ガンダム ビルド…ビビットアーミー艦隊これくしょん 作:黒瀬夜明 リベイク
宇宙空間を進むアミオたち4機のガンプラ。アミオが駆る「Jガンダムエース」は、アミオの以前からの愛機である、頭部が「ガンダムTR-1 ヘイズル2号機」になっていてそれ以外はジェガンの機体構成となっているベース機体を経年劣化したパーツを新品のものに交換し、更に胴体をストライクガンダムに変更、バックパックにエールストライカーを装備したトリコロールカラーの機体だ。そのJガンダムエースの前を進むのはビビの「サザビー・スマッシャー」。サザビーの両肩をギラ・ドーガのスパイクアーマーに変更し、バックパックのファンネルラックまでもプロペラントタンクに改造した赤い機体だ。
「ビビ、わかってると思うけど無理に突っ込んだりしないでよ…相手の力量がわからない以上は―――」
「そんなの関係ない!私のニュータイプの力があれば、どれだけ腕が起っていても同じだ!」
「ビビ……」
ニュータイプとは、ビビッ島で確認されている「ある日突然、ガンプラバトルの才能が現れた者たち」の総称である。彼らは、本当に何の前触れもなく突然ガンプラバトルの才能が開花し極端に強くなる。そしてビビはそのニュータイプである。簡単に能力の内容を言うと「相手のガンプラが止まって見える」だ。他にも「相手の機体が極端に遅く動いているように見える」と言った能力を持つ者もいる。
「まあでも、ビビのニュータイプ能力があるなら勝てるかもしれないね!」
4機編隊の最後方にはミモザのガンプラ「ガンダムデュナメス・ヴァンガードカスタム」がいた。デュナメス・ヴァンガードカスタムは、以前父親から譲ってもらった「ガンダムデュナメス・ヴァンガード」をミモザなりにカスタマイズを施したガンプラだ。両肩にはGNフィールド発生器とGNビームバルカンを先端に備えたシールドを装備し、両膝のハードポイントは膝ごとGNバーニアに換装されている白と水色で塗装されたガンプラだ。とは言え、カスタマイズは父親がほとんど行っているという噂が4人の中では飛び交っているらしい。
「何度もビビさんの能力は見てきたっさ。確かに何とかなるかもっさ!」
そしてJガンダムエースの横をクレアの機体であるブルーノアアビスガンダムが飛んでいた。ブルーノアアビスガンダムは素組のアビスガンダムのバックパックをカオスガンダムのバックパックに変更したアビスガンダムのカラーリングに準拠しそれを濃い青色に塗装し直した機体だ。水中での変形機構は失ったが、それでも高い火力を持つ機体となっている。
「そうだと良いんだけど……」
その時、Jガンダムエースのレーダーが突進してくる1機のガンプラの反応をキャッチした。
「来たぞ!正面方向!」
「むざむざやられに来たか!これでもくらえ!」
サザビー・スマッシャーは右手に携行していたビーム・ショットライフルを放った。銃口から拡散モードで放たれた黄色い無数の光弾がそのガンプラに向かって飛んでいった。
「直撃コースだ、これで終わりだな!」
無数の光弾は確実にそのガンプラの直撃コースに乗っていた。だが―――
「………」
その機体は突如、右手を真横に向けたかと思うと次の瞬間、ガンプラが左側へ向かって動いたのだ。まるでそこに壁があって、その壁を手でポンッ、と叩いて移動したかの様な動きでそのガンプラは飛来した光弾を避けた。続け様に飛んでくる光弾も、そのガンプラは左手を上へと掲げた瞬間真下へ移動したり、右足を少しだけ後ろへ向かって伸ばしたかと思うと左斜め前方へ移動、右手を斜め前前方へ向けて左斜め後方へ、左足を真横へ向けて蹴り右へ、右足を蹴って左上方へと移動し、まるで室内競技場で行われているパルクールのような動きでサザビー・スマッシャーのビーム・ショットライフルの発射した光弾を避けていった。
「なんだと!」
「な、なんなのよあの動き!」
結果、ビーム・ショットライフルの放ったビームは全て躱されてしまい、そのガンプラ。ガンダムエクシアの様なスリムな胴体に、ビルドストライクガンダムの様な両肩とガンダムフレーム機のような細身の腕の両前腕部フレームが露出し、アストレイブルーフレームⅡLの様な曲線的な下半身に左腰と、リアアーマーに2本のナイフ、左脹脛には4連装ミサイルポッドを装備し、バックパック右側には長大な砲身を持つビーム砲、左側にはストライクフリーダムガンダムのウイングバインダーと4基のドラグーン、そして頭部はストライクノワールガンダムだがメインカメラは左目のモノアイのみとなっている深海の操るガンプラ「ガンダムディオリアス」は更に高速でアミオたち4機に迫った。そして、ビビは気づいた。
(な、なんであの機体は―――)
動いているんだ!
ビビのニュータイプ能力は「相手のガンプラが止まって見える」だ。ガンプラバトルを始めた頃ずっとそうだった。例えどんな強敵と対戦しようが、相手の機体は一歩も動かずビビの攻撃は次々に命中し撃破されていった。その筈だった。だがビビの眼前、深海の駆るガンダムディオリアスは、遅く見えるどころか寧ろ今までビビが経験したことがないスピードで迫って来ていた。
「ビビ、動くんだ!」
「あ、あああ―――」
あまりに突然の事に、ビビは完全に動揺していた。全身の震えが止まらず、腕が動かない。視界が動かない。
手が動かない
そしてガンダムディオリアスは右手を腰裏に回し、ナイフを抜いた。
「うわあああー!!!」
瞬間ビビは叫んだ。あまりの恐怖から、叫ばずにはいられなかった。
「っ!」
その瞬間、深海は振りかぶっていたナイフを振ることなく、変わりに右足を大きく前へ突き出し、スピードに乗ったままサザビー・スマッシャーを蹴り飛ばした。蹴り飛ばされたサザビー・スマッシャーはそのまま場外へと弾き飛ばされてしまった。動かなくなったサザビー・スマッシャーが、システム台から落ちて床に転がる。ビビの操縦スペースはモニターがオフになり、全周囲の光が消えてしまった。ビビは俯いたまま、何も言わず立ち尽くしていた。
「ビビ!」
(なんだ?あの機体、何故動かなかった)
「そこぉ!」
「っ!」
直後、ガンダムディオリアスの後方からデュナメス・ヴァンガードカスタムがGNスナイパーライフルを撃ってきた。ガンダムディオリアスは咄嗟に左足で足元を蹴り上昇して回避した。
「外れた!?」
「狙撃か。夜空!」
「わかったよ!」
そしてガンダムディオリアスたちがいる遥か上方の宙域に鮮やかな青色の尾を引いて飛ぶガンプラが1機。夜空の操るガンプラ「ガンダムフェネクスレインバレット」だ。ガンダムフェネクスレインバレットは、数年前夜空が使っていたガンダムエンドレインバレットの強化改修機だ。頭部右側にあった自身の髪飾りをイメージしたセンサーは左側へ移され、両腕はウイングガンダムフェニーチェの様な左右非対称な形状となり、右肩はウイングガンダムフェニーチェの様に短く切り詰められ、左肩もウイングガンダムフェニーチェ同様、突き出した形状となり、そこにビームマント発生器が備えられている。そして脚部はデュエルガンダムの様な曲線系に改装され、そして鮮やか青い尾の発信源となっているバックパックの左右にアームによって固定された「ユニコーンガンダム3号機フェネクス(デストロイモード)(ナラティブVer.)」のアームド・アーマーDEを持つ、群青色と黄色、白のトリコロールで塗装された機体は、右手に装備したGNスナイパーライフルⅡの様な長大なスナイパーライフル「フェネクスレインライフル」を構えた。
「もらったよミモザさん!」
「ロックオンされた!?ハロ!」
「GNフィールド、展開展開!」
ミモザの操縦スペースにはピンク色のハロが耳をパタパタさせながら言うと、デュナメス・ヴァンガードカスタムの周囲を緑色のGNフィールドが覆った。操縦が依然としていまいちな腕前のミモザは、ハロと共にガンプラバトルをする事で防御をハロに一任し自身は攻撃を担当しているのだ。幸いGNフィールドの展開が間に合い、フェネクスレインバレットの狙撃は防ぐことに成功した。
「GNフィールド!?くそぉ、あれじゃあ僕の狙撃が意味ないじゃないか…」
「夕立に任せるっぽーい!」
すると宇宙の一角に今度は真っ赤な閃光が走った。夕立の「ユニコーンガンダム・ソロモンナイトメア」だ。ユニコーンガンダム・ソロモンナイトメアは以前の夕立の愛機である「ユニコーンガンダムパーティー・ザ・ナイトメア」の強化改修機だ。バンシィの黒い外装に、ユニコーンガンダムの赤いサイコフレーム、バックパックのファトゥム-01、ナイトメアモードへの変形という大きな特徴の変更はされていないが、その代わりに武装が一新され両肩のビームキャノンは撤廃、メイン格闘武装は以前のエクスカリバー対艦刀2本から、細身の刀状のビーム刀身を持つ武装「ビーム太刀」1本となり、メイン射撃武装も低威力ながら連射が可能なGNサブマシンガンの様な「連装ビームガン」となり、両太腿には4連装魚雷発射管型ミサイル、腰部サイドアーマーにはその予備弾が4発ずつ回転するマウントラッチにマウントされている。更にリアアーマーには取り外しが可能なビーム太刀の鞘がマウントされている。夕立曰く「自身の艦娘だった姿を再現した」とのこと。
「せいやー!」
既にナイトメアモードとなっていたユニコーンガンダム・ソロモンナイトメアは右手で握っていたビーム太刀の柄を両手で握るとそれを下段から一気に上段まで振り上げ、そのまま一歩踏み込む様に上段から振り下ろしてきた。ユニコーンガンダム・ソロモンナイトメアの速度に合わせることが出来なかったミモザは、回避が遅れてしまった。
「ヤバッ!」
「ミモザさんはやらせないっさ!」
そこへクレアのブルーノアアビスが割って入り、手にしていたビームランスの柄でビーム太刀を受け止めた。
「ぽい!」
「お返しっさ!」
クレアはすかさず両肩の対ビームコーティングシールド裏面の3連装ビーム砲を放った。しかし、発射の僅か数秒前に夕立は3連装ビーム砲の発射に感づいてその場で上昇。これを躱した。
「なんて反応速度っさ!?」
「クレア大丈夫!」
「私は大丈夫っさ!でも、ビビさんが場外にされたから数的劣勢になってるっさ!」
「当てるよっ。いけぇ!」
そこへ、赤いビームが飛来した。
「クレア危ない!」
デュナメス・ヴァンガードカスタムは咄嗟にブルーノアアビスの前へ出てGNフィールドでそのビームを防いだ。
「ふぅ…何とか間に合った」
「ありがとうっさミモザさん!それよりさっきの攻撃は……っ!いた!」
クレアが見つけたのは深空の操るガンプラ「ビアルカロード・イージスガンダム」だった。ビアルカロード・イージスは、深空のかつての機体「ホロルドロッソ・イージスガンダム」の次世代機として深空が製作したガンプラだ。ガンダムイージスナイトの様な平面系の装甲を持った外見をしたそのガンプラの両肩にはバックパックからアームによって接続された横へ大きく突き出したパーツがあり、両前腕と両爪先にはイージスガンダムのクロー、腰部サイドアーマーにもイージスガンダムの様な三角形状のバインダーが装備されていて、頭部は前身機であるホロルドロッソ・イージスガンダムの様に4本のアンテナと、頭頂部に上へ伸びたセンサーを持っていて白とライトグレーを主体にサイドバインダーなど所々にダークグレーを交えたカラーリングをしていた。
「スキュラが防がれた。やっぱりGNフィールド、厄介…」
「今度こそ命中させるわ!ハロ、GNフィールドを切って!」
「GNフィールド、停止停止!」
デュナメス・ヴァンガードカスタムはGNフィールドの展開を止め、GNスナイパーライフルをビアルカロード・イージスに向けた。
「っ!ミモザさん駄目っさ!今GNフィールドを切ったら―――」
「流石に油断し過ぎだよミモザさん!」
「え――」
直後、上空から高速で飛来した1発のビームがデュナメス・ヴァンガードカスタムの持つGNスナイパーライフルを正確に射貫き、爆発させた。
「今だよ夕立!」
「ぽーい!」
「な―――」
直後、デュナメス・ヴァンガードカスタムの左真横から居合斬りの構えをとって高速で迫ってきたユニコーンガンダム・ソロモンナイトメアが、横一文字にビーム太刀を振り抜いた。抜刀と同時に出力されたビーム刃はデュナメス・ヴァンガードカスタムの上半身と下半身の接続箇所を一瞬にして焼き斬ってしまった。上半身と下半身を真っ二つに分たれたデュナメス・ヴァンガードカスタムはその後に爆発を起こして消滅した。
「へっへーん!決まったっぽい!」
見事な居合斬りを決めた夕立は思わずVサインを決めた。だが直後、前方からアラートが鳴り響いた。
「これでもくらうっさ!フルバーストォ!!」
かなりの至近距離でブルーノアアビスが全ての火器を使った全発射をしてきたのだ。流石の夕立も油断をしていた為、回避するのが遅れていた。あわや直撃という所でユニコーンガンダム・ソロモンナイトメアの正面に4基のドラグーンが現れたかと思うと、その先端からビームのバリアを展開しブルーノアアビスのフルバーストを防いだのだ。
「うわっ!」
突然起こった眩い閃光にクレアは思わず目を瞑ってしまった。そこへガンダムイージスナイトの巡航形態の様にバックパック中央のバインダーを頭部に被り、胴体中央にはガンダムデルタカイのシールドを思わせる形状の大型シールドを取りつけて機首にし、両肩の装甲は両腕を覆うように真横から被さり、下半身は上半身との接続部で180度回転して足を延ばして巡航形態に変形したビアルカロード・イージスが飛来し、ユニコーンガンダム・ソロモンナイトメアを引っ掛けて飛び去っていった。
「夕立姉ぇ、今の間に距離を取るね」
「ありがとう深空ちゃん!みか―――じゃなくて、助かったっぽいお兄ちゃん!」
「すぐ油断するところは、長門たちに鍛えられても治らなかったか…まったく」
ドラグーンの正体は、ガンダムディオリアスの射出した「ディオリアスウイング」だった。深海は、Jガンダムエースと戦闘を行いながらも夕立の危機に気づいてディオリアスウイングを展開し、ユニコーンガンダム・ソロモンナイトメアを護ったのである。
「嘘だろ…僕と戦闘しながら、夕立さんのピンチに対応するなんて……」
その行動を見たアミオはただただ驚愕していた。現に今、Jガンダムエースはガンダムディオリアスと鍔迫り合いを行っていた。Jガンダムエースのビームサーベルとガンダムディオリアスのナイフがビームの火花を散らして、2機を照らしている。しかし深海は、アミオの意識が夕立に向いた瞬間を見逃す程甘くはなかった。
「よそ見するとは、油断し過ぎだ」
「え―――うわっ!!」
ガンダムディオリアスはJガンダムエースのビームサーベルを押し返し、そのまま左足でJガンダムエースを蹴り飛ばした。ガンダムディオリアスはその勢いに乗って宙返りをし、バックパック右側のビーム砲をパージした。するとビーム砲の後部から折り畳まれていたグリップが展開するとガンダムディオリアスはそのグリップを掴み、右足で右側の空間を蹴るとスラスターを全開にし一気に駆け抜けた。態勢を整えたJガンダムエースはビームライフルを構えてガンダムディオリアスを追うが、Jガンダムエースが放ったビームは掠る事すらなくただ黒い宇宙空間へと吸い込まれていった。
「は、早すぎて照準が追いつかない!」
「ディオリアスウイング、ヴァリアブルバーストライフルに接続」
深海が手元の武装スロットを操作し、射撃武器の「SP」を選択した。すると先程のビーム砲、もとい「ヴァリアブルバーストライフル」の銃口付近にディオリアスウイングが4基接続された。そしてガンダムディオリアスは高速を保ったまま180度回頭し、その銃口をJガンダムエースに向けた。
「終わりだ」
アミオがロックオンに気づいた時には既にヴァリアブルバーストライフルは発射され、黄色の帯に緑の螺旋を纏ったビームがJガンダムエースを飲み込んでいった。
「……ここまでか」
Jガンダムエースの消滅を確認したクレアは、降参した。
続く