基地に容易くは入れると思っておるのか?」

撫子は大きなため息と共に、アミオに呆れかえった。撫子の言う通り、いくら戦争中ではないとは言え、軍事施設であるこの基地に一般人のアミオが立ち入れるわけもない。

「え?」

「やはり何も考えておらなかったようじゃな。よいかアミオ。ここは小規模と言えど軍事基地じゃ、そんな所に何の理由もなく一般人であるお主が入れることは不可能じゃ…やはり深海(あやつ)の予想は的確じゃな」

「深海さんは、僕が来ることを知ってたのか?」

「ああ。あいつは必ず来る。と言っておったぞ」

(マジかよ…)

アミオは自分が深海に会いに来ることを完全に見透かされていたことに驚きを隠せなかった。

「まあ、そう言う訳じゃから基地に入るのは諦めてくれ。その代わり、深海からの言伝を伝えよう」

「深海さんからの言伝だって?」

「ああ。10時半にこの×印が付いているところに来い。とのことじゃ」

そう言って撫子は基地の裏手に赤線で×印が書かれた基地周辺の地図をアミオに渡した。アミオはそれを受け取り、場所を確認した。

「では妾はもう行くぞ。深海の奴(あやつ)がお主に何を伝えるかわからぬが、行ってみることじゃな」

撫子はそのまま踵を返し基地の内部へと戻っていった。アミオはそんな撫子の背中を眺めてながら一言ポツリと呟いた。

「深海さん、何から何まですみません」

 

 

そして時間は過ぎ、午前10時半。アミオは撫子から渡された地図の地点で深海を待っていた。そこはフェンスによって基地と隔てられた場所だが、ゴミ搬出用なのだろうか一ヵ所だけ扉が設けられていた。そして待つこと数分、基地の奥から深海が姿を見せこちらに向かって歩いてきた。

「あ、深海さん!」

アミオがそのことに気づき手を振った。しかし深海は反応することなく、足早にフェンスに到達すると扉を開けアミオの前に立った。

「やはり来ると思っていたぞ。アミオ」

「もしかして、それも予測済みだったんですか?」

「まあな。それで、俺に何の用だ?」

早速深海が話を切り出した。輸送船の出向まで時間がないからか、余計な話はしようとしない様子だった。アミオもそれを察してか、すぐに話を切り出した。

「あ、今までのお礼をしようと思って」

「………」

「深海さん、昨日は僕の無茶ぶりに応えてくれてありがとうございました」

「いや、暇だっただけだから気にするな」

「でも、本当に伝えたいことはそんな事じゃないんです」

「なに?」

深海が不思議そうな目でアミオを見上げていると、アミオは右手を前へと差し出した。

「深海さん―――」

 

 

 

僕をここまで強くさせてくれて、ありがとうございました。

 

 

 

「……フッ」

深海はそう言ってアミオの差し出した右手に自身の左手を重ね、2人は熱い握手を交わした。

「僕がここまで強くなれたのは深海さんのおかげです!本当に感謝しています」

「俺はただきっかけを作っただけだ。ここまで強くなれたのはお前自身の力だ、アミオ」

「それでも。今の僕があるの深海さんのおかげです。だから、いつか僕も深海さんの様に―――イテッ!」

だが、アミオが自分も深海の様になりたいと言い出そうとした時、深海はその言葉を遮るように、握手していた手を強く握り締めた。痛さのあまり、アミオはその手を放してしまった。手をブンブンと降って痛みをなくそうとするアミオに、深海は告げた。

 

 

俺の様になりたいとは思うな、アミオ

 

 

それを聞いたアミオは思わず、え?と零した。深海は続けた。

「俺は今までに何人もの人間を殺してきた。それは生きる為にだ。理由はどうあれ、それでも俺はただの人殺しだ。俺は、他人を傷つけることでしか大切なものを護ることが出来ない男だ」

「み、深海さん」

「だからアミオ。強くて優しいお前は、俺の様になりたいと思わないでくれ。俺にはない暖かい優しさを持つお前なら、俺の様な指針は必要ない筈だ」

そう言った深海は再び左手を前へ出した。

「だから頼む。俺の様な「冷たい優しさ」を持つ男にならないでくれ」

そう言った深海の表情は少しだけ暗かった。だが、そんな深海が伸ばした左手をアミオはすぐに握り返した。

「それは違いますよ深海さん。深海さんだって暖かい優しさを持った人です」

「なに?」

「過去の自分を変えることは出来ません。でもそれが、今の深海さんと関係しているとは思えないんです。だってあの日、深海さんの家族と一緒に食事を囲んだあの時―――」

 

 

深海さんの家族は、みんな暖かい笑顔だったから

 

 

「………」

「そんな家族を作れる人が「冷たい優しさ」を持つ男だとは思えません!」

「アミオ…」

「だから僕は、そんな深海さんの様な暖かい優しさを持った男になってみせます!ビビと一緒に!」

アミオの言葉に深海は言い返せなかった。だが深海は、不思議と嫌な感じにはならず寧ろ口元に笑みを浮かべていた。

「…お前からそんな事を言われるとは思わなかったよ」

「あ、ご、ごめんなさい深海さん。偉そうなことを…」

「いや、いいさ。感謝するよアミオ」

そう言った深海はアミオと強い握手を交わした。そして、気が付けば時間は11時になっていた。

「そろそろ俺も戻らないといけないな」

深海はそう言ってアミオとの握手を止めた。

「あ、そうなんですか。本当に色々、ありがとうございました」

「ああ。こちらこそな……そうだ」

深海が、何かを思い出したような呟きを耳にしたアミオは、え?と深海に聞き返した。すると深海は―――

「アミオ、ミモザに連絡は取れるか」

「え?ミモザにですか?連絡出来ますけど……」

「なら頼めるか?少し、忠告したいことがあってな」

「はぁ…?」

そう言ってアミオはスマホを取り出し、ミモザに電話を掛けた。しばらくして電話がつながりアミオがミモザと話し始めた。

「それで、私に何の用事なのアミオ?」

「用事があるのは僕じゃなくて深海さんだよ。今代わるから」

「え?あの人が私になんの用なのよ?」

そう言っていたミモザだったが、アミオがスマホを深海に渡すと深海はすぐに話し始めた。

「ミモザか?」

「どうしたのよ、私に一体なんの―――」

「時間がないから手短に伝える」

深海はミモザの言葉を無視して言い放った。

 

外出時くらい下着は付けろ

 

「「………え?」」

アミオとミモザは同時に鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしていた。

「日本に来た時から気づいてはいたが、お前ももう大人だろう。自分の身は最低限守れるようにしておけ」

「ちょっ!何でそんなことわかんのよ!?」

「お前の身体の動かし方だ。それで分かった」

「ちょっと!意味わかな―――」

「これは忠告だ。その事が原因でお前が痛い目に合うのは、知人として俺も嫌だからな。まあ、どうするかはお前次第だがな。ではな、俺は今から日本に帰る」

「ちょっと!待ちなさいって―――」

ブツッ!と深海はミモザを完全無視して電話を切った。そして深海はアミオにスマホを返した。

「すまなかったなアミオ」

「い、いえ…だ、大丈夫…です」

アミオは依然として困惑したままだった。黒野深海という男は、どうも忠告をすぐしたがる性格なのである。そして今回の件もそれが原因でこうなったのだ。しかし、深海は気にする素振りを見せず基地に戻っていこうとした。

「あ、深海さん。もう行かれるんですね」

「ああ。出航の準備があるからな」

「深海さん!」

アミオは深海を呼び止め、大きな声で伝えた。

 

 

 

またいつか、会いましょう!!

 

 

 

アミオの言葉を聞いた深海は口元に笑みを浮かべ、告げた。

 

 

 

勿論だ

 

 

 

そう言って深海は基地の奥へと消えていった。そして、深海と撫子の2人はビビッ島を出港したのだった。

 

続く

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